
5連覇中の福間香奈女流王位(32)に加藤桃子女流四段(29)が挑戦する「第35期女流王位戦」(新聞三社連合主催)五番勝負が4月25日、開幕する。4年ぶり2度目の顔合わせとなる両対局者に意気込みを聞いた。同時に、今年は女流棋士制度の発足50年に当たる。日本将棋連盟女流棋士会長・山田久美女流四段(57)と、日本女子プロ将棋協会代表理事・中倉宏美女流二段(45)に、五番勝負の展望と女流棋士のこれからについて語ってもらった。
いま女流棋界は福間香奈女流王位(女流五冠)と西山朋佳女流三冠(28)がタイトルを分け合っている。この5年の間、福間と西山以外で女流の八大タイトルを獲得したのは、加藤桃子女流四段と、伊藤沙恵女流四段(30)のみだった。
だが最近は新しい世代の台頭が目覚ましい。その代表格が大島綾華女流二段(21)だ。初参加の今期女流王位リーグでは伊藤を破り、西山をあわやというところまで追い詰めた。大島はマイナビ女子オープンで挑戦権を獲得し、一気にトップ集団に迫ろうとしている。
若手の足音が聞こえる中、加藤は昨年、関西に移籍した。振り飛車党の福間、西山に対抗するため、振り飛車を得意とする棋士の多い関西に飛び込んだのだ。将棋に集中するため、普及の仕事を控える決断もした。そこにはタイトルを長く持ち続ける女流棋士になりたい、という不退転の決意がある。まだ若手に抜かれるわけにはいかない。試行錯誤が好結果を生むか。
迎え撃つ福間は今年の正月に結婚を発表。変わったことは、対局が遅くなっても翌日は普段通りの時間に起きるようになった程度と言い、泰然とした雰囲気は変わらない。しかし「日々の積み重ねが盤上に表れる」とさらりと話すときの表情は鋭い。常に自己と向き合い、ひたすら盤上を探究する日々。年明けの女流名人戦五番勝負では、西山から女流名人を奪取し女流五冠に返り咲き、充実期を迎えている。
福間と加藤による女流王位戦五番勝負は、第31期以来4年ぶり。そのときは、コロナ禍に入ったばかりで幾度となく日程変更があり、負担をかけることも多かった。全国行脚はなく東西の将棋会館で行われた。
だからこそ今期の五番勝負は、悔いなく将棋を指せる環境をつくることで、対局者の熱意に応えたい。担当記者としてそう思っている。
(新聞三社連合・森本孝高))