# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.59 棋譜ファイル --- 対局ID:12413 記録ID:60ebe668e81b400004717d47 開始日時:2021/07/21 10:00 終了日時:2021/07/21 22:37 棋戦:第34期竜王戦決勝トーナメント 戦型:四間飛車 持ち時間:5時間 消費時間:127▲298△299 場所:関西将棋会館 備考:昼休前25手目17分・夕休前51手目34分\n 図:投了 振り駒:2,0,久 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:00〜12:40 夕食休憩:18:00〜18:40 昼休前消費時間:25手17分 夕休前消費時間:51手34分 手合割:平手   先手:八代弥七段 後手:久保利明九段 先手省略名:八代 後手省略名:久保 手数----指手---------消費時間-- *第34期竜王戦決勝トーナメントより、久保利明九段(1組2位)−八代弥七段(2組2位)の一戦を中継する。対局は7月21日(水)、関西将棋会館「御上段の間」で10時に開始予定。持ち時間は各5時間。先後は振り駒で決定する。 * *【久保利明九段ー八代弥七段戦は7月21日に関西将棋会館で対局】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/21-0913.html * *本局の感想戦取材はありません。 *https://twitter.com/shogi_mobile/status/1247034286126985218 *宮田敦史七段による解説を記載した指し手は、12手目、23手目、26手目、31手目、32手目、44手目、48手目、54手目、70手目、79手目、91手目、98手目、102手目、118手目、119手目、最終手です。 * *(棋譜・コメント入力=武蔵) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。#は局後の解説が追記された指し手。【】内はブログ及びリンク記事] 1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00) *振り駒の結果、と金が3枚出て八代の先手に決まった。 *10時、定刻どおりに対局が始まる。八代は▲2六歩と飛車先の歩を突いた。 * *【対局開始】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-75cb-4.html 2 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *飛車先の歩を突いた先手に対して、久保は角道を開けた。 3 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00) *◆八代 弥(やしろ わたる)七段◆ *1994年3月3日生まれ、静岡県賀茂郡出身。青野照市九段門下。2012年、四段。2019年、七段。棋士番号は287。 *棋戦優勝は1回。 4 3三角(22) ( 0:00/00:00:00) *◆久保 利明(くぼ としあき)九段◆ *1975年8月27日生まれ、兵庫県加古川市出身。淡路仁茂九段門下。1993年、四段。2010年、九段。棋士番号は207。 *タイトル戦登場は15回。獲得は棋王3期、王将4期の計7期。棋戦優勝は6回。 5 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *八代の今年度成績は10勝3敗(0.769)。 *今年度、対局数ランキング11位タイ、勝数ランキング10位タイ、勝率ランキング12位タイ、連勝ランキング5位タイ。 *通算成績は258勝141敗(0.647)。 6 3二銀(31) ( 1:00/00:01:00) *久保の今年度成績は3勝8敗(0.273)。 *通算成績は792勝513敗(0.607)。 *通算800勝(将棋栄誉敢闘賞)まで、あと8勝と迫っている。 7 4八銀(39) ( 0:00/00:00:00) *竜王戦は読売新聞社が主催し、野村ホールディングス株式会社が特別協賛する棋戦。協賛は東急グループ、株式会社UACJ、旭化成ホームズ株式会社、一般財団法人あんしん財団。6組に分かれたトーナメント戦を行い、各組を勝ち上がった上位11名による決勝トーナメントで挑戦者を決定。タイトル保持者と挑戦者で七番勝負を戦い、勝者がタイトルを得る。現在のタイトル保持者は豊島将之竜王(叡王)。 * *【読売新聞社】 *https://www.yomiuri.co.jp/igoshougi/ryuoh/ *【野村ホールディングス】 *https://www.nomura.com/jp/ *【東急グループ】 *https://tokyugroup.jp/ *【株式会社UACJ】 *https://www.uacj.co.jp/ *【旭化成ホームズ株式会社】 *https://www.asahi-kasei.co.jp/hebel/index.html/ *【あんしん財団】 *https://www.anshin-zaidan.or.jp/ 8 9四歩(93) ( 1:00/00:02:00) *今月15日(木)、日本将棋連盟は第34期竜王戦七番勝負の日程と開催地を発表した。竜王戦七番勝負第1局ではおなじみとなった「セルリアンタワー能楽堂」を皮切りに、全国で戦われる。詳細は以下のとおり。 * *【第1局】10月8日、9日(金、土)東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」 *【第2局】10月22日、23日(金、土)京都府京都市「仁和寺」 *【第3局】10月30日、31日(土、日)福島県いわき市「新つた」 *【第4局】11月12日、13日(金、土)山口県宇部市「ANAクラウンプラザホテル宇部」 *【第5局】11月26日、27日(金、土)岡山県倉敷市「円通寺」 *【第6局】12月4日、5日(土、日)鹿児島県指宿市「指宿白水館」 *【第7局】12月17日、18日(金、土)山梨県甲府市「常磐ホテル」 9 9六歩(97) ( 1:00/00:01:00) *八代はランキング戦2組在籍。2期目となる今期で、森内俊之九段、屋敷伸之九段、渡辺明名人に勝った。決勝では藤井聡太王位・棋聖に敗れたものの、自身初となる決勝トーナメント進出と来期1組昇級を決めた。 10 4四歩(43) ( 3:00/00:05:00) *久保はランキング戦1組在籍で、今期で7期連続12期目となる。今期は三浦弘行九段、木村一基九段、山崎隆之八段に勝ち、決勝で永瀬拓矢王座に敗れた。 11 6八玉(59) ( 2:00/00:03:00) *八代は決勝トーナメント初戦で、三枚堂達也七段との同学年対決を制して本局に臨む。 * *【第34期竜王戦決勝トーナメント▲八代−△三枚堂戦】 *http://live.shogi.or.jp/ryuou/kifu/34/ryuou202107010101.html 12 4二飛(82) ( 4:00/00:09:00) *久保は6期連続13回目の決勝トーナメント出場。第23期と第24期の2期連続で、挑戦者決定三番勝負に進んだ実績を持つ。 * *※局後の解説※ *宮田敦史七段>久保九段は角道を止めた四間飛車に。 13 7八玉(68) ( 2:00/00:05:00) *本局の勝者は次戦で、挑戦者決定三番勝負進出を懸けて、藤井聡王位・棋聖と対戦する。もう片方の山では梶浦宏孝七段が勝ち上がっており、次戦で永瀬拓矢王座と戦う。 * *【第34組竜王戦決勝トーナメント】 *http://live.shogi.or.jp/ryuou/tournament.html *【竜王戦七番勝負初登場はどの棋士になるか】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-c2af.html 14 7二銀(71) ( 4:00/00:13:00) *本日、関西将棋会館で行われる対局は3局。 * *【御上段の間】 *久保九段−八代七段(本局) * *【御下段の間】 *阿部隆九段−高野智史五段(竜王戦) * *【芙蓉の間】 *山崎隆之八段−増田裕司六段(王位戦、モバイル中継) 15 5六歩(57) ( 2:00/00:07:00) *八代は居飛車党。攻守にバランスの取れた棋風で、丁寧で正確な読みを持ち味とする。 *現在、公式戦9連勝と波に乗る。その勢いのまま、強敵を倒せるか。 16 6四歩(63) ( 2:00/00:15:00) *久保は振り飛車党。中飛車や三間飛車を得意とする。駒を効率よく使いこなす技術の高さから、「さばきのアーティスト」の異名を持つ。 17 5八金(49) ( 4:00/00:11:00) *対戦成績は久保の1勝。2019年に行われた棋聖戦決勝トーナメントが初手合いだった。その将棋は、久保が角道を開けたまま四間飛車に構えたが、本局は10手目に△4四歩と角道を閉ざし、ノーマルな四間飛車となっている。 18 4三銀(32) ( 2:00/00:17:00) *本日の大阪は快晴。気持ちのいいほどの青空が広がる。最高気温は36度で猛暑日の予報。熱中症には注意が必要だ。 * *【戦型は後手四間飛車】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-041c.html 19 3六歩(37) (10:00/00:21:00) *現局面の前例は5局で、ここから後手はすべて△6二玉と指していた。▲5七銀〜▲3五歩と急戦を仕掛けられたとき、玉が戦場に近いまま、戦いに突入するのを避ける意味がある。 *最も新しい将棋で先手を持っていたのは八代。2018年1月に行われた第11回朝日杯本戦トーナメント、対羽生善治竜王(肩書は当時)戦だった。 * *【対局開始前】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-cda0-1.html *【対局開始直後】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-c4cd.html 20 6二玉(51) (10:00/00:27:00) *11時ちょうど、△6二玉までの消費時間は、▲八代21分、△久保27分。 21 5七銀(48) ( 9:00/00:30:00) *本局の観戦記は池田将之さんが執筆する。 * *【先手の作戦は? 】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-148b.html 22 7一玉(62) ( 5:00/00:32:00) *先手の急戦策に備え、玉の移動を進める。 23 4六銀(57) ( 8:00/00:38:00) *代えて▲7七角なら互いに玉形を整備する持久戦に進んでいた。2手連続で右銀が前に進み、▲3五歩からの仕掛けが視野に入る。 * *※局後の解説※ *宮田敦史七段>昔よく見られた、右銀急戦と呼ばれる形に。玉が堅く、駒組みも簡素で覚えやすい。 24 8二玉(71) (19:00/00:51:00) *玉を囲いに収め、きたるべき戦いに備える。前例は6局で、ここから先手はすべて▲3五歩と戦端を開いていた。だが、戦績は▲1勝、△5勝と振り飛車の勝率がいい。久保は2000年の第26期棋王戦挑戦者決定トーナメントの谷川浩司九段戦で、振り飛車側を持って経験のある形だ。 *12時、この局面で八代が17分考えて昼食休憩に入った。ここまでの消費時間は▲八代55分、△久保51分。昼食はどちらもイレブンのサービスランチで、エビフライ&カニクリームコロッケの盛り合わせ。対局再開は12時40分。 * *【経験のある形に】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-00ba.html *【昼食休憩】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-bc24-4.html *【昼食休憩時の対局室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-e82f-1.html *【イレブンのサービスランチ「エビフライ&カニクリームコロッケの盛り合わせ」】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-ea91.html 25 3五歩(36) (20:00/00:58:00) *昼食休憩明けの一着。前例に倣い、▲3五歩と仕掛けた。 * *【昼食休憩明けの一手は▲3五歩】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-3248.html 26 3二金(41) ( 5:00/00:56:00) *金を上がって左辺を手厚く守った。過去には△3二飛と寄った将棋もあったが、多数は△3二金が占めている。 * *※局後の解説※ *宮田敦史七段>居飛車にとって難敵の△3二金。ここまでガッチリ守られると、一気に潰すのは困難。 27 5五歩(56) (13:00/01:11:00) *▲3四歩△同銀▲3五歩は△4三銀で、それ以上の手出しができない。 *5筋の歩を伸ばして位を取った。△4五歩で角がにらみ合うのを事前に防いでいる。 28 4五歩(44) ( 5:00/01:01:00) *経験がある形からなのか、着手が早い。△4五歩と突いて反発した。 29 同 銀(46) ( 4:00/01:15:00) 30 3五歩(34) ( 0:00/01:01:00) *3筋の歩を取って互いに1歩を手持ちにした。現局面の前例は2局で、次の手が分岐している。▲谷川−△久保戦は▲3八飛、今年の1月に行われた▲塚田泰明九段−△窪田義行七段戦では▲2六飛と浮いている(棋王戦予選、後手勝ち)。 31 6八金(58) (50:00/02:05:00) *14時頃、▲6八金寄までの消費時間は、▲八代2時間5分、△久保1時間1分。 *50分の長考だった。前例を離れる金寄りで、コンパクトに玉を固める。飛車の可動域が広がって、▲5八飛から中央を攻めていく狙いもありそうだ。気をつけたいのは4七の地点に利きがなくなった点。後手の飛車は手薄な4筋からの侵入を狙っている。 * *【前例を離れる】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-f3d2.html * *※局後の解説※ *宮田敦史七段>「箱入り娘」と呼ばれる、かなり堅い囲い。さらに、どこかで▲5八飛と転回する含みもある。 32 5四歩(53) (17:00/01:18:00) *後手は5筋の歩を突き出して、強気にさばきを目指す。▲5四同歩に(1)△8八角成と交換して、▲同玉は△5五角が王手飛車取りで後手よし。しかし、▲8八同銀のときに継続手が難しいか。後手は▲5三歩成を受けつつ、攻めなければならない。角を換えずに、4五の銀取りを狙いながら▲5三歩成を受ける(2)△5二銀はどうか。以下、▲3三角成は△同桂で、左桂が手順に活用できる。 * *【強気の反発】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-e2a3.html * *※局後の解説※ *宮田敦史七段>驚きの一手だが、▲5四同歩には△5二銀と引いてさばけると見ている。 33 2四歩(25) (25:00/02:30:00) *25分考えて、八代は持ち時間の半分となる2時間30分を消費した。 *本格的な戦いが起こる前にひと工夫。2筋の歩を突き捨てて、角交換後に飛車が走れるよう、味をつけておく。 34 同 歩(23) ( 5:00/01:23:00) *角で応じると▲5四歩で、▲1一角成と▲5三歩成が残って困る。 35 5四歩(55) ( 0:00/02:30:00) *2筋の歩を突き捨ててから、5筋の歩を取り込んだ。31手目の▲6八金寄の効果で、▲5八飛と加勢できるのも攻めを続けるうえで頼もしい。 36 5二銀(43) (17:00/01:40:00) *▲5三歩成を受ける銀引き。飛車の縦の利きを通して4五の銀にも当たっている。▲4六歩の支えには△8八角成▲同銀に△3三桂の感触がいい。以下、4五の銀が動くと△4六飛とさばける。 37 4六歩(47) ( 8:00/02:38:00) *代えて▲5六銀は△8八角成▲同銀△5五歩のとき、対応が悩ましかった。以下、▲5五同銀は△4七飛成で侵入を許す。 38 8八角成(33) ( 9:00/01:49:00) 39 同 銀(79) ( 0:00/02:38:00) *このあと△3三桂に、▲5八飛△5七歩▲同飛△4五桂▲同歩と進むと、▲5三歩成と▲4四桂が残る。 40 3三桂(21) ( 0:00/01:49:00) *久保の左桂が働き出す。 * *【攻め合いに】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-9a2f-1.html 41 3四銀(45) ( 0:00/02:38:00) *読みどおりだったか、時間を使わずに▲3四銀と出た。△4六飛に▲2四飛とさばき合うのだろう。以下、△4九飛成▲2一飛成の進行は先手だけ金取りが残る。後手は飛車を成っても、次に取れる駒がない。 42 4六飛(42) (22:00/02:11:00) *22分、慎重に読みを入れて飛車を走る。今後の方針を決める時間でもあったか。 43 2四飛(28) ( 4:00/02:42:00) *先手も飛車を活用。このとき、△2三歩の受けに▲同銀成と取れるのが、2手前の▲3四銀と出た効果だ。 *16時20分頃、久保も持ち時間の半分を消費した。 44 2三歩打 (33:00/02:44:00) *16時30分、久保が着手。33分の考慮だった。すんなりと飛車を成らせない。歩を打って食い止めた。 * *※局後の解説※ *宮田敦史七段>2手後の△1五角とセットで、何としても飛車を成らせないという手順。 45 同 銀成(34) ( 3:00/02:45:00) 46 1五角打 ( 0:00/02:44:00) *あえて▲2三同銀成と取らせ、飛車先を重くしてから端角で切り返す。▲3二成銀△2四角は後手が駒得だ。 47 2八飛(24) ( 1:00/02:46:00) *この一手の逃げ場所。▲2七飛では△2六歩と飛車先を止められて成銀のひもが外れる。 48 4三金(32) ( 3:00/02:47:00) *△2三金は▲同飛成でお手伝いだった。成銀の相手をせずに、当たりをかわす。 *後手は先手の2筋攻めを受け流しつつ、飛車の成り込みや△4五桂などで反撃したい。 * *※局後の解説※ *宮田敦史七段>代えて、一発△2七歩とたたく手もあったか。 49 1六歩(17) (23:00/03:09:00) *目障りな端角に移動を促した。△2六角はいかにも不安定で、▲4七歩や▲5五角から飛車を追って、先手を取りやすくなる。 *本局の新聞解説を担当する北浜健介八段は、現局面の見解を以下のように話す。 *「形勢は難解だと思いますが、振り飛車を持って怖いです。△4八角成か△2七歩かですが、△4八角成だと形勢が一気に傾きそうです。振り飛車がどう持ちこたえるかという印象です」(北浜八段) * *【関西将棋会館売店】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-a439.html *【北浜健介八段が来館】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-6839.html 50 2七歩打 (22:00/03:09:00) *22分考えての着手。両者の残り時間が1時間51分で並んだ。 *軽手で飛車の位置をずらしにかかった。代えて単に△4八角成は、▲3三成銀△同金▲5五角△4三飛▲3三角成△同飛に▲4八飛で駒損になる。△2七歩▲同飛を利かしておけば、最後の馬取りがない。先まで見据えた抜かりのない一手。振り飛車党は振り飛車側を、居飛車党は居飛車側を持ちたくなるような、判断の難しい局面だ。 *18時、この局面で八代が34分考えて夕食休憩に入った。ここまでの消費時間は▲八代3時間43分、△久保3時間9分。夕食はどちらもやまがそばからの注文で、久保が親子丼と冷たいそばのセット、八代は肉なん定食(うどん)。対局再開は18時40分。 * *【夕食休憩】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-d57e-4.html 51 1八飛(28) (36:00/03:45:00) *18時40分に対局が再開した。放たれた歩には応じずに、飛車を寄って二段目の利きを維持する。すぐの攻めには使えなくなるものの、△4八角成に▲3三成銀△同金▲5五角の筋を残す。 * *【夕食休憩明けの一手は▲1八飛】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-c1e0.html 52 4八角成(15) (20:00/03:29:00) *代えて△2六角の我慢は、▲3三成銀△同金に▲3八桂の飛車角両取りがあった。 53 3三成銀(23) ( 1:00/03:46:00) *待ってましたといわんばかりに桂を取った。 54 5四金(43) ( 1:00/03:30:00) *△3三同金は▲5五角のとき、対応に頭を悩ませなければいけない。成銀は取らずに歩を払う。△2七歩▲1八飛の交換で先手の飛車は働きが鈍った。瞬間の桂損は受け入れ、駒の働きの差を主張する。 *八代は考慮中に盆に置かれた紙コップのインスタントコーヒーに右手を伸ばし、そこで20秒ほど盤に視線が釘づけになった。コップを握りしめたまま、動きを止めている。 * *※局後の解説※ *宮田敦史七段>先手の桂得のうえに手番だが、駒の働きがあまりよくないので大変か。 55 4三歩打 ( 9:00/03:55:00) *側面からじわじわと後手陣を侵食したい。歩を垂らしてと金の種をまく。 56 4一歩打 ( 2:00/03:32:00) *底歩でと金づくりを許さない。 57 9五歩(96) ( 1:00/03:56:00) *▲4三歩△4一歩の交換は、後手に歩を使わせる意味もあったか。 *端に手をかけた。△9五同歩にすぐ▲9三歩から端を攻めるのは△同馬でうまくいかない。▲4八飛△同飛成で馬との交換に踏みきってから、▲9三歩を垂らす展開だろうか。後手の馬が利いている端を攻めているだけに、反動も大きい。度胸のいる一着だ。 * *【命運を託す】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-457a.html 58 4七馬(48) (14:00/03:46:00) *質に入っていた馬を、桂に当てて引いた。△2九馬と桂を取って、△2八歩成や△5六桂を楽しみにする。 59 9四歩(95) ( 0:00/03:56:00) *馬の利きもなくなって、端から攻め込みやすくなった。歩を取り込んで端を詰める。 60 9二歩打 ( 0:00/03:46:00) *検討中の北浜八段は、先手の指し手を見て「そうか」と声を出す回数が増えた。 *検討では現局面から、▲7七銀△2九馬▲5八飛△6三銀左▲7五桂△7四馬を調べている。 *「後手は歩切れが痛く、△2九馬▲5八飛のときに、金取りをケアしないといけないもつらそうです」(北浜八段) *19時40分頃、八代の残り時間が1時間を切った。 61 3四角打 (20:00/04:16:00) *後手を歩切れに追い込んだのは大きな戦果。再び右辺から美濃囲いの攻略を目指した。角を打って、将来の▲4二歩成△同歩▲5二角成の強襲をちらつかせる。 *「△7六飛▲7七銀△4六飛で難解に見えてきました。歩の補充が大きく見えます」と北浜八段は話す。 *20時10分頃、久保の残り時間も1時間を切った。 62 6三銀(52) (16:00/04:02:00) *▲4二歩成からの強襲を事前に避ける銀上がり。金にひもをつけておけば、△2九馬に▲5八飛が金取りにならない。 63 7七銀(88) ( 5:00/04:21:00) *すぐに後手玉に迫る手段はなかったか。先手も玉形に手をかける。壁銀の解消を図り、玉の移動範囲を広げた。戦いに入っても自玉に目を向け、落ち着いた対応を見せる。 64 7四歩(73) (14:00/04:16:00) *渋い指し回し。玉の移動範囲を広げながら、△7三桂と跳ねられるようにした。後手は△2九馬と駒損を回復したいが、▲5八飛で活躍の場を与えるのが気にかかる。△6九馬と切って先手玉を薄くする手段や、歩を手にしてからの△5六歩などがあるぶん、馬は4七にいたほうがメリットが多いかもしれない。 *久保は扇子を手にとった。左側に腰を突き出し、顔だけ盤面に向けて考えを巡らせる。 * *【手を入れ合う】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-589b.html 65 1五歩(16) (22:00/04:43:00) *じりじりとした展開が続く。戦いの場とは離れた1筋の歩を伸ばし、▲1六飛のぶつけを作った。 *「▲1六飛△3六歩▲2六飛を見せて、△2九馬を催促しています。現局面から△2九馬には▲1六飛も▲5八飛もありますが、流れは▲1六飛でしょうか。△2九馬▲1六飛△4九飛成▲2六飛が一例です。ただ、これは振り飛車も元気が出そうです」(北浜八段) 66 2九馬(47) ( 5:00/04:21:00) 67 1六飛(18) ( 0:00/04:43:00) *局面が動き出した。飛車のぶつけで交換を迫る。 68 4九飛成(46) ( 0:00/04:21:00) *先に竜を作ったのは後手だった。いよいよ終盤戦だ。 *「△7四歩を突けているのが心強いです。△4九飛成以下、▲2六飛△1九馬▲4二歩成△同歩▲2一飛成△5二歩の進行は、次の△5五馬が絶品です」と、北浜八段は振り飛車持ちの見解を示した。 69 2六飛(16) ( 0:00/04:43:00) *2筋に飛車を寄って、敵陣への侵入を目指す。 * *【トーンが上がる】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-2e95.html 70 4四金(54) ( 1:00/04:22:00) *すんなりとは飛車の侵入を許さない。金を寄って角に当てた。角が助かるには、▲2三角成か▲1六角だが、▲2三角成は飛車の利きが止まり、▲1六角では働きが弱くなる。 * *※局後の解説※ *宮田敦史七段>▲2三角成と馬を作られ、後に▲4一馬〜▲2二飛成が6三の銀取りになるので、かえってよくなかったかもしれない。単に△4七馬がまさったか。 71 2三角成(34) ( 0:00/04:43:00) 72 4七馬(29) ( 1:00/04:23:00) *6九の金に照準を合わせる馬引き。 73 5九歩打 ( 1:00/04:44:00) *▲4一馬を急ぐと、△5六桂が厳しかった。底歩で竜の横利きを止め、受けやすい形を作っておく。 74 1九竜(49) ( 8:00/04:31:00) *香を補充して、駒割りは後手の香得になった。 75 2四飛(26) ( 0:00/04:44:00) *△2五香と打たれる前に、ふわりと金取りに飛車を浮いた。 76 5五金(44) ( 3:00/04:34:00) 77 4一馬(23) ( 0:00/04:44:00) *馬を一段目に侵入して、飛車の視界がひらけた。▲2二飛成〜▲6三馬の寄せが見えてくる。 78 5六香打 ( 2:00/04:36:00) *側面からの寄せ合いに突入した。香を打って△5九香成〜△6九成香を狙う。 79 5八桂打 ( 0:00/04:44:00) *△5九香成を喫すると、受けが利かない。全力で5筋の突破を阻止した。△5八同香成は▲同金寄(上)で馬に当てて、手番を握れる。 *「代えて▲2二飛成は△5九香成▲6三馬に△6九成香で負けと見たのかもしれません」(北浜八段) * *※局後の解説※ *宮田敦史七段>この桂が非常に堅く、先手玉はなかなか寄らない。 80 6五桂打 ( 2:00/04:38:00) *玉頭の銀に狙いを定めた桂打ち。 81 2二飛成(24) ( 0:00/04:44:00) *二段目に飛車を成って▲6三馬を見せた。後手は持ち駒がなく、竜の横利きを止めるのが難しい。 82 3六馬(47) ( 1:00/04:39:00) *馬の力で6三の銀にひもをつけた。盤上の駒を目一杯活用して、攻守に働かせる。現時点で働きが弱いのは、1筋の香のみ。先手に関しては遊び駒がない。 83 4二歩成(43) ( 4:00/04:48:00) *と金を作って、美濃囲いを崩すだけの戦力は十分に整った。あとはスピード勝負。ひと足先に抜け出すのはどちらか。 84 5八香成(56) ( 4:00/04:43:00) *▲5二とがくる前に寄せきりたい。まずは桂を取って防波堤を崩しにかかった。 85 同 金(68) ( 0:00/04:48:00) *▲5八同歩は△7七桂成▲同桂に△5六桂が痛い。 86 7七桂成(65) ( 0:00/04:43:00) 87 同 桂(89) ( 1:00/04:49:00) 88 6六桂打 ( 2:00/04:45:00) *代えて△6五桂▲8九桂△7七桂成▲同桂△6五桂……と進むと、千日手の可能性が高かった。 *久保は形勢に自信を持っているのだろう。ひとマス違う6六の地点に桂を打って、王手をかけた。 * *【決着をつけに】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-c229.html 89 同 歩(67) ( 0:00/04:49:00) 90 同 金(55) ( 0:00/04:45:00) *桂を犠牲にして金が進んだ。次に△6七銀と打ち、▲同金は△6九馬▲同玉△6七金で先手玉に必死がかかる。 *21時45分頃、八代の残り時間が10分を切った。 91 5一と(42) ( 2:00/04:51:00) *と金を一段目に潜って竜の横利きを通した。△6七銀には▲8八玉と逃げて耐えられる。5筋の壁と、9筋の広さが生きる流れに持ち込みたい。 * *※局後の解説※ *宮田敦史七段>この瞬間、後手玉は非常に詰みにくい形。この一瞬を生かして△5八馬▲同金△5九竜▲同金△6七金打として寄せにいく手はあったか。しかし、すっぽ抜けたらひどいのでやりづらいか。 92 7一金(61) ( 3:00/04:48:00) *いったん金を逃げて、当たりを避けた。しかし、88手目△6六桂で勝負にいったのにもかかわらず、△7一金で辛抱せざるを得ないのは変調の感もある。 93 9五桂打 ( 3:00/04:54:00) *先手に流れが向いたか。後手の玉頭に迫る桂を打った。次の▲8六香が詰めろになる。 94 5二歩打 ( 3:00/04:51:00) *後手は先手玉に迫る猶予がほしい。最後の1歩で、大駒の利きを同時に止めた。 95 8六香打 ( 1:00/04:55:00) *8筋に戦力を足し、虎視眈々と攻め込むチャンスを待つ。 96 7三桂(81) ( 3:00/04:54:00) *技をひねり出した。次に△7七金▲同玉△8五桂打が入れば、玉頭の緩和だけでなく、先手玉を寄せる手がかりにもなる。 * *【再戦が見えた】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-71d1.html 97 5二馬(41) ( 2:00/04:57:00) *意を決して馬で歩を払い、5筋をこじ開けにかかった。 98 4五馬(36) ( 0:00/04:54:00) *馬を引いて王手をかけ、先手の応手を尋ねた。 * *【幻の逆転劇】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-e504.html * *※局後の解説※ *宮田敦史七段>△7七金▲同玉△8五桂打として香筋を止めるべきだと思う。本譜は結果的に銀を一枚損したような勘定。 99 7九玉(78) ( 0:00/04:57:00) *合駒を使わずに玉を引いた。王手がかかりにくい形にして、1手の猶予を得る逃げ方。桂のひもが外れて△7七金と取られるが、その瞬間に後手玉に迫るのだろう。 *22時10分頃、久保が一分将棋に入った。 100 5二銀(63) ( 5:00/04:59:00) *時間いっぱいまで考え、自陣に手を戻した。 *代えて△7七金で△8八銀までの詰めろをかけるのは、▲8三桂成△同銀▲6三馬で、(1)△7二銀打は先手玉の詰めろがほどけて▲4五馬と馬を取られる。(2)△7二桂は▲8三桂成△同玉▲7五桂以下の即詰みがあった。 101 同 竜(22) ( 0:00/04:57:00) *銀を取って、▲8三香不成までの詰めろ。 102 8八銀打 ( 0:00/04:59:00) *銀のただ捨てが飛び出した。先手玉に王手を続けながら、自玉の詰めろを解除できるか。 * *※局後の解説※ *宮田敦史七段>この局面ではやむを得ないが、あまりにもつらい。 103 同 玉(79) ( 0:00/04:57:00) 104 7七金(66) ( 0:00/04:59:00) 105 同 玉(88) ( 0:00/04:57:00) 106 8五桂打 ( 0:00/04:59:00) *香の利きを止めながらの王手。 107 同 香(86) ( 0:00/04:57:00) 108 同 桂(73) ( 0:00/04:59:00) 109 8六玉(77) ( 0:00/04:57:00) *▲8六玉で先手玉に詰みはない。先手優勢がはっきりしたようだ。 110 6二香打 ( 0:00/04:59:00) 111 4三竜(52) ( 0:00/04:57:00) *馬取りと▲8三桂成△同銀▲7三銀△8一玉▲8二金△同金▲同銀成△同玉▲7三金△7一玉▲8二金打までの詰めろを見た竜引き。 112 6三馬(45) ( 0:00/04:59:00) *馬取りと詰めろを同時に受ける。 113 8五玉(86) ( 0:00/04:57:00) 114 6六角打 ( 0:00/04:59:00) *妖しく駒を配置。逆転の可能性を信じて指し続ける。 115 7五桂打 ( 0:00/04:57:00) *いよいよクライマックス。決め手の歩頭桂になるか。△7五同歩▲7四桂△8一玉に▲6三竜と馬を取って、後手玉に詰めろがかかる。 116 同 歩(74) ( 0:00/04:59:00) 117 6三竜(43) ( 0:00/04:57:00) *先に馬を取った。△6三同香は▲7四桂からの詰みがあり、△6三同銀も▲8三桂成△同玉▲8四銀で、どちらも即詰みを逃れられない。 118 7三桂打 ( 0:00/04:59:00) *策は残されている。桂を打って王手をかけながら竜の横利きを止めた。 * *※局後の解説※ *宮田敦史七段>局面は負け形だが、久保九段らしい粘り。 119 同 竜(63) ( 1:00/04:58:00) *※局後の解説※ *宮田敦史七段>しかし、当然ながらこの手が好手。以下は即詰み。 120 同 銀(72) ( 0:00/04:59:00) 121 8三桂成(95) ( 0:00/04:58:00) *桂を成り捨てて王手。玉が近いだけに、逆王手に気をつけながら寄せきりたい。 122 同 玉(82) ( 0:00/04:59:00) 123 9五桂打 ( 0:00/04:58:00) *桂を成り捨ててから、再度打ち直した。 124 8二玉(83) ( 0:00/04:59:00) 125 8三銀打 ( 0:00/04:58:00) *上から押さえつけての収束。 126 8一玉(82) ( 0:00/04:59:00) 127 7二銀打 ( 0:00/04:58:00) *銀の連打。△7二同金▲同銀成△同玉▲8三金△6三玉▲7二角△5三玉▲5四金までの詰み。 *この局面で久保が投了した。終局時刻は22時37分。消費時間は、▲八代4時間58分、△久保4時間59分。勝った八代は公式戦10連勝を達成。次戦で挑戦者決定三番勝負進出を懸けて、藤井聡王位・棋聖と対戦する。 * *【八代七段が準決勝進出を決める】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-850c.html *【感想戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2021/07/post-10da-4.html * *※局後の解説※ *宮田敦史七段>長くて渋い中盤の攻防が続き、途中は久保九段が有利〜勝ちの局面もあったと思われるが、最終的には八代七段が抜け出した。△4五馬(98手目)のところで△7七金なら後手が勝っていたのではないか。 128 投了 ( 0:00/04:59:00) まで127手で先手の勝ち