# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.14 棋譜ファイル --- 対局ID:8421 記録ID:5bff55bcb3e1a80004b94818 開始日時:2018/12/04 09:00 終了日時:2018/12/05 18:42 表題:竜王戦 棋戦:第31期竜王戦七番勝負 第5局 戦型:矢倉 持ち時間:各8時間 消費時間:139▲473△446 場所:石川・和倉温泉 加賀屋 備考:昼休前33手目21分\n2日目昼休前77手目9分\n封じ手時刻:18:00<52手目>\n 振り駒:なし 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:30〜13:30 昼休前消費時間:33手21分 手合割:平手   先手:羽生善治竜王 後手:広瀬章人八段 手数----指手---------消費時間-- *羽生善治竜王に広瀬章人八段が挑戦中の第31期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社、特別協賛:野村ホールディングス、協賛:東急グループ、明治のヨーグルトドリンク[R−1])は、羽生から見て○○●●という星取りで第5局を迎えた。本局の勝者が、今期の竜王位まであと1勝という位置に歩みを進めることになる。 *対局は12月4日(火)、5日(水)の二日にかけて、石川県七尾市「和倉温泉 加賀屋」で行われる。先手番は羽生。開始は9時で、持ち時間は各8時間。おやつは10時と15時に出される。昼食休憩は12時30分から13時30分。1日目の封じ手は18時以降に行われる。立会人は田中寅彦九段と千葉幸生七段。千葉七段は新聞解説を兼務する。記録係を務めるのは滝口勇作初段(石田和雄九段門下)。 *現地大盤解説会(要予約・両日開催)の担当は、解説が三枚堂達也六段、聞き手が頼本奈菜女流1級。また、5日には東京・将棋会館、関西将棋会館、新橋西口SL広場(東京)でも大盤解説会が開催される。各解説会の詳細は、下記リンク先をご覧いただきたい。 * *対局日の朝を迎えた。朝の七尾の天気は曇り。このあとは時折、雨が降る予報だが、昼間の気温は一日を通して20度近くなるということで、過ごしやすい日になりそうだ。 *8時35分、対局室では滝口初段が駒を磨いている。報道陣はスタンバイ完了。対局者の入室の様子を撮影しようと、部屋の入り口付近に集まっている一団もいる。 *8時40分、田中寅九段を先頭に、朝の開始に立ち会う関係者の面々が入室した。続いて、事前に申し込みをした30名ほどのファンの皆さんも対局室に。 *8時43分、広瀬がまず姿を見せる。関係者にあいさつをする際には笑顔も見せた。 *8時50分、羽生がゆったりとした足取りで入室した。羽生の姿を認めた広瀬は、頭を下げてあいさつをする。 *8時52分、盤を挟んだ両対局者が一礼。羽生が駒箱に手を伸ばし、対局準備が始まる。数分後にはすべての駒が盤上にそろった。駒を並べ終えると、羽生も広瀬もまずおしぼりが入ったビニール袋を破った。 * *【YOMIURI ONLINE 竜王戦ページ】 *http://www.yomiuri.co.jp/culture/igoshougi/ryuoh/ *【野村證券】 *http://www.nomura.co.jp/ *【東急グループ】 *https://tokyugroup.jp/ *【明治】 *https://www.meiji.co.jp/ * *【現地大盤解説会】 *https://www.kagaya.co.jp/information/detail.php?id=604 *【東京・将棋会館 大盤解説会】 *https://www.shogi.or.jp/event/2018/11/315.html *解説:中原誠十六世名人、小倉久史七段 *【関西将棋会館 大盤解説会】 *https://www.kansai-shogi.info/%E9%81%93%E5%A0%B4/%E5%A4%A7%E7%9B%A4%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E4%BC%9A/ *解説:桐山清澄九段 聞き手:藤井奈々女流2級 *【新橋西口SL広場 大盤解説会】 *https://www.shogi.or.jp/event/2018/11/315sl.html *解説:富岡英作八段、藤森哲也五段 聞き手:藤森奈津子女流四段 * *(棋譜・コメント入力=睡蓮) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。♯は局後の感想が追記された指し手] 1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *◆羽生 善治(はぶ よしはる)竜王◆ *1970年9月27日生まれ、埼玉県所沢市出身。(故)二上達也九段門下。1985年、四段。1994年、九段。棋士番号は175。 *タイトル戦登場は136回。獲得は竜王7期(永世竜王)、名人9期(十九世名人)、王位18期(永世王位)、王座24期(名誉王座)、棋王13期(永世棋王)、王将12期(永世王将)、棋聖16期(永世棋聖)の計99期。棋戦優勝は44回。 * *定刻になり、田中寅九段の合図で対局が開始された。羽生は少しだけ間を置いてから盤上に手を伸ばし、▲7六歩と着手。 * *【1日目の朝】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-4cce.html *【対局開始】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-75cb.html 2 8四歩(83) ( 1:00/00:01:00) *◆広瀬 章人(ひろせ あきひと)八段◆ *1987年1月18日生まれ、北海道札幌市出身。勝浦修九段門下。2005年、四段。2014年、八段。棋士番号は255。 *タイトル戦登場は4回。獲得は王位1期。棋戦優勝は1回。 * *広瀬は1分を使って△8四歩と飛車先の歩を突く。報道陣やファンの皆さん、関係者はここで退室した。 3 6八銀(79) ( 6:00/00:06:00) *関係者が控室に戻ってしばらくしたところで、再び羽生の手が動く。「角換わりじゃなさそうですね」と三枚堂六段。3手目▲6八銀は矢倉模様だ。羽生も広瀬もここ数ヶ月は公式戦で角換わりを柱にして戦っており、本シリーズでは開幕局から第4局まで、すべて角換わりの将棋になっていた。 * *【第31期竜王戦七番勝負第1局 ▲羽生善治竜王−△広瀬章人八段戦(於:東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」)】 *http://live.shogi.or.jp/ryuou/kifu/31/ryuou201810110101.html *後手の広瀬が6筋の位を取った形から、羽生が▲6六歩△同歩▲同銀と動いて戦端が開かれた。中終盤は非常に難解なねじり合いが続いたが、最後は羽生が競り勝ち、竜王防衛とタイトル獲得100期に向けて好スタートを切った。 * *【第31期竜王戦七番勝負第2局 ▲広瀬章人八段−△羽生善治竜王戦(於:福岡県福津市「宮地嶽神社」)】 *http://live.shogi.or.jp/ryuou/kifu/31/ryuou201810230101.html *先手の広瀬が9筋の位を取ったのに対して羽生が△7五歩▲同歩△6五桂と先に動き、後手の攻めに先手の受けという展開に。細くも見えた駒損の攻めを羽生が巧みにつなぎ、そのまま押し切った。 * *【第31期竜王戦七番勝負第3局 ▲羽生善治竜王−△広瀬章人八段戦(於:茨城県鹿嶋市「鹿島神宮」)】 *http://live.shogi.or.jp/ryuou/kifu/31/ryuou201811010101.html *先手の羽生が4七金型で4筋の位を取る珍しい指し方を採用。中盤の途中からは第2局と同じく羽生が攻め続ける展開で、正確に指せば羽生が勝っていたようだが、ぎりぎりのしのぎを続けた広瀬が終盤に訪れたチャンスをしっかり捉えて1勝目を挙げた。 * *【第31期竜王戦七番勝負第4局 ▲広瀬章人八段−△羽生善治竜王戦(於:京都府福知山市「福知山城」】 *http://live.shogi.or.jp/ryuou/kifu/31/ryuou201811240101.html *互いに一段飛車プラス4八金(6二金)型に構える先後同型から先手の広瀬が▲4五歩と先攻し、先手の桂得対後手の歩得という構図の将棋に。後手の羽生がペースをつかんで一時は勝利目前とも思われたが決めきれず、広瀬の逆転勝利となった。 4 3四歩(33) ( 2:00/00:03:00) *両者の通算の対戦成績は羽生17勝、広瀬10勝。タイトル戦の番勝負では今回のほかに第52期(2011年)と第56期(2015年)の王位戦七番勝負で戦っており、それらはいずれも羽生が制している。 *過去の戦型の内訳は、角換わり相腰掛け銀9局、居飛車(羽生)と振り飛車(広瀬)の対抗形8局、横歩取り6局、相振り飛車2局、一手損角換わり1局、相居飛車の力戦1局。 5 7七銀(68) ( 1:00/00:07:00) *七尾市は石川県の北部、能登半島の中央に位置し、地域は能登国の国府所在地として栄えてきた歴史がある。海の玄関口である七尾港は天然の良港で、古くから日本海の海上交通の拠点としても大きな役割を果たしてきた。「七尾」という名称の由来は、日本で最大規模の山岳城「七尾城」が築かれていた城山に七つの尾根があったことからといわれている。七尾市出身の女流棋士には、甲斐智美女流五段がいる。 * *【七尾市】 *http://www.city.nanao.lg.jp/ 6 6二銀(71) ( 2:00/00:05:00) *対局場である加賀屋は、七尾湾に面した全国有数の温泉街である和倉温泉を代表する旅館の一つ。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」において、1981年から2016年まで36年連続で日本一に選ばれた大記録を持っている(2017年は3位だったが、2018年は日本一の座を奪還)。 *加賀屋で竜王戦の番勝負が指されるのは、今回が初めて。ただし、姉妹館の「和倉温泉 ホテルあえの風」では、1992年に第10期七番勝負(当時の谷川浩司竜王に真田圭一六段が挑んだシリーズ)の第4局が指されている。また、昭和の時代には加賀屋で名人戦や王座戦の番勝負が指されたことがあり、広瀬の師匠である勝浦修九段も当地で対局した。 * *【和倉温泉 加賀屋】 *https://www.kagaya.co.jp/ *【加賀屋姉妹館 あえの風】 *https://www.aenokaze.jp/ *【加賀屋グループ】 *https://www.kagaya.co.jp/group/ *【和倉温泉〜わくらづくし〜 和倉温泉観光協会・和倉温泉旅館協同組合】 *http://www.wakura.or.jp/ 7 2六歩(27) ( 4:00/00:11:00) *4手目のコメント欄で示した通り、羽生−広瀬戦での相矢倉はまだ指されたことがない。今年8月に指された第68期王将戦二次予選ではこの▲2六歩までまったく同じ進行だったが(先後も同じ)、以下は△3二金▲2五歩△7四歩▲7八金△8五歩▲2四歩△同歩▲同飛△7三銀で力戦調の将棋になった。本局も矢倉戦にならない可能性は十分ありそうだ。 8 3二金(41) ( 1:00/00:06:00) *【和倉温泉 加賀屋(竜王戦中継ブログ)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-c891.html 9 2五歩(26) ( 4:00/00:15:00) *【羽生の公式戦成績】 *通算成績は1416勝583敗(0.708) *昨年度成績は32勝22敗(0.593) *今年度成績は18勝18敗(0.500) * *今年度対局数ランキング5位タイ。 10 7四歩(73) ( 2:00/00:08:00) *【広瀬の公式戦成績】 *通算成績は382勝205敗(0.651) *昨年度成績は16勝19敗(0.457) *今年度成績は31勝9敗(0.775) * *今年度対局数ランキング2位、勝数ランキング1位、勝率ランキング4位、連勝ランキング2位タイ(11連勝)。 * *まだ先述の王将戦での対戦に沿った進行。現局面はデータベース全体では33局の前例があり、すべて一昨年以降に指された将棋だ。次の一手は(1)▲2四歩、(2)▲5六歩、(3)▲7八金の順で多い。 11 7八金(69) ( 2:00/00:17:00) *本局の読売新聞観戦記は、池田将之さんが担当する。 12 8五歩(84) ( 2:00/00:10:00) *本局は、下記の各動画サービスでもライブ配信される。 * *【ニコニコ生放送】 *1日目 *http://live.nicovideo.jp/gate/lv316468735 *解説:神谷広志八段 聞き手:山田久美女流四段 * *2日目 *http://live.nicovideo.jp/gate/lv316468757 *解説:深浦康市九段 聞き手:安食総子女流初段 * *【AbemaTV 将棋チャンネル】 *https://abema.tv/now-on-air/shogi * *1日目 *解説:西尾明六段、伊藤真吾五段 聞き手:鈴木環那女流二段、安食総子女流初段 * *2日目 *解説:屋敷伸之九段、及川拓馬六段 聞き手:竹部さゆり女流三段、香川愛生女流三段 * *【将棋プレミアム】 *1日目(対局映像のみ) *http://www.igoshogi.net/shogipremium/live/live_info.html?live_id=198d58581b2e2ce30672fe33042b025a * *2日目 *http://www.igoshogi.net/shogipremium/live/live_info.html?live_id=f77ed96f8c94a84df7ab24b891332a5b *解説:塚田泰明九段 聞き手:内田晶さん 13 5六歩(57) (15:00/00:32:00) *しばらく腰を落として読みを入れていた羽生。軽く数度うなずく仕草を見せてから5筋の歩を突く。▲5六歩は15分の考慮が記録された。王将戦の▲羽生−△広瀬戦で指されていたのは、代えて▲2四歩。これで別の将棋になりそうだ。 14 4一玉(51) ( 3:00/00:13:00) *控室では、千葉七段と三枚堂六段が継ぎ盤を挟んでいる。 15 7九角(88) ( 3:00/00:35:00) *角を引き、▲2四歩△同歩▲同角と角で2筋の歩を切る順を作った。 16 6四歩(63) ( 3:00/00:16:00) *代えて△7三銀の前例もあったが、6筋の歩を突いた。途中の手順は違ったが、これで昨日指された第60期王位戦予選、▲高橋道雄九段−△佐藤天彦名人戦(携帯中継あり)に合流。そちらは以下▲2四歩△同歩▲同角△2三歩▲4六角△6三銀▲3八銀△4四歩と進んだ。千葉七段と三枚堂六段は、広瀬は昨日の移動中に携帯中継を見て「これだ!」と思ったのだろう、と冗談ぽく話している。 17 2四歩(25) ( 7:00/00:42:00) *時刻は10時を回り、両対局者に午前のおやつが出された。注文は羽生が「雪月花、ホットコーヒー」、広瀬が「雪月花、抹茶」。「雪月花」は加賀屋オリジナルの和菓子で、さつまいもを使った餡の入ったまんじゅうだ。 *▲2四歩までの消費時間は▲羽生42分、△広瀬16分。 * *【1日目午前のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-62f1.html 18 同 歩(23) ( 0:00/00:16:00) *「読売竜王戦(@yomiuri_ryuo)」のツイッター・アカウントでは、竜王戦や将棋界の情報を発信している。本局の現地情報についても随時更新がなされるので、あわせてお楽しみいただきたい。 * *【Twitter:読売竜王戦(@yomiuri_ryuo)】 *https://twitter.com/yomiuri_ryuo 19 同 角(79) ( 0:00/00:42:00) 20 2三歩打 ( 1:00/00:17:00) 21 6八角(24) ( 0:00/00:42:00) *角を6八に引く。これで未知の展開に入った。代えて▲4六角は、後手の陣形が盛り上がってきたときに角への当たりが強い意味があるので気が進まなかったのかもしれない。千葉七段は、▲6八角は▲4六角と比べて持久戦志向にも見えるが、このあと先手が素早く右銀を繰り出して棒銀にいくような激しい指し方も考えられるので、まだ羽生の意図するところは分からないと話している。 22 6三銀(62) (13:00/00:30:00) *13分の考慮。ここからの構想を練った時間だろうか。 23 4八銀(39) ( 2:00/00:44:00) *右銀を4八に使った。これで先手の棒銀はなくなったといえそうだ。 *「このあとの先手は▲5八金〜▲6六歩などとするとかなり守勢になりそうなので、そうは進めないと思います。右銀を5七〜4六と早めに出していくことは考えられますが、後手もここは△7三桂と跳ねて▲5七銀に△6五桂を見せるのでしょうね」(千葉七段) 24 7三桂(81) ( 4:00/00:34:00) *10時30分になり、現地では三枚堂六段と頼本女流1級による大盤解説会が始まった。田中寅九段もあいさつに顔を出している。 25 6九玉(59) ( 4:00/00:48:00) *先手も玉を動く。2手前の▲4八銀から、先月22日に指された第77期順位戦B級1組、▲行方尚史八段−△谷川浩司九段戦に合流している。そちらは現局面以下△5四歩▲3六歩△5五歩▲同歩△同角▲3七銀△5二飛で矢倉中飛車風の将棋になった。 26 4二銀(31) ( 6:00/00:40:00) *ひとまずは左銀を使い、3筋の壁形を解消した。 27 3六歩(37) ( 7:00/00:55:00) *3筋の歩を突き、▲3七銀〜▲4六銀〜▲3五歩と攻めていく筋を見せた。千葉七段は、その筋に対して後手がどのような対応を用意するかがここでのポイントと話している。 *「現局面から△5四歩▲3七銀△5二飛は、先手の▲4六銀が間に合ってしまうので後手としては選ばない順でしょうね。それは後手の△8五歩が不急の一手になっています。後手の△8五歩が△5四歩に代わっている形で中飛車にするのは何局か前例があって、後手も戦える将棋だと思いますが。羽生竜王がこの形に進めたのは、後手の8五歩型に着目した意味もあるかもしれませんね」(千葉七段) 28 5四歩(53) (18:00/00:58:00) *11時9分の着手。18分の考慮だった。△5四歩までの消費時間は▲羽生55分、△広瀬58分。 *熟考の末に△5四歩を突いた。以下▲3七銀には△5五歩▲同歩△同角と歩交換をするつもりなのだろうか。ただ、△5五同角の局面で▲3五歩△同歩▲4六銀というように先手に調子よく攻めの銀を使われる順がありそうなのは気になるところ。 29 3七銀(48) ( 4:00/00:59:00) *力の籠った手つきで▲3七銀。「先手がまあまあな感じの序盤に見えますね」と千葉七段。 *再び広瀬の手が止まった。扇子を口元に当てながら盤上に視線を送る。羽生は眼鏡を外して目をつむり、頭に手を当てながら考えている。 *12時を過ぎ、現局面での広瀬の考慮時間は45分を超えた。控室では、田中寅九段が現地大盤解説会の景品用に色紙を書いている。 30 5五歩(54) (50:00/01:48:00) *12時5分の着手。50分の考慮となった。△5五歩までの消費時間は▲羽生59分、△広瀬1時間48分。 *▲4六銀と上がられる前に、5筋の歩を切りにいく。 31 同 歩(56) ( 2:00/01:01:00) 32 同 角(22) ( 0:00/01:48:00) *12時20分、田中寅九段が揮毫を終えた。完成した5枚の色紙に書かれたのは、すべて詰将棋。そのうちの1問を紹介しよう。 *◆配置 *攻め方:2四桂、3五桂 *玉方:1三銀、1四飛、2一玉、2二歩、3三歩 *持ち駒:角、歩 *「これね、7手詰めだと勘違いされて『何の妙手があるんですか?』っていわれちゃうんだ。本当は7手詰めじゃなくて13手詰めなんだよね」(田中寅九段) *解答は本日の封じ手後に示す。 * *休憩入りの12時30分まであと2分足らずとなったところで、手番の羽生が休憩に入れるように記録係に告げて席を立つ。すぐに広瀬も続いた。休憩前の消費は21分。ここまでの消費時間は▲羽生1時間22分、△広瀬1時間48分。昼食の注文は羽生が「能登牛カレーライス」、広瀬が「能登海鮮丼」だった。対局は13時30分に再開される。 *13時28分、広瀬が対局室に戻った。着座し、巾着袋から扇子を取り出して前に置く。 *13時30分、記録係が「時間になりました」と告げる。羽生はまだ戻っていない。 *13時31分、羽生が戻った。同時に控室に田中寅九段が帰ってくる。 *「エレベーター、羽生さんと一緒になっちゃった。困るんだよね(笑)」(田中寅九段) *「私は広瀬さんと一緒になりました(笑)」(千葉七段) * *【1日目昼食休憩】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-70fe.html 33 2四歩打 (25:00/01:26:00) *▲2四歩は13時34分の着手。休憩を挟んで25分の考慮が記録された。 *「これは継ぎ歩コースか(現局面から△2四同歩に▲2五歩)」(千葉七段) *「ええ? そうか。へー。なるほどー。……うーん、いちばんシンプルだねえ」(田中寅九段) *「何となくちょっとやりづらいような感じかと思ったんですけどねえ」(千葉七段) * *【1日目対局再開】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-4672.html 34 同 歩(23) ( 3:00/01:51:00) 35 2五歩打 ( 0:00/01:26:00) *この▲2五歩に(1)△同歩は以下▲同飛△2二角▲2四歩△3三桂▲2八飛△2五歩▲4六銀が予想される進行で、角が使いづらくなる後手としてはやや選びにくそうな順といえる。現局面では(2)△4四角や(3)△3三角と引いて、△6五桂に▲6六銀とされた手が角当たりになるのを避けておくのが自然、と千葉七段。そこから▲2四歩△2二歩▲4六銀となったところで後手が攻めていくことになりそうだという。 *「先手が2筋を詰める代わりに、後手は1手早く攻められるというやり取りです」(千葉七段) 36 6五歩(64) (15:00/02:06:00) *15分の考慮で△6五歩。この手は控室では予想されていなかった。▲2四歩△2二歩▲4六銀に△6四角を用意しつつ、7七銀の動きを不自由にしたということだろうか。 *「広瀬さんの棋風的にも、△6五桂ポンよりも△6五歩と位を取ってというほうが『らしい』気がしますね。中盤はじっくり構えて、終盤は急に切れる、と」(千葉七段) 37 2四歩(25) (13:00/01:39:00) *14時7分の着手。13分の考慮だった。▲2四歩までの消費時間は▲羽生1時間39分、△広瀬2時間6分。 * *【現地大盤解説会】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-403b.html 38 2二歩打 ( 0:00/02:06:00) *「ここから(1)▲4六銀△6四角となると後手の角のほうがいい角になりそうなので、(2)▲4六角とぶつけることになりそうですね。以下△4六同角▲同銀に△6二金〜△8一飛とお得意の形に。結局、角換わりかあー」(千葉七段) 39 7九玉(69) (29:00/02:08:00) *29分の考慮。角のぶつけは見送って、玉の安定度を上げた。 *14時44分、対局室が少し暑いという広瀬からの指摘により、関係者が対局室に入って空調が調整された。外の気温は20度以上になっているようで、羽生も広瀬も扇子をあおいで風を送っていた。 * *※局後の感想※ *代えて▲4六角なら、以下は△同角▲同銀△6二金▲7九玉△8一飛▲4五角が進行の一例。広瀬は▲4五角の局面の形勢がどうなっているのか判断がつかなかったという。羽生としては▲4五角と打つのは攻めとして単調な印象なので選びにくかったようだ。 40 4四歩(43) (14:00/02:20:00) *14分の考慮で△4四歩。△4三銀と立って玉形を発展させる手を見たものだろうか。△4四歩に代えて△6四角と引いて、先手からの▲4六角を事前にかわしておくのもありそうだった。△4四歩と突かれると▲4六角△同角▲同銀の次の▲2三歩成△同金▲5五角という筋を先受けされた格好なので、先手はもう▲4六角とはぶつけにくいだろう、と田中寅九段。 *15時になり、両対局者に午後のおやつが出された。注文は羽生が「ミュゼ、オレンジジュース」、広瀬が「ミュゼ、加賀紅茶」。「ミュゼ」は七尾市出身で世界的に活躍するパティシエ・辻口博啓氏によるスイーツブランド、「ル ミュゼ ドゥ アッシュ」のショコラムースだ。羽生も広瀬も、早速おやつに手をつける。 * *【1日目午後のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-59ae.html *【ル ミュゼ ドゥ アッシュ】 *https://le-musee-de-h.jp/ 41 3五歩(36) (32:00/02:40:00) *15時24分の着手。32分の考慮だった。▲3五歩までの消費時間は▲羽生2時間40分、△広瀬2時間24分。 *「▲3五歩。すごい手が出たねえ。なるほど、△4四歩を突いたから逆に、ぎりぎりいったんだあ」(田中寅九段) *後手が4四歩の形になったことで、以下△3五同歩▲同角と進んだときに先手からは▲4六銀△6四角▲4四角という狙いができている。 42 同 歩(34) ( 4:00/02:24:00) *4分の少考で取る。 43 同 角(68) ( 0:00/02:40:00) *現局面で△3七角成▲同桂△3六歩は暴発で、▲1八角の返し技が決まる。以下△3七歩成は▲6三角成△5二金▲7三馬だ。 44 4三銀(42) ( 4:00/02:28:00) *4四歩を支える銀立ち。時刻は15時30分を過ぎたところ。いつの間にか外は激しい雨になってもやがかかり、控室の窓から眼下に一望できるはずの海もほとんど見えなくなっている。 45 4六角(35) ( 9:00/02:49:00) *9分の考慮。このタイミングで角をぶつけた。 *「先手としては、3筋の歩を交換できたのは自分のポイント(得点)ということなんでしょうね。▲7九玉と囲う手も指せていますし。▲4六角に△同角▲同銀で、後手陣がまとめづらいだろうという主張なのかなと」(千葉七段) 46 同 角(55) ( 3:00/02:31:00) 47 同 銀(37) ( 0:00/02:49:00) *現地大盤解説会では、田中寅九段と三枚堂六段のペアが解説中。両棋士は現局面で△5二金と上がる手を示し、少し前までは先手乗りに思えたが、ここまでくると先手の指し方が難しいかもしれないと話している。先手の4六銀をうまく働かせる順がなかなか見えないようだ。 *「しかし、羽生さんのことだからまた何か考えてるかな? 何かあるんでしょうね」(田中寅九段) 48 8一飛(82) (26:00/02:57:00) *16時14分の着手。26分の考慮だった。△8一飛までの消費時間は▲羽生3時間2分、△広瀬2時間57分。 *この△8一飛は、6二金型を志向したものと思われる。飛車を引かずにすぐに△6二金は、▲7一角△7二飛▲6二角成△同玉▲5三金△6一飛▲2三歩成△同歩▲2二歩△3三桂▲2一歩成という順で一直線に後手がまずくなった。 * *※局後の感想※ *「△8一飛はちょっと悠長でしたか。でも、何を指すか難しいんですよね」(広瀬) *「△5二金……」(羽生) *「ああー、△5二金ですか。▲5三歩とたたかれるところなので。ただ、この辺で(6三銀に)ヒモをつけておかなければいけなかったですか」(広瀬) *「こっちもまた何をするか……」(羽生) *「うーん、(次手の)▲2七角が見えていれば、△5二金をもっと考えなくてはいけなかったかもしれないですけど」(広瀬) 49 2七角打 (19:00/03:08:00) *自らの飛車の頭に角打ち。19分の考慮だった。控室の千葉七段が「おおー」と声を上げる。6三銀・8一飛を狙うラインに角を打つなら1八に打ちたくなりそうなところだったが、こちらのほうが後に▲1六角とラインを変える手があるのでよりよいという判断か。「2筋を詰めている形を生かしていますね」と千葉七段。先手は2五歩ではなく2四歩の形なので、▲1六角としたときに角の利きがすぐに後手陣まで届く。 *時刻は17時25分。ここでの広瀬の考慮時間は50分を超えた。局面は明らかに中盤の勝負どころに入っており、封じ手時刻までは進んでもあと数手かもしれない。控室では、大盤解説会から戻った田中寅九段が千葉七段と検討している。 *「どう受けるの?」(田中寅九段) *「△5四歩以外はあまりまともな受けがないような気も……」(千葉七段) *△5四歩から、▲5五歩△6二金▲5四歩△5一飛▲5八飛△5四銀右▲7五歩という順が継ぎ盤に並ぶ。「ここでこうやってどうなるのかなと思ったんですが」と△4五歩を示す千葉七段。「取ったら(▲4五同銀)タタキ(△5七歩)か。たたいて血が出るかどうかだな」と田中寅九段が応じる。▲4五同銀△5七歩に(1)▲同飛は△3五角の間接王手飛車取りが痛いので、(2)▲3八飛ということになりそう。以下△4五銀▲同角の局面は先手の調子がよいか。 *17時27分、封じ手用封筒の準備が始まった。このまま封じ手になりそう、と立会人の両棋士。 *17時36分、事前募集に応募した封じ手見学のファンの皆さんが対局室に入った。 * *※局後の感想※ *この▲2七角は、広瀬の読みにはなかったようだ。 *「次に△6二金と上がられるとしっかりしてしまうので、これしかないかなと」(羽生) * *【七尾市】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-1503.html *【意表の角】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-b25d.html 50 5四歩打 (70:00/04:07:00) *17時44分、広瀬の手が盤上に伸びる。指し手は自然な△5四歩。1時間10分の長考となった。 51 5五歩打 ( 3:00/03:11:00) *わずか3分の考慮で、5筋に歩を合わせた。羽生のほうは▲2七角と打った時点で、ある程度読みがまとまっていた可能性もある。 *ここで広瀬が、封じ手用紙に現局面を記入するよう、記録係に声を掛けた。 *17時54分、田中寅九段と千葉七段が控室を出て対局室に向かう。 *18時、封じ手の時刻になったことを田中寅九段が告げると、広瀬はすぐに封じる意思を示した。現局面での考慮時間は12分。1日目の消費時間は▲羽生3時間11分。△広瀬4時間19分。 *18時5分、別室での封じ手記入を終えた広瀬が戻る。封じ手の入った封筒を受け取った羽生が署名をしたあと、再び封筒は広瀬の元に。最後に広瀬が田中寅九段に封筒を渡し、1日目が終了した。 *田中寅九段、千葉七段、三枚堂六段に封じ手を予想してもらった。本命手は三棋士とも(1)△6二金。5三の地点を厚くしつつ△5一飛と回る手を作って、先手からの攻めに対応できる形にする意図だ。千葉七段は、△5一飛と回る前に8筋の突き捨てを入れておいたほうがいいかもしれないということで、(2)△8六歩も候補手として示した。 *「形勢はまだ難しく、ここからは先手の2七角がどれだけ働くかが形勢を左右する鍵になりそうです」(三枚堂六段) * *対局2日目の朝を迎えた。本日の七尾の天気は曇り。気温は昨日と比べて10度ほど下がり、冬の寒さが戻ってくるようだ。 *8時40分、立会人の田中寅九段と千葉七段は、すでに対局室に入っている。 *8時42分、まず広瀬が姿を見せた。 *8時47分、羽生が入室。両者が改めて盤を挟んで向かい合う。しばしの間があったあと、互いに呼吸をあわせて礼を交わし、再開の準備が始まった。駒を初形に並べ、滝口初段の棋譜読み上げに沿って、1日目の指し手を再現していく。 *9時1分、田中寅九段が封じ手を開封する。 * *【封じ手】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-4646.html *【指し手再現】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-d8a9.html * *◆32手目コメント欄の田中寅九段の詰将棋の解答 *▲4三角△3二角▲同角不成△1一玉▲2三桂不成△同歩▲1二歩△2二玉▲2一角成△同玉▲4三角△2二玉▲3二角成までの13手詰め。 *・2手目の△3二角で△3二桂は、▲同角成△1一玉▲2三桂打△同歩▲同桂不成まで早詰み。3二に香などの前に利く駒を合駒するのも、▲3二同角成△1一玉に取った駒を1二に打って詰みとなる。 *・3手目の▲3二同角不成で▲3二同角「成」は、△1一玉で打ち歩詰めの形を解消できなくなる。 52 8四飛(81) (12:00/04:19:00) *「封じ手は△8四飛車です」(田中寅九段)。 *控室の検討ではまったく候補に上がっていなかった飛車浮き。真剣な面持ちで控室のモニター映像を見守っていた三枚堂六段が、「マジかー」と声を上げて笑い出した。 *「全員外れ。大外れです(笑)」(三枚堂六段) *対局室で、田中寅九段が再開を告げる。再開時刻は9時2分となった。 *立会人の両棋士と関係者が対局室から控室に戻ってきた。「開けた瞬間、声が出なくて困ったよ」と田中寅九段。 *田中寅九段、千葉七段、三枚堂六段が口頭で意見を交わす。現局面で▲5四歩と取り込まれると後手の対応が難しいのではないかというのが三棋士の第一印象のようだ。 *しばらくして、▲5四歩から△同銀右▲5五歩△4五銀▲同銀△同歩▲同角にじっと△6二金という手を三枚堂六段が示す。以下▲6三銀には△5七角▲8八玉△3五角成▲6二銀不成△4五馬▲7三銀不成△8三飛が手順の一例で、それはバランスが取れているのかもしれないという。 * *※局後の感想※ *「そっか、△8四飛ですか。いやー」(羽生) *「いや、△8四飛を封じ手にしたんですけど、一晩考えてみたら思ったより危険な変化が多くて。崩壊していてもおかしくないなと思ったんですけど」(広瀬) *「いやー、でもそうか。角のラインを外さないとしょうがないんですね」(羽生) *羽生は△8四飛に代えて△6二金〜△5一飛を予想し、それなら後手は玉飛接近の悪形なので怖いはずと見ていたようだ。 * *【封じ手開封】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-91fc.html 53 5四歩(55) ( 8:00/03:19:00) *8分の考慮。果たして羽生は△8四飛を想定していたかどうか。 54 同 銀(63) ( 4:00/04:23:00) *現局面で▲5五歩ではなく▲5五銀はどうか、と田中寅九段。対して(1)△5五同銀は▲6三角成△5二金▲7三馬で先手がよくなる。(2)△4五銀は▲3七桂だし、(3)△4五歩も▲5四銀△同銀に▲1六角が気持ちのよいのぞきだ。また、(4)△5三歩と下から支えるのも▲6四銀△6二金▲5五歩△4五銀▲3七桂で先手の調子がよさそう。 *「なるほど。▲5五銀はかっこいい筋ですね。そうすると後手は(5)△7五歩ということになるのかなあ」(千葉七段) *9時25分、渡辺明棋王が控室に。竜王11期、永世竜王の有資格者だ。すぐに継ぎ盤の前に座り、千葉七段と検討を始めた。田中寅九段と三枚堂六段は、9時30分に始まる現地大盤解説会に出演するため、少し前に控室を出ている。 55 5五歩打 (14:00/03:33:00) *14分の考慮。自然に歩で銀の頭を押さえた。 * *※局後の感想※ *代えて(1)▲5五銀が検討された。以下は△7五歩▲5四銀△同銀▲5五歩△4五銀▲3七桂△5二金が予想される進行で、先手は銀桂交換で駒得できそうだが、後手の8四飛の横利きも強力なため、先手がうまくいっているかどうかは微妙なところであるようだ。また、(2)▲3三歩なら以下は△同金▲2三歩成△同金▲5五歩△4五銀▲同銀△同歩▲同角△3二玉▲6三角成△6二銀▲3六馬△7五歩▲4六馬が進行の一例で、難しい勝負になる。 *「(以上のように)怖い変化がたくさんあって。本譜もその一つではあったんですけど」(広瀬) 56 4五銀(54) ( 1:00/04:24:00) *本日の対局室並びに現地大盤解説会の様子は、「YOMIURI ONLINE」でライブ中継されている。 * *【YOMIURI ONLINE 第31期竜王戦七番勝負第5局ライブ中継】 *https://www.yomiuri.co.jp/matome/archive/20181130-OYT8T50039.html 57 同 銀(46) ( 1:00/03:34:00) 58 同 歩(44) ( 1:00/04:25:00) 59 同 角(27) ( 0:00/03:34:00) *ぱたぱたと手が進む。渡辺明棋王と千葉七段は現局面で△6二金に(1)▲6三銀以外の手はないかということで(2)▲2三銀と2筋を強行突破しにいく手を検討しているが、それは以下△2三同歩▲同歩成△4二金▲3三歩△2六歩(▲同飛には△3五角が王手飛車取り)で、後手も簡単に倒れることはないようだ。 *「封じ手の△8四飛は意外でしたが、ここで△6二金と上がって耐えているというのが広瀬さんの読みなんでしょうね。先手からそこまですごいパンチはこない、と」(渡辺明棋王) *9時45分、田中寅九段が控室に戻り、検討に加わる。 * *【渡辺明棋王が来訪】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-1355.html 60 6二金(61) (10:00/04:35:00) *10分の考慮で△6二金。 *10時になり、対局室に午前のおやつが運ばれた。注文はともに「大豆飴、ホットコーヒー」。「大豆飴」は、地元の老舗和菓子店である「梅屋常五郎」の菓子だ。また、菓子にあう飲み物をということで、注文とは別に抹茶も出されている。 *△6二金に、羽生がまとまった時間を使っている。棋勢を引き寄せる有効な攻めを繰り出せるか。 *「ここは大長考になりますね。1時間じゃ利かないくらい考えるでしょう」(渡辺明棋王) * *【2日目午前のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-ee89.html *【梅屋常五郎】 *https://www.notonookashi.jp/ 61 7一銀打 (41:00/04:15:00) *10時27分の着手。41分の考慮だった。ここまでの消費時間は▲羽生4時間15分、△広瀬4時間35分。 *6二金を狙って持ち駒の銀を打った。重い印象も受けるので気がつきにくい一手だが、後手が(1)△5二金などと逃げれば▲7二角成ではっきり先手がよさそうだ。控室では、(2)△5七角▲8八玉△3五角成と馬を作って金にヒモをつけるのだろうと話されている。 * *※局後の感想※ *代えて▲8八玉は以下△8六歩▲同銀△4四角とされ、そこで▲7七桂と受けるくらいしかないのでは玉を入城した意味が薄い。 * *【上か下か】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-428c.html 62 5七角打 ( 3:00/04:38:00) *3分の少考で角を打った。 63 8八玉(79) ( 0:00/04:15:00) *手順に玉を入城。代えて▲6八銀よりも、こちらのほうが玉形は安定している。 64 3五角成(57) ( 0:00/04:38:00) *後手はこの馬の働きに期待したい。 65 1八角(45) ( 0:00/04:15:00) *62手目の△5七角からは、ともに時間を使うことなくここまで進んだ。控室では棋士たちの検討が続いており、現局面から△7五歩▲3八飛△4四馬▲6二銀不成△同馬▲5四歩△7六歩▲同銀△4四馬▲7七歩という順が一例として示されている。先手がよくなりそうな変化がなかなか見えてこない、と検討陣。少し前は何か先手がよくできる順がありそうという論調だったが、具体的な順は簡単ではないようだ。 * *※局後の感想※ *代えて▲6二銀不成から△4五馬▲7三銀不成△8三飛▲6四銀不成という順は、後手の馬の力が強そう。 66 7五歩(74) (27:00/05:05:00) *8四飛の横利きを通しながら、先手の囲いに手を出した。「8四飛の顔が立ったなあ」と渡辺明棋王。 *11時ちょうどの着手。27分の考慮だった。△7五歩までの消費時間は▲羽生4時間15分、△広瀬5時間5分。 * * *※局後の感想※ *「(1手前の▲1八角の局面は)何をやられるか分からなかったですねー」(羽生) *「△8六歩は、いまなら▲同銀だと思うんですけど、それも得なのかどうか分からなくて。△7五歩は指したい手ではあったんですけど、指すべきだったかどうかはやっぱり分からないです。……いや、何を指していいか分からなかったです」(広瀬) * *【湧く浦の湯】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-353e.html 67 6二銀(71) (30:00/04:45:00) *30分の考慮。どこかで△5二金と逃げられる変化を避けて、まずは金を取る。 68 同 馬(35) ( 0:00/05:05:00) *「ここで▲7五歩と手を戻すんでしょうね。別の手があるのかな?」(渡辺明棋王) 69 7二金打 ( 0:00/04:45:00) *61手目の▲7一銀に続き、またも7筋に金駒を打った。これも指しにくい一手。持ち駒の金を使うなら▲6三金としたくなりそうなところだったが、それは以下△4四馬で次の△7六歩▲同銀△5五馬を見せられると先手が失敗だったか。この▲7二金に△4四馬なら、▲6三角成△3一玉▲7三馬がぴったりだ。 *「あー、そこへ打てんの?」(田中寅九段) *「そうか、そっちか」(渡辺明棋王) *「気づかない手が多いねー」(田中寅九段) *「すごいB面ですね」(千葉七段) * *※局後の感想※ *代えて▲7五歩とどちらがよいのか迷った、と羽生。▲7五歩の局面は、互いに何を狙いにすればよいのか難しいようだ。 70 5一馬(62) (17:00/05:22:00) *17分の考慮で△5一馬。代えて△5三馬として、▲7三金に△7六歩▲同銀△8六歩のように攻めていく順もありそうだった。現局面から▲6三角成△5二銀打▲7三馬△同馬▲同金という順が継ぎ盤に示される。後手はそこで△6四角(7三の金取りと△7六歩▲同銀△5五角の両狙い)と打ってどうかというところのようだ。 *また羽生の手が止まった。すぐに▲6三角成といかずに、▲2三歩成△同歩▲2二歩と2筋に味をつけておく順を考えているのかもしれない、と千葉七段。渡辺明棋王と田中寅九段も、その順は有力そうだと同意する。 * *【確実な攻め】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-f902.html 71 6三角成(18) (20:00/05:05:00) *20分の考慮。率直に馬を作った。 72 5二銀打 ( 5:00/05:27:00) *持ち駒の銀を投入して、しっかり受ける。 73 7三馬(63) ( 2:00/05:07:00) 74 同 馬(51) ( 0:00/05:27:00) 75 同 金(72) ( 0:00/05:07:00) 76 6四角打 ( 2:00/05:29:00) *「どんどん進みますね」(千葉七段) *この△6四角に代えて△7六歩▲同銀を利かせてから△6四角は、以下▲7五角△7三角▲8四角△5五角▲7七歩△2八角成▲5三歩が進行の一例で後手がまずかったか。最後の▲5三歩は非常に厳しいタタキで、△5三同銀と取ると▲6一飛から後手玉が詰んでしまう。 *12時30分、この局面で羽生が9分使って昼食休憩に入った。ここまでの消費時間は▲羽生5時間16分、△広瀬5時間29分。昼食の注文は羽生が「能登前寿司」、広瀬が「能登牛カレーライス」。対局は13時30分に再開される。 *対局再開。手番の羽生はすぐには指さず、上体を少し前傾させて盤上を見つめている。 * *【2日目昼食休憩】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-7583.html 77 2三歩成(24) (17:00/05:24:00) *13時38分、羽生が盤上に手を伸ばす。▲2三歩成は控室でも予想されていた手だ。以下は△2三同歩に▲2四歩△同歩▲同飛が継続の攻めになる。そこで(1)△2三歩と普通に受けるのは▲6四飛△同飛▲2二歩から先手にどんどん攻められそうなので、検討陣は(2)△7六歩▲2一飛成△3一金と後手が強く勝負に出る順を調べている。 * *【2日目対局再開】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-cbd8.html 78 同 歩(22) (10:00/05:39:00) *10分の考慮。 *渡辺明棋王、田中寅九段、千葉七段の検討が深まる。現局面から▲2四歩△同歩▲同飛△7六歩▲2一飛成△3一金▲1一竜△7七歩成▲同桂に(1)△7六歩は▲2三桂で先手が勝ちそう。(2)△2二銀の受けには▲3二歩が好手で、以下△3二同玉▲3三歩△同玉▲4五桂△3四玉▲3一竜△同角▲5七角(8四の飛車取りかつ、▲3五金と上から押さえる手を見ている)まで進むと、やはり先手がいけそうだという。 79 2四歩打 ( 1:00/05:25:00) *時刻は14時10分になった。▲2四歩の合わせに、広瀬が20分ほど考えている。もしかすると、2筋を放置して△7六歩と取り込む手も読んでいるのかもしれない。 80 同 歩(23) (25:00/06:04:00) *熟考の末に△2四同歩。25分の考慮となった。ここでこれだけ考えたということは、広瀬は先手からの▲2三歩成〜▲2四歩という攻めを想定していなかった可能性もある、と渡辺明棋王。壁になっている2筋にわざわざ触ってくる攻めなので、後手としては軽視しやすい面もある。 81 同 飛(28) ( 7:00/05:32:00) *【のとじま水族館】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-1ffe.html 82 7六歩(75) ( 1:00/06:05:00) *「あ、いったいった。そうですよね。△2三歩と打って▲6四飛と切られたら馬鹿馬鹿しすぎるもんなあ」(千葉七段) *この△7六歩に▲同銀は、△5五角が王手飛車取りになる。 *▲2一飛成の一手といってよさそうな局面だが、羽生はまとまった時間を使って考えている。「羽生さんは自信がある感じには見えないですね」と、控室のモニターを眺める渡辺明棋王。 *局面が動かないまま15時になり、両対局者に午後のおやつが出された。注文は羽生が「セル ノワゼット、丸柚餅子、オレンジジュース」、広瀬が「セラヴィ、加賀紅茶」。「セル ノワゼット」と「セラヴィ」は、1日目午後のおやつと同じく「ル ミュゼ ドゥ アッシュ」から取り寄せられたもの。前者は珠洲(すず)の揚げ浜塩入りの塩キャラメルを使ってレモンのコンフィチュールとヘーゼルナッツをあわせたパウンドケーキで、後者はピスタチオ、ベリー、ホワイトチョコレートムースを使ったケーキ。「丸柚餅子」は「柚餅子総本家 中浦屋」の品だ。羽生も広瀬も、すぐにおやつに手を伸ばした。 * *※局後の感想※ *「そうかー。ここで手抜いてくるんですねー」(羽生) *代えて△2三歩は、以下▲6四飛△同飛▲2二歩△7六歩▲6八銀で先手がやれそう。7五の地点が空くと、▲7五角と打つ筋が生じるのも先手にとって大きいという。本譜の順はなるほどと思った、と羽生。 * *【2日目午後のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-4a35.html *【ル ミュゼ ドゥ アッシュ】 *https://le-musee-de-h.jp/ *【柚餅子総本家 中浦屋】 *http://yubeshi.jp/index.html 83 2一飛成(24) (49:00/06:21:00) *15時13分の着手。49分の考慮となった。▲2一飛成までの消費時間は▲羽生6時間21分、△広瀬6時間5分。 84 3一金(32) ( 0:00/06:05:00) *先手を取る受け。 85 3三桂打 ( 0:00/06:21:00) *竜を逃げずに桂の王手を決めた。 *「おおー、先に打った。へえー」(田中寅九段) *「(代えて▲1一竜以下の)△2二銀と打たれる順は薄いと見たんですね」(渡辺明棋王) * *※局後の感想※ *代えて▲1一竜もあった。以下△7七歩成▲同桂△2二銀▲3二歩に△1一銀▲3一歩成△同角という対応を羽生は気にしたが、そこでもう一度▲3二歩と打つ手はなかなか有力だったようだ。 86 4二玉(41) ( 0:00/06:05:00) 87 7六銀(77) ( 0:00/06:21:00) *2一竜にヒモをつけてから、7筋に手を戻す。この組み合わせは浮かばない。▲7六銀が指された瞬間、控室で喚声が上がった。 *「おおー、すごいね、何それ読めないよ。ウルトラCの手順ですね」(田中寅九段) *「△2一金は▲同桂成が▲3一角の先手ということか。なるほど。指されてみれば納得ですね。……ヒモつきかあ、それは見えなかった」(渡辺明棋王) 88 8六歩(85) (14:00/06:19:00) *14分の考慮で、飛車先の歩を突き出した。代えて△2一金に▲同桂成の進行は自信が持てなかったか。検討陣の形勢判断は、先手よしで固まってきている。現局面では(1)▲8六同歩もあるが、(2)▲6二金が厳しそうだと渡辺明棋王。以下△2一金に▲5一角と打てば、(2−ア)△5三玉は▲5二金△同銀▲8四角成で飛車が抜けるし、(2−イ)△3二玉も▲2一桂成が▲2二金△4一玉▲3三桂までの詰めろになる。羽生はあぐらになり、しきりに扇子をあおぎながら考えている。 * *※局後の感想※ *「受けに徹する手段がなかなか難しいんですよね。何か悪そうな感じなので、勝負してみようかなと。(△8六歩は)うさんくさい手ですけど」(広瀬) 89 6二金(73) (26:00/06:47:00) *じっくり26分使って金を入った。控室の田中寅九段と千葉七段は、後手が頑張れる順が見えてこないと話している。 *大盤解説会では、渡辺明棋王と三枚堂六段のペアが解説中。そちらの様子は「YOMIURI ONLINE」で見ることができる。 * *【YOMIURI ONLINE 第31期竜王戦七番勝負第5局ライブ中継(再掲)】 *https://www.yomiuri.co.jp/matome/archive/20181130-OYT8T50039.html *【絶妙の3手1組】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-e294.html 90 2一金(31) (19:00/06:38:00) *16時17分の着手。19分の考慮だった。△2一金までの消費時間は▲羽生6時間47分、△広瀬6時間38分。 91 同 桂成(33) ( 4:00/06:51:00) *▲5一角は打たずに、素直に金を取る。4分の考慮だった。次の狙いはやはり▲5一角だ。田中寅九段と千葉七段は、△8一飛打という攻防の自陣飛車に▲4五桂という順を検討している。 92 8一飛(84) ( 1:00/06:39:00) *持ち駒の飛車は温存。8一に飛車を打つようではじり貧と見たか。この△8一飛にも▲4五桂で、先手が勝ちそうだと田中寅九段。例えば以下△4四銀打には▲3四歩と打てば、後手は対処が難しい。 * *※局後の感想※ *「いや、これは大変……」(羽生) *「そうですね。意外と先手のすっきりした勝ち方が難しい……」(広瀬) 93 4五桂打 (14:00/07:05:00) *14分の考慮。しっかりとした手つきで桂を打ち、後手玉の上部への逃走路を断つ。 94 8七歩成(86) ( 0:00/06:39:00) 95 同 銀(76) ( 0:00/07:05:00) 96 4四銀打 ( 0:00/06:39:00) *△8七歩成▲同銀の交換を入れてから△4四銀打。ここは(1)▲3四歩以外にも、(2)▲5二金や(3)▲7二角、(4)▲3一角など有力手が多いようだ。 * *【決め手があるか】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-6fe8.html 97 7一金打 (24:00/07:29:00) *「何それ、ちょっと、あの、すみません、ええ〜?」(田中寅九段) *またも控室の想定を外れた手が飛び出した。とにかく8一飛の横利きを消したうえで▲3一角を実現させれば勝ちきれるということだろうか。 *17時4分の着手。24分の考慮だった。▲7一金打までの消費時間は▲羽生7時間29分、△広瀬6時間39分。 * *※局後の感想※ *▲7一金打は羽生としても相当に指しにくい手だったが、4五桂を取られる前に何とかしなければならないので仕方がないという判断だったとのこと。 * *【驚きの一段金】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-66c0.html 98 5五角(64) ( 8:00/06:47:00) *8分の考慮。王手で角のラインを変える。 99 7七歩打 ( 1:00/07:30:00) 100 7一飛(81) ( 1:00/06:48:00) *このまま▲3一角を許すことはできない。 101 同 金(62) ( 0:00/07:30:00) *▲7一金を指す羽生の手がかすかに震えた。 * *※局後の感想※ *「金がソッポにいってるから、やっぱりちょっと大変ですよね」(羽生) 102 4五銀(44) ( 0:00/06:48:00) *先手の押さえの駒を消す。しかし、現局面から▲3一角△3二玉(△5一玉は▲5三歩)▲2二飛△3三玉▲5二飛成として、▲2二角成から5五角を抜く筋を力技で実現させれば先手の勝ち筋だと検討陣。 103 3一角打 ( 2:00/07:32:00) *2分の考慮。 104 3二玉(42) ( 0:00/06:48:00) *「そうか。ここで▲2二飛には△同角で、そんなに簡単ではないですか。いやいやいや」(千葉七段) *先手の勝ち筋であることは間違いなさそうだが、まだまだ気は抜けないようだ。 105 2二飛打 ( 8:00/07:40:00) *8分の考慮で飛車を打つ。以下△2二同角▲同角成△4二玉の局面でどんな手を用意しているのか。 * *※局後の感想※ *「悪いですね。しょうがないかなと思って進めていたんですけど」(広瀬) 106 3三玉(32) ( 2:00/06:50:00) *飛車を取らずに玉をかわした。これには▲5二飛成△同銀▲2二角成〜▲5五馬の筋が厳しいと見られていたが。 *▲5二飛成△同銀▲2二角成に△4三玉とし、以下▲5五馬△5四金▲1一馬△8六歩▲同銀△8七歩という順が継ぎ盤に並ぶ。そこまでいくと、実戦的には先手も怖いところがあるようだ。 *「いやあ、将棋は大変だなあ」(千葉七段) * *※局後の感想※ *代えて△2二同角は、以下▲同角成△4二玉に▲3七桂で先手の調子がよいようだ。 107 5二飛成(22) ( 7:00/07:47:00) *7分の考慮。羽生の残り時間は13分になった。広瀬はまだ1時間10分残している。 *渡辺明棋王が大盤解説会場から控室に戻ってきた。モニターの正面に陣取り、盤面映像をじっと見つめる。 * *※局後の感想※ *「こっちもしょうがないですね。駒が足りなくなるから、補充して」(羽生) 108 同 銀(43) ( 2:00/06:52:00) 109 2二角成(31) ( 0:00/07:47:00) 110 4三玉(33) ( 6:00/06:58:00) *6分の考慮。 *「絶対投げないな、これは。投げたら逆転はないもんな」(田中寅九段) 111 5五馬(22) ( 0:00/07:47:00) 112 4四歩打 ( 0:00/06:58:00) *△8六歩を楽しみにして耐え忍ぶ。現局面で▲3五銀ならそこで△5四金か。控室では、先手の明快な勝ち筋は発見されていない。 *「ちょっと急所が分からないですね」(渡辺明棋王) * *※局後の感想※ *△4四歩に代えて△5四金は、後手の攻撃力が落ちるので先手玉が楽になってしまう。 113 6五馬(55) ( 4:00/07:51:00) *自玉頭を厚くしながらの王手。4分の考慮だった。 *「ゆっくり勝ちます、と」(渡辺明棋王) * *※局後の感想※ *「(▲6五馬は)ちょっと粘ってる感じなんですけど、ここに置いとかないとやっぱり△8六歩〜△8七歩が痛いので」(羽生) *「いや、(▲6五馬で)悪いですね」(広瀬) 114 5四歩打 ( 0:00/06:58:00) *代えて△5四金もありそうだったが、時間を使わずに歩を受ける。 115 4六歩(47) ( 0:00/07:51:00) *後手玉の両のコビンを守る4五銀に働きかけた。6五馬の利きを自陣右辺に通してもいる。 116 8六歩打 ( 1:00/06:59:00) *先手玉の嫌みを突いていく。 117 同 銀(87) ( 0:00/07:51:00) 118 8七歩打 ( 1:00/07:00:00) *18時頃の局面。△8七歩までの消費時間は▲羽生7時間51分、△広瀬1時間0分。 119 同 馬(65) ( 0:00/07:51:00) *馬を玉そばに引きつけ、先手玉はしばらく安泰になった。あとはうまく後手玉への攻めをつなげることができるかどうかだ。現局面で△4六銀には、▲2二成桂として次の▲3二角を狙うのが確実、と検討陣。そこで後手が△3二歩と受けても、▲5三歩から先手の攻めが続く。 120 8五歩打 ( 8:00/07:08:00) *8分の考慮。玉周りに手を戻しても一手一手と見てか、攻めに望みを懸けた。ただ、控室では▲4五歩△8六歩▲4四歩と堂々と踏み込んで先手が勝つと見られている。 121 7五銀(86) ( 0:00/07:51:00) *かわしで応じた。 *「えーっ、ちょっと待ってよ魚屋さん」(田中寅九段) *「これは後手もちょっと勇気が出てきますね」(千葉七段) 122 9五桂打 (12:00/07:20:00) *12分の考慮。今度は先手の守りの要である馬を攻める。 123 9六馬(87) ( 0:00/07:51:00) *桂取りに▲9六馬と出て、強く催促。 124 3六銀(45) ( 0:00/07:20:00) *「おー、そこで逃げる。妖しい手順だなあ」(渡辺明棋王) *「妖術を使ってきたか」(千葉七段) 125 9五馬(96) ( 0:00/07:51:00) *この▲9五馬は、次に▲5一馬と飛び込む手を見ている。 126 2八飛打 ( 0:00/07:20:00) *縦横に大きく利く飛車を打つ。 127 3五歩打 ( 1:00/07:52:00) *冷静に3四の地点を押さえた。こうなると後手玉はかなり狭い。これは逆転のアヤがなくなった、と控室の棋士たち。報道陣が終局に備えて動き始めた。 128 8六歩(85) ( 4:00/07:24:00) *この△8六歩は、△8七金以下の詰めろだ。 129 同 馬(95) ( 0:00/07:52:00) 130 3四歩打 ( 0:00/07:24:00) *先手の馬の位置をずらしてから、3四の地点を埋めた。広瀬はまだまだ諦めない。検討陣から「うおぉ」と声が上がった。 131 5三歩打 ( 1:00/07:53:00) *いかにもぴったりの放り込み。 *「痛いです。△5三同銀に▲6一角で投了ですかね?」(渡辺明棋王) 132 8七歩打 ( 1:00/07:25:00) *指し続ける。 133 同 馬(86) ( 0:00/07:53:00) 134 5三銀(52) ( 0:00/07:25:00) *△5三銀を着手し、広瀬はグラスの水を飲んだ。 135 6一角打 ( 0:00/07:53:00) *後手玉を鋭く射抜く角。△5二金には▲6五桂△4二銀▲5三歩という筋がある。 136 3二玉(43) ( 0:00/07:25:00) 137 3四角成(61) ( 0:00/07:53:00) *後手玉の上部を制圧。いよいよ終局が近い。 138 2一玉(32) ( 0:00/07:25:00) 139 2四桂打 ( 0:00/07:53:00) *▲3二銀△2二玉▲2三馬までの詰めろ。 *この局面で1分考えて広瀬が投了した。▲2四桂に△3二歩と受けても、▲2三歩で後手玉は受けなしになる(以下△3一玉は▲2二歩成△同玉▲2三銀)。終局時刻は18時42分。消費時間は▲羽生7時間53分、△広瀬7時間26分。これにより、シリーズ成績は羽生の3勝2敗に。竜王防衛まであと1勝となった。第6局は12月12日(水)、13日(木)に、鹿児島県指宿市「指宿白水館」で指される。 * *※局後の感想※ *1日目の終わりから少しずつ苦しさを感じていて、最後までその差が縮まらなかった、と広瀬。ただ、羽生のほうも自信を持って指し進めていたわけではなかったようで、127目の▲3五歩を指して初めてよくなったと思ったという感想を述べた。局後の検討では、後手の明確な修正手順は見つからなかった。感想戦終了は19時40分。 * *【終局直後】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-bb10.html *【ファンの前で】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-102e.html *【感想戦】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2018/12/post-10da.html 140 投了 ( 1:00/07:26:00) まで139手で先手の勝ち