リコー杯女流王座戦を創設し10月から五番勝負が始まります。それを前にして野月さんにお話をお伺いしたい。企業には先行投資という概念があり、誰も気がついてない芽や、これから大きくなっていく可能性を探索して見出して投資するというのが企業が競争していく上で非常に重要な側面だ。例えばサッカーでいえば今はなでしこジャパンが日本中で騒がれているけれど、Jリーグが発足した1993年に女子サッカーに注目する人は全然いなかった。将棋においても将棋人口の大半というのは昔から男性であり、特にこの20年間は羽生さんをはじめとする男性プロ棋士が将棋熱、将棋ファンを牽引してきた。ただ、だんだんとそれをみる女性ファンも増えてきたし、女流棋士も強くなってきて増えてきたし、里見さんのような10代で3冠をとるというようなスターもうまれつつある。そして奨励会で修行する女性も現れている。奨励会といえば小説になったりしてもいるから、非常に厳しい競争をする男性の天才達の戦いという印象が将棋ファン以外にも世の中の人達にある。しかしそこのなかで修行をする女性も増え、女流三冠の里見さんが奨励会に編入するというニュースも今年、大きく報じられた。それに加えアマチュアにも、ものすごく強い小学生の女の子が登場したりというような時代背景がある。
女流の将棋は歴史背景が非常に大きいと感じます。江戸時代から将棋の形ができ、来年、名人位創設400年という歴史の中で、昭和のかなり後ろの方まで男性だけのプロがやるという世界だったわけですよね。そして江戸時代から将棋というものは縁台で男の人が遊ぶものだった。他のスポーツと違って女性が入ってきたというのはすごく遅くて僕が子供の頃は女の子が将棋をやることに対して周りの認識があまりないし、認めてもくれない状況だった。それがここ最近になって女の子がどんどん将棋をやるようになってきている。最近、小学校に将棋を教えにいくと、実は昨日もいってきたのですが、男の子より女の子の方が多いのです。エリアによって異なるのかもしれませんが女の子がみんなで将棋を男女関係なく遊べるゲームという認識で楽しんでいて、今は気軽に女の子の方がはいりやすくて、しかものめりこみやすい傾向があるかなと思っている。
第59期王座戦予選の瀬川四段―清水女流六段(先)がいいかと思います。
第3図以下の指し手
第4図以下の指し手
第5図以下の指し手
第6図以下の指し手
※9月末日、リコー本社にて。梅田望夫氏は現在、(株)リコーの社外取締役をつとめている。段位、肩書きは当時のもの。