# --- Kifu for Windows (Pro) V6.62.1 棋譜ファイル --- 対局ID:3391 記録ID: 開始日時:2014/12/03 09:00 終了日時:2014/12/04 15:46 表題:竜王戦 棋戦:第27期竜王戦七番勝負 第5局 持ち時間:各8時間 消費時間:161▲269△479 場所:石川県金沢市「かなや 青巒荘」 手合割:平手   先手:糸谷哲郎 後手:森内俊之 手数----指手---------消費時間-- *森内俊之竜王に糸谷哲郎七段が挑む第27期竜王戦七番勝負は、糸谷3勝、森内1勝で第5局を迎えた。竜王の座に王手を掛けた糸谷が初タイトル獲得となるか、森内がカド番を凌ぎ第6局に持ち込むか。第5局は12月3・4日(水・木)に石川県金沢市「湯桶温泉 かなや 青巒荘」で行われる。対局開始は両日とも9時。昼食休憩も両日12時30分〜13時30分。1日目は18時以降に手番の者が封じ手を行う。 *本局の立会人は中村修九段、立会人兼新聞解説は富岡英作八段、記録係は冨田誠也三段(18歳、小林健二九段門下)。現地大盤解説は井上慶太九段、聞き手は長谷川優貴女流ニ段。ニコニコ生放送は1日目を加藤一二三九段と藤田綾女流初段、2日目を高橋道雄九段と飯野愛女流1級が担当する。 *8時48分、糸谷が入室。その約2分後、森内が入室し役者が揃う。しばらくして両者が一礼を交わし、森内が駒箱に手を掛けた。竜王戦第5局が間もなく始まる。 * *(棋譜・コメント入力=潤) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。#は局後の感想が追記された指し手] *【】内はブログ及びリンク先 * *【ニコニコ生放送(第5局1日目)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-73ef.html * *■ニコニコ生放送■ *加藤一二三九段>おはようございます。1日目の解説を担当する加藤です。戦型は角換わり腰掛け銀を予想します。糸谷さんはあまり矢倉を指すイメージはないですね。 1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *定刻の9時となり、立会人の中村修九段が「それでは定刻の時間となりましたので、挑戦者糸谷七段の先手番で指し始めて下さい」と告げ対局開始。糸谷はすぐに▲7六歩と角道を開ける。上体を揺らしながら指すのが糸谷の着手時の特徴であるが、早速それが見られた。 * *【第5局1日目】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-6a0f.html 2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00) *森内は第1局と第3局に続き2手目に△8四歩と飛車先の歩を突き出す。第4局では3手目に▲6六歩と突き、糸谷得意の一手損角換わりを避けたが、本局の後手番では3度糸谷の得意とする角換わりを受ける姿勢を取っている。 *糸谷が湯呑みに手を伸ばす。関係者が退出していく様子を、不思議そうな顔で見つめている。全員が退出し終わったあと、糸谷の目付きが変わった。 * *【対局開始】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-75cb.html * *■ニコニコ生放送■ *加藤一二三九段>これまでの戦いは内容的に言っても森内竜王が苦しい展開になっています。初挑戦の糸谷七段は、なんといっても七番勝負で先に3勝しているので気が楽です。 3 7八金(69) ( 0:00/00:00:00) *第1局、第3局ではこの手では▲2六歩と指していた糸谷。この手も△3二金なら以下▲2六歩で同様に進む可能性があるが、△8五歩▲7七角△3四歩▲8八銀△4四歩なら矢倉模様に進む可能性もある。 * *【対局開始前の様子(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-da5b.html *【対局開始前の様子(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-db3d.html 4 3二金(41) ( 0:00/00:00:00) *森内は△3二金と上がり、「何でもどうぞ」の姿勢。矢倉にできるチャンスを放棄したところに、森内の後手番角換わりに対する自信とこだわりが感じられる。 5 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00) *◆糸谷 哲郎(いとだに てつろう)七段◆ *1988年10月5日生まれ、広島県広島市出身。森信雄七段門下。2006年、四段。2014年、七段。棋士番号は260。 *タイトル戦登場は1回。2006年、第37回新人王戦で優勝。 6 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00) *◆森内 俊之(もりうち としゆき)竜王◆ *1970年10月10日生まれ、神奈川県横浜市出身。勝浦修九段門下。1987年、四段。2002年、九段。棋士番号は183。 *タイトル戦登場は25回。獲得は竜王2期、名人8期(十八世名人)、棋王1期、王将1期の計12期。棋戦優勝は12回。 7 7七角(88) ( 0:00/00:00:00) *糸谷の今年度成績は22勝6敗(0.786)。 *通算成績は268勝116敗(0.698)。 *今年度の記録部門で現在対局数10位タイ、勝数3位タイ、勝率2位、連勝7位タイ。 8 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *森内の今年度成績は11勝20敗(0.355)。 *通算成績は860勝495敗(0.638)。 9 8八銀(79) ( 0:00/00:00:00) *対戦成績は糸谷4勝、森内3勝。居飛車党の両者だが、相振り飛車戦も1局指されている。第4局も森内が3手目に▲6六歩と角道を止めたことにより、糸谷は中飛車を選択。相振り飛車の可能性もあったが、ここでは森内は居飛車を選択し対抗形となった。本局は糸谷が先手番ということで、糸谷の角換わり志向はまず間違いないところ、対する森内の作戦が注目されるところだった。 * *■ニコニコ生放送■ *加藤一二三九段>ここで△4四歩と角道を止める作戦もあります。私もやりますが、10回やれば4回は勝てる作戦なので、そこまでおかしな作戦ではないのですね。ただ守勢になるのであまりやる人はいないです。 10 4二銀(31) ( 0:00/00:00:00) *銀を上がる。第3局にも出てきた銀上がりで、森内は糸谷からの角交換を求めている。 11 2二角成(77) ( 0:00/00:00:00) *角を交換する。糸谷の手が2三の歩に当たり、やや斜めを向いてしまったが、糸谷は気にするそぶりを見せない。 12 同 金(32) ( 0:00/00:00:00) *森内は2三の歩を直さないまま2二の金を取る。早くも盤上の勝負以外での戦いが勃発した感じだ。 13 7七銀(88) ( 0:00/00:00:00) *糸谷は7七に銀を上がって湯呑みに手を伸ばす。果たして先に2三の歩に触るのはどちらだろうか。 14 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00) *「直さない、直さないねー」と控室。また森内の顔は少し怒っているようにも見えると控室では言われているが、「ここまで来たら森内さんは直せないですね。問題は糸谷さんに直す気があるかどうか」と、対局以外のところでの雑談が始まった。 15 6八玉(59) ( 0:00/00:00:00) *糸谷の本棋戦成績は37勝12敗(0.755)。第20期が初参加で、第21期に5組ランキング戦を制し決勝トーナメント進出したが、そのときはパラマストーナメント3回戦で、羽生善治名人に敗れ姿を消した。今期はそれ以来の決勝トーナメント出場。三浦弘行九段、屋敷伸之九段、行方尚史八段を倒し挑戦者決定三番勝負に進出すると、そこで羽生善治名人に2勝1敗で競り勝ち、念願のタイトル初挑戦を決めた。 16 6四歩(63) ( 0:00/00:00:00) *一方、森内の本棋戦成績は107勝56敗(0.656)。竜王2期の実績を持っているが、なんといっても前期の竜王戦で、竜王位を9連覇中だった渡辺明竜王(現二冠)から奪取したのが記憶に新しい。今期はひと回り以上離れた若手から挑戦を受けているが、森内がここまで年の差の離れた若手を迎え撃つのは、第17期での渡辺明六段(当時)以来だ。 17 3八銀(39) ( 0:00/00:00:00) *本局の観戦記担当は高野秀行六段。本棋戦を主催する読売新聞紙上にて、後日掲載される。そちらもどうぞお楽しみいただきたい。 18 6三銀(62) ( 0:00/00:00:00) *本局の駒は、平田雅峰師作、菱湖書が使用されている。地元の方の所有物で、この竜王戦で使用していただきたいとの思いで作られた駒とのことで、1カ月ほど前に出来上がったばかりの品だそうだ。見た感じの印象では通常の駒に比べかなり白っぽいが、年季を帯びてくると茶色っぽくなってくるという。ただ茶色の駒を見慣れているものにとってはかなり白く感じるはずだが、両対局者は2つ出された駒のうち、声を合わせるように「こちらで」と白みのある駒を選択した。 * *【検分】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-42ac.html 19 9六歩(97) ( 0:00/00:00:00) *対局室に朝の陽の光が射し込む。しかし糸谷は気にするそぶりもなく▲9六歩と端歩を突き出した。 20 9四歩(93) ( 0:00/00:00:00) *森内もノータイムで突き返す。モニターでは陽の光がスモークが炊かれたかのように白く渦巻いている。 21 1六歩(17) ( 0:00/00:00:00) *今度はすぐに1筋の端歩に手を伸ばした。角換わりにおける端歩の突くタイミングには決まりがなく、非常に難しい。あまり早く突き過ぎると相手に変化される恐れもあれば、遅く突くと手抜きされる可能性もある。糸谷はこの辺りが突き頃と見ているようだ。 22 1四歩(13) ( 0:00/00:00:00) *禁断の地点と言われている2三を森内の手が通過し1筋に手を伸ばす。もちろん2三に触れるそぶりは見せない。森内にとって、そのときが来るのは△2四同歩、または△2四歩と応じるときのみとなりそうだ。 23 4六歩(47) ( 0:00/00:00:00) *ここ金沢市は石川県のほぼ中央に位置し、県庁所在地である。総面積は約467平方キロメートル。また人口は約46万人で、年々上昇傾向にある。金沢市は長年の都市文化に裏打ちされた数々の伝統工芸で知られる他、日本三名園の一つとして知られる兼六園、加賀藩の藩祖・前田利家の金沢入城に因んだ百万石まつり、さらに庶民文化(加賀宝生や郷土料理の治部煮等)などにより、観光都市としても知られて、2009年にはユネスコの創造都市に認定された(国内3番目。クラフト&フォークアート部門ではアジア初)。 *江戸時代には、江戸幕府を除いて、大名中最大の102万5千石の石高を領する加賀藩の城下町として栄えた。また第二次世界大戦中、アメリカ軍からの空襲を受けなかったことから、市街地に歴史的風情が今なお残っている。 *なお金沢という名前の由来は、山科の地(現金沢市郊外)に住んでいた芋掘り藤五郎が山芋を洗っていたところ、砂金が出たため金洗いの沢と呼ばれたという伝説からきたもので、その金洗いの沢は兼六園内の金沢神社の隣りにあり、現在は「金城霊沢」と呼ばれている。 * *【戦型は角換わり】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-e51c.html 24 3二金(22) ( 0:00/00:00:00) *湯涌温泉(ゆわくおんせん)は、石川県金沢市湯涌町、および湯涌荒屋町(旧国加賀国)にある温泉で、金沢温泉郷(湯涌、犀川峡、曲水、深谷の4温泉)を代表する温泉である。金沢市東南部の中山間地域に位置しており、金沢の奥座敷ともいうべき場所にある。718年(養老2年)に紙漉き職人が泉で1羽の白鷺が身を浸しているのを見て近づいてみると、湯が涌き出ているのを発見した。これが当温泉の発見および当温泉名の由来とされている。 25 4七銀(38) ( 0:00/00:00:00) *「かなや旅館」は、昭和8年に湯涌温泉の内湯として創業。鉄筋6階建ての本館と、本局の行われる木造数寄屋の離れ「青巒荘(せいらんそう)」の計24室からなっており、130人の収容が可能である。館内ではレディースクラブやエステといった女性に人気の施設がある他、宴会や貸切風呂、日帰り温泉などが用意されていて、様々なニーズに応えている。 * *【かなや旅館ホームページ】 *http://www.yuwaku-kanaya.com/ 26 5四銀(63) ( 0:00/00:00:00) *腰掛け銀に構える。 27 5八金(49) ( 0:00/00:00:00) *着手後眼鏡を上げ、手のひらを顔にかざす糸谷。心優しい棋士だけに、「やってしまったなー」という思いはどこかにあるかもしれない。 28 5二金(61) ( 0:00/00:00:00) *金を締まる。森内は玉の移動の前に先にこの金を上がる手を好む。もちろん△4一玉もあるところだ。 29 7九玉(68) ( 0:00/00:00:00) *対局開始から30分が経過。戦型は第1局、第3局同様、角換わり腰掛け銀となった。 30 4一玉(51) ( 0:00/00:00:00) 31 5六銀(47) ( 0:00/00:00:00) *「30分しか経ってないのにこんなに進んでいいのかね」と中村修九段。 32 4四歩(43) ( 0:00/00:00:00) *「早いねー、考えないね」(中村修九段) 33 6六歩(67) ( 0:00/00:00:00) *糸谷は北陸地方に来るのは小学生以来とのこと。記者は昨日、米原で糸谷と合流したが、「セーターが暖かすぎて、コートを着てくるのを忘れました。向こうは寒いんですかね」とスーツ姿でにこやかに話していた。その後現地まではマイクロバスで移動で、外に居る時間はほとんどなかったせいか、全く寒そうな様子を見せていなかった。ただやはりと言うか、周りを見渡してもコートを着ていないのは糸谷だけであったが。 34 3一玉(41) ( 0:00/00:00:00) *森内は北陸地方にはもう数えられないほど来ているとのことで、金沢はその中でも多い方だという。兼六園も行ったことがあるとのことだが、この湯涌温泉は初めてとのこと。「金沢はいつ来てもいいところなんですけど、この湯涌もいいですねー」と前日の夕食会で目を細めて記者に話すと、夕食会終了後1時間も経たないうちに、温泉上がりのホカホカした満足そうな森内とすれ違った。 35 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00) *前述したが今回は関係者一同の移動方法は、昨日、米原からかなや旅館のマイクロバスで現地に向かった。というのは、昨日は北陸地方は突風や雪、また霰に見舞われる悪天候で、「はくたか」や「サンダーバード」といった金沢へ向かう数少ない特急列車が、早朝に全て運休してしまうという事態に見舞わされたからである。ちなみに予定では関東組みは東京から「Maxとき」で越後湯沢までまず向かい、そこから「はくたか」で金沢に向かってマイクロバスで移動の予定。また関西組みは、新大阪から「サンダーバード」で金沢に移動し、そこで関東組みと合流してマイクロバスで移動という流れであった。 *思わしい移動手段が見当たらない中、それでも当然ながら検分もあれば、夕食会などが前日にあるのがタイトル戦。何より前日入りできなければ当日の対局も危ぶまれる。そこで事態を重く見たかなや旅館の安藤精孝社長が、猛烈に吹雪く中、米原まで自社バスを走らせて下さり、3時間以上掛けて到着すると、すぐに現地まで一向を乗せ折り返して下さった。到着時刻は16時ちょうど。全く問題なくこの竜王戦第5局が始められることになったのも、安藤社長のおかげであり、関係者からは感謝の言葉しかない。 * *【米原にて】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-8253.html *【関係者到着】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-9f8b.html *【前夜食事会】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-c4f8.html * 36 7四歩(73) ( 0:00/00:00:00) *同型含みの歩突き。控室では「富岡流ピンチか」の声が富岡八段に向けられている。富岡流とは角換わり同型において現れる仕掛けで、その仕掛けが有力とされているため、先手番の角換わりに根強い人気があると言っても過言ではない。 37 3七桂(29) ( 0:00/00:00:00) *本局では井上慶太九段と長谷川優貴女流二段による現地大盤解説会が両日行われる。 * *【日時】 *・12月3日(水)13時30分受付、14時開始(封じ手まで) *・12月4日(木)9時30分受付、10時開始(終局まで) * *【会場】 *湯涌温泉かなや 本館3階「医王」 *〒920-1123石川県金沢市湯涌イ56(電話番号076-235-1211) * *その他、詳細は以下のHPにて。 * *【現地大盤解説会のお知らせ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-9121.html 38 3三銀(42) ( 0:00/00:00:00) *また、NHK BSプレミアムでは、中村太地六段と井道千尋女流初段による大盤解説が放送される。司会は後藤理アナウンサー。 * *第27期将棋竜王戦 第5局・1日目 *12月3日(水)17:00〜18:00 * *第27期将棋竜王戦 第5局・2日目 *12月4日(木)16:00〜18:00 * *速報!将棋竜王戦 第5局 *12月5日(金)1:00〜1:10 * *【NHK BSプレミアム放送予定】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-f688.html * 39 4八飛(28) ( 0:00/00:00:00) *再び対局室に斜光が入っているが、どうやら対局者は気にならないと言っているそうだ。 40 4二金(52) ( 0:00/00:00:00) *右金を引き付ける。森内は固く囲ってカウンターを仕掛ける狙いだ。 41 8八玉(79) ( 0:00/00:00:00) *手順は違えど、第1局に合流している。 42 2二玉(31) ( 0:00/00:00:00) *森内も入城。ここからの焦点はまずはどちらから先に第1局から手を変えるかというところになりそうだ。 43 6八金(58) ( 0:00/00:00:00) *糸谷も右金を引き付ける。 44 2四銀(33) ( 0:00/00:00:00) *この手では△4三金直、△1二香、△3五歩、△7三桂、△9三香、△6五歩など非常に手の広いところだった。ただ森内はほとんど時間を使うことなく△2四銀を選択。第1局と同一の選択で、森内がこの形に重点をおいて研究をしていることは間違いない。 45 2八飛(48) ( 0:00/00:00:00) *手損になるが飛車を2筋に戻した。 46 3三銀(24) ( 0:00/00:00:00) *すぐに△3三に銀を戻る。▲4八飛△2四銀なら千日手模様だがそうはならない。 * *■ニコニコ生放送■ *加藤一二三九段>12月3日というのは「123」の日で、私にはとても良い思い出があります。昭和43年の十段戦七番勝負第4局の時のことで、12月3日から4日にかけて当時の大山康晴十段と戦いました。大長考の末に▲4四銀△同金▲6二歩という絶妙手を見つけ出しました。取れる金を取らずに先に歩を利かせたのが好手だったのです。この十段戦七番勝負は4勝3敗で勝って、初のタイトル獲得となったいい思い出です。 47 9八香(99) ( 0:00/00:00:00) *対局開始からまだ50分も経っていないが、駒組みは飽和点。糸谷はここで穴熊の作戦を示した。調べてみると、どうやらこの手は新手のようだ。 48 7三桂(81) ( 0:00/00:00:00) *「え、△7三桂。これは早くも序盤の勝負手ですよ。攻め合いは覚悟しないといけないですから」と富岡八段。 *10時になり、午前のおやつが出された。糸谷は練りきり(和菓子)とゆずハチミツジュース。森内の注文はなかった。 * *【10時のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/10-b3b0.html 49 9九玉(88) ( 0:00/00:00:00) *時間を掛けずに穴熊に潜った。 *「これはなんなんでしょうね。どうして考えずにさせるんだろう。これは仕掛けると思いますよ」(富岡八段) *対局開始から1時間が経過。ここで本局で初めて糸谷が席を立った。 *ややあって森内が2三の歩を形よく直す。ここは森内が寛大な姿勢を取ってみせた。 *糸谷が対局室に戻ってきた。もちろん2三の歩の直りには気付いているはずだが、気にする様子も見せず席に着いた。 * *10時頃、▲9九玉までの消費時間は、▲糸谷6分、△森内33分。 * *【穴熊へ潜る】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-cfd0.html * *■ニコニコ生放送■ *加藤一二三九段>△6五歩▲同歩に△7五歩と突くのが手筋で、攻め味を増やす手です。▲7五同歩は△6五桂で後手が良さそうです。なので▲6四歩を考えたいですが、△7六歩▲同銀△8六歩▲同歩△同飛▲8七銀△8四飛でこれも後手が悪いようには思えません。 *森内さんは△6五歩の仕掛けをじっくり考えたいですね。ponanzaは△6五歩にすぐ▲6四角を考えているんですか、なるほど。コンピュータもここで森内さんに「行けっ!」と言っているわけですね。 *対局開始から1時間で早くも駒がぶつかりそうですが、こういう局面を想定して長時間の研究をしていたというのが見てとれますね。 50 6五歩(64) ( 0:00/00:00:00) *「あ、行っちゃったね」(中村修九段) *「だから行くって言ったでしょ」(富岡八段) *両立会人は、ここで行くと早い終局も考えられることを懸念している。 *「これはもう封じ手の頃には、すごいことになってますね」(中村修九段) *果たしてこの予言は当たるのだろうか。 *控室では▲6四角△8四角が並べられている。駒がぶつかりようやく検討が始まったが、まだそこまで活気のあるものではない。 *森内が席を立つ。本局では糸谷が盤の前にほぼ居続けている。対局室を出ても歩くスペースが少なく、それも原因のひとつかと言われているが、この七番勝負が進むにつれ、少しずつ離席の数が減ってきている。 *現局面の実戦例はないが、2筋の歩が2五ならば1局指されている。今年5月に行われた第22期銀河戦本戦トーナメントCブロックの▲豊島将之七段−△深浦康市九段戦で、以下▲6四角△8四角▲4五歩△9五歩と攻め合いになった将棋を、豊島七段が勝ち切っている。 51 同 歩(66) ( 0:00/00:00:00) *「これも早いですねー。▲6四角との比較をもう少し考えてみたいところだとは思うのですが」と中村修九段。糸谷は似た形で指されていた▲6四角ではなく、▲6五同歩を選択。この手には8分しか使っていないが、果たしてどこまで研究しているのだろうか。 *森内の姿はまだない。ややあって森内が戻ってきて、「指されました」の声に「はい」と返す。 * *10時30分頃、▲6五同歩までの消費時間は、▲糸谷14分、△森内48分。 *その後も森内は考え続け、「森内先生、1時間使われました」の声が聞かれた。 52 9五歩(94) ( 0:00/00:00:00) *森内は全面戦争をけしかけに行く。 *「ほらほらほら、きたよ」と富岡八段。 53 同 歩(96) ( 0:00/00:00:00) *「まるで2日目の午後の早さだね。どうなるんだろう」(富岡八段) 54 7五歩(74) ( 0:00/00:00:00) *ほぼノータイムで7筋も突き出す。▲7五同歩には△6五桂▲6六銀△8六歩▲同歩△同飛が銀取りで調子がよい。 *ここでやや糸谷の手が止まっている。それでもまだ5分ほどで、長考というほどのものでもない。ただ控室にはホッとした空気が流れている。 * *【森内竜王が仕掛ける】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-8fdd.html * *■ニコニコ生放送■ *加藤一二三九段>私の第一感は▲2五桂です。△2四銀▲6六角に△4三金直は▲4五歩でいっちょうあがり。なので▲2五桂には△2四銀とは上がりにくい。▲6六角がぴったりすぎます。▲2五桂から▲3三桂成も嫌ですが、▲1五歩と攻められるのも嫌です。 * *※局後の感想※ *「▲8八銀がテーマでここまで指していたのですが、△8六歩▲同歩△同飛▲6四角△8五桂が嫌でやめました」(糸谷) *「それはでも自信がないですね。飛車も狭いですし」(森内) *「そうやるんでした。本譜は酷かったです」(糸谷) 55 2五桂(37) ( 0:00/00:00:00) *座りなおすと同時に銀取りに桂を跳ね出す。 *「終盤ですけど、ええ」と中村修九段。 *糸谷が本局2回目の離席。ただ1度目も、ウロウロするわけではなく、お手洗いに向かったという情報が入っている。 *金沢は朝方の大雪が嘘の様な青空が広がっている。運行を見合わしていた特急電車なども、徐行を保ちながら運転されているとのことだ。 *控室では中村修九段と富岡八段による本格的な検討が始まった。ここから△2四銀▲6四角△8三飛▲8八銀△8二角▲3五歩が示されている。以下(1)△9六歩は▲3四歩△9五香▲3八飛△4三銀▲4五歩が厳しいとのことで、現在は(2)△3五同銀と応じる手が調べられている。 *中村修九段は、「現局面は、糸谷さんは悪くないと思ってやっているはずです。3三の銀と2五の桂が変われば大きいですけど、△2四銀の利かされです。この▲2五桂は△3七角が生じていますが、▲2九飛△4六角成に▲6四角で馬を消せるのが大きく、そうなると先手の右辺はキズがあると言うより軽いと取れそうです。また糸谷七段は攻められても大したことがないと見ていると思います。元より受けるのが好きですし、私もそうで苦にならないんですが、後手に明確な攻めがないことを評価していそうです。私の見解もやや先手持ち。ただこれは棋風によって変わると思います」と見解を示した。 * *【中村修九段の見解】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-1dbd.html * *■ニコニコ生放送■ *加藤一二三九段>おお!やはり跳ねましたか。これが糸谷さんの用意だったんですね。(1)△7六歩▲同銀△8六歩▲同歩△同飛をちょっとやってみましょう。以下▲7七金右△8一飛▲3三桂成△同金直は▲8二歩△同飛▲5一角が厳しく、ちょっと後手がつらいです。 *では先ほど上がりにくいと話した(2)△2四銀はどうなのか。以下▲6六角に△4三金直▲4五歩で駄目と思いましたが、△4三金直ではなく△3三桂と上がればいい勝負ですか。なるほど。では△2四銀に糸谷さんがどうするかですね。 * *※局後の感想※ *「銀を逃げてもらえるものだと思っていたのですが、甘かったです。ここからは相当悲観していました」(糸谷) 56 6五桂(73) ( 0:00/00:00:00) *「うわー、攻め合いですね。攻め合いなんですね。これはもう互角ということはあり得ないです。どちらかに傾いています」と高野六段は興奮気味に話す。どうやらその様子から△2四銀を予想していただろうか。 *高野六段は、「ここは▲6六銀から考えたいです。▲8八銀も考えられますが、▲6六銀でよくなりそうに見えるんです。いつでも▲3三桂成と取れますし、取った銀を▲8八銀とうめることが出来ますし。ただ普通は▲6六銀でよくなるのは話がうますぎると思っちゃうところです。ところがですね、この糸谷という棋士は、そういうことを気にしないんですよね。そこが強みでもあります」と糸谷がどういうタイプかも踏まえながらここでの対応を解説した。 *青空が広がっていた現地は、いつしか大雪に変わっている。それにしてもなんと移り変わりの激しい気候なんだろうか。大げさに言えば、1日で四季を味わえるような感じだ。 *森内が席を立つ。 * *【外は吹雪】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-1a35.html * *11時30分頃、△6五桂までの消費時間は、▲糸谷20分、△森内1時間34分。 *ここまでの森内の時間の使い方は、8時間というタイトル戦を思えばかなり早いペースだろう。しかし糸谷のここまで20分というのは、これはもうなんと表現したらいいか分からない。そう思えるほど決断のよさが際立っている。 *控室での検討は一旦中断状態。午後からの解説会に備えての意見交換などが行われている。 * *■ニコニコ生放送■ *加藤一二三九段>▲6五同銀△同銀▲3三桂成△同金直に▲7三角△8一飛に▲7二銀と打つのはちょっと急にダサくなっちゃいますね。もっとスマートな手がありそうだけど。 * *※局後の感想※ *銀を逃げずに攻め合いにいったのが好判断で、ここで森内が有利に立った。 57 8八銀(77) ( 0:00/00:00:00) *予想に反して糸谷は▲8八銀と銀を引く。この手を指し糸谷も席を立った。対局室には冨田三段だけが残されている。ただこの後先に戻ってきたのは、意外にも糸谷。それもわずか10秒ほどの退室だった。糸谷はすぐには座らず、窓際に足を運び窓外を一望してから席に着いた。 *1分ほどして森内が戻ってきた。「指されました」の声に「はい」と返す。森内が席に着くと、今度は再び糸谷が席を外した。廊下で鉢合わせしないように、配慮したものだっただろうか。 *2分ほどして、糸谷が対局室に戻る。それにしても、毎局話題に事欠かない挑戦者である。 *糸谷は3分ほどで戻ってきた。すぐにお茶と水を交互に飲む。喉が渇くのだろうか。 *「森内先生、2時間使われました」の声。ただここは返答しなかった。 *対局開始から3時間が経過。時刻は12時を回った。 *控室では検討が再開。現局面から△8六歩▲同歩△7六歩▲6四角△3七角▲2九飛△8一飛▲6六歩△7七歩成▲同桂△同桂成▲同銀と進められた局面が並んでいる。ただそれは以下△9六歩▲同香△8四桂で後手が十分指せそうとのこと。 *森内が再び席を外す。ここは長考になりそうな雰囲気だ。 * *■ニコニコ生放送■ *加藤一二三九段>いやあ渋い手です。指せません。これは感心しました。よく引きましたね。驚き桃の木山椒の木です。次にこれといった狙いがあるわけではないですからね、いやあ冷静な手です。 * * * 58 3七角打 ( 0:00/00:00:00) *突き捨てや取り込みを入れずに単に飛車取りに角を打った。 * *【早い進行】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-83b3.html 59 2九飛(28) ( 0:00/00:00:00) *1分も使わずに飛車を引く。▲1八飛は△2六角成があるとは言え、▲3三桂成と銀を取ることができ、考えてもいい局面と言われた矢先の応手だった。 *糸谷が席を立つ。局面が進むにつれ席を立つ回数が少しずつ増えてきた。 *ただ今度はすぐに戻ってきた。外を見ると再び青空が広がっている。天気予報では今日はなんと表現されているのだろうか。 *ここは馬を作るなら△4六角成と△4八角成と2通りある。ともに△5七桂成の狙いはあるが、▲4七歩△6四馬▲6六歩が気になる。また後者は▲3三桂成〜▲6六銀のときにどうするかが問われる。▲3三桂成のときに、どう応じるかも悩ましく。形は△同金右だろうが、▲7一角が権利になるほか、桂を持っての▲2五桂や、▲3五歩といった攻めが厳しく残る。また△4八角成には▲6四角△8一飛▲7五角と柔らかく指す順も考えられるが、その場合は先手は△8一飛で△7二飛と攻め合いに来る順も、気をつけておく必要がありそうだ。 *この局面で森内が22分考えて昼食休憩に入った。ここまでの消費時間は▲糸谷31分、△森内2時間31分。昼食時の注文は森内が天ぷら定食、糸谷がとんかつ定食。対局は13時30分から再開される。 *「だいぶ開きましたね」と控室。1日目の昼食休憩の時点で、消費時間にちょうど2時間の差がついている。 * *【昼食休憩】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-bc24.html *【1日目の昼食】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-bc1d.html * *13時30分になり対局再開。糸谷は8分前に、森内は4分前には既に対局室に戻り、盤の前に座っていた。 60 8六歩(85) ( 0:00/00:00:00) *対局再開から6分。森内はここで8筋を突き捨てに掛かった。 *糸谷は前傾姿勢で考えている。 * *【対局再開(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-90ed.html *【対局再開(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-cc4e.html 61 同 歩(87) ( 0:00/00:00:00) *「普通は取りますね」(中村修九段) *「いやこれ先手いいですよ、いい」(富岡八段) *先手玉は穴熊に入っていて堅く、この玉を攻めようとすると労力が必要で反動がきついと言われている。 *「先手に指したい手が多いです。つまり△2四銀と逃げてくるような手は歓迎です」(富岡八段) 62 9七歩打 ( 0:00/00:00:00) *富岡八段は、「△7六歩では悪いと見た勝負手ですね。無理気味でも何でも、行くしかないと見ていると思います。それぐらい森内さんは追い込まれていますね。糸谷さんはいいと思っていたら、▲9七同香と香で応じると思います。喧嘩しない姿勢で。ただ▲9七同銀との是非は、運命の分かれ道かもしれないです。ここは10分やそこらでは指さないと思います」と見解を示した。 * *※局後の感想※ *「△9七歩はやりすぎでしたか」(森内) *「いえ、そうかと思いました」(高野六段) *「だいぶ悪くなっていることにこの辺りで気付きました」(糸谷) 63 同 香(98) ( 0:00/00:00:00) *「マジ?」(富岡八段) *糸谷は5分も満たないほどで着手。 *「いいと思ってますね。間違いなく。それにしても早過ぎやしませんか」(富岡八段) *しばらくして富岡八段はここで△4八角成を予想した。 *「持たれておいて意外に難しいですか。よくはないですけど。ただその手を指せば、間違いなく今日中には終わらないですね」と長い戦いになる順を示唆した。 *控室に大盤解説会の聞き手を務める長谷川優貴女流二段が来訪。解説を務める井上慶太九段も無事到着した。なお井上九段の第一声は、「めっちゃ早いですねー」だった。 *糸谷が正座から胡坐に足を組み替える。その後眼鏡を外してお茶を飲んだ。モニターに映るその飲みっぷりもとてもいい。 *14時すぎ、「森内竜王、3時間使われました」の声。 * *日本将棋連盟のHPでは、第28期竜王戦ランキング戦の組み合わせが発表になっている。ここでは敢えて掲載を伏せるが、あの棋士とあの棋士が対戦など、コアなファンなら見ていて1時間は優に楽しめるはずだ。 * *【第28期竜王戦トーナメント表】 *http://www.shogi.or.jp/kisen/ryuuou/ * 64 4八角成(37) ( 0:00/00:00:00) *富岡八段の予想が当たった。これなら長い戦いになりそうと言われており、控室にホッとした空気が流れている。 *糸谷は席を外している。戻ってこの△4八角成を見たとき、どういう表情を浮かべるだろうか。 *森内は眼鏡を取り出して掛けた。かなり大きな眼鏡で、中村修九段も、「あれ?森内さん眼鏡掛けてますね」と驚いている。 *糸谷は5分以上経ってから戻ってきた。席に戻る前に立ったまま盤上をしばらく見つめていたが、ここでは大きな動きは見せなかった。 *森内は糸谷が戻ると眼鏡を外した。掛けていたのは3分ほどの間のみだったが、どういう意味があったのだろうか。 *森内が席を外す。控室には中国新聞の記者の方が来訪している。升田幸三実力制第四代名人以来、地元広島に56年ぶりのタイトルホルダー誕生の瞬間をひと目見ようと応援に駆けつけたそうだ。また糸谷が本局でタイトルを獲った場合、明日の新聞では3面ほど割いて特集する意向も示されている。 * *14時20分頃、△4八角成までの消費時間は、▲糸谷35分、△森内3時間1分。 * *森内が戻ってきた。しばらくして足を胡坐に崩す。長期戦の様相を呈してきただろうか。 *14時31分、「糸谷先生、1時間使われました」の声。 * *【大盤解説会】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/ * *■ニコニコ生放送■ *加藤一二三九段>△7六歩の取り込みを入れずに単に△4八角成ですか。この手は思いつきませんでしたが、なるほど好手ですね。5七の地点を受けて▲6六角と打つと△7六歩と取り込まれて、次に△7七歩成▲同桂△8六飛と走られる手があるのでこれは先手嫌ですよ 65 6五銀(56) ( 0:00/00:00:00) *14時46分、糸谷の手が動いて▲6五銀と桂を取った。同時にすぐに席を立つ。これには△6五同銀の一手。△4七馬と馬で取りに行くのは、飛車を逃げずに▲5四銀と勝負されて危険だ。 66 同 銀(54) ( 0:00/00:00:00) *昨日は夕食会の撤収時に、チェスの話に花が咲いた。先日ニコニコ生放送内で行われたイベントで、元世界チャンピオンのカスパロフ氏が羽生善治名人と対戦した時の話である。森内は興味深そうにドワンゴの方達にそのときの様子を聞いており、カスパロフ氏が羽生名人のチェスの棋風を研究していたという話に及ぶと、「そんなことがあるんですねー」と大きく顔を崩した。 *15時を迎え、午後のおやつの時間となった。森内は苺のショートケーキとホットティー、糸谷は蛇玉もなかとアイスティーをそれぞれ注文した。 *少し前までは先手指しやすいが言われていた控室だが、現在はそんな雰囲気はない。後手から△7六銀とし、△8七歩や、△4七馬〜△6五馬とする厳しい順があるのがその理由だ。むしろ現在は後手がやれるという声も出ているほどだ。 *15時10分頃、おやつを食べ終えた糸谷が席を立つ。 * *現局面までの消費時間は、▲糸谷1時間14分、△森内3時間7分。 * *【15時のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/15-43b0.html 67 3三桂成(25) ( 0:00/00:00:00) *15時18分頃、微妙なタイミングで銀を取った。△3三同桂と△3三同金右が考えられそうだが、受けの利く形にするなら△3三同金右だろうか。ただいずれにしても先手からは▲3五歩がきそうだ。 *富岡八段と高野六段による検討では、現局面から△3三同金右▲2五桂△4三金寄▲1五歩△7四桂が示され、それは後手まずまずとされた。以下▲8七銀打とうめると△2四歩の催促がうるさい。よって▲2五桂と打たずに▲1五歩△7四桂▲8七銀打が調べられている。 * *【15時過ぎの控室】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/15-e0a9.html * *※局後の感想※ *「こちらの歩がなくなりましたし、▲1五歩がここで来るものと思っていました」(森内) *以下△7六銀▲7七歩△6七歩▲7六歩△6八歩成▲同金△4七馬▲7九飛△7六歩▲1四歩△1二歩が予想手順だが、 *「本譜よりだいぶよかったですね。悪いことには変わりはありませんが」(糸谷) *この手で森内の有利が拡大した。 68 同 桂(21) ( 0:00/00:00:00) *15時35分頃、森内は桂で応じる。 69 8七銀打 ( 0:00/00:00:00) *「ハー」とため息をひとつついてから銀を打つ。△7六銀や△7四桂を未然に受けた一手で、▲3五歩だけで勝とうとしている。 *糸谷は眼鏡を外し顔を覆う。やがて手を目にあて、2、3度こすった。食後でやや眠気の来る時間だろうか。 *検討陣から、「先手玉が堅すぎますね。なんですかこれは」という声が上がった。確かに先手玉は金銀4枚の金銀穴熊に囲われている。2九の飛車も現時点では攻めというより、潜在的に受けとして働いている。 * *■ニコニコ生放送■ *加藤一二三九段>△7六歩と取り込んでから△7五桂や、△7六銀と出たり、△3八馬と飛車をいじめる手も考えられます。 70 7六銀(65) ( 0:00/00:00:00) *打たれた銀を目標に攻め込んで行く。 71 3五歩(36) ( 0:00/00:00:00) *「あー、またすぐ指しちゃったよー」と検討陣。この手はほぼノータイムで指された。△7六銀をどうやら本線に考えていたようで、▲8七銀打としてから糸谷の読み筋通りに進んでいるのは間違いない。 *糸谷が席を外す。最初の2時間ほどは、1時間に1度ほどのペースだったが、ここにきて10分に1度ほどになっている。 *検討では△7四桂が調べられている。以下▲7三角は△8六飛と勝負され先手陣はかなり危険な格好だ。また▲7六銀とし、△同歩に▲8七銀打を狙いに行くのは、▲7六銀の瞬間に△9八歩▲同玉△8六桂が利く。よって△7四桂には▲9八桂と受けておいてどうかと言われている。 *さらに検討が進み、▲9八桂以下、△4七馬▲7九飛△4六馬▲3四歩△4五桂▲4九飛でどうかと言われている。「だまし合いですね」と検討陣。この手順は後手は3三の桂を助けるための作りを、また先手は3三の桂を逃がしにきたときのカウンターを見据えながら戦っているのが分かる。 * *【高野六段の見解】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-0b79.html 72 7四桂打 ( 0:00/00:00:00) *16時過ぎ、糸谷が席を外した瞬間に森内が着手。ここに据えるのが急所で、先手の穴熊は上部が弱点。その意味でもこの△7四桂や、香を持っての△8四香などが厳しい手となる。 *検討では現在、千日手になるような変化も飛び出しているようだ。その順とは現局面から、▲9八桂△4七馬▲4九飛△6五馬▲3四歩△8七銀成▲同銀△7六銀▲8八銀……。最後の▲8八銀で▲7六同銀は△7六馬が飛車取りと△9八銀や△8六桂を見て後手勝勢。また△8七銀成で△6七歩▲同金直△同銀成▲同金△5八銀と飛車金両取りに向かうのは、▲3九飛で歩が3四まで伸びてきており、後手としても踏み込めない順だという。 *糸谷が考えている。やがてコップに半分ほど入った水を、ゴクゴクと飲み干した。森内は席を外す。 *時刻は17時を回った。NHK BSプレミアムの1日目の放送が開始。解説が中村太地六段、聞き手は井道千尋女流初段とフレッシュなコンビだ。 * *△7四桂までの消費時間は、▲糸谷1時間39分、△森内3時間50分。 * *【クリスマスフェスタのお知らせ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-94a6.html *【糸谷七段が長考】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-6b0c.html * *■ニコニコ生放送■ *加藤一二三九段>▲3四歩は△9六歩と攻め合われて駄目そうです。▲5六角も△9六歩▲7四角△9七歩成▲同桂に△9五香が大きい手で、▲9六歩と受けても△6七歩でこれは先手が勝てない勝負です。となるとこの△7四桂が好手だったように思えます。こういう手をさらりと打てるというのが今の森内さんの調子の良さを物語っている気がします。△4八角成も思いつきませんでしたが、この△7四桂も素晴らしい。 *いやいやしかし▲5五角という手がありますか。△8一飛▲3四歩△9六歩に▲4四角と出て、次に▲2五桂と打てればほとんど詰めろになるので、ここまで進めば先手を持って自信が出てきた気がします。 *え?▲5五角には△8七銀成▲同銀△8六飛が成立するんですか。後手は銀を2枚持っているから、そうか、駄目か。▲5五角に飛車を引いてくれれば良いんですけどねえ、駄目ですか。それにしても良い将棋ですね。一手指した方が良く見えます。 73 9八桂打 ( 0:00/00:00:00) *17時10分頃、1時間以上考えて9八に桂を打った。これは9八の地点を埋めながら△8六桂に▲同桂を用意したものだが、辛抱した意味合いが強そうだ。 *着手後、糸谷はうつむきながら席を立つ。先ほどからやや覇気のない姿が目立つようになってきた。 *3分ほどして席に戻った糸谷は、ひとつ欠伸をする。このあたりの物怖じのなさは、大物を感じさせる所以だ。 * *17時15分頃、▲9八桂までの消費時間は、▲糸谷2時間45分、△森内3時間50分。 * *■ニコニコ生放送■ *加藤一二三九段>▲3四歩は権利として取っておいて、相手の攻めを遅らせようと9八に桂を打ちました。プロなら誰でも思いつく手なのですが、ひと目△6七歩と打ちたくなります。 74 4七馬(48) ( 0:00/00:00:00) *「森内先生、4時間使われました」の声を確認したあと着手。ここで▲7九飛と▲4九飛の変化に分かれるという。▲4九飛には△4八銀が予想されているが、その銀が打たせ得なのか、打たれ損なのかは定かではない。 * *■ニコニコ生放送■ *加藤一二三九段>△4七馬を入れてからでも△6七歩と打てると。第一感は▲3九飛とやりたいです。▲3四歩をより厳しくしようという手ですが、△6七歩▲同金直△同銀成▲同金に△4八銀の俗手があるので少しやりにくいですかね。 75 7九飛(29) ( 0:00/00:00:00) *ここは4分ほどで着手。▲4九飛は△4八銀で打たれ損という判断をしたようだ。 *森内が棋譜用紙に手を伸ばす。細かく頷きながら棋譜を確認しているが、恐らく森内は自身の動きに気がついていないだろう。 *先手からは次に▲3四歩が来る。それを防ぐなら△4六馬だが、その前に一本△9六歩を利かしておく手もある。▲同香と取らせていつでも△9七歩を作る狙いだが、△9六歩には▲同銀の可能性もあるので微妙な利かしになる。また3三の桂を見捨てていくなら△6五馬で、それは▲3四歩△8七銀成▲同銀△7六銀▲8八銀の千日手コースが有力で、打開の権利は後手にありそうだ。 *控室で封じ手用紙や封筒の準備を済ませた富岡八段が対局室へ向かう。まだ中村修九段は対局室に入っていないが、記録係の冨田三段にある程度封じ手になっても影響しなさそうな配置を、書かせておこうという考えがあったのかもしれない。 *17時48分、森内が「図面を作っておいて下さい」と冨田三段に告げる。どうやらこの局面で1日目の指し掛けとなるようだ。 *18時になり、「封じ手の時刻になりました。森内竜王の手番で封じて下さい」と中村修九段が告げると、糸谷は胡坐から正座になり、森内はスッと立ち上がって封じる意思を示した。 *18時5分、森内が対局室に戻ってきた。糸谷が封じ手を入れる封筒にサインをすると、森内が中村修九段に封筒を手渡し1日目の終了となった。 *この手の消費時間は35分。1日目の消費時間は、▲糸谷2時間49分、△森内4時間35分。2日目は明日9時より開始される。 *封じ手予想としては、富岡八段は△9六歩、井上九段は△8五歩、長谷川女流二段は△4六馬を候補に挙げた。これらはいずれにしても△4六馬と歩を使った攻めのコンビネーションを模索してのものだが、冨田三段の予想する△6五馬や、ニコニコ生放送内での加藤九段の△6七歩は、それらとは違いこのまま攻め倒しを狙っているものである。また中村修九段は△3五歩(以下▲3四歩に△2四歩)で歩の補充を目指しながら受けに回る順を示した。誰一人一致のない手広い中、果たして森内の選択は何だろうか。 * *現地は2日目の朝を迎えた。糸谷は8時40分頃対局室に入室。森内は8時47分に入室。ややあって駒が並べられ始める。8時52分、1日目の指し手が盤上に再現されていく。やや早いペースで進められている。 * *【封じ手封筒の用意】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-47a3.html *【森内竜王が76手目を封じる】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/76-6962.html *【封じ手の様子】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-bfc0.html *【封じ手予想】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-7809.html *【ニコニコ生放送(第5局2日目)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-a4ce.html * *■ニコニコ生放送■ *加藤一二三九段>▲7九飛はどうだったか。▲3九飛ともう少しじっくり比較したかった気がします。ここは満を持しての△6七歩に、▲同金直△同銀成▲同金に△9五香の1歩補充が大きな手です。取っている暇はないので▲3四歩ですが、△9七香成▲同桂△6六歩▲3五香△6七歩成▲3三歩成△同金右▲同香成△同金▲2五桂までは進みそうです。森内さんはここで封じ手にしてもおかしくないですね。 * *高橋道雄九段>おはようございます。2日目の解説を務める高橋です。今日はよろしくお願いします。封じ手は△8六桂を予想します。▲同桂は△8五歩から歩をどんどん伸ばせば自然に良くなります。この時に▲7四桂と逃げられないのが△4七馬と引いた効果ですね。 76 8七銀成(76) ( 0:00/00:00:00) *8時57分、中村修九段によって封じ手が開封された。森内の行った封じ手は△8七銀成。現地では誰一人予想しなかった手で、井上九段は、「ぬおー、単に」と驚いた様子を見せた。 *9時になり、「それでは定刻となりましたので再開してください」と中村修九段が告げる。森内は小さく「お願いします」と呟き礼をする。糸谷はほぼ無言で頭をさげた。なお、2日目のニコニコ生放送で、解説を担当する高橋道雄九段の封じ手予想は、△8六桂だったようだ。また聞き手は飯野愛女流1級が務める。 * *【ニコニコ生放送(第5局2日目)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-a4ce.html *【2日目開始の様子(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-975c.html *【2日目開始の様子(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-975c.html *【封じ手は△8七銀成】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-9976.html * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>△8七銀成は予想外でした。これは千日手コースもあるかもしれません。普通は7六に銀を置いておいたまま攻めたいです。▲8七同銀に△7六銀▲8八銀と進むと「昨日は昨日、今日は違う将棋をやりましょう」ってことになりそうです。 * *※局後の感想※ *「この手で△8六桂▲同銀△6七歩▲同金直△同銀成▲同金△6六歩を嫌がっていました」(糸谷) *「ありそうですね」(森内) 77 同 銀(88) ( 0:00/00:00:00) *「まさか、朝から」と声が上がる。まさかが指しているのは、ここから△7六銀▲8八銀△8七銀成▲同銀△7六銀とする千日手のこと。糸谷に回避の順は難しく、それを選ぶかどうかは森内が現局面をどう見ているか次第ということになりそうだ。 * 78 6五馬(47) ( 0:00/00:00:00) *「さすがにしないですね。千日手には」と控室。後手番で千日手を選ばなかったことで、現局面における森内の形勢判断を見て取れる。 *ただ、まだ完全に千日手がなくなったわけではなく、ここから▲8八銀△7六銀で、将来的に△8七銀成▲同銀△7六銀▲8八銀が繰り返される可能性はある。ただそれはあくまで権利で、▲8八銀には2歩持っての△8五歩▲同歩△8六歩(▲同桂△同桂▲同銀△9八銀の狙い)を狙ったのがこの△6五馬と引いた大きな意味の一つ。現在は後手は1歩しかなく、上記は理想順だが、足りない1歩は3五や9五に落ちている。 * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>この馬は非常に良い位置で、いいタイミングで引ければ一気に先手玉の詰みまで見ることができます。先手としては▲3四歩と取り込んでいるような余裕はないので、この馬を何とかしないといけません。 79 5六角打 ( 0:00/00:00:00) *攻防の角で応戦する。▲8八銀は8七の銀と9八の桂が居なくなったときに△9八銀までの詰みがあり、得ばかりではないと判断したのかもしれないが、この瞬間に殺到される恐れもあり、勝負手でもある。 * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>▲5六銀では△6六馬と入られてまた何か受けないといけない、▲6六歩は喜んで△同桂、▲7七桂は穴熊をやる人の手ではない、ということで▲5六角と馬を消しに行きました。△5五馬▲7七歩△6六桂に▲3四歩と取り込むか。 * *※局後の感想※ *「この手で▲8八銀はあまり考えませんでした。△8五歩▲同歩△9五香▲同香△8六歩▲9六銀△7六銀で、△8五銀もあるので受からない形だと思います。▲5六角を打たないと、勝てる形がないと思っていましたし」(糸谷) 80 8七馬(65) ( 0:00/00:00:00) *森内は5分ほど考えて馬を切った。▲8七同金△7六銀▲8八銀△8七銀成▲同銀△8六桂が予想手順で、「(後手の攻めが)とても振りほどけるとは思えない。午前中に終わるんじゃないでしょうね、おいおいおい」と井上九段は焦った様子を見せた。 * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>バサっと行きましたか。これはもう「勝ちました」という手ですよ。ちょっと馬を切るのは早いかと思っていましたが、銀を3枚持っているので▲8七同金△7六銀で先手だけ終盤戦ですか。 * * * * 81 同 金(78) ( 0:00/00:00:00) *現地大盤解説会は、昨日に続き、井上慶太九段と長谷川優貴女流二段によって行われる。 * *【日時】12月4日(木)9時30分受付、10時開始(終局まで) *【会場】湯涌温泉かなや 本館3階「医王」 *〒920-1123石川県金沢市湯涌イ56(電話番号076-235-1211) * *また、東京・将棋会館、関西将棋会館でも大盤解説会が行われる。東京・将棋会館は、解説が藤井猛九段、聞き手は室谷由紀女流初段。また関西将棋会館は、解説が桐山清澄九段と西川和宏五段、聞き手が室田伊緒女流二段。 * *(東京・将棋会館) * *【日時】12月4日(木)16時30分開場、17時開始 *【会場】将棋会館2階・研修室 * * *(関西将棋会館) * *【日時】12月4日(木)16時30分開場、17時開始 *【会場】関西将棋会館4階・多目的ルーム * *【2日目の大盤解説会のお知らせ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-9553.html * * 82 7六銀打 ( 0:00/00:00:00) *すぐに△7六銀とかぶせていく。▲8八銀は後手に好き放題されそうなので、▲7六同飛が示されている。ただその場合、早い決着も覚悟しなければならない。 *ただ▲7六同飛以下、△同歩▲3四歩△7九銀▲3三歩成△同金右▲3四歩△8六桂▲同桂△9八歩▲同玉△8六飛で先手攻め合い負けが現時点で出されている見解で、「いくら受けるのが好きだといっても」と、受ける青春の異名をとった中村修九段も、顔をしかめながら継ぎ盤を見つめぼやいている。 *糸谷が考えている。井上九段は、「▲5六角が早かった割りにここで考えているのはどうなんですけね」と首を捻る。 *控室には外国人のお客様が来訪している。12月6・7(土・日)に行われる第6回国際将棋フォーラムin静岡に、ブラジル代表として参加するジェームス・マン・ド・トレドさんで、将棋歴は7年とのこと。明日、5日に行われる前夜祭の前に、金沢に来訪されたとのことだ。 * *【竜王の攻め】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-a737.html 83 同 飛(79) ( 0:00/00:00:00) *叩き切るというのがピッタリの手つきで糸谷は▲7六同飛を着手。2日目に入り、糸谷は勝負勝負と前に向かっている。 * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>1時間くらい考えてもおかしくないとは思うんですが、決断力がありますね。現代の棋士は「こういう手をやる」って思ったら本当に早いです。 84 同 歩(75) ( 0:00/00:00:00) *ここはノータイムで飛車を取る。 *「▲3四歩は△7九銀で悪そうです。だとすれば、ここで辛抱する順も考えられます」(井上九段) 85 8八銀打 ( 0:00/00:00:00) *「それですかー」と井上九段。粘りにいった手で、すぐには終わる見込みは少なくなった。ただ現実的にゆっくり指されたときに、好転は難しそうと言われている。例えば現局面から△8五歩▲同歩△同飛▲8六歩△3五飛の十字飛車で、飛車を世に出される順。先手は▲7四角と桂は取れるものの、△3九飛成▲6九歩に△6七歩がピッタリになる。先手の穴熊は5六の角が居なくなると、いくらでも手のつく形だ。 *9時49分、森内が眼鏡を掛ける。「あ、眼鏡きましたか。必殺ですね。ここぞという感じで。いい感じに見えます」と井上九段。 * *9時50分頃、▲8八銀までの消費時間は、▲糸谷3時間14分、△森内4時間47分。 *その後、「森内先生、5時間使われました」の声があった。 *10時。2日目午前のおやつの時間となった。糸谷はチーズケーキとゆずハチミツジュース。森内の注文はなかった。糸谷は先日倉敷で行われた西遊棋イベントでのトークショー内で、「おやつを断ってもいいことを知りませんでした。あと、午前中におやつを食べると、お腹が重たくなります」と言うようなことを話していたが、この二日間、両日とも注文している。 * *【10時のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/10-b3b0-1.html * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>これも現代感覚で、堅さは正義です。穴熊に慣れている人はよく自陣に駒を打つんですね。後手は駒の損得がないので不満はないです。あとは穴熊を攻略できるかどうか。 次の一手は△6七歩が私の第一候補ですが、ponanzaは△8六桂▲同金△7七銀を読んでいます。△8六桂に▲同桂は△8五歩▲7四桂△8六歩▲8二桂成△8七歩成と飛車を取らせている間に攻められます。 86 7七銀打 ( 0:00/00:00:00) *「うわ、やった、最強の攻め」(中村修九段) *「予想していなかったですね。こんなことしたら大変なんじゃないの」(富岡八段) * *※局後の感想※ *「この手か飛車をおろされる手かと思っていました」(糸谷) *「△8五歩はないですか」(高野六段) *「▲同歩に△9五香ですか」(糸谷) *「いえ、▲同歩に△同飛で」(高野六段) *「あ、そんな筋が。うっかりしますね。見えにくい筋です。確かに明快ですか。なるほど」(糸谷) *「そうでしたか。△7七銀はやり過ぎかとは思ったんですけど」(森内) *ここで少しばかりだが、差が縮まった。 87 同 桂(89) ( 0:00/00:00:00) *「形勢に関係なく早いですねやっぱり」と控室。 88 同 歩成(76) ( 0:00/00:00:00) *▲7七同金上で先手陣の離れ駒がなくなるが、それ以上に森内は剥がしていることを評価している。 89 同 金(68) ( 0:00/00:00:00) *ここで△3九飛の王手が厳しいようだ。▲7九歩には△7五桂が厳しい。 *糸谷が席を外す。退室の際は背中が丸まっていて、寂しそうな雰囲気が漂っていた。 90 7六歩打 ( 0:00/00:00:00) *飛車の王手はいつでも入ると見て、金頭を叩いていった。どちらの金で取っても△6四桂が角金両取りとなる。 91 同 金(87) ( 0:00/00:00:00) *現地ではニコニコ生放送とのティロフォンショッキングが行われている。電話口には中村修九段。高橋九段との会話の中で、「昨日の夜、長谷川さん(女流二段)と温泉卓球を行いましてね。長谷川さんは人生初卓球だったそうです。長谷川さんと卓球をしたい人は是非現地まで来てください」と言って笑いを取っていた。高橋九段は電話終了後、ニコニコ生放送内にある現地ポスターを見て、「花咲くいろはの舞台だったのか、なぜ立会に呼んでくれなかったのか」と嘆き節で語っていたとのこと。 * *【中村修九段がニコニコ生出演】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-4d6a.html 92 6四桂打 ( 0:00/00:00:00) *厳しい両取り。現状は▲角銀、△飛桂の交換だったが、これで後手がやや駒得になりそうだ。 *糸谷は眼鏡を外してうつむいている。 * *10時30分頃、△6四桂までの消費時間は、▲糸谷3時間19分、△森内5時間21分。 * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>▲8九角と逃げると△7六桂▲同金△3九飛▲7九歩に△6八銀でもいいですし、△3五飛成とする手もあるかもしれません。 93 8九銀打 ( 0:00/00:00:00) *角を見捨てて自陣の強化に努めた。「どちらでもどうぞ」と差し出せれた森内。果たして角金のどちらを取るか。 * *※局後の感想※ *「この辺りは仕方がない、仕方がないですね。自分から自爆しないように」(糸谷) 94 5六桂(64) ( 0:00/00:00:00) *角の方を取った。攻防に働く敵の大砲を外し、有利の拡大を狙う順だ。 95 同 歩(57) ( 0:00/00:00:00) *駒割りは飛車銀交換で後手の駒得。歩切れだがいつでも補充は可能であり、森内優勢と見て間違いないようだ。 96 3九飛打 ( 0:00/00:00:00) *攻防に飛車をおろす。▲3四歩なら△同飛成と歩切れを解消しながら面倒を見るつもりだろう。 *糸谷が棋譜用紙を手に取る。井上九段と富岡八段による現地大盤解説会では、「難しくなったのでは」と言われているという。また富岡八段は、「ひょっとしたら糸谷さんは、自分の方がいいと思って指しているかもです」と見解を述べ、井上九段は「長くなりそうです」と見通しを述べていたそうだ。 97 7八銀打 ( 0:00/00:00:00) *金銀5枚の穴熊を構築。ただ下に居た方が堅いとされる金が三段目以上に居るため、そのまま評価するのは危険だろう。 *10時50分、「森内先生、残り2時間50分です」の声。 *大盤解説を終えた井上九段が控室に。 *「▲7八銀打はよく打ったなという感じです。▲3四歩くらいでもよく分かりませんでしたが」とこの手についての感想を述べた。 *糸谷が席を外した。ただ30秒も経たぬ間に戻ってきた。どうやらお手洗いではなく、ウロウロのようだ。 * *【大盤解説会場より】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-f2dd.html * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>】△3五飛成▲7五歩に先手玉を攻めに行くのは大変なので、△8一飛〜△2一飛と飛車を逃がしてから入玉しにいく展開もあるかもしれません。先手はあの穴熊の中から出てくるのは難しいです。 * *※局後の感想※ *「仕方がないですね。他の手だと△5七角を打ちやすくなると思いました。これでも打たれるのが嫌だったんですけど、ちょっと打ちにくいかなと思って」(糸谷) 98 6八銀打 ( 0:00/00:00:00) *「あ、攻めていきましたね、攻めていったら▲7八銀打と打った価値が出るのではないでしょうか」(井上九段) * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>攻めるならここなんですが、86手目の局面より今の方が先手陣は堅くなっていますよね。後手がちょっと攻めあぐねているように見えます。△7七銀成▲同金と1枚金を剥がしてから△3五飛成として、上部から攻めようということでしょうか。しかし相入玉を目指さずに攻めを見ているんですね。森内さん、男らしいです。 * *※局後の感想※ *「勇み足でしたね。△5七角でしたか」(森内) *「それが嫌でした。それには▲3四歩ですかね。▲6九歩は先手じゃないので打ちにくいです。それでも打ちたいんですけど」(糸谷) 99 6九歩打 ( 0:00/00:00:00) *徹底抗戦を見せる糸谷。対して△6九同銀不成は、▲3四歩のときに△同飛成と応じる手がなくなる。 *「後手を持って攻め切るのは大変です。ただこの▲6九歩はここまですぐに打つ必要があったのか。まあでももう打っちゃったので」と高野六段。先手に選択肢が増えてきたニュアンスで言い回しており、すなわち、糸谷が盛り返していると見ているようだ。 *検討では△6九銀不成▲同銀△同飛成▲7八銀打△1九竜▲3四歩△5七角▲7三角△8一飛成▲5五角成の攻め合いが示されている。△6九銀不成に▲3四歩は攻め合い負けと見た順で、先手のしぶとさに後手側を持って指す井上九段も思わず「うーん、難しい。しんどくなってきました。なんかつらくなってきた時代に後手側に座っちゃいましたね」とため息交じりの声を上げた。 *11時20分頃、「森内先生、残り2時間です」の声。糸谷は棋譜用紙を手に取り、進行を確認した後、席を立つ。と同時に森内の手が動いた。 100 同 銀(68) ( 0:00/00:00:00) *7七の金を取るのは▲7七同銀左や▲7七同金で先手陣が見えなくなる。ここはバリケードにさせないよう歩を取り払った。 *糸谷が対局室に戻る。手数は100手に達した。 * *※局後の感想※ *「△7七銀成〜△1九飛成でいいのは分かってたんですが、それなら△6八銀を打たずにが普通ですので。今更その順は選べなかったです」(森内) *ここでまた少し差が縮まった。ただ序盤のリードは大きく、ここはまだ森内優勢だった。 101 同 銀(78) ( 0:00/00:00:00) *入室の際、胸と顔をやや反らせて盤を見つめるのが糸谷の癖。指されているのかどうか確認するための動きだ。 102 同 飛成(39) ( 0:00/00:00:00) *ノータイムで銀を取る。残り2時間を切っている森内は、残り時間もきになり始める頃だ。 103 7八銀打 ( 0:00/00:00:00) *再び金銀5枚の穴熊を構築。 104 1九龍(69) ( 0:00/00:00:00) *手順に香を補充。どうやら3三の桂は差し出して戦うつもりだ。 * *【11時30分の局面】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/1130-ea2e.html 105 3四歩(35) ( 0:00/00:00:00) *ここで久々に攻めの手を指した。2日目に入ってからここまでは一手の攻めも見せていなかっただけに、ひと息つけたのではなかろうか。 *森内は攻め込むとすればこのタイミング。次に▲6九歩と打たれてしまうと、先手陣はどこから攻めていいかわからなくなる。 106 7五歩打 ( 0:00/00:00:00) *金を吊り出す叩き。▲7五同金に△5七角や△6六銀が考えられそうだ。 * *※局後の感想※ *手順前後の一手。ここは先に△9五香なら明快だった。以下▲同香はそこで△7五歩なら森内の目指す形となった。 *「△9五香に▲6九歩は打ちづらいです」(糸谷) *「先手陣が下に詰まっていますからね。攻めやすそうです」(森内) *ただ、この手もそこまで罪の大きいものではなかった。 107 同 金(76) ( 0:00/00:00:00) *ほぼノータイムで歩を取り席を立った。△6六銀▲7六金引の進行が示されている。 108 9五香(91) ( 0:00/00:00:00) *ここが勝負所とばかりに香を走らせた。 *「これは相当強烈な寄せを狙ってそうですね」と富岡八段。 *糸谷が対局室に戻る。取る一手に映るが、ここはすぐには取らず、本局1番の前傾姿勢で考え始めた。あるいは読みになかっただろうか。 *検討では▲9五同香は、△9七歩▲同銀△9六歩▲同銀△9七銀▲8八角△7九角で寄りと言われている。続けて、「やっぱり午前中か」とも。 * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>すごい猛攻です。この手は1歩補充よりも▲同香と取らせてうわずらせる狙いが強いです。ただ香を渡すと▲3六香という手が生じるのでこわくもあります。 109 6九歩打 ( 0:00/00:00:00) *控室では「ヒエー」の声。▲9五同香は後手よしとはいえ、取れないようではと言われていた。あるいは105手目の▲3四歩で、まだ▲6九歩と辛抱を重ねなければならなかっただろうか。 *「でも▲9五同香と取れないようではこれはパンチが入りましたね。もちろん勝つまではまだまだ大変なのですが」と富岡八段。 *△9七香成▲同銀△9六歩▲同銀△9七銀▲8八香△6六桂▲同金△7七歩▲同銀△6九竜が示されている。先手陣の金銀を上部に吊り出すのが急所のようで、後手は△9七銀と押さえる形を作るのがいいようだ。 *現地は雨が降り続いている。昨日見られた雪や晴れ間は、本日はまだ見られていない。 *時刻は12時を回った。昼食休憩まであと30分。昼食休憩を終えると終局まで指し続けられる。 110 6六銀打 ( 0:00/00:00:00) *香を向かい合わせたままで銀を打っていった。こちらの方がより厳しいと判断したのだろう。 *「ややこしい手がきましたね」と井上九段。 *▲7六金引か▲9五香が自然だが、▲9五香は△9七歩▲同銀△7七銀成▲同銀△6九竜で後手の攻めが続きそうだ。 * *【後手リードか】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-7037.html 111 3三歩成(34) ( 0:00/00:00:00) *桂を取る。歩を渡す攻めで、これは一旦補充したというより、攻め合いに出ようとしたものかもしれない。 112 同 金(42) ( 0:00/00:00:00) *ここで先手の方針が問われるが、手の流れを考えれば▲2五桂だ。 113 2五桂打 ( 0:00/00:00:00) *取れる駒、逃げられる駒に見向きもせず攻め合う。 *この手を見た森内が席を立つ。対局室の糸谷は、何度もえづいたあと席を立つ。そしてすぐに戻ってきた。 * *12時10分、関西将棋会館棋士室から、本局に関する斎藤慎太郎五段のコメントが入った。 *「55手目に▲2五桂と跳ねた局面で、3三の銀を逃げてこなかったのが糸谷さんとしては誤算だったのかもしれません。攻め合いに持ち込むつもりでしたでしょうし、穴熊に組んで守り続けるという予定ではなかったでしょうから。現局面は後手持ちです」(斎藤五段) *森内竜王、残り1時間30分ですの声。大盤解説会場では中村修九段が逆転を示唆していると言う。 *継ぎ盤では△7七銀不成▲同銀左△9七香成▲3三桂成△同金▲2五桂△8六桂▲同銀が並べられており、井上九段は、「大変な終盤戦ですね。難しくなっているように思います」と見解を示した。 *やがて井上九段は△8六桂の手を元に戻す。どうやら後手を持って一筋縄ではいかない局面と見ているようだ。 *「お昼食べてる場合じゃないかもですね」(井上九段) *森内は眼鏡を掛け考え始める。勝負どころだ。 * *この局面で12時30分となり昼食休憩に入った。この手の森内の考慮時間は22分。ここまでの消費時間は▲糸谷3時間49分、△森内6時間48分。昼食の注文は両者カツカレー。対局は13時30分から再開される。 * *13時20分になり糸谷が対局室に入室。森内も13時23分頃入室。早くも両者前傾姿勢で考えている。 *13時30分になり対局再開。森内は盤面を大きく見渡している。 * *【昼食休憩】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-bc24-1.html *【2日目の昼食】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-e1b6.html * *※局後の感想※ *「だいぶ差が詰まってきたなと思いながら指していました」(森内) *「でもまだ足りないですね。形くらいは作れるかなと」(糸谷) 114 7七銀成(66) ( 0:00/00:00:00) *対局再開から2分。森内は銀を取った。 * *【対局再開(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-90ed-1.html *【対局再開(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-cc4e-1.html 115 同 銀(88) ( 0:00/00:00:00) *ノータイムで成銀を取る。△9七香成のときにどうするか。 116 9七香成(95) ( 0:00/00:00:00) *玉頭に大きな重石が乗った。 117 3三桂成(25) ( 0:00/00:00:00) *ここもノータイム。まだ4時間以上持ち時間を残す糸谷だが、このあと長考はあるのだろうか。 *なお本局でここまで糸谷が最も時間を使ったのが、76手目に▲9八桂と打ったときに使った1時間6分で、その次が65手目の▲6五銀に使った39分である。 118 同 金(32) ( 0:00/00:00:00) *△3三同玉は▲3四歩で王手の掛かる形で嫌らしい。 119 2五桂打 ( 0:00/00:00:00) *わずか1分足らずで6手進んだ。糸谷はお茶を飲み席を立つ。ここは考えると見たのだろう。 *糸谷が3分ほどで戻ってきた。一旦席に着いたが、森内の考えそうな気配を察知したか、再び席を立った。もう誰も彼を止められないといった感じだ。やがて3分ほどして戻ってきた。 *13時44分。「森内先生、残り1時間です」の声。継ぎ盤では△8七歩が示されている。以下▲3三桂成△同玉▲3四歩△同玉▲2五角△3五玉▲3七銀△8八金で先手玉が詰むかどうかが焦点となっている。以下▲同銀引△同歩成▲同銀△9八成桂▲同玉△8六玉▲9七玉と進めた局面がどうなのか。 *糸谷が席を立つ。この局面で3度目だ。この重要な局面。よっぽど立っていた方が読みやすいのだろう。そして今度も3分ほどで戻ってきた。 *もうひとつの継ぎ盤には△3二歩が示されている。後手側には中村修九段。検討でもしっかり棋風を出してくる。 *控室に青野照市専務理事が来訪。 * *【青野九段が来訪】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-0a6e.html 120 3二歩打 ( 0:00/00:00:00) *森内は受けを選択。一気に寄せて勝つ順はなかったと示したと言ってもいいだろう。これは糸谷にチャンスが来たか。ただ森内は受けで真価を発揮する棋士でもある。受けているうちにあっさりよくなっているということもあるかもしれない。 121 3三桂成(25) ( 0:00/00:00:00) *2分ほどで金を取る。「早い」と控室。この言葉をここまで何度聞いただろうか。 122 同 歩(32) ( 0:00/00:00:00) *成桂を外す。どうやら森内は、桂をもう1枚持って詰めろを掛けることを考えていたのではないかと言われている。 *ここで(1)▲3四歩は詰めろになっておらず、今度こそ△8七歩と打つのではないかと言われている。また(2)▲3二歩と打つ手もあるが、どうやらそれもギリギリ詰めろではなさそうとの見解だ。 123 3四歩打 ( 0:00/00:00:00) *14時7分、▲3四歩を着手し糸谷は席を立った。この手も10分未満の着手で、決断のよさに感嘆の声が上がっている。 * *【糸谷七段が猛追】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-be19.html * *※局後の感想※ *「3四に打ちますよね」(糸谷) *「▲3二歩だと思っていました」(森内) *「それは△2一金で余されているかと」(糸谷) *「▲3一銀だと?」(森内) *「△1二玉とかわしておいて、それは後手からの攻めが厳しく負けかと」(糸谷) *「確かにそうかもしれないですね」(森内) *「そう思って▲3四歩と打ったんですけど、まだ足りないですね。さすがにあれだけ酷いと」(糸谷) 124 同 歩(33) ( 0:00/00:00:00) *「取った」と富岡八段。攻め合いと見ており、思わず声が上ずった。 *糸谷が席を外した。ここで▲3三歩や▲5五角が示されている。 *14時22分、糸谷がここまでの消費時間を聞く。「3時間54分です」と冨田三段。 * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>筋は▲3三歩です。まれに▲3二歩という手が良くなる場合もあって、△同飛なら▲4一銀と引っ掛けます。ただ▲3二歩を打つなら▲3四歩△同歩を入れない方が後手玉が狭かったです。 * *※局後の感想※ *「手抜きもしづらいですよね」(森内) *「△3二歩と受けてきたからには本譜かと思いました」(糸谷) 125 5一角打 ( 0:00/00:00:00) *5一に角を打ち込む。3三の地点を狙いながら9五にも利かした攻防の角だ。ただこの手自体はまだ詰めろになっていない。 * *現局面までの消費時間は▲糸谷4時間9分、△森内7時間18分。 *14時27分、「森内先生、残り40分です」の声。 *ここで△2一桂▲3三歩が示されている順。以下△8六桂▲同銀△同飛は、▲3二歩成△同玉▲4一銀以下後手玉は頓死する。 * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>次に▲3三金と打たれても詰めろではないのですが、この角打ちには△9五桂を消した意味があります。また駒を渡す攻めがしにくいよう後手に制限をかけた意味もあります。 126 2一桂打 ( 0:00/00:00:00) *検討で示されていた桂打ち。これを見た糸谷は前傾姿勢になって考え始めた。 *対して▲3三歩は詰めろでなく、▲7四金と攻防手が示されている。以下△4一金にはそこで▲3三歩と打ってどうか。 127 4三金打 ( 0:00/00:00:00) *重く金を打つ。桂が入れば飛車の横利きがあっても▲3一銀以下後手玉は詰む。 *検討では△1二玉の早逃げが示されている。以下▲7三角成は次に▲8二馬と飛車を取ってもまだ詰めろでない。また攻めるなら△5九角も示されているが、△1二玉が勝りそうと言われている。 *「森内先生残り30分です」の声。 *森内が考えている。考慮中眼鏡を掛けた。糸谷はいない。 * *【再び大盤解説会場より】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-ac24.html * *※局後の感想※ *「これが1番難しいかと。でも足りないと思っていました」(糸谷) 128 6七角打 ( 0:00/00:00:00) *△6七角!なんだろうこれは。控え室からはあちこちから、「危ないぞこれは」の声。 *15時になり2日目の午後のおやつが運ばれた。森内はフルーツの盛り合わせ(飲み物の注文なし)、糸谷は氷室まんじゅう(石川県の伝統和菓子)とアイスティー。ただもう勝ちか負けかの最終盤。おやつを食べている場合ではないかもしれない。 *この△6七角は△8七桂以下の詰めろ。対して▲8八銀引は△8六桂で先手玉は寄り筋だという。よって▲8八銀打が示されており、以下△7六歩▲同金△5六角成が示されている。途中の△7六歩は▲同金とさせることによって、▲7四金の補充を消した意味。この進行は後手は受けにかなり重点をおいている。 * *【15時のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/15-43b0-1.html * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>ついに切り札を投入しましたか。よく決断しましたね。これは△8七桂からの詰めろです。▲6八金と打てば堅くはなりますが、さすがに銀1枚では後手玉に迫る手段がない。 129 8八銀打 ( 0:00/00:00:00) *銀を投入。なんと金なしで銀4枚の穴熊となった。 *15時10分頃、▲8八銀打までの消費時間は、▲糸谷4時間21分、△森内7時間41分。 130 8六桂(74) ( 0:00/00:00:00) *力強い手つきで桂を跳ね出す。 *「読みきったか」と検討陣。 131 6七銀(78) ( 0:00/00:00:00) *糸谷は角を取る。△6九竜▲3一角△1二玉が示されている。 *「森内先生残り10分です。秒読みはどうされますか」(富田三段) *「読んで下さい」(森内) *さらに2分使い、残りは8分。 * *【森内竜王、残り10分を切る】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/10-5e3f.html * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>△9八桂成▲同銀△6九竜に▲8九歩で、簡単に詰みそうに見えるんですが5一の角がよく働いていて詰まし方がわかりません。 * *※局後の感想※ *この局面で決め手があった。逆に本譜は次の手が敗着となり、運命を分ける局面となった。 132 9八桂成(86) ( 0:00/00:00:00) *桂を取って王手を掛けた。ただ単に△6九竜が勝ると見られていた。 * *※局後の感想※ *「△6九竜で負けだと思っていました」(糸谷) *△6九竜▲3一角△1二玉▲2二金△同飛▲同角成△同玉▲8二飛に△6二香が攻防の中合い。以下▲8六飛成は△8七桂で後手勝勢。また▲7九歩は△4一金で、 *「それはハッキリ負けだと」(糸谷) *「△4一金で、△9六香▲8二飛△6二香▲8六飛成△8七桂でも勝ちそうですね。▲8二飛までを読んで、どこかで中合いして▲8六飛成が面倒くさいと思ったのですが、△6二香が攻めに利いてピッタリですね。そうか」(森内) *ここからは先手の勝ちになっている。森内が感想戦で、唯一悔しそうな姿を見せた瞬間が、この局面での感想を話しているときだった。 133 同 銀(89) ( 0:00/00:00:00) *文字通りのノータイムで成桂を取る。 *「残り6分です」の声。森内は両手で頭を抱える。 *「残り5分です」の声。 * *※局後の感想※ *「詰まされても仕方がないと思っていましたが、詰み筋は多くないと思っていました」(糸谷) *感想戦はこの局面まで。16時34分に終了した。 134 6九龍(19) ( 0:00/00:00:00) *今度は銀を取らずに王手を掛ける。 135 8九歩打 ( 0:00/00:00:00) *席を外していた糸谷は戻るなり▲8九歩を着手。 *控室にあるコンピュータ(Bononza)は、ついに形勢不明の判断。 *森内が考えている。「残り2分です」の声。 * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>普通は△9八成香▲同玉に歩を打っていけば簡単に詰むのですが、9五に角が利いているので先手玉の詰みが見えません。先手からは▲3一角と打つ筋があって、△1二玉▲2二金△同飛▲同角成△同玉に▲9二飛の王手であって、9七の成香を抜かれると先手玉は鉄壁になります。いやあしかしこれは竜王、きついです。 136 9八成香(97) ( 0:00/00:00:00) *森内はここで9八の銀を取る。ここで単に△3一香も示されていた。 * 137 同 玉(99) ( 0:00/00:00:00) *ここで△3一香と受けに回ってどうかと言われている。 138 9七歩打 ( 0:00/00:00:00) *一発王手で叩く。▲9七同銀は△8九竜までの詰み。 139 同 玉(98) ( 0:00/00:00:00) *ノータイム。といってもここは玉で取るよりない。 140 9六歩打 ( 0:00/00:00:00) *玉を吊り上げに向かう。残り2分。 141 同 玉(97) ( 0:00/00:00:00) *【逆転か】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-1ae9.html 142 9五歩打 ( 0:00/00:00:00) *さらに叩く。 143 同 角成(51) ( 0:00/00:00:00) *▲9五同玉は△9四香以下詰み。よって▲9五同角成とするよりない。 * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>先手玉にプレッシャーをかけないといけないので、△6七竜と銀を取っている場合ではないです。△9四歩▲同馬△9一香▲9三歩△同香▲同馬△9一香で何とか先手の馬を消したい。 144 9四歩打 ( 0:00/00:00:00) *△6七竜では緩いと見たか。森内は馬に働きかけた。 145 同 馬(95) ( 0:00/00:00:00) *ノータイムで取って席を立つ。相手が秒読みでも糸谷のスタイルは変わらない。 146 9一香打 ( 0:00/00:00:00) *執拗に馬を狙う。 147 9三歩打 ( 0:00/00:00:00) *歩の数が大事と見ているのか、糸谷は席に戻るとすぐに▲9三歩と控えて歩を打った。 148 同 香(91) ( 0:00/00:00:00) *▲9三同馬に△9一香の狙いだ。 149 同 馬(94) ( 0:00/00:00:00) *控室は先手勝勢の見解。 150 9一香打 ( 0:00/00:00:00) *これで馬を取れることが確定した。 151 9四歩打 ( 0:00/00:00:00) *「読みきっています」とばかりに下から歩を打つ。9筋の攻防に負けないことが大事と見ている。 152 9三香(91) ( 0:00/00:00:00) *▲9三同歩成にどうするか。 153 同 歩成(94) ( 0:00/00:00:00) *9三に成ったと金がやや歪んだ。それを糸谷はすぐに直す。 *森内はここでついに一分将棋に入った。 * *【糸谷七段、勝勢】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-23d3.html 154 9四歩打 ( 0:00/00:00:00) *歩を打って詰めろを掛ける。ただこれは▲8二とで先手玉は抜けているという。新竜王の誕生が目前となった。 *「ノータイムで取るタイプですけど、ここはさすがに」と検討陣。 *控室が慌しくなってきた。それもそのはず、20分ほど前まではこのまま森内が押し切りそうと言われていた将棋だ。 *糸谷は前傾姿勢で考えている。森内はグラスの水を飲んだ。 *糸谷は席を外す。気持ちを落ち着けるためか、それともいつも通りの行動なのか。ただ言えることは、糸谷がスタイルを貫いたことで、森内に焦りが生じたということ。この点はまず間違いないだろう。 * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>】▲8二とと飛車を取って勝てるなら取りたいです。△9五金▲8七玉△5四角に▲6五角と合わせて。まだまだ王手はかかりますね。△同角▲同金△8六銀▲7六玉△8五角▲6六玉△6七竜▲5五玉△6五竜▲同玉で後手の持ち駒に金銀があるのでこれは詰みますね。ではどこで変化をするか。結構先手もこわいですよ。 155 3二金打 ( 0:00/00:00:00) *「あれー」と控室。ただ4三の金を抜かれる手に備えた好手ではと即座に言われ出し始めた。 156 1二玉(22) ( 0:00/00:00:00) *森内は玉を逃す。 157 8二と(93) ( 0:00/00:00:00) *ここはすぐに飛車を取った。後手玉は詰めろで受けても一手一手の寄り。 *新しい時代が幕を開けようとしている。 158 9五金打 ( 0:00/00:00:00) *森内は金を打って王手を掛ける。もちろん▲8七玉で詰みのないことは承知の上だ。 159 8七玉(96) ( 0:00/00:00:00) *△9六銀に▲7六玉で詰みはない。 160 6七龍(69) ( 0:00/00:00:00) *形を作った。森内にとっては第4局、そして第5局と内容も良かっただけに、無念の思いだろう。 161 1三香打 ( 0:00/00:00:00) *30秒まで読まれ森内は、「負けました」とはっきりした声で投了した。 *糸谷新竜王が誕生。20代の、そして関西棋界に新たなスターが現れた。 *対局室ではすぐに感想戦が始まっている。糸谷は初タイトル獲得の感想を聞かれ、「今は素直に嬉しいです。負け将棋だと思っていたので」とやや声を震わせながら短く述べた。 * *終了時刻は15時46分。消費時間は▲糸谷4時間29分、△森内7時間59分。 * *【糸谷新竜王誕生!】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-a00a.html *【終局直後】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-bb10.html *【両対局者インタビュー】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-53f1.html *【感想戦(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-8297.html *【感想戦(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2014/12/post-6398.html * *■ニコニコ生放送■ *高橋道雄九段>森内さんにとっては、タイトルを取られた以上にこういうリードしていた将棋を逆転負けしたというのがつらいと思います。一局を振り返って、私はずっと後手持ちだと思っていて第6局があるかなあと楽しみにしていたのですが、最後の秒読みのところでひっくり返りました。最後の△9八桂成がどうだったか。もう少し遡れば入玉狙いの指し方もあったかもしれないですね。でもそこはタイトルホルダーとしての挟持で「堅い玉を寄せ切る!」という思いだったのでしょうね。糸谷さんは苦しい局面でも差が開かないようにピタッと付いていって、攻め方も直接ではなく遠回しに攻めていくような感じだったのが印象的でした。シリーズを通して強かったですね。 * *※局後の感想※ *感想戦終了後、糸谷はファンの待つ大盤解説場に姿を見せた。 *それまで青野九段が壇上に上がっていたが、 *「ここは同じ関西ということで、井上先生、お願いします」 *と井上九段にインタビュアーの役割を頼むと、 *「では」と井上九段が壇上に上がった。 * *−本局はいかがでしたか(井上九段) *「封じ手に入るかなり前から酷いなと思っていました。それも相当な酷さです」(糸谷) *−タイトルを獲られた今の心境は(井上九段) *「第4局、第5局と、序盤酷い内容だったので、正直ホッとしています。竜王を獲ったという実感はまだないですね」 *−今後についていかがですか(井上九段) *「タイトルホルダーとして、その名にふさわしい将棋を指せるようにしていきたいです」(糸谷) *−賞金の使い道は考えられていますか(井上) *「今、8畳一間に住んでいて、もうひとつ部屋をほしいと思っています。関西将棋会館のどこか近くに借りたいですね」(糸谷) *−タイトルホルダーとしての今後について(井上) *「普及の方で、もっと力を入れて貢献できるかと思います」(糸谷) *−関西の若手棋士として、結果が出ました− *「豊島さん、稲葉さん、菅井さんも僕がタイトルを獲ったことで、奮起してくると思うので、そのきっかけになればいいと思います」(糸谷) *−今後の目標はなんでしょうか(井上) *「他のタイトルも手が伸ばせるように、同時に竜王を維持できるようにしたいです」(糸谷) *−竜王を獲って、今1番気になっていることはなんですか(井上九段) *「免状署名ですね(場内爆笑)。ちょっとまた書道を習いに行かなければいけないと思っています」(糸谷) *−おめでとうございます。糸谷新竜王でした(井上) * *(感想戦前の主催者インタビューの内容は、中継ブログにて掲載しています) * 162 投了 ( 0:00/00:00:00) まで161手で先手の勝ち