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加藤桃子女流王座が五番勝負を振り返る(part5)
座談会 加藤桃子女流王座 深浦康市九段 瀬川晶司四段
Part5 リコー杯女流王座戦第4局 「フラッシュバックが凄かった。」
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第3局が終了してから第4局まで2週間以上時間がありましたがどういったことをしていましたか?
加藤
第4局までは先後が決まっているので第4局で決めたいと思っていました。第4局は先手番でしたので清水さんの横歩とりと角換わり右玉を中心に準備をしていました。
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あと1勝というプレッシャーは相当ありましたか?
加藤
はい、ありました。
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第4局の開始前に少し加藤さんと話をする機会がありましたがその時に「緊張した」といっていましたね?
加藤
はい、「息ができない」といいました。
深浦
「息ができない?」それはすごいね。
加藤
第3局の時も息ができなかったです。
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それでも食事はがんばって食べようとしていましたね?
加藤
はい。おやつのケーキも全部食べました。気合をみせるために。
深浦
大山流で気合派ですね。
加藤
はい。
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それでは第4局をみていきましょう。
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清水さんのこの構えは予想通りでしたか?
加藤
普通の右玉(△6三銀~△5二金型)か本譜の△5四銀~△6三金型だと思っていました。普通の右玉には対策があったので本譜の方が嫌でした。ここで▲4五銀とぶつけたのですが成立していましたか?
深浦
ええ、機敏だったと思います。銀を交換することで右玉のスローペースな展開を封じています。先手の方が手段も多そうです。
【第1図からの指し手】
▲4五銀△同銀▲同歩△6二玉▲4八飛△3三銀▲1七桂(第2図)
深浦
この▲1七桂も機敏で加藤さんの会心譜になるかと思っていました。
【第2図以下の指し手】
△8一飛▲2五桂△4二銀▲5五角△1二金▲4四歩△同歩▲同飛△4三歩▲3四飛△5四歩▲3二飛成△3一銀打▲2一竜△5五歩▲3四桂△2四角▲4二桂成△5六歩▲6七金左△4二角▲3三銀△5三角▲4四歩△同歩(第3図)
加藤
ここで▲4三歩としたのですがここはもっと重くいかなければいけませんでした。 ▲4三歩は遅かったです。▲4二銀打とするべきでしたかね?でも打ちづらくて・・。
深浦
そうですね。▲4二銀打ってみたいですね。
瀬川
次の▲3一銀不成が▲3二竜をみて思いのほか厳しいですね。
深浦
そうですね。後手玉は薄いので一枚づつはがされると厳しいですね。▲4三歩は筋がいいのが裏目に出てしまいましたね。
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ここからの清水さんの反撃はさすがでした。
【第3図以下の指し手】
第3図以下の指し手 ▲4三歩△8六歩▲同歩△6五歩▲4二銀不成△6六歩▲5三銀成△同金▲6六銀△4六桂▲4七金(第4図)
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第4図の直前の△4六桂が好手でここでは清水さんがよくなったのではという評判でした。対する▲4七金が力強い一手でした。
加藤
この一手しかわかりませんでした。
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この一局は瀬川さんが大盤解説していましたよね。いかがでしたか?
瀬川
ここで△8六飛と走っていれば後手が勝っていたのではないでしょうか?
加藤
▲3一竜は△8八飛成で負けなので▲4六金とする予定でした。
深浦
△8八飛成▲7八桂△7九角▲5八玉△7八竜▲6八歩に△5四桂(変化図1)はどうですか?
瀬川
次に△6八角成▲同金△4六桂からの詰めろになっていますね。先に角を成るのがうまい手です。
加藤
そっか、そうですね。あれ、じゃあダメでしたか。
深浦
△7九角に▲6九玉は△8九竜(変化図2)でダメだから変化の余地がないですね。負けですね。
加藤
そうですね。
深浦
第4図の直前の▲6六銀では▲6六金の方がよかったのではないですか?
加藤
5筋が薄くなってしまうと思ったのですがそうするべきでしたね。
【第4図以下の指し手】
△6五歩▲7七銀△6六銀▲6三歩△同金▲4六金△6七銀成▲同玉△6六金▲同銀△同歩▲同玉△6五銀▲6七玉△4九角▲6八玉△6六銀▲6四歩△同金▲3六角△5七歩成▲5九玉△5八と▲同角(第5図)
加藤
本譜はここで△同角でしたが△2七角成の方が嫌でした。
深浦
そうですよね。
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△2七角成にはどう指すのですか?
瀬川
うーん。▲4八玉や▲4九桂かな。しかし△6五桂とされるとわからないですね。
深浦
そうですね。△2七角成なら難しかったと思います。
【第5図以下の指し手】
△同角成▲同玉△5一飛▲5四歩△同飛(第6図)
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そしてここが問題の局面です。ここで▲5五歩と打った手が波紋をよんだ一手でした。▲5六歩と打っていれば先手玉に迫る手が先手が勝ちでした。
加藤
▲5五歩△同金で後手玉が詰むと錯覚してしまったのです。
瀬川
相当際どいけど・・。でも谷川先生でさえ後手玉に詰みがあったとしても「私でも▲5六歩と打つでしょう。」っといってました。
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そうでしたか(笑)
加藤
▲5五歩打って△同金と指された時に諦めた気持ちがありました。
深浦
そうすると▲5五歩打った時に「悪い手を指してしまった。」という意識があったのですか?
加藤
はい。少し焦ってしまって・・・。
深浦
残り時間はどれ位あったのですか?
加藤
まだ7分ありました。
深浦
気持ちが高ぶっちゃったのですかね?
加藤
そうですね(笑)
瀬川
無理もないよね。でもいい将棋でしたね。途中は一方的になってしまうのかと思いましたが清水さんの粘りもさすがでした。
深浦
第4局の後は打ち上げがあったのですか?
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打ち上げにも加藤さんは出て頂きましたがその時は特に何事もなかったかのような感じを受けました。
深浦
その後は普通に家に帰ったのですか?
加藤
はい。
深浦
こういう負け方をした時はどういう過ごし方をするのですか?
加藤
対局が終わった日は「仕方がない。次に向けてがんばるしかない」と思っていたのですが次の日はフラッシュバックが凄くてずっと寝ていました。
深浦
フラッシュバックが凄くて寝ていたのですか?
加藤
はい。ずっと横になっていました。切り替えようと思っていたのですが・・。
深浦
寝るのが一番の気分転換なのですか?
加藤
はい。でもいくら寝ても局面がでてきました。
深浦
それと戦っていたわけですね。
加藤
はい。
瀬川
確かに。勝てばタイトルとっていたわけだしね。ひとつ歩を下に打っていればね。
加藤
でも第4局と第5局の間は第4局の将棋の振り返りをしませんでした。ここが悪かったと思いあたるところはあったのですが、この将棋は忘れたいと思っていました。一週間しかなかったので引きずっていてもしょうがないなと思っていました。
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そして運命の第5局を迎えることになりました。(part6に続く)
※2011年12月末日に収録。段位、肩書きは当時のもの。
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