# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.64 棋譜ファイル --- 対局ID:15533 記録ID:64b649565d29616b1686ff4a 開始日時:2023/07/25 09:00 終了日時:2023/07/25 17:34 棋戦:大成建設杯第5期清麗戦五番勝負第2局 戦型:相振り飛車 持ち時間:4時間 秒読み:60秒 消費時間:93▲205△240 場所:福岡県福岡市「ホテルニューオータニ博多」 備考:昼休前45手目▲86分△92分\n 振り駒:なし 計時方式:チェスクロック 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:00〜13:00 昼休前消費時間:45手▲86分△92分 手合割:平手   先手:西山朋佳女流三冠 後手:里見香奈清麗 手数----指手---------消費時間-- *里見香奈清麗に西山朋佳女流三冠が挑戦する大成建設杯第5期清麗戦五番勝負は、清麗の先勝で幕を開けた。里見の連勝か、西山の反撃か。第2局は7月25日(火)、福岡県福岡市「ホテルニューオータニ博多」で行われる。 *立会人は中田功八段、記録係は水町みゆ女流初段。現地大盤解説会は都成竜馬七段と長谷川優貴女流二段が担当する。 *対局開始は9時、昼食休憩は12時から13時。持ち時間は各4時間(チェスクロック使用)、使いきると1手60秒未満の秒読み。第2局は西山の先手番となる。 *対局日の朝を迎えた。福岡市は晴れ。8時45分ごろ、西山入室。8時52分ごろ、里見入室。里見が駒箱を開け、2人が駒を並べていく。 * *※局後の感想※ *40手目、49手目、58〜59手目、最終手に記載。 * *(棋譜・コメント入力=文) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。#は局後の感想が追記された指し手] 1 7八飛(28) ( 0:18/00:00:18) *定刻の9時、立会人の中田八段が開始を告げて対局が始まった。西山は初手から三間飛車宣言。先手番でよく用いている指し方だ。 2 5四歩(53) ( 0:16/00:00:16) *里見は一呼吸置いてから盤上に手を伸ばす。西山の三間飛車には△5四歩〜△4二銀〜△5三銀と構えてから、飛車の振る筋を保留して駒組みを進めることが多い。 3 7六歩(77) ( 0:17/00:00:35) *◆西山 朋佳(にしやま ともか)女流三冠(女王・女流名人・女流王将)◆ *1995年6月27日生まれ、大阪府大阪狭山市出身。伊藤博文七段門下。2021年、女流三段。2022年、女流四段。女流棋士番号は73。 *タイトル戦登場は20回。獲得は白玲1期、女王6期(永世女王)、女流王座2期、女流名人1期、女流王将3期の計13期。 4 4二銀(31) ( 0:09/00:00:25) *◆里見 香奈(さとみ かな)清麗(白玲・女流王座・女流王位・倉敷藤花)◆ *1992年3月2日生まれ、島根県出雲市出身。森けい二九段門下。2004年、女流2級。2020年、女流六段。女流棋士番号は33。 *タイトル戦登場は67回。獲得は白玲1期、清麗3期、女王1期、女流王座6期(クイーン王座)、女流名人12期(クイーン名人)、女流王位9期(クイーン王位)、女流王将8期(クイーン王将)、倉敷藤花13期(クイーン倉敷藤花)の計53期。 5 6八銀(79) ( 0:09/00:00:44) *大成建設杯清麗戦は大成建設が主催する棋戦。予選は6勝通過、2敗失格制と、1敗してもチャンスがある点が大きな特徴だ。予選を突破した4人で行われる本戦は1つ勝てば挑戦者決定戦進出と、予選が大きな比重を占めることも特色といえる。清麗と挑戦者は五番勝負でタイトルを争う。 * *【大成建設株式会社】 *https://www.taisei.co.jp/ 6 5三銀(42) ( 0:09/00:00:34) *本局の模様は日本将棋連盟公式YouTubeチャンネルで中継する。 * *【YouTube】 *https://www.youtube.com/watch?v=NQorkR_37lY 7 4八玉(59) ( 0:20/00:01:04) *対戦成績は里見27勝、西山24勝と拮抗している。タイトル戦で相まみえるのは12回目。最初は4回連続で西山がタイトルを獲得したが、そこから里見の反撃が始まった。今年度は7月12日の第1局が初対戦。里見が勝っている。 8 1四歩(13) ( 0:17/00:00:51) *端の打診。相振り飛車では端攻めは有力な攻め筋になる。突いておいて損になるケースは少ない。 9 1六歩(17) ( 0:21/00:01:25) *対局室から関係者が退室した。現地には日本将棋連盟常務理事として清水市代女流七段が訪れている。 * *【対局開始】 *https://kifulog.shogi.or.jp/seirei/2023/07/post-75cb-1.html 10 2四歩(23) ( 1:26/00:02:17) *角頭の歩を突くのは変わった手順に見えるが、相振り飛車で向かい飛車にしたときに働いてくる。 11 2八銀(39) ( 1:11/00:02:36) *西山の今年度成績は16勝1敗(0.941)。 *対局数はランキング2位、勝数と勝率は1位。昨年度から記録した18連勝は今年度1位で、歴代でも3位に入る大記録だ。 *通算成績は92勝28敗(0.767)。 12 2五歩(24) ( 0:09/00:02:26) *里見の今年度成績は9勝1敗(0.900)。 *勝率はランキング2位。 *通算成績は376勝126敗(0.749)。 13 3六歩(37) ( 0:32/00:03:08) *西山の清麗戦成績は15勝4敗(0.833)。初出場の第4期に予選を6勝1敗で通過、本戦1回戦で勝って挑戦者決定戦に進んだが、里見に敗れて初挑戦はならず。今期は予選を6勝1敗で通過、本戦1回戦で甲斐智美女流五段に勝って再び挑戦者決定戦進出。加藤桃子女流三段(現女流四段)を破って清麗初挑戦を決めた。 14 3四歩(33) ( 0:25/00:02:51) *里見の清麗戦成績は26勝7敗(0.788)。第1期は予選を5勝1敗で通過、本戦1回戦で勝って五番勝負進出。甲斐女流五段に開幕から3連勝で勝ち、初代清麗の座に就いた。第2期は上田初美女流四段を3勝2敗で退けて防衛。第3期は加藤桃女流三段(現女流四段)に2勝3敗で敗れて失冠したが、第4期に挑戦者となってリターンマッチを3連勝で制し、清麗奪還を決めた。清麗獲得は3期。 15 3八金(49) ( 0:20/00:03:28) *福岡市は福岡県西部に位置する県庁所在地。1889年に市政が施行され、1972年に政令指定都市となった。博多湾に面し、古くから大陸との交流拠点として機能してきた歴史を持つ。現在は福岡空港から市街までが近く空路での利便性が高い。7月14日から世界水泳選手権2023が開催中だ。 16 4四銀(53) ( 0:40/00:03:31) *対局場のホテルニューオータニ博多は福岡市中央区の渡辺通り沿いにある。開業は1978年。地下2階、地上14階建ての建物は建築設計と施工を大成建設が行った。茶室、和室や和洋室を備え、過去には竜王戦と名人戦が開催されている。女流タイトル戦の開催は初めて。 17 7五歩(76) ( 0:33/00:04:01) *両対局者は対局前日の24日にホテルに到着し、16時30分ごろから対局室での検分に臨んだ。盤と駒は関西将棋会館から運ばれたものが使われる。照明と空調も念入りにチェック。上座の後ろにある窓に面した障子は、西山から「閉めると閉塞感があるのでできるだけ開けてほしい」と要望があり、日差しが入る場合は適宜対応することに決まった。 18 3二飛(82) ( 5:28/00:08:59) *里見も三間飛車に構えた。西山が▲3六歩と突いたので3筋を争点にしやすくなっている。 19 7四歩(75) ( 7:09/00:11:10) *控室では都成七段と清水女流七段が継ぎ盤を挟み、横から中田八段が検討に加わっている。 20 同 歩(73) ( 1:42/00:10:41) 21 同 飛(78) ( 0:10/00:11:20) *5筋の歩をかすめ取れる形になっている。歩を守る△5三銀は駒を引かされるのが不満。開き直って△6二玉と囲うのも、▲5四飛で歩が取れれば「うれしいですけど」と都成七段。中田八段は「損しないなら△5五歩だけどね」という。 22 5五歩(54) ( 2:29/00:13:10) *中田八段の予想が当たった。ただ、中田八段は「2筋の2手が働いてないからねえ」と首をかしげる。後手は△2四歩〜△2五歩を有効利用するには向かい飛車にしたかった。三間飛車との相性がどうか。 23 3七銀(28) ( 1:37/00:12:57) *矢倉の骨組みを構築。似た形を多く指している2人だが、本局は西山が早めに▲3六歩と突いた形が珍しく、経験のない進行になっている。同じ形をなぞるだけでなく、細かく工夫を施していることがうかがえる。 24 7三歩打 ( 2:48/00:15:58) 25 7六飛(74) ( 0:27/00:13:24) *バランスよく構えている先手陣、離れた位を取って意欲的な後手陣と対照的だ。都成七段は「里見さんは後手番で2筋と5筋の位を取っているのが危うい感じがして、まとめにくい気がします。西山さんは自然な駒組みで、先手を持って安心して指せると感じます」と話す。 26 6二金(61) ( 3:48/00:19:46) *相振り飛車でよく見られる囲い方で、次は△6一玉で手早く玉形をまとめる。検討では都成七段が▲2六歩という手を示していた。以下△同歩は▲2四歩が大駒2枚の死角を狙って厳しい。中田八段は「浮かばないよねえ」と笑う。先手にとって2筋の歩は囲いの一部なので、攻めに使う発想は頭が柔らかい。 27 4六銀(37) (12:19/00:25:43) *「ほおー」と中田八段の声。手厚い矢倉を目指すなら▲4六歩〜▲5八金〜▲4七金左だった。守りの銀が出ていくのは方向性が逆だ。清水女流七段は△3五歩▲同歩△同銀▲同銀△同飛に▲2四銀を示す。飛車の逃げ場所が難しい。以下△3四飛は▲2三銀不成が大駒の両取りだ。「怖いですよね」と清水女流七段がいうと、中田八段は「なるほど、(3筋の)交換もさせないと」とうなずく。都成七段は「居飛車感覚ですね」と話した。 28 6一玉(51) ( 2:36/00:22:22) 29 7七銀(68) ( 1:16/00:26:59) *右銀に続いて左銀も繰り出す。次は▲6六銀で5筋の位に襲いかかる構想が見えてきた。「前へ前へとね」と中田八段。ただ、角の利きが止まる不安もある。継ぎ盤では△3三角▲6六銀△2二飛▲5五銀左△同銀▲同銀△2六歩▲同歩△同飛▲2七歩△2五飛を並べて、「ちょっと味が悪いですね」と先手側に座る都成七段がいう。中田八段は「後手の銀がさばけてるか。5筋の歩はおとりで。柔軟だねえ」と感心している。ここから△7二玉▲6六銀△3五歩▲同歩△同銀▲7四歩△同歩▲3五銀△同飛▲7四飛△7三歩▲2四飛△3二金の変化も難しそうだという。中田八段は「銀交換して▲2三銀も狙っての動きでしょうけど、角がプラプラしていて5筋の歩を取ると銀が動きづらくなるのをどう見るか」と話す。 *10時、午前のおやつの時間になった。注文は里見がフルーツ盛り合わせ(量少なめ)、アイスカフェオレ(ノンカフェイン)、フレッシュオレンジジュース。西山は「東京スーパーピュアプリン」。西山は対局開始時にアイスコーヒーとフレッシュオレンジジュースを頼んでいる。 * *【午前のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/seirei/2023/07/post-02c9-1.html 30 3五歩(34) (27:39/00:50:01) *5筋の位が狙われる前に先制攻撃。直前の▲7七銀で角の利きが止まって重くなったタイミングを狙っている。 31 同 歩(36) ( 1:18/00:28:17) 32 同 銀(44) ( 0:47/00:50:48) 33 3七歩打 ( 2:46/00:31:03) *手堅く歩を打って3筋を守った。控室では▲3七歩と打たずに▲3五同銀△同飛▲2四銀がどうだったかを調べている。以下△3一飛▲3三歩△同桂が意表の対応で、▲2三銀成△4五桂▲2二成銀△5七桂成は角得といえども非常に怖い。手順中▲2四銀で調子がいいように見えたが、意外に難しいようだ。中田八段が「このへんの応酬は難しすぎますね。解説者泣かせだ」とうなり、都成七段が苦笑する。現状は△7二玉の手入れに▲6六銀という進行が一例として予想されている。3筋に歩を打ってしまったので△7二玉に▲3五銀△同飛▲2四銀としても△3一飛のときに▲3三歩と垂らせないが、▲6六銀と力をためておけば同様の筋で△3一飛のときに▲2三銀成△4四角▲5五銀の継続手が生じる。 34 7二玉(61) (22:21/01:13:09) *10時44分、里見が着手。玉を囲って戦いに備える。横からの攻めには遠くなってプラスだが、▲7四歩△同歩▲同飛が王手になるなど上からの攻めに当たりが強くなる面もある。控室では▲9六歩を検討中。動く筋として▲7四歩△同歩▲3五銀△同飛▲7四飛△7三歩▲2四飛があるが、事前に▲9七角の活用を確保しておくことで攻めに幅を持たせる意味だ。 35 6六銀(77) ( 8:56/00:39:59) 36 2六歩(25) ( 6:31/01:19:40) *2筋に手をつけて戦線拡大。中田八段が「飛車の横利きが消えたからか。取ったらどうするの? 合わせるのか」と▲2六同歩に△3六歩を示す。以下▲同歩△4六銀▲同歩△3六飛▲3七金△3四飛▲2三銀△8四飛▲2二銀不成△8七飛成▲7八飛△2八歩は「嫌だよねえ」と中田八段。手順中△3四飛が思い切った手だが、▲2三銀と打たせて角損になっても先手陣を乱して手が続く。よって、素直に応じる▲2六同歩ではなく▲7四歩はどうか。 37 同 歩(27) ( 7:29/00:47:28) *控室では△3六歩▲3五銀△同飛▲7四歩△同歩▲同飛△7三歩▲2四飛△3七歩成▲同金△3二金を検討している。「難しい」と中田八段がうなる。 38 4六銀(35) ( 4:20/01:24:00) *あっさり銀交換。飛車を動かさずに銀を持ち合うと▲2三銀の両取りが残るので、どう対処するかが問題になる。 39 同 歩(47) ( 0:08/00:47:36) 40 5二飛(32) ( 1:13/01:25:13) *「当たらない」と検討陣の声。3筋を起点にさばくのではなく、5筋に飛車を転回して▲2三銀の筋をかわした。どこかで△5六歩が切り札になりうる。ただ、控室は▲7四歩で先手持ちの雰囲気だ。狙い筋は▲7四歩△同歩▲同飛△7三歩▲2四飛の大転回で、以下△3二金は▲4一銀と打たれてしまう。中田八段は「歩を打って取れないんじゃ、王様を上がった手が悪いんじゃない」という。後手は△7二玉が逆効果になっている恐れがあるわけだ。対応策として▲7四歩に△5六歩▲同歩△6五銀という強い手順も出たが、▲7三歩成△同桂▲7九飛で桂頭の負担が残る。 * *※局後の感想※ *大盤解説会での振り返りでは△5二飛に代えて△5六歩▲同歩△2八歩▲同金△6五銀という順も出たが、里見は▲7五飛でうまくいくかどうかわからなかったという。以下△5六銀には▲6八金だ。都成七段は「少し攻めが軽いですかね」とまとめた。 41 7四歩打 (13:30/01:01:06) *11時26分の着手。検討陣が本命視していた一着が出た。歩を合わせて飛車の転回を狙うのは相振り飛車でよく出てくる筋だ。 42 8二銀(71) ( 2:06/01:27:19) *素直に歩を取ると狙いにはまる。銀を上がって玉頭を補強した。 43 7七桂(89) ( 1:37/01:02:43) *桂を跳ねて力をためる。次は▲7三歩成△同銀▲6五桂で駒得確定。「利かされたなあ。西山さんは手応え感じてるんじゃないかな」と中田八段。後手はなかなか玉頭の重圧が解消できない。中田八段が「やばいよね」というと都成七段が「やばいです」と苦笑する。 44 2八歩打 ( 5:05/01:32:24) *適当な受けがないので攻め合った。継ぎ盤に▲7三歩成△同銀▲7四歩△同銀▲同飛△7三歩▲2四飛△2九歩成▲7四歩△同歩▲6五桂△6四銀▲5四銀が並び、後手側に座る都成七段が「怖すぎます」。シンプルに▲7三歩成△同銀▲6五桂も有力で、△7五歩は▲7三桂成△同金▲7五飛△6四銀▲7四歩で先手よし。ここで▲2八同金は相手の注文通りで指しにくいが、△5六歩▲同歩△同飛で「取るのはすごい胆力だけど、これもあるか」と中田八段。第一感は△2八歩を手抜きで戦って指せる順を探したいが、そうなると深い読みが求められる。長考になりそうだ。中田八段は「こういう将棋は見てると楽しいな。やってるほうは大変だけど」という。 *12時、西山が約24分使って昼食休憩に入った。消費時間は▲西山1時間26分、△里見1時間32分。昼食は里見がホテル特製ビーフカレー、西山が和風煮込みハンバーグ。対局は13時に再開される。 * *【対局者の昼食】 *https://kifulog.shogi.or.jp/seirei/2023/07/post-7632.html 45 同 金(38) (40:06/01:42:49) *13時、対局再開。西山は休憩前と合わせて約40分の熟考で歩を払った。控室には松下舞琳女流初段が訪れて中田八段と継ぎ盤を挟んでいる。松下女流初段は中田八段が幹事を務める九州研修会の出身だ。 * *【対局再開まで(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/seirei/2023/07/post-dfc3.html 46 5六歩(55) ( 1:55/01:34:19) *5筋に回った飛車を生かして動く。後手からすると△2八歩の打ち捨てが入って形を乱すことができてポイントを稼いだ。 * *【松下女流初段が来訪】 *https://kifulog.shogi.or.jp/seirei/2023/07/post-d909.html 47 同 歩(57) ( 1:14/01:44:03) 48 同 飛(52) ( 1:22/01:35:41) *単なる歩交換に見えて、次は△5七銀▲同銀△7六飛と飛車を素抜く筋や△6六角と切る強襲筋があって警戒が必要だ。角切りは単調なようでも▲6六同飛は△5七銀の王手飛車、▲6六同歩は△6七銀▲8六飛△5八銀打▲7九金△4七銀成▲同玉△5八飛成と攻め込まれて危ない。 49 6五桂(77) ( 1:09/01:45:12) *桂を跳ねて後手玉に迫りつつ、角の利きを通して△5七銀の筋に備えている。すなわち、△5七銀▲同銀△7六飛は▲2二角成で角が取れる。攻防手だ。しかし△6六角と先に切って▲同角に△5七銀▲同角△7六飛はどうか。「飛車が5筋からいなくなると、後手玉は横から攻められたときに薄いので怖い。だけど、そういう攻めを考える段階になっています」と中田八段。桂が入れば△3五桂が急所の筋になることを見越して、受けに回って駒を蓄える方針もある。控室では△2七歩▲同金△6四銀を検討している。 *13時30分、現地で大盤解説会が始まった。都成七段と長谷川女流二段が出演している。 * *【現地大盤解説会】 *https://kifulog.shogi.or.jp/seirei/2023/07/post-403b-1.html * *※局後の感想※ *西山は「怖かった。相当、攻め手が広いので」と振り返る。ただ、いきなり△5七銀と打ってもうまくいかない。ここで△6四歩は▲7三歩成△同桂▲同桂成△同銀▲7四歩△8四銀▲7三銀△同銀▲同歩成△同金▲7四歩△6三金で「指す手がわからなかった」と西山。ただ、以下▲5五桂△同角▲5七銀打は後手も嫌な形だ。里見は「ちょっと……」と口ごもり、西山は「やりづらいですか」とうなずいていた。 50 7四歩(73) (38:49/02:14:30) *14時、里見の手が動いた。手を戻して玉頭攻めを緩和する。 51 同 飛(76) ( 1:04/01:46:16) 52 7三桂(81) ( 0:20/02:14:50) *反撃含みの受け。角を狙う▲2四飛には△6六角▲同角△6五桂で先手玉に迫る。「面白い手順ですね。普通は歩を打つものと思ってるから意表を突きますよ。玉が薄くなるから勝負手です」と中田八段。先手はどう対応したらよいか。角切りを防ぐ▲5五歩は先手の角も重くなってしまうため微妙なところ。 53 5四歩打 (14:07/02:00:23) *垂れ歩で側面から削りにかかる。「両狙いか」と中田八段の声。飛車の退路を断ってもいるので、△5二歩は▲4七銀で飛車を捕獲できる。複数の狙いがある手は受けにくい。大盤解説会から控室に戻ってきた都成七段は「考えどころかと思いましたが、早かったですね」。中田八段も「決断がいいよね」と意外な様子だ。 54 5二歩打 ( 9:54/02:24:44) *「えっ、歩を受けたの」と中田八段。継ぎ盤では飛車を捕獲する狙いを解説するために示されていた手だった。つまり、相手の狙い筋を正面から浴びることになる。ただ、▲4七銀だと△5七銀と打ち込んでくるだろうと中田八段はいう。以下▲3八玉△6六銀成▲5六銀△6五成銀▲2二角成△5六成銀は先手も怖い。中田八段は「里見さんなら絶対、打ち込んできますよ」と話す。飛車を捕獲する手としては▲5七銀打も考えられるが、△3九銀▲同玉△5七飛成の筋が見えているためこれはこれで怖い。が、都成七段は以下▲同銀△8八角成▲5三銀で後手玉を寄せきれそうだという。 *15時、午後のおやつの時間になった。注文は里見がフルーツ盛り合わせ、アイスカフェオレ(ノンカフェイン)、フレッシュオレンジジュース。西山は「まるごと桃のパフェ」。西山は13時の再開時点でアイスコーヒーとレモンスカッシュを注文している。 * *【午後のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/seirei/2023/07/post-ecc5-1.html 55 4七玉(48) (40:04/02:40:27) *15時6分、西山が着手。力強い。銀を温存して玉で飛車を取りにいった。中田八段が候補に挙げていた手だが、△5五銀とつながれて危ないともいわれていた。以下▲同銀に△同飛なら大駒が不安定で先手有望だが、△5五同角が好手で▲5六玉△8八角成は先手玉が露出して生きた心地がしない。都成七段は△5五銀に▲5三銀△5一金▲5五銀△同角▲5六玉△8八角成▲3一飛という強気の攻め合いを検討している。「なんて人だ」と中田八段が驚く。 56 5五銀打 (31:03/02:55:47) *銀を打って先手玉の頭を押さえる。「次の手がポイントだね」と中田八段。 57 5三歩成(54) ( 3:17/02:43:44) *軽快。飛車の横利きを通せば▲2四飛と転回できる。角に狙いをつけつつ、飛車を移動させて玉頭攻めも厳しさを増す。 58 同 歩(52) ( 3:18/02:59:05) *※局後の感想※ *ここで▲5五銀△同角▲7九角というトリッキーな手順も出たが、△9九角成▲5六玉△2七歩▲3八金△5四香▲4七玉△5五馬で先手自信なし。 59 2四飛(74) ( 2:13/02:45:57) *かねてからの狙い筋だった転回が実現した。銀を打ったことで角筋が重く、角を切って処分する順が消えている。角取りを受けて△3二金や△3一金なら、▲7三桂成△同銀▲7四歩で飛車を支えにして玉頭から攻め込める。ただ、桂を渡すと△3五桂の反動もきつい。 * *※局後の感想※ *じっと受ける△3一金が有力だった。まず、▲2二飛成△同金▲5五銀△5七飛打は先手が嫌な形。また、▲5五銀△同角▲5六玉△8八角成▲5一飛には△5五馬が好手で、▲同玉は△3三角の王手飛車、▲4七玉は△6五馬で桂を外せる。西山は△3一金の変化も「嫌な手の一つだった」と読んでいたが、手順中△5五馬は「見えてなかった」と苦笑していた。 60 4六飛(56) ( 9:14/03:08:19) *いったん王手を入れる。5筋に利く駒の数が減って▲2二飛成だけでなく▲5五銀も生じるため忙しくなる。一利一害。 61 3八玉(47) ( 0:19/02:46:16) 62 2七歩打 ( 0:43/03:09:02) *スピードアップの手筋。桂が手に入る形なので△3五桂を厳しくする事前工作だ。しかし▲2七同金に△6五桂は▲4七歩、△6六銀は▲2二飛成でどう攻めを続けるか具体的に難しい。後手は手が止まるようだと収拾が難しい形なので苦しくなる。 63 1八金(28) ( 5:31/02:51:47) *端にかわす。くさびを残すので指しにくい手だ。だが、「里見さんの手が難しいかな」と中田八段。依然として後手は▲2二飛成と▲5五銀が残って受けがない状況だ。先手玉に迫るうまい手段があるかが焦点になる。中田八段と松下女流初段が継ぎ盤で調べているが、思わしい順が出てこない。解説会から戻ってきた都成七段は「金寄りなら激戦と思ったんですが、後手がよくなる順も発見できませんでした」という。 64 1三角(22) (26:29/03:35:31) *里見の残り時間は25分ほど。角を逃げたが、飛車の進路を自ら開くので尋常な手ではない。 65 2一飛成(24) ( 0:17/02:52:04) 66 3一金(41) ( 0:11/03:35:42) *継ぎ盤に▲5五銀△2一金▲4六銀△同角▲5三桂成△同金▲7四桂が並ぶ。駒を取り合って寄せを目指すのが明快なようだ。後手玉は▲6二飛以下の詰めろである。中田八段が「銀を使って受けたら差が開く一方だ」といい、都成七段は「これは先手勝ちですね」とうなずく。 *16時40分、西山は両手をこめかみのあたりに当てて盤面を見つめている。控室の継ぎ盤は動いていない。 67 5五銀(66) (13:17/03:05:21) *16時41分、西山は小さく首をかしげながら銀を取った。控室で明快といわれていた手だ。 68 2一金(31) ( 0:05/03:35:47) 69 4六銀(55) ( 0:06/03:05:27) 70 同 角(13) ( 0:06/03:35:53) *脅威になっている飛車を取り除いて先手玉に余裕ができた。寄せに出るチャンス。 71 5三桂成(65) ( 5:21/03:10:48) *「金は斜めに誘え」の格言で決め手だ。形を乱す効果が絶大である。 72 同 金(62) ( 2:43/03:38:36) 73 7四桂打 ( 0:37/03:11:25) *後手玉は▲6二飛以下の詰めろ。上に逃げ道を開いて△6五桂と跳ねても▲6二銀が腹銀の手筋でほどけない。 74 7一銀打 (10:31/03:49:07) *17時1分、里見が着手。銀を受けに投入して不屈の根性だ。が、▲5一飛で追及の手は緩まない。 75 4二飛打 ( 7:18/03:18:43) 76 5二歩打 ( 0:38/03:49:45) 77 5四歩打 ( 1:32/03:20:15) *先手玉は余裕があるので着実に迫ればいい。次に▲5三歩成と取った形はと金ができて手厚い寄せになる。ここで△5七角成は次に△4八飛▲2七玉△3五桂と追えるので怖いが、▲5三歩成のときに詰めろにはなっていないようだ。 *17時21分、里見は持ち時間を使いきって秒読みに入った。 78 5七角成(46) (10:15/04:00:00) 79 5三歩成(54) ( 0:42/03:20:57) *西山の着手は早かった。先手玉は△4八飛▲2七玉△3五桂で王手が続くので怖い形だが、遠くから角がよく利いている。 80 4八飛打 ( 0:00/04:00:00) 81 2七玉(38) ( 0:05/03:21:02) 82 3五桂打 ( 0:00/04:00:00) 83 3六玉(27) ( 0:05/03:21:07) 84 4六飛成(48) ( 0:00/04:00:00) 85 2五玉(36) ( 0:10/03:21:17) *後手陣にぽつんと残った金が働く予感もある。ここから△2四歩▲同玉△4四竜と追いたいが、これには▲同角がある。 86 4七馬(57) ( 0:00/04:00:00) *馬で追い立てる。しかし▲3四玉でも▲2四玉でも詰みはないようだ。「合駒もありますね。ちょっと考えるかな」と中田八段。 87 3六銀打 ( 2:50/03:24:07) 88 7四馬(47) ( 0:00/04:00:00) *桂を外して延命を図る。 89 5二飛成(42) ( 0:08/03:24:15) 90 8一玉(72) ( 0:00/04:00:00) 91 7二歩打 ( 0:08/03:24:23) *着実だ。後手玉は狭く、△7二同銀は▲同竜以下の詰み。この歩は取れない。 92 9四歩(93) ( 0:00/04:00:00) 93 9三銀打 ( 0:38/03:25:01) *西山はいったん伸ばした手を引っ込めてから、再び駒台に手を伸ばした。退路封鎖の手筋で△9三同香は▲7一歩成△9二玉▲8一銀△9一玉▲9二金の詰みがあるので受けがない。秒を読まれて里見が頭を下げた。終局時刻は17時34分。消費時間は▲西山3時間25分、△里見4時間。難解な戦いを西山が抜け出し、1勝1敗のタイにした。第3局は8月8日(火)、大阪府大阪市「センタラグランドホテル大阪」で行われる。 * *【終局直後】 *https://kifulog.shogi.or.jp/seirei/2023/07/post-bb10-1.html * *【両者、大盤解説会場へ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/seirei/2023/07/post-2f8c.html * *【感想戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/seirei/2023/07/post-10da-1.html * *※局後の感想※ *両者ともあまり経験のない形から難解な中盤戦に。勝負どころは▲2四飛(59手目)と回った局面で、じっと△3一金と受けておけば難解だった。本譜は直線的な攻め合いになり、先手の勝ち筋に入っている。 94 投了 ( 0:00/04:00:00) まで93手で先手の勝ち