# --- Kifu for Windows (HTTP) V6.52 棋譜ファイル --- 対局ID:1548 開始日時:2012/10/23 10:00 終了日時:2012/10/23 17:56 表題:新人王戦 棋戦:第43期新人王戦決勝三番勝負 第2局 持ち時間:各3時間 消費時間:133▲175△179 場所:東京・将棋会館 図:投了 手合割:平手   先手:藤森哲也 後手:永瀬拓矢 手数----指手---------消費時間-- *第43期新人王戦決勝三番勝負は永瀬拓矢五段と藤森哲也四段で争われている。第1局を制したのは永瀬。このまま連勝で初優勝を決めるのか、それとも藤森が巻き返して最終局に持ち込むか。正念場の一局だ。戦型は第1局と同じように永瀬の中飛車が有力。 *本局の立会人は中村修九段、記録係は森村賢平三段(23歳、宮田利男七段門下)。Twitter解説は吉田正和五段が担当する。 *9時37分、永瀬は特別対局室の上座に着いて身の回りの準備を整えている。関係者の話では9時15分には会館に姿があったそうだ。9時45分、藤森が対局室に現れた。両者正座で向き合い、一礼。永瀬が駒箱に手をかけ、二人は駒を並べ始めた。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>今日は一日よろしくお願いします。藤森四段は居飛車。永瀬五段はゴキゲン中飛車。第1局と似た形の相穴熊が本命で。超速からの相穴熊。永瀬五段の三間飛車、四間飛車も考えられます。 * *【Twitter:日本将棋連盟モバイル】 *https://twitter.com/shogi_mobile * *(※印は感想戦の内容) *(棋譜・コメント入力=文) 1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00) *■藤森 哲也(ふじもり てつや)四段 *棋士番号285。1987年5月9日生まれ、東京都大田区出身。塚田泰明九段門下。1999年9月に奨励会入会(6級)。2011年10月1日、四段。 2 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *■永瀬 拓矢(ながせ たくや)五段 *棋士番号276。1992年9月5日生まれ、神奈川県横浜市出身。安恵照剛八段門下。2004年9月に奨励会入会(6級)。2009年10月1日、四段。2012年4月、五段。将棋大賞は第39回(2011年度)に連勝賞を受賞。 3 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00) *ぐいっと飛車先を伸ばす。ゴキゲン中飛車封じの作戦だ。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>3手目▲2五歩は相手に居飛車にされると損になりそうなので、振り飛車党が相手のときの手です。 4 3三角(22) ( 0:00/00:00:00) *早々に角を上がらせることで、後手の作戦を狭める。ただしそれは振り飛車に限った話。相手が居飛車の場合は、逆に自分が飛車先を伸ばしてしまったことで作戦が限定されてくる。 5 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *■Twitter解説■ *吉田正和五段>ここで△2二銀とし、後で▲3三角成△同銀となったときに、角換わりで、▲2五歩を早く決めすぎになる恐れがあります。 6 2二飛(82) ( 0:00/00:00:00) *向かい飛車に。先手の作戦をとがめようと意識した手だ。▲2五歩△3三角の交換がなければ、ここに飛車を振ることはできなかった。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>△2二飛と振ったので、△3三角戦法に合流しました。 * *【戦型は後手向かい飛車】 *http://kifulog.shogi.or.jp/shinjin/2012/10/post-452f.html 7 3三角成(88) ( 0:00/00:00:00) *すぐに藤森の手が伸びる。角交換することで相手の桂を手順に跳ばせてしまうが、序盤で跳ねた形は絶対に得とも言い切れない。4手目△3三角戦法と同じ立ち上がりになっている。 8 同 桂(21) ( 0:00/00:00:00) *桂は後戻りできないので、序盤に跳ねる手にはリスクをともなう。歩で攻められて取られるのが最悪の展開だ。ただしこの戦型では△2五桂という2筋逆襲の切り札を見せることで、先手の駒組みを牽制する効果がある。手を生かすも殺すも作戦次第というわけだ。 9 9六歩(97) ( 0:00/00:00:00) *端の位を取りにいく。ここで△9四歩と受けるなら、▲6五角△4五桂▲4八銀△5五角▲9七香で先手よし。後手は▲6五角に対し△5五角の香取りで対策をとっているのだが、端を突くと香の逃げ道ができるので、△5五角を無効化できるのだ。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>△9四歩と受けると▲6五角△4五桂▲4八銀△5五角のときに▲9七香と逃げられます。 10 4二銀(31) ( 0:00/00:00:00) *「端を受けますと角を打って……」。控室では継ぎ盤で中村修九段が解説している。4手目△3三角戦法は中村修九段が得意にしている指し方。腕が鳴ることだろう。ちなみに中村修九段は第14期(1983年)の新人王。第1局の立会人、佐藤秀司七段も新人王になった棋士だ。 11 9五歩(96) ( 0:00/00:00:00) *玉側の端の位は戦略的に大きな価値を持つ。「香の逃げ道を作って後手の返し技を無効にする」という発想は、対ゴキゲン中飛車の角交換型、丸山ワクチンの佐藤流▲9六歩と似ている。 12 6二玉(51) ( 0:00/00:00:00) *後手は端の位を取られているので、駒組みにひとあじの工夫を要求されている。端にかけた2手を緩手にすべく早期決戦を挑むか、位の圧力から遠ざかるために穴熊にする順が有力だ。後者はタイトル戦でも登場しており、▲広瀬章人六段−△深浦康市王位戦(2010年8月、王位3、段位・肩書きは当時)が有名。 13 6八玉(59) ( 0:00/00:00:00) *藤森の今年度成績は11勝12敗(0.478)。 *通算成績は14勝15敗(0.483)。 14 7二玉(62) ( 0:00/00:00:00) *永瀬の今年度成績は27勝6敗(0.818)。 *対局数、勝数はランキング2位。勝率は2位タイ。現在9連勝中。 *通算成績は87勝37敗(0.701)。 15 7八銀(79) ( 0:00/00:00:00) *先手は左美濃に構える。端の位を生かすためには、ゆっくりした展開を目指したいところ。もちろん相手の出方次第ではある。 16 5四歩(53) ( 0:00/00:00:00) 17 7九玉(68) ( 0:00/00:00:00) 18 5三銀(42) ( 0:00/00:00:00) *対局開始から約15分。互いに想定の範囲内か、進行が早い。 19 5八金(49) ( 0:00/00:00:00) 20 2一飛(22) ( 0:00/00:00:00) *飛車を引いて形を整える。桂を跳ねる展開では定番のポジションだ。 21 7七桂(89) ( 0:00/00:00:00) *10時29分、藤森が着手。上部に厚みを作りにいく手だ。このあとは▲8六歩から銀冠に組み替えるのがひとつの定型になる。端の位を取った銀冠は、厚みと広さを兼ね備えた理想形のひとつ。 22 4二金(41) ( 0:00/00:00:00) *ノータイムでピシリ。考慮時間は1分未満だと切り捨てられるため急ぐ必要はないのだが、こういうところはいかにも永瀬らしい。 *10時35分、対局中の阿久津主税七段が控室に姿を見せた。盤面を見て、「▲2六歩から▲2五歩と突いたんですか」と興味深げにモニタを眺めている。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>後手はいつでも△2五桂と歩を取れる形になりました。しかし▲同飛△2四歩に(1)▲2六飛〜▲3六飛の反撃が怖い手、(2)飛車を五段目で使う手もあり、(3)▲2八飛でも飛車先を突破できるわけではないので、形によって成立するか微妙で、神経を使う序盤です。 23 1六歩(17) ( 0:00/00:00:00) 24 8二玉(72) ( 0:00/00:00:00) 25 4八銀(39) ( 0:00/00:00:00) *ようやく右銀が動いた。対抗形ではすぐに動くことが多い駒で、ここまで後回しにされるのはこの戦型ならでは。この銀を▲5九銀〜▲6八銀と使っていくのが、現代風の指し方だ。 26 7二金(61) ( 0:00/00:00:00) *銀ではなく金。穴熊を視野に入れた囲い方だ。「先手は指したい手がいくらでもあって、後手のほうが手詰まりになりやすいんですね」と中村修九段。「そして手詰まりになると、千日手の可能性が出てくるわけです」。永瀬は対局の千日手率が異様に高いことで有名だ。 *現局面までの消費時間は▲藤森34分、△永瀬9分。 27 8六歩(87) ( 0:00/00:00:00) *玉頭へ厚みを築きにいく。▲8七銀〜▲7八金の銀冠への組み替えが定番のルート。穴熊を相手にするにも、銀冠はとても心強い囲いだ。 *11時過ぎ、永瀬は上着を脱いでワイシャツ姿になっている。今日の東京は雨が降ったりやんだりのはっきりしない天気。蒸し暑さを感じる気温だ。 28 9二香(91) ( 0:00/00:00:00) 29 5九銀(48) ( 0:00/00:00:00) *歩を突かず、低い陣形を維持するのが現代風。角の打ち込みに対するひとつの回答でもある。 30 9一玉(82) ( 0:00/00:00:00) 31 6八銀(59) ( 0:00/00:00:00) 32 8二銀(71) ( 0:00/00:00:00) *フタを閉めてひと安心。これで強く戦いに臨めるようになった。「さあ、次の一手です。次の一手次第ではぽーんと跳んできますからね」と中村修九段。△2五桂のことを指している。これは桂を犠牲に2筋逆襲を図る順で、条件次第では成立する。たとえば▲8七銀と離れ駒を作ると、その瞬間をとらえて仕掛けてくるかもしれない。 * *【一門の系譜】 *http://kifulog.shogi.or.jp/shinjin/2012/10/post-6dac.html 33 8八玉(79) ( 0:00/00:00:00) *離れ駒は作らず。今度は後手が考える番だ。すぐ(1)△2五桂はやりにくいのでタイミングを計る手がほしいところだが、(2)△6四歩や(3)△7四歩はキズになり得るだけに難しい。 *11時49分、窓を雨がたたく音。外は土砂降りだ。 * *※感想戦※ *「(△2五桂は)いきにくかったです」と永瀬。藤森も「ここまで固まるとやりにくいですね」と同意した。 34 7四歩(73) ( 0:00/00:00:00) *11時54分、永瀬の手が盤上に伸びる。「これで△2五桂と跳ねる展開はなくなりましたね」と中村修九段。後手の7筋はそのままではキズになってしまうので、しばらく駒組みが続くはず、という予想だ。 35 6六歩(67) ( 0:00/00:00:00) *予想の範囲内だったか、藤森はすぐに手を返した。先手はこのあと▲6七銀直〜▲8七銀〜▲7八金という駒組みが考えられるところ。後手は打開を目指すか、千日手辞さずと考えるかで指し手が変わってくる。さらに固めるなら△6二銀〜△7三銀左が一例だ。 *12時7分、対局室からは二人の姿が消えている。少し早いが昼食休憩に入れたようだ。12時10分まで、永瀬が使った時間は13分。消費時間は▲藤森49分、△永瀬1時間3分。対局は13時に再開される。 * *【昼食の注文】 *http://kifulog.shogi.or.jp/shinjin/2012/10/post-d43e.html 36 1四歩(13) ( 0:00/00:00:00) *13時、対局再開。永瀬は端を受けた。戦いになったときに影響は少ないが、手詰まり模様になりそうなときには大きな手だ。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>3手目▲2五歩でゴキゲン中飛車を封じて藤森四段の狙い通りの展開だと思います。居飛車側の囲いの方が堅いので、戦いやすそうです。永瀬五段に苦しんでいる様子が感じられないのが気になりますが。 37 6七銀(68) ( 0:00/00:00:00) 38 6四歩(63) ( 0:00/00:00:00) 39 8七銀(78) ( 0:00/00:00:00) 40 6二銀(53) ( 0:00/00:00:00) *藤森の着手を見届けてすぐに。永瀬の指し手は早い。 41 7八金(69) ( 0:00/00:00:00) 42 6三銀(62) ( 0:00/00:00:00) *13時7分、片上大輔六段が控室に。すると中村修九段が「千日手!」と言葉を投げかけた。「まだ早いですよ」と片上六段が笑う。 43 4六歩(47) ( 0:00/00:00:00) *「ほおー、そこを突きますか」と中村修九段。「そこを突かないための銀引き(▲5九銀)じゃなかったのかなあ……」。歩を突くのはこちら側で仕事をするための下準備。これで千日手はなくなるのではないか、と控室では言われている。 44 7一金(72) ( 0:00/00:00:00) *「まずは引きましたよ」と片上六段。次は上がるぞ、ということだろうか。ともあれ、後手は千日手にする手順を用意できた。 45 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00) 46 7二金(71) ( 0:00/00:00:00) *「出たー」と声が上がった。これで先手が合意すれば千日手だが。片上六段は「(永瀬五段は)こういう『いかにも千日手になりそうな局面』は千日手にしないから大丈夫です」と話す。控室を訪れた阿久津七段は、「先手が動きやすそうな形になってきましたね」とひと目の感想。継ぎ盤には▲5六銀〜▲6五歩で歩を手持ちにする順が並んでいる。歩を持てば▲3五歩という自然な攻めがある。 * *※感想戦※ *「先手なので仕掛けないといけなくて、▲3八飛か1歩持つかなんですが、▲3八飛は自信がなかったです」と藤森。そこで本譜の順になった。 47 5六銀(67) ( 0:00/00:00:00) *13時28分、藤森が着手。遠回りでこの位置にやってきたが、後手が手待ちに入っているので手の損得はそれほど重要ではなくなっている。 48 7三銀(82) ( 0:00/00:00:00) *にゅっと銀が前へ。守り駒が離れていくだけに驚く。「ひょっとして▲6五歩には△同歩▲同銀△5五歩と銀ばさみを狙うんでしょうか。ただ玉が薄いのでどうか……ちょっと強引ですかねえ。手待ちならまた△8二銀と戻るんですが。△8二金〜△7二銀という順もありますかね」(中村修九段) *13時36分、藤森は左手の上にあごをのせ、少し引いた位置から盤面を見る。顔を近づけて前傾姿勢になる。永瀬は棋譜用紙を眺めている。 49 6八金(58) ( 0:00/00:00:00) *固めて態勢を整える。歩を持って▲3五歩、これで先手がよくなれば話は早いが、さて。 50 8二銀(73) ( 0:00/00:00:00) *押し殺した悲鳴が控室に響いた。後手の姿勢ははっきりしている。 51 6五歩(66) ( 0:00/00:00:00) *13時52分の着手。 52 同 歩(64) ( 0:00/00:00:00) *■Twitter解説■ *吉田正和五段>先手としては歩を手に入れて桂頭を攻めたいです。1筋で歩を手に入れるには香を捨てることになるので、▲6五歩は他の筋で歩を入手しようとした手ですね。 53 同 銀(56) ( 0:00/00:00:00) 54 5五角打 ( 0:00/00:00:00) *ノータイムで角。先手の動きに合わせてカウンターを狙ってきた。 55 4八飛(28) ( 0:00/00:00:00) *じっと受ける。ここで手が止まるようだと、角を手放しただけに終わってしまう。後手の継続手は。 *現局面までの消費時間は▲藤森1時間29分、△永瀬1時間13分。14時、継ぎ盤では田村康介六段と渡辺弥生女流1級が検討している。「次の手が見えないですね」と田村六段。田村六段は第34期(2003年)の優勝者だ。 56 2四歩(23) ( 0:00/00:00:00) *飛車が離れた2筋から動く。千里の道も一歩からと言うが、この攻めは目標にたどり着くまでがとにかく遠い。しばらくは先手が好き放題できるだけに、勝負手という印象も受ける。 *14時過ぎ、藤井猛九段が控室を訪れた。藤井九段は新人王戦を3回優勝している。継ぎ盤には一例として▲3五歩△同歩▲6四歩△同銀▲5四銀が並んだ。桂はすぐ取らず含みを持たせておき、後手陣に斬り込んでいく。この手順は▲1八角が急所の筋になりそうだ。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>△2四歩は確実な手を見せて、相手を焦らせようとした手です。先手は▲3五歩△同歩とすれば、いつでも▲3四歩を打てるので上手く手を作りたいです。 * *【14時ごろの控室】 *http://kifulog.shogi.or.jp/shinjin/2012/10/14-b966.html * *※感想戦※ *「△5五角(54手目)はあまり考えてなかった……軽視していました。このときにどう指すかよくわからなかったですね」(藤森) 57 8五歩(86) ( 0:00/00:00:00) *じわりと玉頭に圧力をかけた。後手が2筋を攻めているにもかかわらず、落ち着いたものだ。△6四歩〜△2五歩には対応できると言っている。 58 6四歩打 ( 0:00/00:00:00) *気になっていたキズを消すことができた。これで後手には2筋攻めという主張が残る。 59 5六銀(65) ( 0:00/00:00:00) 60 4四角(55) ( 0:00/00:00:00) *慌ただしく局面が動く。 61 4五歩(46) ( 0:00/00:00:00) *角を追う。永瀬はすぐには指さない。引く手も自然、△2六角で手番を握る手もある。 * *【田村六段の解説】 *http://kifulog.shogi.or.jp/shinjin/2012/10/post-7d6c.html 62 5三角(44) ( 0:00/00:00:00) *手番を取る選択もあったが、自陣へ引いた。後手は2筋を伸ばすのが目的なので、進路に角を置かないほうがよいという考え方だ。 63 6六角打 ( 0:00/00:00:00) *藤森はすぐに角を打つ。そして席を立った。2筋攻めにスピードで対抗しようとした手だ。△2五歩には▲4四歩△同角▲同角△同歩▲同飛△4三歩▲3四飛が一例で、飛車の働きに差がつきそうだ。こう進めば▲2二歩△同飛▲3一角の反撃もある。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>次に▲4四歩のわかりやすい狙いができたのは大きいと思います。 64 2五歩(24) ( 0:00/00:00:00) 65 4四歩(45) ( 0:00/00:00:00) *■Twitter解説■ *吉田正和五段>(1)△4四同歩だと▲3五歩が入りそうなので、(2)△4四同角▲同角△同歩▲同飛△4三歩▲3四飛が一例です。その局面が意外に大変だから考えているのでしょうか。 66 同 角(53) ( 0:00/00:00:00) 67 同 角(66) ( 0:00/00:00:00) 68 同 歩(43) ( 0:00/00:00:00) *ここで▲4三歩と先着する手も有力。継ぎ盤では以下△3二金▲4四飛△6六角▲4九飛が検討されている。 69 4三歩打 ( 0:00/00:00:00) *急所のたたき。これが利けば▲4四飛のときに得できる。 70 2六角打 ( 0:00/00:00:00) *ほとんど時間を使わずに切り返す。先手を取りつつ受けて、飛車の動きを押さえている。▲4九飛△3二金のとき先手に歩があれば角が取れるのだが、その1枚がない。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>▲4九飛△3二金で、後手は△2六歩を突けなくなったので先手はゆっくりした手で良いですが、手の作り方がわかりません。 * *※感想戦※ *うまい攻防手。先手に受けを強要させて後手がポイントを稼いだ。藤森は「△2六角をうっかりした」と正直に胸の内を明かした。これがあるなら、本譜▲4三歩では単に▲4四同飛がまさった可能性がある。「(▲4三歩は)一見うまい手に見えたけど……」と藤森。なお、検討ではここから▲4四飛!△同角▲4二歩成△5五歩▲4三とが調べられ、「有力」という結論になった。 71 3七角打 ( 0:00/00:00:00) *角を合わせて受けた。△3二金のときに先手はどう指すかが課題だ。▲2六角△同歩▲4四飛と進めると、後手が丸々△2六歩の一手を稼いだ計算になる。 *現局面までの消費時間は▲藤森2時間0分、△永瀬1時間30分。15時、対局室におやつが運ばれた。メニューは二人とも同じで、お菓子とフルーツの盛り合わせ。控室にも同じものが運ばれた。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>△3二金▲2六角△同歩となると一手損ですが仕方ないのかもしれません。 * *【15時のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/shinjin/2012/10/15-43b0.html 72 3二金(42) ( 0:00/00:00:00) *先手が飛車を走るには角を取らなければならない。すると歩がひとつ前に進んでしまう。先手に▲3七角と受けさせたことで、後手が細かくポイントを稼いだ印象だ。継ぎ盤ではここから▲2六角△同歩▲4四飛△6六角以下、(1)▲4二歩成△4四角▲3二と△7一飛▲3三と△同角▲3七桂、(2)▲3四飛△2三金▲3二角△3四金▲2一角成といった華々しい順が検討されている。どちらも一気に終盤戦になる変化だ。 73 2六角(37) ( 0:00/00:00:00) *15時10分、藤森が着手。 74 同 歩(25) ( 0:00/00:00:00) *藤森の手が引っ込むのと同時に、永瀬が角を取り返す。 75 4四飛(48) ( 0:00/00:00:00) 76 5三角打 ( 0:00/00:00:00) *待ってましたとばかり攻防手で切り返す。後手が角をうまく使って局面をリードした。駒組みの時点では先手の模様がよさそうだったが、後手がどんどん盛り返してきた。 77 4二歩成(43) ( 0:00/00:00:00) *飛車取りに構わず歩を成る。確かに飛車を逃げると、2筋で手順に伸びた歩がものを言ってきそうではある。(1)△4二同角は▲4三角△同金▲同飛成で角取りの受け方が難しそうだ。考えられる手は(2)△4二同金か(3)△4四角。 *(2)△4二同金には▲同飛成△同角▲3二金で両取りをかける順があるが、以下△7一飛▲4二金と進んでこの金がどれほど働くか。ただ、先手も確実に駒得になるという主張はある。 *(3)△4四角は▲3二と△7一飛▲3三と△同角▲3七桂が予想される進行。これも二枚換えで先手はやや駒得になるが、やはり飛車を渡すので怖いところだ。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>普通は駒損しない△4四角ですが、△同金も考えられます。 * *※感想戦※ *ここで△4四角は▲3二と△2四飛▲3三と△同角▲3七桂で「自信がない」と永瀬。飛車は手に入るものの、桂を使われる感触がよくなかったようだ。 78 同 金(32) ( 0:00/00:00:00) *と金を刈り取る。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>▲4二同飛成△同角▲3二金で飛車をどこに逃げても▲4二金で駒得ですが、△4九飛のときに味良く金取りを受ける方法がないので損得は微妙です。 * *※感想戦※ *藤森は当初▲4二同飛成△同角▲3二金と攻める予定だったが、「すぐに負けそう」と思い直し、本譜の手を選んだ。ちなみに▲3二金以下は△2四飛▲4二金△4九飛で、先手は金の受け方が難しい。永瀬もこの順は「自信がある」と話した。 79 3四飛(44) ( 0:00/00:00:00) *飛車を切って▲3二金はさすがに攻めとして重かったか。しかし△2七歩成が実現すれば、後手は2筋逆襲という目標を完結させて不満がないところ。控室の見解は後手有望。 *15時40分、継ぎ盤では△2七歩成に▲2二歩の反撃が検討されているが、分かれは先手が思わしくないようだ。対局室からは二人の姿が消えている。先に永瀬が戻り、脇息にひじを置いて盤に向かった。15時50分頃、控室に山口恵梨子女流初段が来訪。検討の様子を遠巻きに見ている。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>次に▲4四歩と▲2二歩の狙いっぽいですが、上手くいくとは思えません。 * *※感想戦※ *感想戦でこの局面に来ると、永瀬は一度うつむいてから顔を上げ、「どうすればよかったですか」と盤側の中村修九段に話しかけた。検討されたのは、(A)△3二歩と(B)△2七歩成の2つ。 *(A)△3二歩は▲2二歩△4一飛▲2四飛△5二金▲2一歩成△4九飛成▲1一と△2九竜▲2一飛成△1九竜が並べられ、これは後手有望の変化。互角以上のさばき合いになれば、穴熊の強みが出る。 *(B)△2七歩成は▲2二歩△4一飛▲2四飛△3二金▲2一歩成△2三歩▲2七飛△5五歩▲6七銀△4九飛成▲1一と△3八竜▲3七飛△2九竜が示された。これも後手ペース。藤森は「自信がない」と話した。特に△2七歩成の変化は有力だったようだ。 80 3一歩打 ( 0:00/00:00:00) *永瀬の頭に隠れて駒が見え隠れする。「3一に何か置いてありますね」と記者が言うと、「さんいち? 3一に置く駒は歩しかないですね。うわあ」と、中村修九段が声を上げた。▲3二角を防ぎ、さらに▲2二歩△同飛▲3一角の筋も消している。「何もさせませんよ、という手ですね」と中村修九段。永瀬流の本領発揮だ。 * *※感想戦※ *「やっぱり打っちゃいけなかったですよね」と永瀬。この手で形勢は先手に傾いた。 81 8四歩(85) ( 0:00/00:00:00) *永瀬流の代名詞とも言えそうな底歩が出たが、控室では疑問の声。飛車の横利きが止まったことで、▲5一角が生じているのがその理由だ。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>△8四同歩▲5一角で先手が盛り返したと思います。 82 同 歩(83) ( 0:00/00:00:00) *16時、控室には前期の新人王、佐藤天彦七段が姿を見せている。 83 3七桂(29) ( 0:00/00:00:00) *桂を活用した。検討陣の予想が当たらない。中村修九段がのけぞる。 *現局面まで、持ち時間の残りは▲藤森38分、△永瀬47分。 84 4三金(42) ( 0:00/00:00:00) 85 6一角打 ( 0:00/00:00:00) *裏から飛車にヒモをつける。△3四金▲同角成△3二歩が検討されている。 86 3四金(43) ( 0:00/00:00:00) 87 4三角成(61) ( 0:00/00:00:00) *※感想戦※ *代えて▲3四角成は△3二歩で長い戦いになる。角を狙って後手陣に迫るのが好判断。 88 2七歩成(26) ( 0:00/00:00:00) *「両取り逃げるべからず」で攻めていく。取れる駒が3つあっても、取る側はひとつしか選べない。 89 5三馬(43) ( 0:00/00:00:00) *駒を取りつつ敵玉へ向かっていく。遠ざかる方向にある駒は相手にしない。 90 3七と(27) ( 0:00/00:00:00) 91 6一角打 ( 0:00/00:00:00) *鋭い手つきで角を放つ。次は▲8三歩が厳しいたたきだ。△2九飛成が二枚飛車の攻めを見せて迫力があるが、そこで▲6九歩の底歩が利くのが大きい。素直に攻め合うのは先手有望と言われている。検討の一例を示せば、△2九飛成▲6九歩△7一桂▲3四角成△4八と▲6一馬△5八と▲8三歩。やはり8筋のたたきが厳しく先手優勢になる。 *16時30分頃、検討に田中寅彦九段が加わっている。「△3二歩と突くのはどう? でもただの延命策か」。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>後手も怖い形になりました。△3二歩▲3四角成とすれば安全ですが、金を取られるのは指しにくいです。 92 2九飛成(21) ( 0:00/00:00:00) *16時36分、永瀬の手が動いた。 93 6九歩打 ( 0:00/00:00:00) *この底歩が堅い。しばらくはヨコからの攻めを寄せつけない形になった。後手は▲8三歩に対処する必要があり、ここから受けに回ることになりそうだ。永瀬は「堅忍」と揮毫された扇子をはたはたと使う。 * *※感想戦※ *「粘る順がありませんでしたね。本譜は一番手数が長くなると思ったのですが……」(永瀬) 94 5一飛打 ( 0:00/00:00:00) *自陣飛車で粘る。 *現局面まで、持ち時間の残りは▲藤森35分、△永瀬13分。 95 6三馬(53) ( 0:00/00:00:00) 96 同 金(72) ( 0:00/00:00:00) 97 3四角成(61) ( 0:00/00:00:00) *先手に金銀6枚が集まった。金銀の枚数は形勢の指標のひとつで、「6枚なら優勢、7枚なら勝勢、8枚なら勝ち」と言われる。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>先手を持ちたいです。後手に良い受け方がなかったのかも知れません。 98 2二龍(29) ( 0:00/00:00:00) *竜を引いて受けに使う。控室の検討でこうした竜引きが出ると「永瀬調」と声が上がるが、今回は本家の指し手である。16時50分、検討には鈴木大介八段、遠山雄亮五段も加わってにぎやかに行われている。 99 4四歩打 ( 0:00/00:00:00) *相手が徹底抗戦の構えなら、先手は急ぐ必要がない。確実な攻めで、ゆっくりと体力を奪うように指すのがいい。だが、後手は体力に自信のある永瀬だ。「彼は魔人ですからね。パンチを10回くらい当てないと倒せないですよ」と鈴木八段。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>▲4四歩は△4二歩と受けると▲5二銀が痛いので非常に受けにくく、攻め合いにするには先手玉が堅すぎるので、後手の手が難しいです。 100 5五歩(54) ( 0:00/00:00:00) 101 6七銀(56) ( 0:00/00:00:00) 102 4五角打 ( 0:00/00:00:00) *盤上最強の駒を責めていく。永瀬の受けは相手の駒を責める攻勢の受けだ。攻め駒を一掃できれば、大駒の少ない先手は手がかりを作るのに苦労することになるだろう。 103 3五歩(36) ( 0:00/00:00:00) 104 4七と(37) ( 0:00/00:00:00) *■Twitter解説■ *吉田正和五段>攻め合いの手ですが、成り駒で6八の金をはがした後が堅く、後手が勝つのはかなり難しいと思います。 105 4三歩成(44) ( 0:00/00:00:00) *次に▲5二銀が厳しい。△3四角と馬を取るよりないところ。 106 3四角(45) ( 0:00/00:00:00) 107 同 歩(35) ( 0:00/00:00:00) *控室ではここから△5七と▲3三歩成△6八と▲2二との攻め合いが予想されている。「△5七とに▲同金△4五桂がいやだから、消去法で(攻め合いを)選びそうですね」との声。 108 5七と(47) ( 0:00/00:00:00) *17時12分、塚田泰明九段が控室に一瞬だけ姿を見せた。弟子の藤森優勢と見られる終盤戦、どのような心境で見守っているのだろう。 109 同 金(68) ( 0:00/00:00:00) *■Twitter解説■ *吉田正和五段>▲5七同金は良さそうな手です。粘られても体力勝ちを狙えます。 110 4五桂(33) ( 0:00/00:00:00) *取られそうな桂を手順に逃すことができた。これが逆転の希望をもたらす跳躍になるか。 111 5八金(57) ( 0:00/00:00:00) 112 7二龍(22) ( 0:00/00:00:00) *現局面まで、持ち時間の残りは▲藤森23分、△永瀬5分。 113 1八角打 ( 0:00/00:00:00) *遠見の角が後手陣を射抜く。(1)△5四金には▲4四金、(2)△5六歩には▲4五角△5七歩成▲5三金。いずれも後手の竜を目標にして攻めが続く。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>痛そうです。後手は竜が消えたら急に粘れなくなるので、このラインの角は急所です。 114 3七角打 ( 0:00/00:00:00) *▲4五角に△4六角成の催促を見ている。「形勢は大分離れていると思いますが、いい勝負手です」と検討陣。一例は▲4五角△4六角成▲6三角成△同竜▲5二銀△同飛▲同と△8五桂。後手は玉頭から最後の勝負を仕掛けるつもりだ。 *永瀬はここから1分将棋。藤森の持ち時間は残り14分。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>△3七角は働きが弱そうな位置ですが、指す手がなかったのかも知れません。 115 4五角(18) ( 0:00/00:00:00) 116 4六角成(37) ( 0:00/00:00:00) *先手玉を狭くしつつ角に当てる。▲2七角なら△4五歩で利きが止まり、角が働きを失う。 117 6三角成(45) ( 0:00/00:00:00) *ばっさりと切る。これで大駒がすべて後手の手に渡ったが、4筋にいると金が大きな種駒だ。 *17時35分、控室には阿部健治郎五段の姿が。阿部健五段は第41期(2010年)の新人王だ。 118 同 龍(72) ( 0:00/00:00:00) *■Twitter解説■ *吉田正和五段>▲5三金△8三竜▲6二金ぐらいで後手が困っていそうですが、先手としてはもう少しぴったりした手を見つけたいところだと思います。 119 5三金打 ( 0:00/00:00:00) 120 8三龍(63) ( 0:00/00:00:00) 121 6二金(53) ( 0:00/00:00:00) 122 8五桂打 ( 0:00/00:00:00) *玉頭からの勝負。▲8五同桂なら△同歩で歩が伸び、放置すれば△7七桂成に取る駒で困る。継ぎ盤では▲8五同桂△同歩▲8四歩△同竜▲9六桂が検討されている。竜という最も強い駒を責めるのが、終盤の手筋だ。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>堅かった先手玉に王手がかかる形になりました。▲同桂△同歩▲7二銀ぐらいで先手勝ちですが。 123 同 桂(77) ( 0:00/00:00:00) *永瀬は脇息に体を預け、ぐったりとした様子。 124 同 歩(84) ( 0:00/00:00:00) *17時45分、三浦弘行八段が控室に。三浦八段は第29期の新人王。藤井九段、三浦八段、阿部健五段は西村一義九段門下の同門だ。 125 7二銀打 ( 0:00/00:00:00) 126 8六歩(85) ( 0:00/00:00:00) *ここから▲8三銀成△8七歩成▲同金△8三銀▲8四歩と進めば、後手玉はほぼ受けなしになる。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>▲8三銀成△同銀▲8四歩で後手玉が受けなしだと思います。 127 8三銀成(72) ( 0:00/00:00:00) 128 同 銀(82) ( 0:00/00:00:00) 129 8四歩打 ( 0:00/00:00:00) *▲8二金以下の詰めろ。△8四同銀は▲8三桂以下の詰み。この歩が取れないようでは、適当な受けはない。 130 8七歩成(86) ( 0:00/00:00:00) 131 同 金(78) ( 0:00/00:00:00) 132 7九角打 ( 0:00/00:00:00) 133 7八玉(88) ( 0:00/00:00:00) *この手を見た永瀬が姿勢を正した。天井を見上げ、グラスの水を一口。そして頭を下げた。終局時刻は17時56分。消費時間は▲藤森2時間55分、△永瀬2時間59分。藤森が勝って三番勝負は1勝1敗のタイスコアに。決着の第3局は10月31日(水)に東京・将棋会館で行われる。 * *■Twitter解説■ *吉田正和五段>永瀬五段の作戦が成功して良さそうでしたが、▲4三角成(87手目)から▲6一角で急に先手が良くなって、最後は永瀬五段の粘りに藤森四段が冷静に対応したのが印象に残ります。永瀬五段としては1回の失点が大きすぎましたが、両者の持ち味が出た一局だと思います。 134 投了 ( 0:00/00:00:00) まで133手で先手の勝ち