# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.09 棋譜ファイル --- 対局ID:6883 記録ID:59e84cc422f22700040e796a 開始日時:2017/10/28 09:00 終了日時:2017/10/29 18:22 表題:竜王戦 棋戦:第30期竜王戦七番勝負 第2局 戦型:矢倉 持ち時間:各8時間 消費時間:128▲478△429 場所:岩手・大船渡市民文化会館 備考:昼休前33手目53分\n2日目昼休前74手目14分\n封じ手時刻:18:00<49手目>\n 振り駒:なし 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:30〜13:30 昼休前消費時間:33手53分 手合割:平手   先手:渡辺明竜王 後手:羽生善治棋聖 先手省略名:渡辺明 後手省略名:羽生 手数----指手---------消費時間-- *渡辺明竜王に羽生善治棋聖が挑戦する第30期竜王戦七番勝負は、挑戦者の先勝で幕を開けた。渡辺は竜王12期、羽生は永世竜王と永世七冠が懸かる注目のシリーズ。第2局は10月28・29日(土・日)、岩手県大船渡市「大船渡市民文化会館」で行われる。 *立会人は屋敷伸之九段、新聞解説は飯塚祐紀七段、記録係は渡辺和史三段(豊川孝弘七段門下)。現地大盤解説会の解説は金井恒太六段、聞き手は本田小百合女流三段が担当する。 *対局は28日9時開始、同日18時以降に封じ手、翌29日9時に再開される。持ち時間は各8時間。第2局の先手は渡辺。 *28日の朝、現地は晴れて空気がさわやかだ。8時45分ごろ、羽生、渡辺の順に入室。両者一礼して渡辺が駒箱を開け、対局の準備が始まった。2人とも駒を並べ終えると、渡辺が2枚の余り歩をしまい、駒箱を盤の下に入れる。厳かな雰囲気の中、両対局者と関係者が対局開始を待つ。 * *※局後の感想※ *35手目、41手目、50〜52手目、57手目、66手目、69手目、73手目、79〜80手目、82手目、88手目、128手目に記載。 * *(棋譜・コメント入力=文) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。#は局後の感想が追記された指し手] 1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *9時、立会人の屋敷九段が「それでは定刻になりましたので、渡辺竜王の先手番でお願いします」と告げて対局が始まった。渡辺が盤上に手を伸ばすと、カメラのシャッター音が連続して響く。 * *【1日目 朝の様子】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-8c73.html 2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00) *羽生が腕を伸ばして、ゆったりと歩を前に進める。渡辺が湯呑みのお茶を飲む。対局室から関係者が退室した。羽生もお茶を飲む。渡辺がおしぼりで手をぬぐう。 * *【1日目 対局開始】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-39c6.html 3 2六歩(27) ( 3:00/00:03:00) *◆渡辺 明(わたなべ あきら)竜王(棋王)◆ *1984年4月23日生まれ、東京都葛飾区出身。所司和晴七段門下。2000年、四段。2005年、九段。棋士番号は235。 *タイトル戦登場は27回。獲得は竜王11期(永世竜王)、王座1期、棋王5期(永世棋王)、王将2期の計19期。棋戦優勝は9回。 4 3二金(41) ( 2:00/00:02:00) *◆羽生 善治(はぶ よしはる)棋聖◆ *1970年9月27日生まれ、埼玉県所沢市出身。(故)二上達也九段門下。1985年、四段。1994年、九段。棋士番号は175。 *タイトル戦登場は133回。獲得は竜王6期、名人9期(十九世名人)、王位18期(永世王位)、王座24期(名誉王座)、棋王13期(永世棋王)、王将12期(永世王将)、棋聖16期(永世棋聖)の計98期。棋戦優勝は44回。 5 7八金(69) ( 2:00/00:05:00) *角換わり模様の立ち上がりになった。最近は角換わりに進むように見えて、どちらかが角道を止めて雁木模様の駒組みを目指すことも増えている。前夜祭では飯塚七段が角換わり、屋敷九段は雁木系と予想していた。 6 8五歩(84) ( 3:00/00:05:00) *竜王戦は読売新聞社が主催する棋戦。1987年、十段戦を発展的に解消して設立された。優勝賞金は棋界最高の4,320万円。十段戦の前身となる九段戦を含めると1950年から続いており、長い歴史を持つ。全棋士、女流棋士4名、奨励会員1名、アマチュア5名が6組に分かれてトーナメント戦を行い、上位11名による決勝トーナメントで挑戦者を決定。七番勝負の勝者が竜王のタイトルを得る。 * *【囲碁・将棋:竜王戦:カルチャー:読売新聞】 *http://www.yomiuri.co.jp/culture/igoshougi/ryuoh/ 7 7七角(88) ( 1:00/00:06:00) *本局の観戦記を担当するのは小暮克洋さん。後日、読売新聞に掲載される。 8 3四歩(33) ( 1:00/00:06:00) *両者の対戦成績は渡辺34勝、羽生36勝。直近は羽生が5連勝中。竜王戦七番勝負での顔合わせは今回が3度目で、過去2回は渡辺の防衛で決着している。2008年の第21期七番勝負は互いに初の永世竜王を懸けたシリーズで、渡辺がタイトル戦史上初となる3連敗4連勝で防衛。棋史に残る名勝負として知られる。 9 8八銀(79) ( 1:00/00:07:00) *オーソドックスな角換わりの定跡手順。ここで△7七角成と交換すれば角換わりになるわけだが、最近は△4四歩と角道を止めて雁木模様に構える手法も増えた。「いかにも雁木になりそうですよね」と話しているのは、日本将棋連盟常務理事として現地を訪れている鈴木大介九段。最近の実戦では、9月に行われた第65期王座戦五番勝負第1局で、羽生は△4四歩と指している。 *9時26分、羽生は腕組みをして目を閉じ、険しい表情。渡辺は小ぶりの扇子を持って盤面を見ている。 10 4四歩(43) (15:00/00:21:00) *9時34分、羽生の手が動いた。角換わりを拒否する指し方は昔からあるが、△4二銀〜△4三銀という雁木の構えが再評価されたことで、最近は採用例が多くなっている。 11 2五歩(26) ( 6:00/00:13:00) *大船渡市は岩手県南部の沿岸に位置する市。沿岸部はリアス式海岸が広がり、天然の港を形成している。三陸沖は寒流の親潮と暖流の黒潮がぶつかる豊かな漁場で、世界三大漁場のひとつ。観光名所として碁石海岸が知られる。2011年3月の東日本大震災で津波による甚大な被害を受け、現在も復興が続いている。 * *【岩手県大船渡市公式ホームページ】 *http://www.city.ofunato.iwate.jp/www/toppage/0000000000000/APM03000.html 12 3三角(22) ( 1:00/00:22:00) *岩手県での竜王戦開催は2008年の第21期七番勝負第3局以来9年ぶり。当時のカードも渡辺と羽生で、戦型は羽生の一手損角換わり。平泉での戦いは、封じ手前に渡辺が形勢を損ね、羽生の完勝となった。これで渡辺は開幕から3連敗を喫し、カド番に追い込まれる。 * *【第21期竜王戦七番勝負第3局 ▲渡辺明竜王−△羽生善治名人(肩書は当時)】 *http://live.shogi.or.jp/ryuou/kifu/21/081113.html 13 4八銀(39) ( 1:00/00:14:00) *対局場の大船渡市民文化会館は、名勝の穴通磯をモチーフにデザインされた文化施設。愛称はリアスホール。東日本大震災では津波の被害を免れ、避難所として使われた。 *タイトル戦の開催は2013年の第62期王将戦七番勝負第3局以来。このときは佐藤康光王将(当時)に渡辺が挑戦した。渡辺は第3局で敗れたものの、シリーズは4勝1敗で制して王将位を奪取している。 14 4二銀(31) ( 1:00/00:23:00) *対局前日、関係者一行は一ノ関駅からバスで大船渡市に入った。記者は4年前の王将戦でも大船渡を訪れたが、そのときに比べると建物が増えて整然とした印象を受けた。復興事業は今年3月の時点で8割ほど進んでいるという。一方で市内ではトラックや重機が動いており、復興の途上にあることを実感させられた。 *前夜祭ではチャリティーイベントの売り上げをもとにした見舞金が、日本将棋連盟の竹井粋鏡理事から大船渡市に贈呈された。 * *【前夜祭(8)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-381a.html 15 5六歩(57) ( 7:00/00:21:00) *2日目の29日は大盤解説会が現地と関西将棋会館で開かれる。現地大盤解説会は10時開始、解説は金井六段、聞き手は本田女流三段。関西将棋会館は17時開始、解説は船江恒平六段、聞き手は藤井奈々女流3級。 * *【大盤解説会】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-693c.html 16 4三銀(42) ( 2:00/00:25:00) *本局の模様は動画で中継される。将棋プレミアムは2日目に解説があり、解説は石田直裕五段、聞き手は観戦記者の内田晶さん。ニコニコ生放送の1日目は佐藤秀司七段と宮宗紫野女流初段、2日目は広瀬章人八段と貞升南女流初段が担当する。AbemaTVは1日目の担当が及川拓馬六段、三枚堂達也五段、千葉涼子女流四段、塚田恵梨花女流1級。2日目の担当は藤井猛九段、井出隼平四段、山口恵梨子女流二段、室谷由紀女流二段。 * *【将棋プレミアム|囲碁・将棋チャンネルホームページ】 *http://www.igoshogi.net/shogipremium/ * * *【ニコニコ生放送(1日目)】 *http://live.nicovideo.jp/watch/lv306361793 * *【ニコニコ生放送(2日目)】 *http://live.nicovideo.jp/watch/lv306361935 * *【AbemaTV】 *https://abema.tv/now-on-air/shogi 17 6八角(77) ( 3:00/00:24:00) *控室では屋敷九段と飯塚七段が自著と色紙に揮毫している。大盤解説会の景品になるそうだ。 *10時過ぎ、対局室にはおやつが運ばれた。両者とも同じメニューで、「恋し浜」とホットコーヒー。「恋し浜」はホタテ貝の形をしたバターケーキ。大船渡市の小石浜ではホタテ貝が養殖され、「恋し浜ホタテ」のブランドがある。対局者に出された「恋し浜」は、大船渡市に会社を置く、さいとう製菓のお菓子。同社で製造している「かもめの玉子」は岩手の銘菓として知られる。大船渡市にある恋し浜駅は2009年に小石浜駅から改名された。駅舎内には絵馬に見立てたホタテ貝がつり下げされ、願掛けがされている。 * *【1日目 午前のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-48ae-1.html 18 5二金(61) ( 7:00/00:32:00) 19 6九玉(59) ( 5:00/00:29:00) *渡辺の今年度成績は9勝12敗(0.429)。 *通算成績は564勝291敗(0.660)。 20 6二銀(71) ( 3:00/00:35:00) *羽生の今年度成績は20勝16敗(0.556)。 *対局数はランキング2位、勝数は10位タイ。 *通算成績は1386勝559敗(0.713)。 21 3六歩(37) ( 3:00/00:32:00) *渡辺の竜王戦成績は77勝32敗(0.706)。初参加は第14期。第17期に4組優勝を果たし、決勝トーナメントを勝ち抜いて挑戦権を手にする。七番勝負では森内俊之竜王(当時)をフルセットの末に破り、20歳で初タイトルとなる竜王を獲得した。竜王獲得は11期、現在2連覇中。 22 5四歩(53) ( 1:00/00:36:00) *羽生の竜王戦成績は148勝84敗(0.638)。第1期は4組からスタート。第2期に3組優勝、決勝トーナメントを勝ち進んで挑戦者決定三番勝負を制し、挑戦者になる。七番勝負では島朗竜王(当時)を4勝3敗(持将棋1)で破り、19歳で竜王を獲得した。竜王獲得は6期、七番勝負登場は14回。 *今期七番勝負で竜王に復位すると、通算7期獲得により永世竜王の資格を得る。 23 7七銀(88) ( 2:00/00:34:00) *飛車先の受けを角から銀にスイッチ。先手は矢倉に構えて戦う。雁木も矢倉も江戸時代から指されているが、中央志向の原則に従う雁木に比べて、玉の堅さを重視する矢倉は新しい指し方だった。時代が進むにつれて矢倉が主流になり、雁木は減少することになる。ところが、現在では雁木系の駒組みが再評価され、矢倉から主流の地位を奪いつつある。 24 7四歩(73) (18:00/00:54:00) *控室では関係者が棋書を囲んで談笑している。景品用の新品の棋書と並んで、1993年に出版された屋敷九段の著作があった。地元の愛棋家の方の蔵書だ。表紙には肩書に「六段」と書かれている。1993年の第6期竜王戦七番勝負は、竜王に復位した羽生が挑戦者に佐藤康七段(当時)を迎えて防衛戦に臨んだ。結果は佐藤康七段が4勝2敗で制し、新竜王が誕生している。 * *【1日目 午前の控室】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-2e9d.html 25 5八金(49) ( 3:00/00:37:00) *渡辺は頬に手を当てて盤面をにらんでいる。手番の羽生はおやつを食べてひと息つく。 26 7三桂(81) ( 5:00/00:59:00) 27 3七銀(48) ( 6:00/00:43:00) *後手は桂、先手は銀が攻めの陣頭に立つ。手順の違いはあるが、前述した王座戦五番勝負第1局と合流した。王座戦はここから△4一玉▲2六銀△5五歩▲同歩△4五歩▲3七桂△5五角▲6六歩△8六歩▲同歩△8五歩と進み、戦いが始まっている。 28 4一玉(51) (15:00/01:14:00) *現在、台風22号が日本列島に接近している。今日の大船渡は雲が多いものの晴れ間ものぞき、紅葉した木々が目に鮮やかだ。明日は朝から雨が降り続くと予報が出ている。 29 6六歩(67) ( 4:00/00:47:00) 30 6四歩(63) ( 9:00/01:23:00) 31 6七金(58) ( 1:00/00:48:00) *前述の王座戦五番勝負第1局とは別の進行になっている。データベースには実戦例に▲上村亘四段−△金井恒太六段戦(2017年9月、王座戦一次予選)がある。ここから△6三銀▲3五歩△同歩▲同角△4二角▲4六角△8一飛▲3六銀△6二金と進んでいる。先手は3筋から侵攻、後手は角を引いて△6五歩を狙う展開になった。金井六段は現地大盤解説会の解説を務める。ぴったりの役といえそうだ。 32 5三銀(62) ( 7:00/01:30:00) *11時36分の着手。二枚銀の伝統的な雁木になった。「けっこう進みますね」と鈴木九段がぽつり。昼食休憩は12時30分から。それまでに戦いが始まれば、2日制のタイトル戦では早い進行といえる。先手は攻めるなら▲2六銀や▲3五歩、守りを固めるなら▲7九玉が一例だ。 *11時50分、渡辺は頬に手を当て、身を乗り出すようにして盤に向かっている。羽生は眼鏡を外して脇息にもたれている。 *12時30分、渡辺が53分使って昼食休憩に入った。消費時間は▲渡辺1時間41分、△羽生1時間30分。昼食は渡辺が鉄火丼(サビ抜き)。羽生がアナゴ天丼、りんごジュース。対局は13時30分に再開される。 * *【1日目 昼食休憩】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-bc24.html 33 7九玉(69) (56:00/01:44:00) *13時30分、対局再開。渡辺は前傾姿勢で盤面を見つめる。13時33分、渡辺の手が動いた。本命と見られていた玉寄り。いつでも▲8八玉と入城できるようになったのは心強い。ひとつ寄るだけで、玉の安定感がまるで違う。 *控室では飯塚七段が継ぎ盤で検討中。ここから△6五歩▲同歩△4五歩▲4六歩△8六歩▲同歩△6五桂▲6六銀△7五歩と開戦する順を調べている。「△3一玉と寄るのは王手飛車のラインが生じるので一長一短ですね。そろそろ戦いを起こしたい気がします」と飯塚七段。 * *【1日目 対局再開】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-8ab6-1.html 34 6二飛(82) (11:00/01:41:00) *飛車を回って力をためた。次は△6五歩▲同歩△4五歩で飛角が急所の6筋に利いてくる。先手は▲8八玉と入城すると、角のラインに入りそうなので怖いところもある。攻撃陣の整備をするなら、▲3五歩△同歩▲同角から▲3六銀の活用を目指す順が一案だ。 *13時50分ごろ、飯塚七段は地元の方とともに、被災地を訪ねるべく出かけていった。渡辺は時折、首をかしげながら盤面に視線を注いでいる。羽生はうつむいている。 35 4八銀(37) (26:00/02:10:00) *14時12分、渡辺が着手。いったん上がった銀を引いた。手損になるのでぎょっとする手だ。羽生は天井を見上げ、首をかしげる。眉間に深いしわが刻まれているのが見て取れる。 *屋敷九段は「△4五歩と突かれると具合が悪いので、辛抱したということでしょうか」と話す。先手は▲3七桂を見せることで△4五歩を牽制している。とはいえ手損に変わりはなく、順調な駒組みには見えない。「先手がちょっと失敗しているような雰囲気はありました。ただ、攻められなければ大丈夫だと。これは長くなりそうですね」と屋敷九段。 *しばらくして羽生が席を立つ。渡辺は棋譜用紙を受け取って目を通した。 * *※局後の感想※ *代えて▲4六銀は△6五歩▲同歩△4五歩と戦いを起こされて危険。とはいえ、この銀引きも「2手も損してるから、これでは失敗ですね」と渡辺。 *ここから△3一玉▲3七桂△6五歩▲同歩△同桂▲8八銀△6四銀▲6六歩△7五歩▲同歩△同銀▲7六歩は「自信ないですね」と羽生。渡辺は「角がこなければ、つぶされることはないので」と話していた。 36 1四歩(13) (29:00/02:10:00) *14時42分、羽生の手が盤上に伸びた。端にスペースを作ることで、▲2四歩△同歩▲同角△同角▲同飛には△1三角の切り返しを用意している。ただ、▲1六歩と受けられると争点になる可能性もあって一長一短だ。 37 3七桂(29) ( 5:00/02:15:00) 38 3一玉(41) ( 4:00/02:14:00) *15時、おやつが運ばれた。渡辺は「かもめの玉子」とホットコーヒー。羽生は「黄金海道三陸」と紅茶。「かもめの玉子」は黄身あんをカステラ生地とホワイトチョコで包んだお菓子、「黄金海道三陸」はごまの風味を生かした焼き菓子。どちらもさいとう製菓のものだ。 * *【1日目 午後のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-d241-1.html 39 4六角(68) (30:00/02:45:00) *八方にらみの好位置に角を出る。これで後手は準備なしに△6五歩と突くことはできなくなった。先手の▲4八銀〜▲3七桂、▲6八角〜▲4六角はどちらも手損の動きではあるが、後手の仕掛けの軸になる△4五歩と△6五歩を封じて大きな意味を持つ。現状、後手は3手得だが、陣形に進展性がなく、手得をどう具体的なよさに結びつけるかは難しい。先手は▲8八玉と囲ってから、▲9八香〜▲9九玉の組み替えや▲2四歩と動く手段がある。指したい手が多いので長期戦は歓迎だ。 *15時55分、渡辺は脇息にもたれてうつむいている。羽生は額に手を当ててうつむく。時折、眼鏡を外して目を休める。 40 6一飛(62) (47:00/03:01:00) *16時10分、「羽生先生、3時間使われました」の声がかかって少ししてから指された。飛車の位置を整え、間合いをはかったような手だ。昼食休憩明けから、じりじりとした神経をすり減らすような時間が続いている。渡辺はおやつを食べながら盤面をじっと見ている。 *先手は▲8八玉〜▲9八香〜▲9九玉〜▲8八銀まで組むことができれば、玉が堅くなって強引な攻めも通しやすくなる。後手はこの組み替えを阻止するにはどうすればいいか。屋敷九段は「△4五歩と突きたいので、△4二角や△5一角と引くんでしょうか」と話す。 41 1六歩(17) (23:00/03:08:00) *1筋を受けておく。手詰まり模様の展開では、端の位は取らせないほうがいい。外は日が傾いて暗くなってきた。 * *※局後の感想※ *ここで△9四歩は、▲9六歩なら△5一角で9筋の端攻めが絡むだけ後手の得だが、▲8八玉との交換になると「△9四歩が効いていない」と羽生。 42 5一角(33) (10:00/03:11:00) *屋敷九段が予想していた角引き。これで後手は△4五歩と突けるようになった。角の位置を変えたことで▲4五同桂が両取りにならないので、△4四銀右から桂を取ることができる。先手は△4五歩には▲6八角と引くことになるが、すると△6五歩と仕掛ける筋が復活する仕組みだ。成否は状況次第だが、動く手段ができたことはひとつのポイントだ。 43 8八玉(79) (11:00/03:19:00) *高い駒音が響いた。渡辺は腕組みをして口元を引き結んでいる。手損を重ねた先手だが、現状は堂々の陣形だ。 *16時57分、控室に金井六段と本田女流三段が到着した。 * *【金井六段と本田女流三段】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-0a01.html 44 6五歩(64) ( 5:00/03:16:00) *17時1分、羽生が着手。角を引いて桂にヒモがついたので、△6五歩と突けるようになっていた。ただ、▲6五同歩に単に△同桂とすると▲6八銀と引かれて▲6六歩を狙われるので、どこかで△4五歩と突いて▲6八角と引かせる必要があるだろう。 45 同 歩(66) ( 3:00/03:22:00) 46 同 桂(73) ( 1:00/03:17:00) *指そうとした羽生の手から駒が落ちて盤面が少し乱れた。羽生は着手したあと、そっと駒の位置を整える。 *羽生の選択は単に桂跳ね。ここで▲6六銀なら△6四銀と支えて確実な攻めが続きそうだが、▲6八銀と引かれると次に▲6六歩があるので状況が変わってくる。後手は見返りなく桂を取られてはいけないので忙しい。 *17時18分、屋敷九段が和服に着替えて控室に戻ってきた。封じ手の時刻までは40分ほど。継ぎ盤では飯塚七段が検討している。ここから▲6八銀△6四銀▲6六歩△4五歩▲2四歩△同歩▲同角△同角▲同飛は「後手の攻めがうまくいっていない気がします」。とはいえ、手順中▲2四歩に△4六歩と角を取るのも、▲2三歩成で後手自信なしという。 47 6八銀(77) (16:00/03:38:00) *17時23分、渡辺の手が動いた。懸案の銀引きだ。後手の継続手段は何か。 48 6六歩打 ( 4:00/03:21:00) *羽生は何度か小さくうなずいてから、駒台の歩を手に取った。「敵の打ちたいところに打て」で▲6六歩を防ぐ。とはいえ忙しい状況は変わらず、ここから▲6六同金△6四銀▲6七金引で再び▲6六歩を狙われたときに、後手はうまい手段を求められることになる。継ぎ盤では▲6六同金△6四銀▲6七金引△4五歩▲同桂△4四銀▲2四歩△同歩▲6六歩△4五銀▲2四角△同角▲同飛△2三歩▲2八飛△3三角という順を調べている。先手が逆に桂損になり、楽しみの▲6五歩がなかなか指せない。「これは後手十分です」と飯塚七段。先手はどこかで変化したい。 *渡辺の考慮中に17時50分を過ぎ、封じ手時刻まで10分を切った。ここで▲6六同金はこの一手なので、先手はここで封じてその後の展開をひと晩考えたい。18時になり、屋敷九段が「定刻になりましたので、渡辺竜王の封じ手でお願いします」と告げる。渡辺はすぐに封じる意思を示し、道具一式を持って立ち上がった。しばらくして渡辺が戻り、封筒を羽生に差し出す。羽生がサインを入れて渡辺に返し、渡辺が封筒を屋敷九段に預けて1日目が終了した。封じ手に使った考慮時間は31分、1日目の消費時間は▲渡辺4時間9分、△羽生3時間21分。対局は29日9時から再開される。 * *【封じ手】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-4646.html 49 同 金(67) (31:00/04:09:00) *29日、2日目の朝を迎えた。大船渡は雨。1日目にはほのかに色づいた木々が見えた山も、今日はほとんどが霧に隠れている。8時45分、羽生入室。8時48分、渡辺入室。渡辺が駒箱を開けて、2人が駒を並べていく。駒を並べ終えると、屋敷九段が「それでは、1日目の指し手を再現いたします」。記録係の渡辺三段の読み上げに従って、手が進んでいく。 *1日目の指し手が再現されると、屋敷九段が「それでは封じ手を開封いたします」と告げて立ち上がった。盤の横に移動して、封筒にはさみを入れる。その様子を羽生がじっと見ている。やがて「封じ手は▲6六同金です」と屋敷九段の声。渡辺が盤に手を伸ばした。 * *【封じ手開封】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-91fc-1.html 50 6四銀(53) ( 1:00/03:22:00) *9時2分、羽生の手が動く。対局室に入っていた関係者が控室に戻ってきた。屋敷九段が「封じ手がほかの手だったらひっくり返っていました」と笑っている。 * *【封じ手用紙】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-ade5.html * *※局後の感想※ *ここから▲6七金引△4五歩▲同桂△4四銀▲2四歩△同歩▲6六歩△4五銀▲2四角△同角▲同飛△8六歩が調べられたが、先手が思わしくないようだ。渡辺は「あまり考えていなかった。▲6五歩には王手飛車があるので。呼び込みすぎと思った」と話した。 *渡辺は手順中△4五歩に▲6四角△同飛▲6六歩と角を切る順は考えたというが、以下△3三角で「このときにピリッとした手が浮かばなかった」と話していた。 *また、ここで▲2四歩△同角▲同角△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△3五歩▲2二歩△同金▲2三歩△1二金▲7二角△6二飛▲8一角成△3六歩▲6三歩△同金▲6五金△8七歩という順が調べられたが、先手自信なし。渡辺は「△3五歩のときに手を作りなさいといわれると自信がなかった」と話した。 51 6七銀(68) (12:00/04:21:00) *9時15分、渡辺が着手。金を引いて桂取りを狙うのではなく、銀を上がった。飯塚七段が「意表ですね」と驚く。角の動きを楽にして、△4五歩を緩和した意味がある。後手もすぐに歩で桂を取られることがなくなったので、いったん落ち着ける側面はある。この▲6七銀が意表を突く手ということもあって、後手は次の攻めをどう組み立てるか悩むことになるだろう。飯塚七段は継ぎ盤の前で「桂を成り捨てて歩を打てないか考えていますが、うーん」と頭を抱えている。後手は歩があれば、△5七桂成▲同銀△6五歩で金を取る狙いがある。だが、その歩をどこで入手するかは難しい問題だ。 *10時、対局室におやつが運ばれた。渡辺はフィナンシェチョコとホットコーヒー。羽生は「おひとつ」とホットコーヒー。「おひとつ」は沖縄県産の黒糖を使った薄皮まんじゅうで、地元の和洋菓子店、菓匠高瀬のもの。フィナンシェは地元のお店、西欧菓子ロレーヌのもの。どちらも震災の被害で店舗を失ったが、営業を再開して地元でお菓子を作り続けている。 * *【2日目 午前のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-66ed-1.html * *※局後の感想※ *羽生は「▲6七金引も▲6七銀も、そんなに見通しが立たない。ちょっと悪いのかと思った」と振り返った。 52 8六歩(85) (59:00/04:21:00) *10時14分、モニターから駒音。59分の長考だった。 * *※局後の感想※ *「有効な手がないのでしょうがない」(羽生) 53 同 歩(87) ( 0:00/04:21:00) 54 4五歩(44) ( 0:00/04:21:00) 55 6八角(46) ( 0:00/04:21:00) 56 3三角(51) ( 0:00/04:21:00) *8筋で玉頭に味つけをしてから、相手の角を追い払って自分の角を活用。先手玉をにらむ急所のラインだ。 *現地では10時から大盤解説会が始まっている。あいにくの天気にもかかわらず、ステージに近い席はすでにほとんどが埋まっていた。金井六段は「この角は狙いのある手で、次に△7五歩と突いて、▲同歩なら△同銀が気持ちのいい進軍です。ここまで進むと飛角銀桂の攻めをまともに喫してまずいので、渡辺竜王は手番を生かして対策を考えたいですね」と話していた。一例として挙げたのは角の利きを避ける▲9八玉。先手玉は9筋の突き合いがないので端に逃げやすい。 * *【10時30分ごろの大盤解説会】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/1030-d923.html 57 4五桂(37) ( 9:00/04:30:00) *すぐに反撃。ここで将来の桂取りをもくろんで△2二角と引くのは、▲2四歩△同歩▲2三歩の筋が生じて危ない。2筋が薄い雁木に対する常套手段だ。 * *※局後の感想※ *「跳ね得とばかり」と渡辺。本譜の進行で後に△3三桂を誘発した可能性がある。 *代えて単に▲9八玉が調べられた。以下△7五歩▲同歩△5五歩▲7六金△5六歩▲同銀△8八歩▲同金△同角成▲同玉△6九金▲7八玉△6八金▲同玉は「本譜よりいいか」と渡辺。手順中△7五歩に代えて△5五歩は▲2四歩△同歩▲2三歩で「△7五歩と突いてないと攻めに迫力がない」と羽生。手順中▲7六金に△5六歩▲同銀△7七歩▲8八金△5四銀▲6六歩△5五銀直▲6七銀△7五銀▲同金△6六銀▲同銀△同角▲7六金が並び、渡辺が「これはわからないですね」と額に手をやった。 58 4四角(33) ( 0:00/04:21:00) 59 4六角(68) ( 2:00/04:32:00) *再び好位置に出て、後手の攻め駒ににらみを利かせる。有力な攻め筋は△7五歩だが、先手は▲9八玉や▲8七玉で角の利きを避けて対応すると見られている。飯塚七段は「難解です」と継ぎ盤を見つめる。 *10時40分、対局室では羽生がひとり盤に向かっている。棋譜用紙を借りて目を通す。しばらくして渡辺が戻ってきた。 60 7五歩(74) (16:00/04:37:00) *どんどん攻める。後手は歩損だが、攻め駒の位置取りはいい。ここで▲7五同歩は△同銀と出られてしまう。後手の角が輝いている。 61 9八玉(88) ( 0:00/04:32:00) *「角筋受けにくし」と格言にある。玉を角のラインに入れたまま戦うのは危険。端に玉をかわすのは矢倉でよく出てくる手筋で、角の利きを避けながら戦場から遠ざかって合理的だ。 62 3三桂(21) ( 4:00/04:41:00) *10時51分の着手。守りの桂をぶつけて交換を挑む。桂が手持ちになれば攻め筋が増える。モニターに目をやった屋敷九段は「ぶつけですか。(桂を持てば)△7四桂がありますね」と話す。 63 同 桂成(45) ( 1:00/04:33:00) 64 同 角(44) ( 0:00/04:41:00) 65 7五歩(76) ( 0:00/04:33:00) 66 7七桂打 ( 1:00/04:42:00) *敵陣に桂の重ね打ち。強烈なインパクトの攻めだ。狙い筋として▲7七同桂△同桂成▲同金△7五銀▲同金△7七角成と進めば大成功。角を軸にして攻め駒がさばける。控室は思いがけない手の出現に盛り上がっている。大盤解説から戻った金井六段は「鋭い手を指されたという印象です。桂打ちは見えない。私は見えないです」と首を振った。 *検討にも熱が入る。まず▲7六桂という案が出たが、△7五銀▲同金△6六歩▲5八銀△8九桂成▲同玉△7七桂成▲同金△6七歩成と進むと先手陣崩壊だ。そこで次の案として▲8七桂が調べられている。以下△8九桂成▲同玉△9四桂には▲9八桂と受けてどうか。「あると思いますよ。△7五銀さえ封じてしまえば」と屋敷九段。金井六段は「(▲8七桂は)渡辺調ではない気がするんですよね」と首をかしげている。 *11時29分、渡辺は扇子ではたはたとあおぐ。横を向いたり、天井を見上げたり。羽生は眉間にしわを寄せて盤面を見る。眼鏡を外してうつむく。 * *【竜王戦の△7七桂】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-4e43.html * *※局後の感想※ *渡辺が「見えていなかった」という攻め。羽生は「ほかの手は(攻めが)切れちゃうので」と話した。ここで▲8七桂は△8九桂成▲同玉△9四桂▲9八桂△5五歩で「この土下座は受けきれないと思った」と渡辺。 67 4五桂打 (61:00/05:34:00) *11時57分、渡辺の手が動いた。受けではなく攻めに桂を使う。後手は△4四角とかわすだろうが、そこで▲6八歩と6筋を先受けしてどうか。この順を調べている検討陣から、「渡辺竜王らしいですね」という声が上がった。以下△8九桂成▲同玉△7五銀▲同金△7七桂成と一気に攻め込むのは、▲5五歩で受けが利く。 68 4四角(33) ( 8:00/04:50:00) 69 7七桂(89) ( 6:00/05:40:00) *しばらく前傾姿勢で時間を使っていた渡辺、桂を取った。相手の注文に応じる手だが、大丈夫なのか。控室でどよめきが起こった。 * *※局後の感想※ *代えて▲5九銀は△8九桂成▲同玉△7七桂成▲同金△7五銀で後手よし。渡辺は「受からないですね。いちばん守備力がある▲5九銀でダメだと、受けがないです」と話した。 70 同 桂成(65) ( 0:00/04:50:00) *羽生はすぐに桂を取る。 71 同 金(78) ( 0:00/05:40:00) 72 7五銀(64) ( 0:00/04:50:00) *思わず指に力が入りそうな一手。飛車の利きが強烈だ。後手の攻め駒が生き生きとしている。 73 5五歩(56) ( 0:00/05:40:00) *角の利きを止めて受けた。ただ、△7六歩▲同金寄△同銀▲同銀△6九飛成で後手は飛車を成り込むことができる。次は△5五角や△7八金が厳しい攻めだ。これも控室で検討されていた順のひとつだが、竜ができれば後手がよさそうということで、本命とは見られていなかった。先手は飛車を成られるまでに変化することが難しく、飛車を成られるとすべての攻め筋を受けることは困難。対局室の渡辺は顔をしかめているようにも見える。 *12時30分、羽生が14分使って昼食休憩に入った。消費時間は▲渡辺5時間40分、△羽生5時間4分。昼食は渡辺が鉄火丼(サビ抜き)、羽生がヒレカツ定食、ホットコーヒー。対局は13時30分に再開される。 *13時28分、渡辺、羽生の順に対局室に戻った。13時30分、対局再開。羽生は額を押さえてうつむく。渡辺は腕組みをして窓のほうに目をやる。羽生は信玄袋から腕時計を取り出して置き、眼鏡を外してゆっくりと拭く。あぐらになって盤面をにらむ。 *控室では屋敷九段と飯塚七段が継ぎ盤を挟んでいる。上記の△6九飛成に▲7八銀と受ければ、先手もすぐに寄る形ではないようだ。飯塚七段は「簡単ではない気がします」と話す。 * *【2日目 昼食休憩】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-7748-1.html * *【2日目 対局再開】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-f312.html * *※局後の感想※ *羽生は「本当は取りたかった」と△6六銀を示した。以下▲同銀△7六歩▲同金△5五角▲5七銀上△9五桂▲9六銀△4六角▲同歩△3九角▲2七飛で、渡辺は「自信がない」とつぶやいたが、羽生も「こっちもここで手がないとまずいので」と頭を押さえた。 *ここで△6五桂は「ちょっと考えたんですけど」(羽生)というひねった攻めだが、以下▲8七金△6六銀▲同金△6七金▲7五銀打△7四歩▲6八歩ではっきりしない。渡辺は「これでいい手があったらごめんなさい、という感じ。持ち駒がなくなるので、リスクがある攻めと思った」と話していた。本譜は羽生にとって、不本意ながら仕方がない、という順だったようだ。 74 7六歩打 (42:00/05:32:00) *13時57分、羽生が着手。飛車を成るコースだ。 75 同 金(66) ( 0:00/05:40:00) 76 同 銀(75) ( 0:00/05:32:00) 77 同 銀(67) ( 0:00/05:40:00) 78 6九飛成(61) ( 0:00/05:32:00) *敵陣深くに飛び込む。一方的に飛車を成り込んで後手が調子よく攻めているようだが、先手も桂得と歩得という主張がある。当初は後手よしと見られていたが、検討を進めるうちに簡単ではないことがわかってきた。ここで▲7八銀と竜に当てながら固めるのが有力で、以下△1九竜▲2四歩△同歩▲同飛△4九竜▲5六桂と進めば、たちどころに攻守が入れ替わる。先手は▲5六桂が急所を突く攻めで、7筋に並んだ金銀の防壁が堅い。 *14時15分、金井六段と本田女流三段が大ホールから戻ってきた。ここで次の一手を出題したという。候補手は▲5七銀、▲7八銀、その他とのこと。「すごい雨ですね」と本田女流三段の声。朝に比べて雨は強くなっているが、観戦に訪れている方は増えていた。 79 7八銀打 (21:00/06:01:00) *銀を打って守りを強化。ここで△1九竜は逃げながら香を取って自然だが、飛車にヒモがついているので先手も攻めに回ってくる。 * *※局後の感想※ *ここで△6五桂は▲同銀△同竜▲5七銀△7九銀▲6七銀△5五角▲6六歩で先手が頑張れる。「忙しいですね」と羽生。渡辺は「桂が3枚あるので嫌みがつけやすい」とうなずいていた。 *また、ここで△1九竜は▲2四歩△同歩▲同飛△4九竜▲5六桂△1七角成▲2三歩で先手がやれそう。渡辺は「△1九竜か△6五桂かと思っていた」と振り返ったが、本譜の羽生の選択は意表を突いた。 80 4九竜(69) ( 5:00/05:37:00) *14時27分、羽生が竜を手に取った。香を取らずにじっと逃げておく意表の選択だ。先手には▲5六桂というわかりやすい攻めがある。控室では一例として▲2四歩△同歩▲5六桂△5五角▲同角△同歩▲4四桂打△5六歩▲3二桂成△同銀▲2三歩△7九角▲8七金△9五桂▲2二角△4二玉▲5四歩が並んだ。「激戦ですね」と飯塚七段。 * *【穴通磯(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-0d11.html * *【穴通磯(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-0896.html * *※局後の感想※ *ここで▲2四歩△同歩▲5六桂△5五角▲同角△同歩は先手に手番が回るが、「△9六桂に気をつけないといけない」と渡辺。攻めるタイミングが難しかったようだ。 81 5七銀(48) (10:00/06:11:00) *渡辺、攻めずに自陣に手を入れた。「一手一手当たらないですね」と金井六段が苦笑する。「これで先手は▲6八飛と回る手もできました。後手が指したい手は△5五角で、角交換になれば△7九角が狙いになります。先手も▲7五角が攻防になるので、形勢はわかりませんが。予想は当たっていませんが、対局者の波長は合っている気がします」と話した。 82 6四桂打 (18:00/05:55:00) *手番を得た羽生は桂を打って攻めかかる。先手がどこに銀を逃げても、△5五角から角を入手して△7九角が後手の狙い筋になる。玉を固める▲8七銀引が自然に映るが、玉を広くする意味では▲6五銀がまさるようだ。控室で検討されているのは、▲6五銀△5五角▲同角△同歩▲5三歩△4二金右▲5四桂△同銀▲5二歩成△同金▲4四桂という順。そこで△9六桂の妙手があり、▲同歩は△9七金▲同玉△9九竜からの詰み。ただ、△9六桂には▲8七金と寄ればしのいでいるという。「熱戦だ」と金井六段。 *15時、対局室におやつが運ばれた。2人ともフィナンシェチョコに、飲み物は渡辺がホットコーヒー、羽生が紅茶。さっそくおやつを食べてひと息つく。 * *【2日目 午後のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-b560-1.html * *※局後の感想※ *「ここからはっきり苦しくなった」(渡辺) 83 6五銀(76) (21:00/06:32:00) 84 5五角(44) ( 4:00/05:59:00) *角をさばきながら歩切れを解消する大きな手。先手は▲5五同角△同歩のときに得られる手番でうまく対応したい。後手の打った△6四桂がくせもので、▲7五角が王手にならない点には注意が必要だ。 *15時24分、渡辺は眼鏡を外し、おしぼりを顔に当てる。扇子であおぐ。15時42分、羽生は席を立っている。渡辺は駒台の歩に触れて、手を引っ込めた。 * *【碁石浜】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-6e06.html 85 同 角(46) (21:00/06:53:00) *15時43分、渡辺の手が動いた。羽生はまだ戻っていない。渡辺は身を乗り出して盤面をのぞき込んでいる。 86 同 歩(54) ( 1:00/06:00:00) *15時44分、対局室に戻った羽生はすぐに角を取った。「次の手が注目ですね」と金井六段。次に△7九角が詰めろ銀取りになるので、それに備えるか、それより厳しい手で迫る必要がある。 87 7五角打 ( 6:00/06:59:00) *渡辺の手は駒台に伸びた。攻防の角だが、△6三歩と受けられると働きが鈍る。懸案の△7九角を緩和して、確実な攻めを間に合わせようという方針だろうか。 88 6三歩打 ( 1:00/06:01:00) *羽生はゆったりとした手つきで歩を打つ。歩切れだと桂の支え方が難しかったところ。手に入れたばかりの歩を使って受けることができた。飯塚七段は「先手は自陣の安定を目指している気がします。攻めるなら▲5四歩や▲3五歩ですが、▲6九歩と打つのではないでしょうか」と話す。検討では▲6九歩△1九竜▲6八飛△7九角▲8八桂が一例として並んだ。先手は受けに回ってから、▲5四歩などの確実な攻めを間に合わせる方針になる。屋敷九段は「後手を持ちたいですね。先手はどこかで間違えそうな気がします」と話している。 *15時56分、渡辺の残り時間が1時間を切った。一方の羽生は2時間近く残している。 * *【陸前高田】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-335d.html * *※局後の感想※ *ここで▲6九歩は△1九竜▲6八飛△5六歩で先手がつらい。 89 6四銀(65) (10:00/07:09:00) *16時4分、渡辺が着手。桂を食いちぎって迫る。思いきった攻めだ。持ち駒が桂と歩しかないのは心細いが、△6四同歩▲同角と進めば角が絶好の位置取りになる。以下△2一玉▲5三桂成△7九角▲8八桂は「後手自信なし」と飯塚七段。後手はここで銀を取らずに△6五金もあるようだ。以下▲6三銀不成△7五金▲5二銀成△5四角▲7六歩△同金▲同金△同角▲8七桂△6七角成▲8八金△4五馬と進めば、次に△7四桂が厳しい狙いになる。 * *【奇跡の一本松(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-c098.html * *【奇跡の一本松(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-0e8c.html 90 同 歩(63) (16:00/06:17:00) *羽生は素直に銀を取った。 91 同 角(75) ( 0:00/07:09:00) 92 4二銀打 ( 0:00/06:17:00) *銀を投入してがっちり受ける。駒を使わされて手番も渡すのでは面白くないようだが、ここをしのげば△7九角や△5四角といった楽しみがある。先手は持ち駒が頭の丸い桂ばかりなので、攻めるには工夫が必要だ。 93 5四歩打 (14:00/07:23:00) *直接手の▲5三歩は△5一金で継続手がない。歩を垂らして▲5三歩成を狙う。控室では△6五角が有力と見られている。以下▲7六歩に△5四角と歩を払って受ける方針だ。後手は受けてばかりのようだが、△4五角と桂を取れば、戦力を蓄えながら自玉を万全にできる。 94 6五角打 ( 4:00/06:21:00) 95 7六歩打 ( 0:00/07:23:00) 96 5四角(65) ( 0:00/06:21:00) 97 5三歩打 ( 0:00/07:23:00) *両者の指し手が早い。渡辺は指して席を立った。しばらくして戻ってくる。ひと口、またひと口とお茶を飲む。 *桂が生きている間に嫌みをつける。ここで△5一金と引かれたときにうまい手段があるかどうか。後手は△4五角や△1九竜で自然に攻めが続き、手に困らない。 98 5一金(52) ( 7:00/06:28:00) *金銀4枚に守られた後手玉が遠い。開き直って▲9一角成△4五角▲5五馬と進めるのは、一気に△7八角成▲同金△8九銀と迫られても怖い。継ぎ盤の前に座る屋敷九段は「桂が使いにくいですね」と話す。先手は後手玉に対して有効な攻め筋が見えてこないのがつらいところ。 *17時7分、渡辺の残り時間が20分を切った。渡辺は額を押さえて天を仰ぐ。頭を抱える。残り時間が減っていく。17時16分、渡辺に残り10分の声がかかった。渡辺は身を乗り出す。羽生がお茶を飲む。 99 9一角成(64) (30:00/07:53:00) *17時20分、渡辺が着手。残り時間は7分。羽生が席を立った。渡辺は扇子を手に、天井を見上げ、窓に目をやる。外は夜の闇。かすかに雨音が聞こえる。 100 4五角(54) ( 9:00/06:37:00) *対局室に戻った羽生は、しばらく盤面を見ていたが、やがて手を伸ばした。渡辺がうなだれるようにうつむいた。 101 5五馬(91) ( 1:00/07:54:00) *羽生は前傾姿勢。渡辺は肩が落ちている。 102 7九竜(49) ( 8:00/06:45:00) *ふわっと竜を寄せる。先手玉は△8八金までの詰めろ。金井六段と本田女流三段は慌ただしく大盤解説会の会場に向かった。 103 8九香打 ( 0:00/07:54:00) 104 8八歩打 ( 0:00/06:45:00) *羽生、角取りを手抜いて迫った。決めに出たと見ていいだろう。 105 4五馬(55) ( 0:00/07:54:00) *両者とも指し手が早い。 106 8九歩成(88) ( 0:00/06:45:00) *羽生の指がかすかに震えた。 107 同 銀(78) ( 0:00/07:54:00) 108 7七竜(79) ( 0:00/06:45:00) 109 8八銀(89) ( 0:00/07:54:00) 110 5七竜(77) ( 1:00/06:46:00) *次々に駒を取って、後手は金銀7枚を手にした。自玉は鉄壁。次は△9五桂と平凡に数を足すくらいでも受けが難しそうだ。 111 2四桂打 ( 0:00/07:54:00) *切り札の歩頭桂。懸命の反撃だが、△2四同歩▲2三桂△同金▲2四歩のときに寄せに出て、後手の勝ち筋と見られている。 112 同 歩(23) ( 8:00/06:54:00) 113 同 歩(25) ( 1:00/07:55:00) *じっと歩を進める。次の▲2三歩成は詰めろになっていそうなので、ここで詰めろの連続で迫れればわかりやすい。控室では歩頭に打つ△9六桂が有力と見られている。これは△8七銀以下の詰めろで、▲9六同歩は△9七銀▲同銀△8七金から一手一手の寄りになる。後手玉は駒を渡してもほとんど詰まない形なのが心強い。 114 8七銀打 (12:00/07:06:00) *18時7分、羽生の手が動いた。銀を捨てて鋭く迫る。先手は▲8七同銀と取るよりないが、そこで△9五桂が厳しい。 115 同 銀(88) ( 0:00/07:55:00) 116 9五桂打 ( 0:00/07:06:00) *グッと押さえつけるような手つきだった。後手玉は駒を渡しても大丈夫なので、安心して寄せに出ることができる。渡辺は顔をしかめる。 117 7九桂打 ( 2:00/07:57:00) 118 8七桂成(95) ( 0:00/07:06:00) 119 同 桂(79) ( 0:00/07:57:00) *だんだん先手玉が薄くなっていく。後手には十分な攻め駒がある。先手は馬が自陣に利いているが、△7七金と打たれると受けが難しい。 120 9五桂打 ( 2:00/07:08:00) 121 7九桂打 ( 1:00/07:58:00) 122 7七金打 ( 0:00/07:08:00) *羽生はゆっくりと金を打った。 123 8八銀打 ( 0:00/07:58:00) *渡辺は銀を打ち、天を仰ぐ。 124 6八銀打 ( 1:00/07:09:00) *飛車の横利きを止めながらの詰めろ。 125 7七銀(88) ( 0:00/07:58:00) 126 同 竜(57) ( 0:00/07:09:00) *銀を取る羽生の指が震えた。「おおっ」と控室で声が上がる。 127 7八金打 ( 0:00/07:58:00) 128 8八金打 ( 0:00/07:09:00) *この手を見て渡辺が頭を下げた。先手玉は▲8八同金△同竜▲同玉△7七銀打▲8九玉△8八金までの詰み。終局時刻は18時22分。消費時間は▲渡辺7時間58分、△羽生7時間9分。羽生が開幕から連勝で復位に向けて大きく前進した。第3局は11月4・5日(土・日)、群馬県前橋市「臨江閣」で行われる。 * *【終局直後】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-bb10-1.html * *【感想戦(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-8297-1.html * *【感想戦(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2017/10/post-6398-1.html * *※局後の感想※ *仕掛けを防ぐために手損したため、渡辺は自信のない時間が長かったようだ。中央に活用する▲4五桂(57手目)は駒の働きをよくして得に見えたが、後に△3三桂(62手目)のぶつけが生じたため、逆に損だった可能性がある。検討は代えて単に▲9八玉と受けておいてどうか、と締めくくられた。感想戦は19時28分に終了した。 129 投了 ( 0:00/07:58:00) まで128手で後手の勝ち