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  里見は昨年、女流王座を奪取して、2013年以来の女流5冠に返り咲いた。6つある女流タイトル同時制覇を目指すうえで、大事な防衛戦だ。伊藤は奨励会をへて女流棋士としてデビュー。2度目のタイトル戦となるこの五番勝負で、初タイトル奪取を狙う。戦いを前に両対局者に抱負を聞くとともに、遠山雄亮五段と中村真梨花女流三段に勝負を占ってもらった。 
 
		 
		里見香奈女流王位が初めてタイトルを取ったのは2008年11月の倉敷藤花戦である。当時、里見は16歳8カ月の若さ。以来、女流棋界は彼女を中心に回り始めることになる。
  13年5月には史上初の女流5冠に。里見は名実ともに女流のナンバーワンになった。その後、体調不良による休場などもあり、女流名人のみにまで後退した時期もあったが、復帰後は順調に勝ち星を重ね、16年には再び女流5冠になった。
  現在、里見の通算獲得タイトル数は26期。これは清水市代女流六段(クイーン王位)の43期に次ぐ記録だ。まだ25歳という若さを考えれば、その記録がどこまで伸びるか、想像もつかないほどである。
  とはいえ、現在の里見の独走状態が今後も続く保証はない。実は、今ほど里見を追うライバルが多くなった時代はない。
  西山朋佳奨励会三段は里見と同じく奨励会に在籍している。女流棋士ではないため女流棋戦の参加機会は少ないが、その実力は里見に引けを取らないと評価されている。
  先のマイナビ女子オープンの挑戦者決定戦で里見を破り、里見の女流6冠同時制覇の夢を打ち砕いたのが上田初美女流三段。上田の将棋は結婚を機に充実度を増したという評判だ。
  そして、里見以外ではただ一人女流のタイトル「女王」を持っているのが加藤桃子奨励会初段。その加藤の奨励会時代のライバルだったのが、今回女流王位戦の挑戦者になった伊藤沙恵女流二段である。伊藤も奨励会1級までいった。
  ちなみに、伊藤は小学5年生の時に小学生名人戦で全国3位に入った天才少女である。この時の優勝者が佐々木勇気五段。準優勝が菅井竜也七段だったことを考えても、そのレベルが分かる。
  伊藤は奨励会でやや苦労した面もあったが、14年に女流棋士になってからは徐々にその力を発揮してきた。翌年の女流王座戦ではライバルの加藤に挑戦して2勝3敗1持将棋と肉薄。そして、今回の挑戦となる。
  伊藤の将棋は女流棋士には珍しい受け重視。かつての天才少女が現在の女流5冠を相手にどう戦うか。里見の攻めを伊藤がどう受けるか。今回の女流王位戦はそこが注目される。
   
  =敬称略=
(鈴木宏彦[すずき・ひろひこ=将棋観戦記者])