藤井聡太(ふじい・そうた)王位

 永瀬九段には研究会でも教えていただいています。研究会当初、私は受けの技術が特に不十分だったので、得るものがたくさんありました。技術面だけでなく、将棋への向き合い方、姿勢において見習うべきところの多い棋士です。大きな舞台で対戦でき、とても楽しみです。
 永瀬九段は常に、積極的に踏み込んでいく手を追究して読まれており、こちらが気づきづらい筋であっても、深く掘り下げて可能性を見いだすところに強さを感じます。
 王将戦、名人戦に続き、永瀬九段とのタイトル戦は今年に入って3回目。内容を振り返ると、そこまで先手番有利という傾向にはなっていません。こちらが先手の時に、精度の高い作戦を用意されていると感じるので、永瀬九段の序盤にどう対応するかが七番勝負のテーマとなります。
 王位戦七番勝負は今期で6期目となります。前期は永世王位(の資格)を獲得することができ、私にとってなじみの深いタイトル戦です。全国各地で歓迎していただき、大きなモチベーションになっています。
 ちょっとした工夫の積み重ねが、一局を通じて大きな違いになっていきます。細かい手順にも注目しながら、観戦いただければ幸いです。

藤井聡太王位 2002年生まれ。愛知県瀬戸市出身。12年、6級で奨励会入り。杉本昌隆八段門下。16年、四段昇段。20年、棋聖獲得で初タイトル。23年、王座を獲得し八冠達成。現在七冠。タイトル獲得は王位5期を含む30期。

永瀬拓矢(ながせ・たくや)九段

 藤井王位は本当に強い。そしてバランスの良い棋士だと思っています。長い持ち時間を好まれており、特に2日制では内容の良い将棋を指しています。
 近年、藤井さんとのタイトル戦では、私がこだわって角換わりを指しています。1つのミスが命取りになる角換わりは、真剣で切り合うような戦いで、藤井王位、そして私にとっても長年のテーマの戦型です。私としては、藤井王位と指すことが一番の勉強法なので、1局でも多く勝ち、1局でも多く指せるようにしたいですね。
 これまで藤井王位と七番勝負を2回戦っていますが、いずれも初戦から3連敗。今回はスタートダッシュが目標です。
 今年の名人戦七番勝負では、後手番の技術について向上できたように感じていますが、先手番であまりにも藤井王位に勝てていないのが痛い。先手番でどう戦うかが課題です。七番勝負で先手番を制することができれば、第7局まで戦えるわけですから。
 王位戦七番勝負は夏場に始まるので、私の頑張り次第では本当に熱い夏にすることができます。大盤解説会などに足を運んでいただく現地のファンの方に、来てよかったと思っていただけるような熱戦にできたら、と思っています。

永瀬拓矢九段 1992年生まれ。横浜市出身。2004年、6級で奨励会入り。安恵照剛八段門下。09年、四段昇段。19年に叡王獲得で初タイトル。同年、王座も獲得し、その後4連覇。タイトル獲得は5期。王位戦挑戦は初めて。

※いずれも段位、肩書きは2025年6月初旬現在