# --- Kifu for Windows (HTTP) V6.51 棋譜ファイル --- 対局ID:1286 開始日時:2012/07/04 10:00 終了日時:2012/07/04 22:50 表題:竜王戦 棋戦:第25期竜王戦決勝トーナメント 持ち時間:各5時間 消費時間:135▲296△299 場所:関西将棋会館 手合割:平手   先手:稲葉陽 後手:大石直嗣 手数----指手---------消費時間-- *第25期竜王戦決勝トーナメント2回戦は関西期待の新鋭がぶつかる好取組となった。対峙するのは4組優勝の稲葉陽六段と、6組優勝の大石直嗣四段。両者はともに攻めの棋風。熱戦が期待される。 *場所は関西将棋会館「御上段の間」。対局は2012年7月4日(水)10時開始。先後は振り駒によって決定される。 * *(※=感想戦の内容) *(棋譜・コメント入力=若葉) 1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *■稲葉陽六段のプロフィール■ *いなばあきら。 *1988年8月8日生まれ。兵庫県西宮市出身、井上慶太九段門下。2000年9月、6級で奨励会入会。2008年4月、四段昇段(プロ入り)。 *http://www.shogi.or.jp/player/kishi/inaba.html 2 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *■大石直嗣四段のプロフィール■ *おおいしただし。 *1989年9月16日生まれ。大阪府八尾市出身、森信雄七段門下。2001年9月、6級で奨励会入会。2009年4月、四段昇段。 *http://www.shogi.or.jp/player/kishi/ooishi.html 3 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00) *両者はともに朝が早い。9時50分、記者が5階に上がったときにはすでに振り駒が終わっていた。 *稲葉は対局室入りして開始までを過ごすことが多い。この日も3階の棋士室には寄らず、9時30分には5階に到着していたようだ。上座に陣取り、中空を見つめる視線は鋭い。普段は朗らかで気さくだが、対局の日の稲葉は気軽に話しかけられる雰囲気ではない。この日も対局開始まで他を寄せつけない空気があった。 4 9四歩(93) ( 0:00/00:00:00) *一方の大石は棋士室で時間を過ごすことが多い。いつもは柔和で穏やかな大石だが、この日は口数が少なかったように思えた。数分ほど3階で時間を過ごし、ほどなくして5階へと上がっていった。対局室入りした大石はポーカーフェイス。あまり表情を崩していなかった。 * *■中継ブログ■ *「対局開始前の両者」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-4079.html 5 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00) *振り駒は歩が4枚出て稲葉の先手となった。記録係を務めるのは池永天志三段(小林健二九段門下、19歳)。 * *■中継ブログ■ *「対局開始直後」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-c4cd.html 6 8八角成(22) ( 0:00/00:00:00) *居飛車を主戦場とする両者。これまで戦った4度の対戦では横歩取りが3局、力戦の矢倉が1局採用されていた。本譜は▲7六歩△3四歩▲2六歩△9四歩▲2五歩△8八角成と後手番の大石が角を換えていった。一手損角換わりか、それとも若手の間で流行の兆しがある角交換振り飛車か。後手の戦型はまだわからない。棋士室での話によると、大石は角交換から向かい飛車に構える将棋を奨励会時代から得意にしていたようだ。本譜も振り飛車が見られるかもしれない。 7 同 銀(79) ( 0:00/00:00:00) *▲8八同銀の局面は意外に前例が多く74局。次の一手は2筋に備える△2二銀が全例で指されている。古くは2003年から、2012年に入ってからも3局の棋譜が残っている。今年の3局は後手が3勝している。 8 2二銀(31) ( 0:00/00:00:00) *最も近いものは大石自身が採用した2012年4月の王将戦一次予選、対▲阿部隆八段戦。△2二銀以下、▲6八玉△3三銀▲4八銀に△2二飛と向かい飛車に構えている。本譜はどのように進むだろうか。 *序盤早々、8手目の局面で稲葉の手が止まった。手元の時計で20分が経過しようとしている。はっきりとした態度を見せない後手の指し手にどう応じるか、考えどころなのだろう。前例で最も指されているのは(1)▲4八銀で17局。次に(2)▲3八銀が15局で続く。振り飛車にも一手損角換わりにも対応できる指し手だ。3番目に多いのは(3)▲7七銀で14局だが、この手は2008年を最後に指されていない。 9 5八金(49) ( 0:00/00:00:00) *10時46分、稲葉の手が金をつまんだ。銀の位置(3八か4八)は後から決めたかったのか。▲5八金右は稲葉の新手である。もっとも、展開次第では前例と合流する可能性も大いにある。 10 3三銀(22) ( 0:00/00:00:00) *この銀上がりは早かった。「その展開もちゃんと考えてありますよ」と言わんばかり。 11 4八銀(39) ( 0:00/00:00:00) *稲葉はランキング戦4組に所属している。第25期は福崎文吾九段、長沼洋七段、阿部健治郎五段、田村康介六段、高崎一生六段を破って優勝を果たし、決勝トーナメントに駒を進めてきた。ランキング戦の優勝は昨年の5組優勝に続き2年連続。6組に所属していた第22期も優勝を経験しており、稲葉は3回の昇級を全て優勝で決めていることになる。 *しかし、これまでに2度出場した決勝トーナメントではいまだ勝ち星がない。今年は「3度目の正直」となるだろうか。 12 2二飛(82) ( 0:00/00:00:00) *6組所属の大石は今期、自身初のランキング戦優勝。56人の大所帯を勝ち抜き、決勝トーナメントに駒を進めてきた。先月29日に行われた1回戦では5組優勝の永瀬拓矢五段を熱戦の末に破り、早速1勝を挙げている。本局に勝てば1組の棋士たちとの対戦が待ち受けている。この勢いのまま同年代ライバルの壁を打ち破りたいところだ。 * *大石がようやく戦型を明らかにした。角交換型の向かい飛車だ。 13 6五角打 ( 0:00/00:00:00) *盤上に緊張が走った。動いていったのは稲葉。▲6五角と打ち込んでいった。同一局面の前例はないが、類似形は多数存在する。先の▲阿部隆八段-△大石戦も玉形以外はほぼ同じだ。 *▲6五角(もしくは△4五角)は角交換型の振り飛車で常に生じる筋で、「▲6五角問題」と呼ばれることがある。▲8三角成と▲4三角成が狙いだ。1歩得しながら馬を作る手が無条件で成立すれば、振り飛車の構想は崩壊してしまう。現在も生き残っている戦型はこの筋をくぐり抜けてきた。ちょっとした形の違いで▲6五角が成立するのかしないのか。せめぎ合いが続いている。 * *■中継ブログ■ *「乱戦模様」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-4f4b.html 14 7四角打 ( 0:00/00:00:00) *△7四角が▲6五角に対する受けの手筋。▲4三角成を許すが、△4二金(もしくは△5二金右)で作った馬をすぐに捕獲することができる。 15 4三角成(65) ( 0:00/00:00:00) *1歩取りながら馬ができて好調なようだが。 16 5二金(61) ( 0:00/00:00:00) *△5二金右で馬の逃げる場所がない。 17 7五歩(76) ( 0:00/00:00:00) *そこで▲7五歩が先手用意の切り返しだ。馬は取られてしまうが、すぐに角を取り返すことができるため駒損にはならない。△8五角と逃げれば先手も▲6五馬と生還できる。 18 4三金(52) ( 0:00/00:00:00) *△8五角▲6五馬の交換は1歩損と馬だけが残って後手が苦しい。ここは馬を取る一手だろう。 19 7四歩(75) ( 0:00/00:00:00) *角と馬を取り合い、駒割りは先手の1歩得。 20 同 歩(73) ( 0:00/00:00:00) *後手も歩を取り返し、駒の損得はなくなった。 21 4六歩(47) ( 0:00/00:00:00) *激しく駒がぶつかり合った戦いもこれで一段落のようだ。じっと▲4六歩。陣形を整備する。▲4六歩までの消費時間は▲稲葉47分、△大石9分。大石の考慮の少なさが目立つ序盤戦だ。 22 6二玉(51) ( 0:00/00:00:00) *グイッと力強く△6二玉。あえて駒の少ないほうへ玉を上がった。後手のほうが駒が前進している印象があるものの、代償に陣形は乱されている。ここからどう自陣をまとめていくか、力が試される将棋だ。 * *■中継ブログ■ *「大石四段、右玉模様」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-d3b2.html 23 6八玉(59) ( 0:00/00:00:00) *稲葉の通算成績は118勝56敗(0.678)。 *これまでに竜王戦ランキング戦で3回の優勝がある他、第80期棋聖戦で挑戦者決定戦まで進出するなどの実績がある。 24 5二金(41) ( 0:00/00:00:00) *大石の通算成績は75勝51敗(0.595)。 *今期竜王戦6組で優勝した他、2010年の第51期王位戦で挑戦者決定リーグ入りの実績がある。 25 4七銀(48) ( 0:00/00:00:00) *稲葉の年度別成績は以下の通り。 * 2012年度  4勝2敗(0.667) * 2011年度  28勝15敗(0.651) * 2010年度  31勝11敗(0.738) *  (勝数10位、勝率5位) * 2009年度  25勝15敗(0.625) * 2008年度  30勝13敗(0.698) *  (勝数7位、勝率9位) 26 7二銀(71) ( 0:00/00:00:00) *大石の年度別成績は以下の通り。 * 2012年度  10勝3敗(0.769) *  (対局数3位、勝数3位) * 2011年度  32勝15敗(0.681) *  (対局数8位、勝数7位、勝率10位) * 2010年度  16勝18敗(0.471) * 2009年度  17勝15敗(0.531) * 2008年度  ― 27 7七銀(88) ( 0:00/00:00:00) *駒組みが続いている。▲7七銀は必要な一手で、守備の薄い7筋に備えた手。△7五歩なら▲8六銀の反発がある。 *▲7七銀の局面で昼食休憩となった。消費時間は▲稲葉1時間19分、△大石36分。対局は13時に再開される。昼食の注文は稲葉が豚ロース肉しょうが焼きのサービスランチ(イレブン)、大石がなしだった。 * *■中継ブログ■ *「昼食休憩」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-bc24.html *「昼食休憩時の対局室」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-e82f.html 28 6四歩(63) ( 0:00/00:00:00) *13時、対局再開。大石はすぐに△6四歩を突いた。6三銀〜7三桂が後手の目指す形のようだ。△5四金と繰り出し、6〜7筋を制圧する形にできれば後手も満足だろう。序盤の折衝で引っ張り出された形の4三金が生きてくる。 *糸谷哲郎六段「△6二玉(22手目)が最近の工夫ですね。以前は△7二飛と飛車を振り直すことが多かったんですが、いまは右玉に構えて△5四金と出る形が有力とみられているようです」 * *■中継ブログ■ *「対局再開」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-2985.html 29 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00) *「対する先手は陣形の堅さを生かして反発する展開になります」と糸谷六段。 30 6三銀(72) ( 0:00/00:00:00) *右玉の形になった。△7二玉〜△7三桂〜△6五歩が棋士室で予想されている駒組み。糸谷六段は本譜の形を研究したことがあるそうで、△6五歩と位を取るのがポイント、と力説していた。 31 9六歩(97) ( 0:00/00:00:00) *一旦、端歩を受けた。 *▲9六歩では香取りに▲8二角も目に映るところだが、それには△7三角と合わせる手がある。以下▲同角成△同玉で、次に△7二玉と引けば後手は無事右玉に組める。損得は微妙のようだ。 * *※ *稲葉「ここで端歩突く人はいないよなー。端よりも6筋の位のほうが大きすぎて」 *序盤のポイントとなった局面。本譜は9筋に手をかけたため△6五歩を許してしまった。6筋の位は大きかったようで、稲葉は苦しい序盤戦を強いられることになった。 *感想戦で代わりに示されたのは▲7八金。以下△5四金▲6六歩△4二飛▲3七桂△7三桂▲7九玉△9五歩が駒組みの一例で、「これでも難しいとは思うんですが、本譜がひどすぎました」(稲葉)。 32 5四金(43) ( 0:00/00:00:00) *先に△5四金と繰り出した。「▲6六歩を牽制した手ではないでしょうか」と山崎隆之七段。後手が目指す形は△6五歩の位取りだが、△7二玉では▲6六歩と突かれて拒否される可能性がある。△5四金を決めていれば▲6六歩とは突きづらい。 * *山崎七段「△6五歩を許すのが苦しいと見れば、▲6六歩と突っ張ってくる可能性もありますが」 *糸谷六段「稲葉君は突っ張って指すイメージはありますね」 *山崎七段「大石君も突っ張るよね」 * *△5四金に▲6六歩となれば、△6五歩から一気に激しい将棋になる可能性もあるようだ。ちなみに山崎七段と糸谷六段は大石と同門。大石の将棋に詳しいのはそのためだ。モニターの前で弟弟子の戦いぶりを見守っている。 33 7八金(69) ( 0:00/00:00:00) *穏やかに。矢倉を築く自然な一手である。不満とみれば激しい展開もいとわないのが稲葉。本譜は自然に組んで十分とみているのだろう。 34 6五歩(64) ( 0:00/00:00:00) *後手に1つ主張ができた。上部から先手陣を圧迫する。 *△6五歩まで見届けて、山崎七段と糸谷六段はテーブルへと移っていった。これから練習将棋を指すようだ。兄弟弟子対決。 35 5六銀(47) ( 0:00/00:00:00) *ここで腰掛け銀に。形としては自然だが、△7三角や△6四角が見えているだけに勇気のいる一手である。 *後手は手の広い局面。前述の(1)△7三角や△6四角の他、(2)△7二玉〜△7三桂、(3)△4二飛、(4)△4四銀などが考えられるようだ。大石が時間を使っている。 * *※ *▲5六銀に代えて▲8二角が検討された。▲8二角は香取りが目的ではなく、後手に対応させて本譜で現れた角のライン攻めを緩和するのが狙い。▲8二角に(1)△7三角なら▲同角成△同玉▲5六銀で、△7二玉の一手が必要な分だけ先手にも一手の余裕がある。(2)△6四角と受けるのも▲同角成△同銀で、飛車のコビンをにらむナナメのラインを封鎖することができる。「ライン攻めがないのでこちらのほうがましでしたか」と稲葉。ただし、(2)の変化は銀が前に進むため、△7五歩と7筋にも位を許す可能性もある。一長一短である。 36 7三角打 ( 0:00/00:00:00) *12分の考慮で力強く自陣角を打ち込んだ。▲5六銀(35手目)を早速とがめにいく。盤上に火花が散っている。角の打ち場所は△6四角もあったが、▲6六歩と反発されたときに当たり強いきらいがある。本譜は一歩控えて打った。「角を打ったなー。これ角打ったらどうやるつもりなんやろうなー。これ結構嫌なんやけどなぁ」(A棋士)。 *時刻は14時を回った。△7三角までの消費時間は▲稲葉1時間49分、△大石1時間9分。 * *■中継ブログ■ *「大石四段、自陣角を放つ」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-510e.html * *※ *稲葉「ここではだいぶ作戦負けですね。玉形が違いすぎます」 *▲6八玉の形がたたっている。本譜は▲7九玉と引く余裕が最後まで得られなかった。 37 4七金(58) ( 0:00/00:00:00) *金を上がって△4六角を受けた。飛び出しは防いだが、7三角のにらみは依然、先手の飛車を捕えている。すぐに浮かぶのは△4五歩の追撃。稲葉はコビン攻めの筋をどう凌いでいくのだろうか。 38 4五歩打 ( 0:00/00:00:00) *強引に角筋をこじ開けにいく。 * *■中継ブログ■ *「大石仕掛ける」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-7870.html 39 3七角打 ( 0:00/00:00:00) *ここで稲葉も自陣に角を据えた。角のラインに角で対抗する。▲3七角と打たれたことで、後手も正面突破は難しそうだ。すぐに技がかかりそうな形ではない。ただ、先手に角を打たせたことで3三銀が動きやすくなっている意味がありそうだ。一例として、△4四銀と上がったときに▲2四歩△同歩▲2三歩△同飛▲3二角の筋がない。 *大石が長考している。手元の時計で25分が経過。時刻は間もなく15時を迎えようとしている。 40 4六歩(45) ( 0:00/00:00:00) *熟慮30分でじっと歩を取り込んだ。▲4六同金と取らせ、火種のできた4筋を争点に戦っていくのだろう。 41 同 金(47) ( 0:00/00:00:00) *▲4六同角は△同角▲同金△7三角で、▲3七角と打てば本譜▲4六同金と同じ局面になる。 * *■中継ブログ■ *「4筋をめぐる攻防」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-0b3d.html 42 4二飛(22) ( 0:00/00:00:00) *4筋に飛車の増援を送る。次に△4六角(飛)があるので、先手は4筋を受けなければならない。すぐ浮かぶのは▲4五歩や▲4八飛といった手だろうか。 *△4二飛までの消費時間は▲稲葉1時間59分、△大石1時間47分。 43 4八飛(28) ( 0:00/00:00:00) *稲葉の着手は▲4八飛だった。角のラインを避けつつ、飛車には飛車で対抗した。突っ張った印象のある受けだ。飛角が金1枚を挟んで向き合っているため、いろいろ怖い筋がありそうだ。 *例えば△4六角の筋。▲同飛は△同飛▲同角△4八飛が王手角取りなので▲4六同角の一手だが、そこで△5五金打とからむ手が嫌らしい。角が動けば△4八飛成がある。もっとも、これですぐに決まっているわけではないようで、「△4六角▲同角△5五金打▲同銀△同金▲3七角△4八飛成▲同角でそこでうまい手があるか、ですね」と村田智弘六段。 * *※ *稲葉は当初▲4五歩の予定だったようだ。しかし、読み進めてみると▲4五歩には△4四歩▲2四歩△同銀▲4四歩△同飛▲4五歩△4二飛で、「次に△3三桂があってダメですね」(稲葉)。 44 3五歩(34) ( 0:00/00:00:00) *△3五歩と突き出した。棋士室でも検討されていた手。△3五歩▲4五歩△3四銀の進行が予想されている。「どちらを持ってみたいですか?」と関係者に問われた村田智六段は「攻めているほう(後手)を持ちたいですね」との答え。「ただ、まだこの時間ですからね。主観によると思います」(村田智六段)。まだまだこれからの将棋のようだ。 45 4五歩打 ( 0:00/00:00:00) *△3五歩を▲同金は△3七角成▲4二飛成△同銀、▲同歩も△3六歩▲同金△3七角成▲4二飛成△同銀で飛角をさばかれてしまいそう。歩を打って飛車の利きを遮断した。 46 3六歩(35) ( 0:00/00:00:00) *3筋を取り込む。陣形に進展性のない後手がもう手を緩めることはない。しばらくは先手が受けに回る展開になりそうだ。 47 同 金(46) ( 0:00/00:00:00) 48 3七角成(73) ( 0:00/00:00:00) *船江恒平五段「ここで角を換えたということは、角をラインに打ち続けるということなんでしょうね」 *▲3七同金や▲3七同桂に、△7三角(△6四角)から△1九角成を狙っていく手が考えられるようだ。ちなみに船江五段は稲葉と同じ井上九段の一門である。 * *■中継ブログ■ *「攻める大石、反撃を狙う稲葉」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-ed0c.html 49 同 金(36) ( 0:00/00:00:00) *▲3七同金、▲3七同桂、どちらもあるところで稲葉は▲同金とした。▲同桂は△7三角〜△3五歩の筋や、△3八歩の垂らし、△3五歩▲同金△7三角▲4七飛△3二飛など気になる攻めがあったのでは、というのが棋士室の予想。先手玉が6八にいるため、多少乱暴な攻めが成立してしまう可能性がある。 50 3四銀(33) ( 0:00/00:00:00) *銀を押し出した。少考での着手に「大石君は決断が早いですね」と山崎七段。 51 4六金(37) ( 0:00/00:00:00) *▲4六金も少考での着手。稲葉の指し手も思い切りがいい。本局は読みに少しでもほころびがあると一気に崩れてしまいそうな将棋。手の広い、指し手の選択が難しそうな局面で両者は決断よく指し進めていく。 *ここで後手は(1)△3三桂と跳ねたいところ。棋士室では△3三桂▲7九玉で後手がどう指すか考えられていたが、はっきりとはわからなかった。一例として△3九角は、▲3八飛(▲5八飛は△4五銀)△5七角成(王手金取り)▲6八角△同馬▲同銀と激しいやり取りの後、3四銀取りが残る。この変化は先手が十分のようだ。 *(2)△3二飛も考えられるが、「これはなんだか危なそうですね」と菅井竜也五段。△3五銀や△4五銀から3筋を突破する狙いだが、△3二飛には▲3六歩と打たれてうまくいかないようだ。 *菅井五段は後手を持ってみたい、という形勢判断。具体的にどう指すかははっきりわからないものの、後手に手段が多そうだ、とのことだ。菅井五段も稲葉や船江五段と同じく井上九段門下である。 * *※ *ここで▲7九玉は△3九角▲5八飛△4五銀▲3八金△5六銀▲3九金△4七銀成▲1八飛△3八歩が検討された進行。「負けてもこうやるべきでしたか。こちらのほうがよかったかもしれませんね」(稲葉)。▲7九玉と引く一手が利くか利かないかが大きなポイントだったようだ。 52 3三桂(21) ( 0:00/00:00:00) *大石が(1)△3三桂を決断。棋士室ではまだ後続手が発見されていないが、大石の頭には攻めの構図が描かれているのだろうか。 *現局面で比べると、先手よりも後手のほうが玉形が安定している印象だという(菅井五段)。そこで棋士室では「やってこい」と玉形を整える▲7九玉が第一候補に挙がっている。▲7九玉にどう攻めを継続するかが現在の検討課題。 53 3七桂(29) ( 0:00/00:00:00) *稲葉も右桂を跳ねた。 *新聞解説の安用寺孝功六段の検討では▲7九玉には△4五桂があったようだ。△4五桂は次に△5七桂成の狙いで、意外にうるさい攻め。例えば▲6八銀と受けるのは、△5七桂成▲同銀△3九角▲5八飛△5七角成▲同飛△4六飛で突破される。本譜は▲3七桂と跳ねて△4五桂の筋を受けた。 *さて、▲3七桂に後手の後続手は何か。(1)△4五桂とがむしゃらに切り込んでいくのはさすがに強引か。桂を跳ねれば▲3三角の反発も残る。また、(2)△7二玉と8一桂にヒモを付けるのは▲7九玉と自陣に手を入れられて、「さすがにこの交換は先手のほうが得をしていそうです」(澤田真吾四段)。棋士室では(3)△3六歩▲同金△4七歩▲同飛△2七角の攻めや(4)△1五角▲4七飛△3五銀の筋なども考えられたが、ぴったりした手は見つかっていない。 * *※ *▲3七桂に代えて▲7九玉は安用寺六段解説の手順で先手がまずい。「▲7九玉が引けないのがつらいですね」と稲葉。 54 4七歩打 ( 0:00/00:00:00) *時刻は17時を少し回ったところ。大石が焦点に歩を放った。これも棋士室では指摘されていた手で、「またややこしいところに(打ちますね)」と澤田四段がぼやいていた一手である。澤田四段の第一感は▲4七同金だという。▲4七同銀は4筋の形が悪く、▲4七同飛も△3八角がある。 *棋士室では▲同金に△4五桂以下を本線として現在検討されている。継ぎ盤に並べられたのは▲4七同金△4五桂▲1五角△3七桂成▲4二角成△4八成桂▲5二馬△同銀▲4八金△2九飛▲4九歩△3六桂の変化。稲葉側に座る安用寺六段は「これは自信ないけどなぁ」。今度はぴったりした受けがみつからない。 *△4七歩までの消費時間は▲稲葉2時間43分、△大石3時間2分。 * *■中継ブログ■ *「焦点の歩」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-6e3f.html * *※ *好手。後手優勢を決定づける手筋の一着だった。 *稲葉「△4七歩はうっかりしてました」 *大石「△4七歩は取り方が難しいかなと思って打ちました。▲同飛は△3八角、かといって逃げる場所も難しいです。▲同銀や▲同金は引き算になります(=4五の地点が薄くなる)。これでいいと思っていたんですが、その後いい粘りをされてしまいました」 55 同 金(46) ( 0:00/00:00:00) *竜王戦は持ち時間が各5時間。5時間以上の将棋には夕食休憩がある。夕食休憩まであと17分、というところで稲葉が▲4七同金を着手した。大石がこのまま休憩に入れるのか、それとも1手指してから入れるのか、微妙なところだ。 56 4五桂(33) ( 0:00/00:00:00) *少しだけ考えて大石も△4五桂を着手。▲4七同金にはこう指す、と決めていたのだろう。稲葉の応手を問うた。棋士室の検討は「先手自信なし」のまま。ここで稲葉がどのような受けを見せるのか。中盤の見所を迎えている。 *ほどなくして、記録係の池永三段が3階に降りてきた。次の一手を指さずにそのまま休憩となったようだ。注目の一手は夜に持ち越しとなった。△4五桂までの消費時間は▲稲葉3時間44分、△大石3時間5分。対局は19時に再開される。 *夕食の注文は稲葉がそば定食(温、やまがそば)、大石はなしだった。 57 同 桂(37) ( 0:00/00:00:00) *19時、対局再開。稲葉の応手は▲4五桂だった。 58 同 銀(34) ( 0:00/00:00:00) *大石もすぐに△4五同銀と返す。 59 1五角打 ( 0:00/00:00:00) *そして▲1五角。桂を取り合ってから端角を据えた。休憩前に棋士室で検討されていた変化と少しだけ形が異なっている。が、その少しが大きな違いのようだ。 *具体的に書くと、先ほどの検討では▲4五同桂と取らずに▲1五角だったため、△3七桂成▲4二角成△4八成桂▲5二馬と一直線に取り合ったときに飛車を取られてしまった。先手玉は飛車打ちに弱い形なのでこの変化はまずい。しかし、本譜では△5六銀▲4二角成△4七銀成と進めても▲同飛で飛車を取られない。以下△3六角▲5一馬!△同金▲3二飛△4二歩▲3六飛成で、後手が選びにくい変化のようだ(安用寺六段の解説)。 *杉本昌隆七段「(▲1五角の局面をみて)どっち持ちですか?」 *豊島将之七段「いやー、全然わからないですね(笑)。ただ、後手のほうが玉形が安定しているのでどちらかというと後手を持ちたいです」 * *■中継ブログ■ *「激しい流れに」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-f5ab.html 60 4四飛(42) ( 0:00/00:00:00) *一直線の取り合いは難しそう。かといって、(1)△3二飛は▲3三歩△4二飛▲4三歩△同飛▲5五桂で、(2)△4一飛は▲4三歩で後手の指し手が難しそう、というのが棋士室の検討だった。 *そこで大石は△4四飛と浮いた。飛車取りを避けつつ、▲4三歩のタタキを避けた手だ。 61 4六桂打 ( 0:00/00:00:00) *△4四飛に稲葉はすぐに▲4六桂と打った。曲線的な、ひねった受け。金取りに当てつつ、△3四飛と寄る手も消している。代えて▲3三角成は△5六銀▲4四馬△4七銀成▲同飛△3六角が安用寺六段解説の手順。棋譜コメント59手目の変化と似ているが、馬の位置が違うため今度は後手がよくなるようだ。 * *■中継ブログ■ *「攻める大石、凌ぐ稲葉」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-3255.html 62 同 銀(45) ( 0:00/00:00:00) *菅井五段「(▲4六桂は)ひねった受けですね。さすがに先手が苦しそうな印象です」 63 同 金(47) ( 0:00/00:00:00) *■中継ブログ■ *「19時30分頃の窓外」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/1930-902b.html 64 6四桂打 ( 0:00/00:00:00) *大石の指し手も早い。銀取りに△6四桂と打った。△5六桂と銀を取る手が王手になるため、先手は手抜きづらい。厳しい一手のようだ。 65 4七銀(56) ( 0:00/00:00:00) *逃げるなら▲4七銀しかない。4筋が二重に止まり、飛車先が重くなった。 66 6六歩(65) ( 0:00/00:00:00) *手筋の突き捨て。厳しい一手、と棋士室では評判がよい。歩の攻めは受けづらいようだ。棋士室では後手持ちの声が多い。 *△6六歩は取るのも手抜くのも指しづらい。▲6六同歩は△6七歩のタタキが生じる。放置するのも△6七歩成で、▲同金は△7五桂、▲同玉は△5九角が厳しそうだ。 * *※ *稲葉「桂(△6四桂)から突き(△6六歩)かー。いやー、そっかー。いい手でしたね」 67 同 歩(67) ( 0:00/00:00:00) 68 6七歩打 ( 0:00/00:00:00) 69 同 金(78) ( 0:00/00:00:00) 70 7五桂打 ( 0:00/00:00:00) 71 5八銀(47) ( 0:00/00:00:00) *一気に指し手が進んだ。稲葉が選んだのは徹底抗戦だった。大石の手筋の攻めが次々と襲いかかってくる中、じっと身を固めて耐え忍ぶ道を進む。「一番粘りがありそう」と棋士室で言われていた順だ。 *▲5八銀までの消費時間は▲稲葉3時間57分、△大石3時間46分。 72 3六歩打 ( 0:00/00:00:00) *ここで大石が方向転換。△3六歩と垂らした。大石が筋、筋で先手陣に迫る。△3六歩は次に△3七角と飛角両取りに打ち込む狙い。▲同角は△同歩成でと金ができる。 *△3七角の筋をどう受けるか。(1)▲3六同金と払って飛車交換を挑むのは△4八飛成▲同角△6七桂成で、どう応じても受けづらい、と豊島七段。▲同玉は△7九飛が、▲同銀は△4七角が厳しい。(2)▲3八歩は一番自然な一手だが、△3九角▲4九飛△2八角成ともたれるように指されてやはり苦しいようだ。棋士室では(3)▲4五歩も検討されていたが、△1四飛と角取りに逃げる手や、△3七角▲4四歩△1五角成▲4九飛△3七歩成と攻め合う手もあってやはり芳しくないようだ。「どの変化も後手がよさそうです」と豊島七段。 73 3八歩打 ( 0:00/00:00:00) *稲葉は(2)▲3八歩からさらに耐える順を選んだ。 * *■中継ブログ■ *「耐え忍ぶ稲葉」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-6cd3.html 74 3九角打 ( 0:00/00:00:00) *豊島七段解説のB面攻撃。馬を作り、手厚く包囲網を築いていく。 75 4九飛(48) ( 0:00/00:00:00) *次に△4八角成▲同角△4六飛がある。かわす一手だろう。 76 2八角成(39) ( 0:00/00:00:00) *△4六馬の金取りと、△3八馬の両狙い。 77 4七銀(58) ( 0:00/00:00:00) *両方を受けるにはこの手しかない。稲葉の銀が上下左右に目まぐるしく動いている。現局面を確認すると後手は歩切れ。持ち駒は1つもない。大石はどのような寄せの構図を描いているだろうか。 *継ぎ盤では△4六飛▲同銀△3八馬と一気に寄せる順が検討されている。継ぎ盤に座るのは安用寺六段と塚本隆三2級(阪口悟五段門下)。安用寺六段は先手側、塚本2級は後手側を持っている。 *△3八馬以下、まず検討された(1)▲5九飛は△4七馬▲4八歩△6九金▲7八玉△5九金▲4七歩△6七桂成▲同玉△6九飛。塚本2級の的確な寄せに、安用寺六段は「投了!」とさじを投げた。次に検討された(2)▲7九飛の変化も△4七馬▲5八銀△4六馬と進められて先手が苦しい模様。 * *安用寺六段「負けそうですか?」 *豊島七段「はい、負けそうです」 *(一同笑い) *安用寺六段「連戦連敗やなぁ」 * *△4六飛もある手のようだ。 *大石が考えている。消費時間は▲稲葉4時間8分、△大石4時間12分。残り時間は大石のほうが少なくなっている。 * *■中継ブログ■ *「棋士室の見解」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-8db8.html 78 3七歩成(36) ( 0:00/00:00:00) *検討にない一手が出た。△3七歩成の成り捨て。 79 同 角(15) ( 0:00/00:00:00) *稲葉は▲3七同角で応じる。▲同歩は角の筋が止まる分、△4六飛▲同銀△3八馬以下の変化の際に損な面がありそうだ。 80 同 馬(28) ( 0:00/00:00:00) 81 同 歩(38) ( 0:00/00:00:00) 82 4五金(54) ( 0:00/00:00:00) *角と馬を清算して金を頭突き。曲線的な攻めに出た。 83 同 金(46) ( 0:00/00:00:00) *継ぎ盤を囲んでいる検討陣(安用寺六段、豊島七段、杉本七段、香川愛生女流1級、塚本2級)がここで△2七角の攻めを発見。大石の構図がようやく見えてきた。△2七角は飛金両取りの攻め。飛車を逃げると△4五角成で、金を取った手が△6七桂成以下の詰めろになる。▲4四金△4九角成の取り合いも△4九角成がやはり詰めろ。馬が急所に利いている。 *豊島七段「鮮やかな寄せですね。△3七歩成(78手目)に▲同歩としていても、△4五金▲同金△2七馬と同じ筋を狙っていたのだと思います」 84 6七桂成(75) ( 0:00/00:00:00) *大石は先に△6七桂成とした。単に△2七角と打った場合、▲4四金△6七桂成に▲5九玉と引かれる可能性があった。先に△6七桂成なら先手の応手は▲同玉の一手である。変化の余地を消した細やかな手順に棋士室一同感心しきり。 85 同 玉(68) ( 0:00/00:00:00) 86 2七角打 ( 0:00/00:00:00) *飛金両取り。厳しい角打ちだ。棋士室の形勢判断は後手勝勢。 87 4四金(45) ( 0:00/00:00:00) *稲葉は飛車を取り合う順を選んだ。残り時間は稲葉42分、大石41分。 88 4九角成(27) ( 0:00/00:00:00) 89 5八金打 ( 0:00/00:00:00) 90 6九飛打 ( 0:00/00:00:00) 91 6八銀打 ( 0:00/00:00:00) *※ *▲5八金(89手目)〜▲6八銀打は最善の粘りだった。明快な決め手を与えない稲葉の指し手が後のドラマを生む。 92 8九飛成(69) ( 0:00/00:00:00) *桂を取った手が△5五桂までの詰めろ。先手先手で厳しい攻め続く。6四桂が玉の退路を封鎖してよく利いている。 * *※ *△8九飛成が最初の逸機となってしまった。駒を取りながらの詰めろで厳しい攻めだが、次に▲5六歩(93手目)と突かれて意外に耐久力が残っていたのが大石の誤算だった。 *感想戦で稲葉が指摘したのは△4八金。詰めろではないが、△4七金〜△5八馬までの2手スキの寄せである。△4八金に大石は▲7八角の抵抗が見えて見送ったようだが、詳しく調べてみると△4八金▲7八角△8九飛成▲同角△4七金▲3一飛△5八馬▲7八玉△7六桂で先手受けなし。自玉に詰みもなく、後手の勝ち筋だったようだ。 93 5六歩(57) ( 0:00/00:00:00) *歩を突いて逃亡ルートを開拓。ここで大石が手を止めた。いろいろ手段があって手の広い局面のようで、棋士室でも寄せ方があれこれ検討されている。継ぎ盤を囲んで考えている局面は▲5六歩△6九竜▲5七玉の局面。 * *■中継ブログ■ *「大石、寄せに出る」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-2d3d.html * *※ *大石「▲5六歩で全然手が見えなくなりました。本当はここで△3五桂を打ちたかったんですが、▲5三金△同金▲3二飛と王手で抜く筋があって指せませんでした」 *稲葉「▲5六歩で際どくなったかなと思いました」 94 4六桂打 ( 0:00/00:00:00) *大石の着手は銀頭に打つ△4六桂だった。▲同銀なら△4八金と迫る狙いか。 *棋士室ではここで▲5三金△同金▲4二飛△5二銀▲4六飛成の変化が検討されている。王手で桂を抜く懸命の粘りだが、4筋が埋まったのを見計らっての△7六金が厳しいようだ。▲同銀は△同桂、▲5七玉は△7七金▲同銀△4八銀(!)の寄せがある。 * *■中継ブログ■ *「華麗な捨て桂」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-3d17.html 95 6五桂打 ( 0:00/00:00:00) *防戦に徹していた稲葉がここで攻勢に出た。△4六桂(94手目)は詰めろではないようだ。一手の隙を突いて敵陣にアヤを付けた。先手が桂を手に入れると詰めろが生じている可能性もあり、局面は複雑だ。 96 5五金打 ( 0:00/00:00:00) *歩頭に金。△5八馬▲同銀△5六金までの詰めろをかけた。▲5五同歩は△5八馬▲同銀△5六金でやはり詰む。継ぎ盤では▲5三金の変化が検討されている。 97 5三金(44) ( 0:00/00:00:00) *一気の詰みはないようだ。王手をからめて詰めろを解除するうまい手順があるかどうか。 * *■中継ブログ■ *「稲葉の反撃」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-1a52.html 98 7一玉(62) ( 0:00/00:00:00) *駒は一切取らず。△7一玉と引いた。△5三同金は▲3二飛△5二金▲4四角△7二玉▲5五角のような筋で粘る順がある。 *棋士室では▲4一飛から王手で4六桂を抜く順を検討している。△8二玉▲7一角△9二玉▲4六飛成△同金▲同銀が予想される。この局面は△7二飛で後手が余しているのでは、と言われている。 99 6二金(53) ( 0:00/00:00:00) *逃げる玉をさらに追撃。金捨ての鬼手が出た。時間がないのか稲葉の手つきに余裕はなく、6筋の駒が大きく乱れた。駒の位置を直す稲葉の右手が微かに震えている。「なるほど、この順のほうが長くなりますね」と豊島七段。△6二同玉には▲4四角、△6二同金には▲5一飛があり、どちらも王手で5五金を取って詰めろを解除できる。 * *※ *大石「▲4一飛〜▲4六飛成を読んでいたんですが、▲6二金でパニックになりました(笑)」 *大石の読み筋は棋士室での検討同様、▲4一飛△8二玉▲7一角△9二玉▲4六飛成△同金▲同銀△7二飛で勝ち筋、というもの。実際この順は後手が残していたようだ。稲葉もこの順は読んでいて、本譜の▲6二金か▲4一飛かで迷った挙句▲6二金を選んだ、ということだった。「(▲4一飛を)やらなくてよかった……」とホッした表情で苦笑いする稲葉。 100 同 金(52) ( 0:00/00:00:00) *時刻は22時を回った。残り時間は稲葉19分、大石10分。 101 5一飛打 ( 0:00/00:00:00) *決まりそうで決まらない、スリリングな終盤が続く。後手がよいとされてきたが、なかなか決め手が見つからない。 102 7二玉(71) ( 0:00/00:00:00) *△6一金打は駒不足になるとみたか。△7二玉と逃げた。 * *※ *第2の逸機。感想戦で△8二玉が検討され、そちらを選ぶべきだったという結論に落ち着いた。大石は△8二玉に▲7一角を気にしたのだが、どうやら△7二玉とかわして耐えているようだ。本譜は▲7三歩が王手でいつでも入る形だったのが大きかったようだ。 103 5五飛成(51) ( 0:00/00:00:00) 104 5八桂成(46) ( 0:00/00:00:00) 105 同 銀(47) ( 0:00/00:00:00) *ここで(1)△5四金で勝てれば明快だが、▲7三歩の王手が利くのが大きい。△同桂は▲同桂成△同金▲8五桂の攻めが速く、2手スキで迫る攻めでは間に合わない状況のようだ。 *そこで検討されているのが(2)△4七金の攻め。▲4九銀△8七竜▲8八桂△7六金▲同桂△同桂が予想手順だ。この局面は先手玉に受けが難しいため、後手玉に詰みがあるかどうかがポイントとなる。 106 5四金打 ( 0:00/00:00:00) *大石の選択は(1)△5四金だった。次に△5五金と取る手が△5六金までの詰めろ。つまり、△5四金は2手スキとなる。 * *※ *対局中、大石は(1)△5四金と(2)△4七金の2つを読んでいた。当初の予定は(2)△4七金。棋士室の検討通り△4七金▲4九銀△8七竜▲8八桂△7六金▲同桂△同桂と進め、自玉に詰みはなく先手の受けも難しいため勝ち、というのが大石の読みだった。しかしよくよく読んでみると、最後の△同桂の局面で▲7三歩△8二玉に▲7一角!と打てばぴったり詰んでいる(☆:詰み筋は下記参照)。これが大石の不運だった。 * *大石「当初は△4七金から△同桂まで進めて受けにくいと思っていたんですが、自玉が詰めろになっていたのが大誤算でした」 * *本譜は仕方なく△5四金としたが、▲7三歩以下押し切られてしまった。△5四金と指すしかないようではこの局面で勝ちはなく、102手目△7二玉が敗着、ということで感想戦の結論が出された。 *ところがである。ここで大どんでん返しが待っていた。詳しくは111手目にて。 * * *☆▲7三歩以下詰み筋☆ *▲7三歩△8二玉▲7一角△同玉▲5一竜△6一歩▲6二竜△同歩▲7二金△同銀▲同歩成△同玉▲7三歩△同桂▲同桂成△同玉▲6五桂△8四玉▲7三銀△8五玉▲8六歩△同竜▲同銀△同玉▲7七銀△8七玉▲7八金まで。 107 7三歩打 ( 0:00/00:00:00) *稲葉はすぐに▲7三歩の王手をかけた。 108 同 桂(81) ( 0:00/00:00:00) *△8二玉とかわすのも▲7二金と打ち込む攻めがあったようだ。 109 同 桂成(65) ( 0:00/00:00:00) *バタバタと指し手が進む。 110 同 金(62) ( 0:00/00:00:00) 111 8五桂打 ( 0:00/00:00:00) *先手の攻めが後手の喉元に厳しく迫る。▲8五桂は▲7三桂成△同玉▲5一角以下の詰めろ。5五竜を取る余裕がない。「これはもう逆転しているかもしれません」と豊島七段。 * *■中継ブログ■ *「形勢逆転」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-2deb.html * *※ *「▲8五桂の詰めろが受けにくく先手勝ち」。これが対局者、検討陣の共通認識だった。ところが、詰めろを逃れる筋があったのだ。「▲8五桂って詰まないんじゃない?」。いよいよ決着がつきそうな終盤戦で不詰を指摘したのは杉本七段だった。検討してみたところ、△5五金と飛車を取った局面が確かにぎりぎり詰まない。 *感想戦でも調べてみると、▲8五桂以下△5五金▲7三桂成△同玉▲5一角△6二飛(飛車合い以外は詰み)▲8五桂△8二玉▲7三金△8一玉▲8二金打△同飛▲同金△同玉▲7三角成△7一玉▲5一飛△6一桂……と王手は続くが際どく逃れていた。逆に先手玉には△5六金までの詰めろがかかっている。△5五金が飛車合いを用意して詰めろ逃れの詰めろになっていたのだ。以下先手に粘る順はあるものの、結論は「後手勝ち」だった。 * *稲葉「ひえー、そっかぁ……」 *大石「そうか……いやー、そっか。信頼して受けちゃいました(笑)」 *(しばし沈黙) *稲葉「いやー、すごいな。じゃあずっと負けだったんですね」 *大石「終盤はひどい手ばかり指してました。相手の勝負手を全部通してしまってたんですね」 112 6一桂打 ( 0:00/00:00:00) *詰めろを受けたが。 * *※ *従って、△6一桂と受けたのが第3の逸機。 113 6五桂打 ( 0:00/00:00:00) *さらに追撃。厳しい桂打ちだ。安用寺六段も「逆転してますか」。 * *※ *▲8五桂(111手目)は詰めろにあらず。よって、△6一桂の受けに▲6五桂と数を足した手も詰めろになっていない。 114 同 金(54) ( 0:00/00:00:00) *※ *そして、△6五同金が最後の逸機となった。▲6五桂(113手目)が詰めろではないため、△5五金と竜を取れば後手の勝ち筋だった。 *終盤のアヤを知って、勝った稲葉も、敗れた大石も、ともにしっくりこない表情。手をおでこにやり、しばらく肩を落としていた。どちらが勝者でどちらが敗者か、わからないような光景だった。 115 同 歩(66) ( 0:00/00:00:00) *△6五同金で桂を払ったが、▲同歩と取った手が手順に桂取りになっている。 116 6六歩打 ( 0:00/00:00:00) *歩を叩いて嫌味を付けた。▲同銀は△7六金や△8七竜が、▲同玉は△7五金〜△8五金の筋がありそうだ。 117 5七玉(67) ( 0:00/00:00:00) *稲葉はさらりと▲5七玉。 118 5四桂打 ( 0:00/00:00:00) *△5四桂と縛った。△5四桂は詰めろではないが、5五竜が動くと△4六金までの1手詰が生じる。また、△4六金▲同竜△5八馬▲同玉△4六桂や、△6七金と打ち込む筋など嫌らしい王手がいろいろある。先手も指し手に迷うところだろう。 119 6四歩(65) ( 0:00/00:00:00) *稲葉は桂を取ってあっさりと決めにいった。 *豊島七段「後手玉は詰めろで、先手玉に詰みはありません。相当うまくやらないと後手が勝つのは難しい局面です」 120 6七金打 ( 0:00/00:00:00) *ここで△6七金と打ち込んだ。自玉に受けがない後手の最後の突撃。先手陣を無理矢理ばらしにかかる。 * *■中継ブログ■ *「大石四段、最後の突撃」 *http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2012/07/post-490f.html 121 同 銀(68) ( 0:00/00:00:00) 122 同 歩成(66) ( 0:00/00:00:00) 123 同 銀(58) ( 0:00/00:00:00) *攻めの面倒をみる▲6七同銀直△同歩成▲同銀が冷静な対処。これで先手玉は寄らないようだ。 124 5九龍(89) ( 0:00/00:00:00) *馬と竜の連携が強力だが。 125 4七玉(57) ( 0:00/00:00:00) *横にかわして大丈夫のようだ。 126 4六銀打 ( 0:00/00:00:00) *王手竜取りにアヤを求める。 127 3六玉(47) ( 0:00/00:00:00) *▲4六同竜は△4八竜以下の詰みがある。▲3六玉とかわした。 128 5五銀(46) ( 0:00/00:00:00) *△5五銀で王手がとぎれた。この瞬間に詰ませば先手の勝ちである。 129 3五角打 ( 0:00/00:00:00) *詰み筋は追わず。慎重を期して自玉の受けに利かせつつ、敵陣をにらむ角を据えた。▲7一金△8二玉▲8一金△9二玉▲9三金までの詰めろになっている。 130 5三桂(61) ( 0:00/00:00:00) 131 6三歩成(64) ( 0:00/00:00:00) 132 同 金(73) ( 0:00/00:00:00) 133 7三歩打 ( 0:00/00:00:00) *△6二玉で詰みはないが、▲4三金と縛る手がある。 134 6二玉(72) ( 0:00/00:00:00) 135 4三金打 ( 0:00/00:00:00) *▲4三金で左右挟撃の態勢を築いた。▲5二金△7一玉▲7二金までの詰めろ。先手玉に詰みはなく、後手は適当な受けもない。 *▲4三金を見て大石が投了を告げた。終局時刻は22時50分。消費時間は▲稲葉4時間56分、△大石4時間59分。見事な逆転勝ちで稲葉が決勝トーナメント初勝利を挙げた。次戦は1組5位の三浦弘行八段と対戦する。 136 投了 ( 0:00/00:00:00) まで135手で先手の勝ち