# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.62 棋譜ファイル --- 対局ID:12312 記録ID:60d03da948b3ba000422019c 開始日時:2021/06/29 09:00 終了日時:2021/06/30 15:35 表題:王位戦 棋戦:お〜いお茶杯第62期王位戦七番勝負 第1局 戦型:相掛かり 持ち時間:各8時間 秒読み:60秒 消費時間:104▲379△380 場所:愛知・名古屋能楽堂 備考:昼休前35手目22分\n2日目昼休前70手目14分\n封じ手時刻:18:00<48手目>\n 図:投了 振り駒:3,0,藤 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:30〜13:30 昼休前消費時間:35手22分 手合割:平手   先手:藤井聡太王位 後手:豊島将之竜王 先手省略名:藤井聡 後手省略名:豊島 手数----指手---------消費時間-- *令和の天才か、最強の刺客か。藤井聡太王位(棋聖)に豊島将之竜王(叡王)が挑む、お〜いお茶杯第62期王位戦七番勝負(主催:新聞三社連合)は、6月29日・30日(火・水)愛知県名古屋市「名古屋能楽堂」で開幕する。持ち時間は各8時間。先後は振り駒で決まる。対局は9時開始。昼食休憩は12時30分から13時30分。1日目の18時に手番の棋士が封じ手を行い、翌日に指し継ぐ。 *立会人は青野照市九段、副立会人と大盤解説会解説は稲葉陽八段、大盤解説会聞き手は中澤沙耶女流初段、記録係は柵木幹太三段(増田裕司六段門下)がそれぞれ務める。 *対局1日目の名古屋は曇り。最高気温は30度の予報で、天候は変わりやすいようだ。 * *【お〜いお茶杯第62期王位戦七番勝負第1局は6月29・30日に対局】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/622930-f590.html *【対局1日目のスケジュール】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-14b3.html *【お〜いお茶杯第62期王位戦七番勝負の特集記事】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/62-525a.html *【地元で幕開け、ひのき舞台は整った 将棋・王位戦、29日から第1局】 *https://www.chunichi.co.jp/article/281131?rct=igo_shogi * *(棋譜・コメント入力=武蔵) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。【】内はブログ記事タイトル、もしくはリンク先。#は局後の感想が追記された指し手] 1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00) *8時30分、記録係の柵木三段が駒を磨いて、対局の用意を整える。40分過ぎに立会人の青野九段が着座。その後、関係者もそれぞれ所定の席につき、両対局者の到着を待つのみとなった。 *45分、藤井が入室。淡い若草色の着物に仙台平の袴、黒の紗の羽織をまとっている。扇子を膝元に置き、ピンと背筋を伸ばして豊島の到着を待つ。 *48分、豊島が姿を見せ、一礼してから着座した。淡い水色の着物に、藤井と同じく仙台平の袴をはいている。両者が一礼を交わして、藤井が駒箱に手をかけ、盤上に駒を散らした。感触を確かめるように、どちらもゆっくりと駒を並べていく。 *55分、振り駒。結果は歩が3枚出て、藤井の先手に決まった。 *9時、青野九段が対局開始を告げた。両者が深々と頭を下げる。藤井は手を拭いてから、盤上に手を伸ばした。 * *【振り駒】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-d297.html *【対局開始】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-75cb.html 2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00) *藤井の指が駒から離れたあと、豊島は少しの間を置いて△8四歩と返した。 * *【対局前の様子(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-7a79.html *【対局前の様子(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-5c89.html *【対局前の様子(3)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-904e.html 3 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00) *関係者が席を離れる。藤井はその様子を目で追った。豊島はグラスの飲料をひと口飲む。 4 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00) *戦型予想は、角換わりや矢倉、相掛かりなどの声があった。特に青野九段は「藤井王位はいろんな戦型を試したいと思っているのではないか。普段指さない戦型が出る気もする」と予想している。 5 7八金(69) ( 1:00/00:01:00) *◆藤井 聡太(ふじい そうた)王位(棋聖)◆ *2002年7月19日生まれ、愛知県瀬戸市出身。杉本昌隆八段門下。2016年、四段。2020年、八段。棋士番号は307。 *タイトル戦登場は4回。獲得は王位1期、棋聖1期の計2期。棋戦優勝は5回。 6 3二金(41) ( 0:00/00:00:00) *◆豊島 将之(とよしま まさゆき)竜王(叡王)◆ *1990年4月30日生まれ、愛知県一宮市出身。桐山清澄九段門下。2007年、四段。2019年、九段。棋士番号は264。 *タイトル戦登場は14回。獲得は竜王2期、名人1期、王位1期、叡王1期、棋聖1期の計6期。棋戦優勝は3回。 7 3八銀(39) ( 0:00/00:01:00) *戦型は相掛かりに決まった。▲2四歩からの飛車先の交換を保留して駒組みをする、近年流行中の出だしで進む。 8 7二銀(71) ( 0:00/00:00:00) *後手も先手の動きに追随した。飛車先の歩の交換は、▲7六歩や▲4六歩など横歩を突いたタイミングで行う場合が多い。 9 9六歩(97) ( 0:00/00:01:00) *王位戦の主催は新聞三社連合。新聞三社連合は、中日新聞(東京新聞)、北海道新聞、西日本新聞のブロック紙3社が連携を強化するため、1950年に設立された。後に神戸新聞と徳島新聞が加わり、現在は5社が女流王位戦と王位戦、また囲碁の天元戦を主催している。番勝負の各対局ごとに加盟社が交代で運営し、本局は中日新聞社が担当する。 * *【新聞三社連合の概要】 *http://live.shogi.or.jp/oui/sansha.html *【中日新聞 囲碁将棋】 *https://www.chunichi.co.jp/wadai/culture/igo_shogi 10 9四歩(93) ( 0:00/00:00:00) *本日の中日新聞には、前日の検分の模様や河村たかし市長の激励の様子の記事を読める。 *また、将棋欄には本局の観戦記を担当する小池大志さんが執筆した、王位リーグ▲羽生善治九段−△永瀬拓矢王座戦が掲載されている。 11 6八玉(59) ( 2:00/00:03:00) *主催紙の各種SNSアカウントは以下のとおり。中日新聞デジタル編集部のYouTubeチャンネルでは、昨日行われた「オンライン前夜祭」の模様を見られる。 * *【中日新聞デジタル編集部】 *https://www.youtube.com/channel/UCfD9k0fXeyRlYiMHaBLzS3Q *【中日新聞 YouTubeチャンネル】 *https://www.youtube.com/channel/UChMY5syRMpLJwWgf2KDgsFA *【Twitterアカウント】 *https://twitter.com/chunichishogi *【オンライン前夜祭(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-d38f.html *【オンライン前夜祭(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-c665.html *【オンライン前夜祭(3)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-fac2.html *【オンライン前夜祭(4)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-7971.html 12 1四歩(13) ( 2:00/00:02:00) *第62期王位戦記念グッズが、中日新聞や東京新聞のオフィシャルショップで購入できる。扇子やキャンディーは8月上旬、メモリアルプレートは10月上旬にそれぞれ発送予定。また「中日プラス会員」向けの特別抽選も用意されている。 * *【オンラインショップ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-ec11.html 13 1六歩(17) ( 4:00/00:07:00) *第62期から王位戦は株式会社伊藤園が特別協賛に加わり、棋戦名に「お〜いお茶杯」の冠名がついた。 *協賛に際して伊藤園は「お茶と将棋には、ともに日本の伝統文化といえる背景がある。将棋をお茶で応援したい、という想いを込めた」としている。 *また、本局はタマホームと瀬戸信用金庫が協賛に加わった。 * *【お〜いお茶 伊藤園】 *https://www.itoen.jp/oiocha/ *【タマホーム株式会社】 *https://www.tamahome.jp/ *【瀬戸信用金庫】 *https://www.setoshin.co.jp/ *【特別協賛】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-366f.html *【戦型は相掛かり】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-0f38.html * 14 5二玉(51) (16:00/00:18:00) *対局地の名古屋市は愛知県の西部に位置する県庁所在地で、人口約232万人の都市。日本列島のほぼ中央に位置し、横浜市と大阪市に続く3番目の政令指定都市になった。三大都市圏のひとつである中京圏を形成し、政治や経済、交通などの要所である。古くは「那古野」の字が当てられ、平安時代末から南北朝期に荘園名として現れる。語源は様々で、気候や風土が「なごや」かな地、ナゴ(霧)の多い原野といった説がある。本局を戦うふたりはどちらも同県出身で、藤井は瀬戸市、豊島は一宮市が地元だ。 * *【名古屋市ホームページ】 *https://www.city.nagoya.jp/ *【東海地方出身の棋士同士によるタイトル戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-a924.html 15 2四歩(25) ( 3:00/00:10:00) *昨年12月、日本の将棋文化の普及・振興を推進し、地域社会の発展に寄与することを目的として、日本将棋連盟は名古屋市と文化振興に係る連携協力に関する協定を締結した。 * *【公益社団法人日本将棋連盟と名古屋市が文化振興に係る連携協力に関する協定を締結 調印式のご報告】 *https://www.shogi.or.jp/news/2021/01/post_1985.html 16 同 歩(23) ( 0:00/00:18:00) *本局の対局場「名古屋能楽堂」は、能や狂言など伝統芸能の振興と文化交流の推進を目的として、1997年に開館した。常設の能楽堂としては日本最大級の規模を誇る。舞台は総木曽檜造りで、鏡板の老松と若松とが1年ごとにはめ替えられる。 *王位戦が能楽堂で行われるのは3期連続。第60期と第61期では、福岡県福岡市「大濠公園能楽堂」で開催した。前期の大濠公園能楽堂での対局で、藤井が王位を奪取している。 * *【名古屋能楽堂ホームページ】 *https://www.bunka758.or.jp/scd24_top.html *【名古屋能楽堂】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-0563.html 17 同 飛(28) ( 0:00/00:10:00) *名古屋能楽堂のすぐ南に立つ名古屋城は、外堀を含めておよそ35万3000平方メートルの広大な敷地内に立つ、徳川家康が築いた平城。別名に金鯱城(きんこじょう、きんしゃちじょう)と呼ばれる。天守に輝く金鯱は名古屋城の象徴で、火災を防ぐ守り神とされてきた。 *近場には徳川家ゆかりの庭園「徳川園」や、尾張徳川家の名品のひとつ、国宝の源氏物語絵巻が展示されている「徳川美術館」などがある。 * *【特別史跡 名古屋城】 *https://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/ *【名古屋城】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-6ce5.html 18 2三歩打 ( 0:00/00:18:00) *グルメ激戦区としても有名な名古屋名物を総称して「名古屋めし」と呼ぶ。ひつまぶしや味噌煮込みうどん、手羽先の唐揚げ、味噌カツ、きしめんなど、枚挙に暇がない。また、コーヒーいっぱいの値段でトーストやサラダなど、ほかの地域と比べて桁違いの量が出てくる「モーニング」も特徴のひとつだ。 19 2六飛(24) ( 1:00/00:11:00) *名古屋の方言である「名古屋弁」は、連続する2つの母音のひとつを、伸ばして発音するのが特徴。「おまえ」は「おみゃー」、「ない」は「にゃー」など。この発音は広島県中部〜岡山県西部で用いられる「備後弁」にも共通する。江戸時代に備後の地を治めていた水野勝成が徳川家康の従兄弟で、三河との交流が深かったためとする説がある。 20 3四歩(33) ( 2:00/00:20:00) *△3四歩で角の利きを通した。現局面の前例は2局あり、先手の次の手は▲7六歩と▲3六飛に分岐している。 21 3六飛(26) ( 1:00/00:12:00) *飛車を寄って3四の歩に狙いを定めた。飛車の縦の利きで歩を取りにいく「縦歩取り」と呼ばれる形。前例は1局で、2018年の第26期銀河戦本戦▲菅井竜也王位−△増田康宏五段戦で現れている(段位・肩書は当時のもの)。結果は後手勝ち。 22 3三金(32) (15:00/00:35:00) *序盤の早い段階で歩損は避けたい。金を上がって歩を支える。▲菅井−△増田康戦の△8四飛から手を変えて前例を離れた。 *着手後に豊島は席を外す。藤井は記録係から棋譜用紙を受け取り、軽く眺めて返却した。 *稲葉八段は現局面の見解を以下のように話す。 *「ありそうでない局面です。▲3六飛はひねり飛車を含みにして、5八玉型から▲4八玉〜▲3九玉と美濃に組み替えることが多いので、6八玉型との組み合わせは珍しい印象です。本譜はひねり飛車ではなく、後手に△3三金を強要して、角道が止まっている間に駒組みを進めてしまおうという狙いが推察できます。ただ、縦歩取りは▲3六飛のあと、▲2六飛と戻って千日手含みに戦う後手に多い指し方なので、豊島さんは意表を突かれたのではないでしょうか」(稲葉八段) 23 7六歩(77) ( 1:00/00:13:00) *両対局者は昨日の16時40分頃、名古屋能楽堂に到着。記念撮影のあと、17時5分から検分がスタート。盤駒のチェックや照明の明るさ、座布団の座り心地などを確認し、大きな問題なく5分ほどで終了した。 * *【記念撮影(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-0c05.html *【記念撮影(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-29cb.html *【検分】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-42ac.html 24 8六歩(85) ( 5:00/00:40:00) *検分後に行われた記者会見で、両者が抱負を述べた。 *「同郷の出身で常に目標としてきた先輩と、大きな舞台、それも地元で対戦できるのをうれしく思う。二日制の対局は久しぶりだが、相手が誰であれ、自分ができることは同じなので、去年の感覚を思い出して全力を尽くしたい。叡王戦でも挑戦が決まって、2つのシリーズで豊島竜王と対戦できるのは、自分自身の成長につながる機会。しっかりと戦いたい」(藤井) *「タイトル戦もしばらくなかったので、緊張感が高まっている。能楽堂という素晴らしい舞台を用意していただいたので、ふさわしい対局にできるよう、頑張りたい。藤井王位は攻守にバランスがよく、一手一手の精度が高い。棋聖戦の成績、叡王戦で挑戦権を得るなど、非常に充実されている。タイトル戦を同時進行で指した経験はあるが、同じ相手は初めて。段々と指す戦法が難しくなるようなこともあるかもしれない。しかし、これからの棋士人生に生かせるような戦いにしたい」(豊島) * *【記者会見】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-58df.html 25 同 歩(87) ( 0:00/00:13:00) *藤井の今年度成績は10勝2敗(0.833)。 *今年度、対局数ランキング7位タイ、勝数ランキング2位タイ、勝率ランキング8位タイ、連勝ランキング1位、14位タイ。 *通算成績は223勝42敗(0.842)。 *前期で木村一基王位(現九段)に挑戦し、4連勝のストレートで奪取に成功。史上最年少の18歳1ヶ月での二冠王達成で、羽生善治九段の持っていた21歳11ヶ月の記録を大きく塗り替え、話題を集めた。 * *【王位戦の連勝記録】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-9cd8.html 26 同 飛(82) ( 0:00/00:40:00) *豊島の今年度成績は5勝2敗(0.714)。 *通算成績は518勝235敗(0.688)。 *第59期で王位戦七番勝負に初登場。菅井竜也王位(現八段)とのフルセットの激闘を制し、タイトルを獲得した。第60期の防衛戦でも第7局までもつれ込んだが、タイトル防衛は果たせなかった。3期ぶりの王位奪取に向け、本局を戦う。 * *【両対局者の直近10局】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/10-f359.html 27 8七歩打 (12:00/00:25:00) *控室には日本将棋連盟非常勤理事の杉本昌隆八段が訪れている。杉本昌八段は、藤井と中澤女流初段の師匠である。 *「先手はこのあとどのように指すんでしょうか。なんだか先手ではなく、後手のような指し方ですね」(杉本昌八段) *10時を過ぎ、午前のおやつの時間になった。注文は両者とも季節のフルーツ盛り合わせ。藤井のみ、飲み物にアイスコーヒーを頼んだ。どちらも対局者控室に運ばれている。 * *【1日目午前のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-62f1.html 28 8四飛(86) ( 8:00/00:48:00) *浮き飛車に構える。3四の歩にさらにひもをつけ、△3二金と引きやすくした。 *「ただ、現状では△3二金のあとに後手の指す手が難しいかもしれません」(稲葉八段) *「(1)▲2六飛には△3二金が自然です。その変化は後手がうれしいような」(杉本昌八段) *「▲2六飛に金を引かないと、▲1五歩△同歩▲1二歩△同香▲3三角成△同角▲2三飛成の強襲があります」(稲葉八段) *「(2)▲6六角が自然ですか。▲8八銀を用意して駒を活用できます」(杉本昌八段) *「ほかに(3)▲5六飛と中央に回って、▲3六歩〜▲3七桂とする順もありますが、藤井さんの棋風ではなさそうです」(稲葉八段) *「それは攻撃的ですが、確かに藤井王位の棋風ではない気がします」(杉本昌八段) 29 2六飛(36) (33:00/00:58:00) *11時ちょうどの着手。▲2六飛までの消費時間は、▲藤井58分、△豊島48分。 *検討の候補に挙がっていた飛車寄り。▲1五歩からの開戦を視野に入れた。 *藤井は今月26日に行われた第6期叡王戦本戦を勝ち抜き、豊島への挑戦権を得た。王位戦を含めると、最大で十二番勝負になる可能性がある。 *過去には豊島と木村九段が、第60期王位戦七番勝負と第32期竜王戦挑戦者決定三番勝負で相まみえ、十番勝負といわれた。藤井と豊島の勝負がどこまで楽しめるのか、今後の見どころのひとつといえる。 * *【藤井聡太王位・棋聖が勝利し豊島将之叡王へ挑戦】 *https://www.shogi.or.jp/match_news/2021/06/210626_t_result_01.html *【ダブルタイトル戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-3c2e.html 30 3二金(33) ( 3:00/00:51:00) *金を引いて角の息苦しさを解消した。▲3六飛△3三金▲2六飛△3二金……の千日手の順は、後手にとって大歓迎だろう。 *これまで対戦成績は豊島6勝、藤井1勝。初手合いから豊島が6連勝と成績を大きく引き離した。しかし、今年の1月に第14回朝日杯将棋オープン戦で、本局と同じ愛知の地で藤井が初勝利を挙げている。 * *【両者の過去の対戦成績】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-3b60.html 31 4六歩(47) ( 2:00/01:00:00) *本局の盤駒は中山則男指導棋士六段が所有するもの。盤の厚さは7寸を超える重厚な逸品。駒は竹風師作、菱湖書。 *11時10分、両者とも席を離れている。 *「先手の駒組みは、▲4七銀〜▲3六歩〜▲3七桂〜▲4八金〜▲2九飛の引き飛車が一例です。ただ、どこかのタイミングで△8六歩や△7四飛がある点に注意しなくてはいけません。小競り合いはあるかもしれませんが、激しい戦いにはなりにくそうです」(稲葉八段) *「最近は▲4六歩よりも▲3六歩〜▲3七桂を急ぐ指し方が多いように思います。激しい戦いになりやすく、若い人の勝率がいいイメージがありますね」(青野九段) *11時50分、豊島の考慮時間が40分を超えた。頬に手を添え、盤に視線を落とす。やがて席を外した。藤井は目線を上げ、ぼんやりと中空を眺める。 * *【12時ごろの控室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/12-4623.html 32 8六歩打 (54:00/01:45:00) *本局はABEMAで動画中継される。1日目の解説は中村修九段、伊藤真吾六段、藤森哲也五段、井出隼平五段が担当する。 *54分の長考だった。1手前の▲4六歩で飛車の横利きが止まったのを見逃さない。歩を合わせて横歩を取りにいく狙いだ。 *「飛車の横利きが止まったらすぐに動くというのが、最近のトレンドですね」(青野九段) * *【第62期王位戦七番勝負第1局1日目】 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/Dxgq6iDajCC48P *【対局1日目 ABEMA中継情報】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/abema-981a.html *【ABEMAのマルチアングル放送】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/abema-87ed.html * *※局後の感想※ *「△7四歩だったらよくある将棋。どう対応されるのかは、わかっていませんでした」(豊島) 33 同 歩(87) ( 6:00/01:06:00) *「代えて▲2二角成△同銀に▲6六角と打つのも部分的にはありました。激しい変化は、△8七歩成▲8四角△7八と▲同銀△4四角です。ただ、先手も▲2五飛△9九角成と香を取られたあとに▲8二歩の返し技があるので、形勢がどうなっていたのか、はっきりとしませんでした」(稲葉八段) 34 同 飛(84) ( 0:00/01:45:00) *序盤のポイントの局面を迎えた。次に△8八飛成▲同銀△4四角打がある。先手は8筋と7六の歩をどのように受けるのか。(1)▲8七歩△7六飛▲2二角成△同銀で、(A)▲8二角は△7八飛成▲同玉△9二金で角が捕まる。飛車切りを消して(B)▲7七歩△7四飛▲8二角も考えられるが、「歩切れに陥るのは少し悔しいように見えます。長考の気配が漂っており、このまま昼食休憩に入る可能性が高そうです」と稲葉八段は話し、控室から出ていった。 *しばらくして控室に戻ってきた稲葉八段は、現局面から(2)▲2四歩の攻め合いを示した。以下、最も激しい変化は△8八角成▲同銀△4四角に(a)▲2三歩成で、△8八角成▲3二と△7八馬▲同玉△8九飛成▲同玉△8七銀で先手玉に必至がかかり、後手玉が詰むかどうかの勝負になる。ほかには(b)▲7七角△8八飛成▲同角△2六角▲2三歩成△同金に、▲2五飛や▲1一角成を比較する順も有力だ。 *12時30分、この局面で藤井が22分を使って昼食休憩に入った。消費時間は、▲藤井1時間28分、△豊島1時間45分。昼食の注文は、藤井は海老天ころうどんといなり寿司、豊島は親子丼、ころ蕎麦、紅茶。「ころ」はうどんやそばに冷たいつゆをかけたもので、東海名物のひとつ。対局は13時30分に再開する。 * *【昼食休憩に入る】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-97d2.html *【対局者の1日目の昼食】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-88d9.html *【1日目昼食休憩時の対局場】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-7ca1.html 35 4五歩(46) (23:00/01:29:00) *13時30分、対局再開。▲4五歩と伸ばして飛車の横利きを通し、7六の歩にひもをつけた。角交換からの△4四角も消している。このあと右銀を繰り出して位を安定させ、戦いの起点にしたい。 * *【対局再開(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-90ed.html *【対局再開(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-cc4e.html 36 7四歩(73) (18:00/02:03:00) *控室では、不安定な4筋の歩を目標にする△8五飛も候補にあった。豊島は△7四歩と突き、△7三銀や△7三桂を可能にして、右辺の駒の活用を図る。 *藤井は膝を崩して盤に近づいた。豊島は茶をグラスに注ぎ入れ、ひと口飲む。 *「4五の歩は飛車よりも△3三桂〜△4五桂で取って、そのあと△7三桂〜△6五桂で中央を狙うのが、後手の理想形です」(稲葉八段) * *※局後の感想※ *「代えて△8五飛〜△4五飛も考えましたが、4五の歩を飛車で取るのがどれほどうれしいのか、わかりませんでした」(豊島) 37 3六飛(26) (20:00/01:49:00) *14時10分頃、▲3六飛までの消費時間は、▲藤井1時間49分、△豊島2時間3分。 *再び▲3六飛と寄って歩を目標にした。(1)△3三金には▲7五歩が継続手。以下、△3六飛▲同歩の飛車交換は、次に▲8二歩や▲5五角が残って先手の楽しみが多い。 *稲葉八段を中心とする検討では、現局面から(2)△4二玉や(3)△7三桂を調べている。 *「(2)△4二玉には▲1五歩△同歩▲1三歩の垂らしが嫌らしく、きちんとした対策がないと玉は寄りにくいかもしれません。また、(3)△7三桂▲3四飛△3三桂も、次に△4五桂と跳ねられるわけではありません」(稲葉八段) * *【午後の控室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-2058.html 38 7三桂(81) (41:00/02:44:00) *右桂を跳ねて活用した。△3三桂〜△4五桂〜△6五桂で、先手の弱点である5七の地点に駒を集めるのが、攻め筋の一例。場合によっては△1三角の応援も利くのが心強い。 *検討では▲3四飛のほか、▲7五歩と飛車交換を迫るのも示された。 *「ただ、▲7五歩△8四飛▲8五歩△同飛▲7四歩△6五桂の変化は先手玉が戦いの場に近く、次の△7七歩が厳しそうなので、先手が選びにくそうです」(稲葉八段) *15時を回って午後のおやつの時間になった。藤井はぴよりんアイスとアイスティー。豊島はわらび餅とグレープフルーツジュース。豊島のグレープフルーツジュースは対局室に運ばれている。 *ぴよりんは名古屋コーチンの卵を使った、名古屋の新名物スイーツ。つぶらな瞳がとても愛らしい。ぴよりんが生まれて10周年を記念して、7月1日から名古屋マリオットアソシアホテルとコラボしたぴよりんのアイスが発売される。名古屋コーチンの卵を使ったバニラアイスで、中身はプリンではなく、マンゴーソルベとキャラメルソースを使っている。 * *【1日目午後のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-59ae.html 39 3四飛(36) (29:00/02:18:00) *縦歩取りが実現して、先手が1歩得となった。▲2二角成△同銀▲3二飛成の狙いもある。 * *※局後の感想※ *▲3四飛に代えて、▲1五歩と突いて(1)△8八角成▲同銀△3三桂▲8七歩が並べられたが、豊島は「ちょっと変ですか」と感想を述べた。続いて(2)△9五歩▲8七歩△8五飛▲1四歩△9六歩▲1三歩成△同香▲1四歩△同香に、(A)▲同香△1三歩まで進めて「このあとが忙しいですか」と藤井。(B)▲2二角成△同銀▲3四飛△3三銀▲1四飛△1三歩▲1六飛△9七歩成▲同桂の変化も調べられ、「あまり自信がなく、難しい」と話した豊島に続けて「いずれにせよ、途中の変化は難しいです」と藤井も同調した。 40 3三桂(21) ( 2:00/02:46:00) *桂を跳ねて、角のにらみ合いを避ける。両翼の桂が中央に集まる未来が見えてきた。しかし、すぐに△4五桂は▲2二角成で後手が困る。かといって、△6五桂から跳ねても▲6六歩で「桂の高跳び歩のえじき」になり、攻めが続かない。桂を跳ねるタイミングは思案のしどころといえる。 *「△8八飛成から飛車角交換をして△4五桂はあるかもしれません。桂跳ねのあとは、△8七歩や△6五桂で手が続く形です」(稲葉八段) *「先手は桂跳ねからの一発を食うとひどいので、うかつに手を出せず、怖い局面ではあります」(青野九段) * *※局後の感想※ *「桂を跳ねて後手番としてはまずまずの展開だったのかもしれません」(豊島) *「6八玉型で▲6八銀の受けが利かず、5七の地点が受けづらいので、すでにまとめ方が難しいです」(藤井) 41 4四歩(45) (47:00/03:05:00) *47分の長考。4筋の歩を突っかけた。△4四同歩で、後手の角の利きが二重に止まる。 *着手後、藤井は腰を上げた。豊島はやや前のめりになる。 * *※局後の感想※ *代えて▲7四飛△8八飛成▲同銀△4五桂▲4六歩△8七歩▲7七銀を並べて「ちょっと無理そうですか」と豊島は話す。しかし、対局中は藤井も同様の順を気にしていた。 *「4筋の歩を突き捨てて後手の角を使いにくくしようとしたのですが、こちらの大駒も活用が難しくなりました」(藤井) 42 同 歩(43) ( 2:00/02:48:00) *時間を使わずに△4四同歩と応じる。藤井が席に戻る前に指された。 43 1五歩(16) ( 3:00/03:08:00) *4筋の歩を突き捨て、緩めることなく端歩も突き出した。端歩を切って▲1五香を用意し、後の端角を牽制できる。モニターを見ていた稲葉八段は「これは……のっぴきならないですよ」といって中空を見つめ、読みを進める。夕刻、いよいよ戦いが起きそうだ。 *「ぱっと見えるのは△1五同歩▲1二歩△同香▲1三歩△同香▲1四歩です。しかし、△6五桂▲1三歩成△同角の反撃をどう見るか。手順に5七の地点に利きが集まり、反動が大きそうです」(稲葉八段) * *【16時40分の控室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/1640-5416.html 44 9五歩(94) (28:00/03:16:00) *1筋の突き出しに見向きもせず、逆サイドの歩を突っかけて攻め合いの姿勢を示す。▲1四歩△9六歩の取り合いは、争点から玉が離れている後手に得が多い。 *▲9五同歩には△9七歩の垂らしが考えられる。▲9七同香も▲同桂も△9六歩があって、先手は垂れ歩を取りづらい。 *時刻は17時を過ぎ、封じ手の時刻まで1時間を切った。どちらかの端歩を取る、▲8七歩と受けるなど、手は広い。 * *【端の攻め合い】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-35da.html * *※局後の感想※ *代えて△1五同歩▲1二歩△同香▲1三歩に、(1)△同角▲1五香△2四角▲1二香成△6五桂▲2四飛△同歩▲8七歩△7六飛▲6六歩の局面は、後手が思わしくないと見て、豊島は本譜を選んだ。(2)△1三同香▲1四歩△4五桂▲1五香△6五桂▲1三歩成△5七桂左成▲5九玉△3三角▲5八歩も並べられたものの、「なにかあるのかもしれないがわからない。やはり、ちょっと忙しい」と豊島。 45 1四歩(15) (37:00/03:45:00) *1筋の歩を取り込んだ。次に▲1三歩成△同香▲1四歩で香を取れる。 * *※局後の感想※ *代えて▲9五同歩△9七歩は、先手が受けづらい。 46 9六歩(95) ( 0:00/03:16:00) *迷うことなく9筋の歩を取った。どちらも己の道を突き進む。▲1三歩成△同香▲1四歩△同香▲同飛には△9七歩成と攻め合ってどうか。▲1二飛成は残るものの、角と金銀の壁が分厚く、横からの攻めに強い。控室では▲1三歩成のほか、▲9八歩△1二歩と互いに謝罪する進行も示された。 *藤井の手が止まる。中澤女流初段は藤井の意をくんで「▲1三歩成や▲9八歩以外の、第3の変化もあるかもしれません」と予想した。 47 8七歩打 (17:00/04:02:00) *第3の手があった。端には触らずに▲8七歩と角頭を受ける。稲葉八段は、強いてあげれば、と前置きをして▲8七歩を調べていた。意表を突かれただろうか、豊島はあぐらに姿勢を変え、ゆっくりと上を向いたあと、再び盤上に視線を落とす。 *豊島の考慮中に定刻の18時になり、青野九段が「封じ手の時刻になりました。豊島挑戦者、次の手を封じてください」と告げる。豊島はすぐに封じる意思を示し、封じ手用紙を受け取って対局者控室に向かった。藤井は姿勢を正し、盤から視線をそらさない。5分ほどたってから、豊島が封筒を手に戻ってきた。藤井にペンと封筒を差し出す。受け取った藤井はサインを済ませて再び豊島に渡し、最後に豊島から青野九段に封筒が預けられて1日目が終了した。封じ手の考慮時間は19分。よって、1日目の消費時間は▲藤井4時間2分、△豊島3時間35分。封じ手は明日9時に開封する。 *封じ手は、関係者全員が△7六飛を予想した。2日目は激しい攻め合いとなりそうだ。 * *【強いてあげれば】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-af03.html *【豊島竜王が48手目を封じる】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/48-76a4.html *【1日目終了(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-ad2c.html *【1日目終了(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-a59a.html *【封じ手予想】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-7809.html * *※局後の感想※ *「本譜ははっきりだめになりました。▲9八歩と受けるべきだったかもしれませんが、△1二歩でつらいと思っていました」と藤井。▲8七歩に代えて、▲9八歩△1二歩▲8七歩△8五飛▲6六角△2五飛▲3九金△4二銀▲4四飛△4三歩▲7四飛△4五桂の変化は、後手の模様がいい。 48 7六飛(86) (19:00/03:35:00) *対局2日目、名古屋の朝は晴れ間が見えるものの、雲が多い。時間帯によっては、小雨がちらつく可能性もあるようだ。最高気温は29度と予報されている。 *8時51分、昨日と同様に藤井のほうが早く現れた。「おはようございます」と挨拶して、上座に着く。続いて豊島が53分に姿を見せた。駒を並べ終え、柵木三段の読み上げに従って1日目の指し手を再現。9時2分に封じ手の局面となった。 *青野九段が「封じ手を開封します」と告げ、両対局者の横に移動。封筒にはさみを入れて用紙を取り出す。封じ手は△7六飛。控室の案に違わず横歩を取って、対局2日目が始まった。 * *【対局2日目のスケジュール】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-ad5f.html *【2日目朝】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-06c9.html *【封じ手開封】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-91fc.html *【封じ手は△7六飛】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-91fc-1.html 49 1三歩成(14) ( 0:00/04:02:00) *すでに△7六飛に対しての着手を決めていたのだろう。時間を使うことなく▲1三歩成と指した。 * *【封じ手開封前(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-539d.html *【封じ手開封前(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-5fc0.html *【封じ手開封前(3)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-3c5b.html 50 同 香(11) ( 0:00/03:35:00) *ABEMAでは、1日目に引き続いて動画中継が行われる。2日目の解説は、深浦康市九段、大橋貴洸六段、聞き手は貞升南女流二段、山根ことみ女流二段が担当する。 * *【第62期王位戦七番勝負第1局2日目】 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/A2Amo5128fG7X5 *【対局2日目 ABEMA中継情報】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/abema-10d4.html 51 1四歩打 ( 0:00/04:02:00) *端歩を成り込んでからの継続手。歩を使って駒得を目指す。 * *【封じ手用紙と封筒】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-685b.html 52 同 香(13) ( 0:00/03:35:00) *両者が着用している袴は、宮城県仙台市で作られる絹織物の仙台平。過去には袴地の最高級品として知られた。関係者は、神事で使用される能楽堂という舞台で対局することを考えての配慮がうかがえる、と話す。 53 同 飛(34) ( 1:00/04:03:00) *飛車で香を取って、敵陣に成り込みを見せた。控室に戻った青野九段は、継ぎ盤を進める。 *「47手目に▲8七歩を打たずに▲1三歩成から本譜と同じように進めると、△9七歩成▲同香△同香成に▲同角とは取れませんでした。飛車の位置をずらして、現局面から△9七歩成▲同香に、(1)△同香成は▲同角で問題ありません。しかし、(2)△9六歩▲同香△9七歩が気になる変化です。先手は、角と桂のどちらでも垂れ歩を払いづらく、▲9一香成も△9八歩成が大きな一手です。以下、角を逃げても桂が取られ、次に銀も取られる形になります。後手は桂を取れるのがおいしいんですよね」(青野九段) 54 9七歩成(96) (25:00/04:00:00) *9時33分、着手。25分の考慮だった。豊島の消費時間が4時間となり、どちらも持ち時間の半分を消費した。 *豊島はあぐらから正座に姿勢を変え、襟元を整えてから歩を成った。互いに端から攻め込んでいる。 55 同 香(99) ( 2:00/04:05:00) *本日、6月30日は6月最後の日。一年のちょうど折り返し地点で、2021年も半分が過ぎようとしている。2021年の上半期最後の日を白星で飾るのは、果たしてどちらだろうか。 56 9六歩打 ( 0:00/04:00:00) *早いペースで指し手が進む。お返しといわんばかりに、後手も香を取りにいった。 *検討では△9六歩の前に、△1三歩と飛車の侵入を防ぐ手も示されていた。しかし、▲1六飛のぶつけを生み、善悪の判断は難しい。 57 同 香(97) ( 0:00/04:05:00) *と金の種を残さない。△9六同飛は▲9七歩と飛車に当てて、先手に手番が回る。 58 9七歩打 ( 7:00/04:07:00) *互いに方針を貫く。取れる香をあえて取らず、と金作りに歩を垂らす面白い一手。検討で青野九段が示しており、▲9七同角や▲同桂、▲9九歩には△9六香と走る調子がいい。代えて△1三歩▲1六飛△同飛▲同香△9七歩▲9九歩△9六香▲9一飛の進行は、最後の▲9一飛が攻守に働いて、後手が攻め続けるのは難しいといわれていた。 *10時、おやつの時間となった。藤井が「トンカ サンマルク」とアイスコーヒー。「トンカ サンマルク」は表面をキャラメリゼしたトンカ豆風味のサンマルクのこと。豊島は昨日と同じく季節のフルーツ盛り合わせだった。 * *【両端での攻め合い】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-d9e4.html *【2日目午前のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-ee89.html 59 9一香成(96) (33:00/04:38:00) *端は受けていられないと見たか、香を取って駒得を広げた。 * *【10時20分ごろの控室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/1020-d11f.html 60 9八歩成(97) ( 0:00/04:07:00) *ノータイムでと金を作った。稲葉八段は現局面から、(1)▲4四角△8九と▲5六香の進行を示す。角と持ち駒の2枚の香を5筋に利かせば、後手玉の急所に刺さる。ほかに(2)▲7七桂も考えられる、と話した。取られそうな角を逃げないだけに非常手段にも思える一着だが、果たして。 61 7七桂(89) ( 2:00/04:40:00) *角を見捨てて桂を助けた。△8八と▲同銀で角を取られるものの、▲香2枚と△角の交換で大きな損はない。しかし、検討陣は▲7七桂を「粘りの一手」と評している。将来の△6五桂も消して、長い戦いに持ち込む意図があるようだ。 *「角は取れるのですが、すぐには取らない気がします。△8八と▲同銀の形にすると、△9六飛に▲9七香が生まれます」(稲葉八段) *「ここで△1三歩と打たれると、先手は飛車をどこに逃げるのでしょうか。▲1六飛とはぶつけづらく、△同飛▲同香△8八と▲同銀に△2五角の詰めろ香取りが一例です」(青野九段) 62 1三歩打 (10:00/04:17:00) *竜を作らせない。歩を打って飛車の態度を問う。 *「先手は飛車が狙われそうな形になっています。(1)▲1五飛は△9六飛で、成香の助け方がわかりません。しかも、成香を取られると△1四香が残ります。(2)▲4四飛も△4三歩▲3四飛△4五桂で後手が全軍躍動の形です」(稲葉八段) 63 1六飛(14) ( 4:00/04:44:00) *少考で飛車をぶつけて交換を迫った。 *「△1六同飛▲同香△8八とには、▲同金の姿勢なのでしょう。▲8八同金に代えて▲同銀は、△2五角が詰めろ香取りで後手よしです。現局面は今後の見通しがつきそうなので、ある程度時間を使うかもしれません」(稲葉八段) *▲1六飛の着手時に、豊島は席を外していた。藤井も指したあとに腰を上げる。 *再び両者が舞台に戻ってきた。まっすぐ盤を見下ろす豊島に対して、藤井は身を低くして顔が盤に近い。 *11時、現地では強めの雨が降り始めた。外は湿度が増して、ジメジメとしている。 64 同 飛(76) (27:00/04:44:00) *27分の考慮で、飛車交換に応じる。消費時間が4時間44分で並んだ。 65 同 香(19) ( 0:00/04:44:00) *飛車を手にできたのは、先手も攻めを続けるうえで心強い。▲9二飛や▲8二飛で後手玉を横からにらめる。さらに▲5六香〜▲5五香打で、後手の玉頭に戦力を集わせてどうか。 *豊島は目を閉じて、天井を見上げる。 66 3六歩打 (11:00/04:55:00) *取れる角をすぐに取らないのが味わい深い。青野九段は、しばらくモニターを見つめて「そこですか……」とつぶやき、以下のように見解を示す。 *「後手の狙いは△4五桂からの桂交換にあります。手順の一例は、▲3六同歩△4五桂▲4六歩△3七歩▲同桂△同桂成▲同銀に△7六桂です。藤井王位は△9七歩(58手目)と指されても構わないと思っていたのかもしれませんが、封じ手直前の▲8七歩(47手目)と打ったあたりから歯車が少しおかしくなったかもしれません」(青野九段) *豊島が席を外した。藤井は首をかしげる。まもなく12時。現地の雨は上がり、強い風が吹いている。 * *【藤井王位の長考】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-fb09.html 67 同 歩(37) (53:00/05:37:00) *じっくり時間を費やして、▲3六同歩と応じた。後手玉に迫る早い手段はない。しばらくは後手の面倒を見て、戦力を蓄えてから反撃を考えたい。 *控室では藤井の姿勢が話題に上った。去年と比べて、姿勢がよくなっているように見える、という。確かに背筋がまっすぐ伸びている時間が多い。一部の報道では、着つけの練習や筋力トレーニングを始めたことが話題になっていた。 *豊島は茶をひと口飲んでから、再び盤上に視線を戻す。 68 4五桂(33) ( 4:00/04:59:00) *一石三鳥の桂跳ね。先手玉の弱点である5七の地点ににらみを利かしながら△3七歩を用意して、なおかつ角が動けるようになった。 69 3五香打 ( 0:00/05:37:00) *67手目▲3六同歩の長考で読み進めていたようだ。▲3五香の攻め合いはノータイムだった。後手が金取りを受けて歩を打つと、△3七歩がなくなる。 *「△3四歩▲同香△3三歩は後手が歩切れになります。ここで昼食休憩でしょう。△3七歩ならたちまち終盤戦で、以下、▲3二香成は△同銀のほかに、△3八歩成も考えられます。先手玉の逃げ道を作らせない意味でも、後手はこのまま角を取らないほうがいいのかもしれません」(青野九段) *12時30分、豊島が14分使って昼食休憩に入った。消費時間は▲藤井5時間37分、△豊島5時間13分。2日目の昼食は、藤井があいち牛ビーフカレーライスと名古屋コーチンのスープ、ほうじ茶ラテプリン(伊藤園のほうじ茶を使用)、アイスティー。豊島は豚塩麹焼き定食と紅茶。対局再開は13時30分。 * *【2日目の昼食休憩】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-7583.html *【2日目の昼食】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-e1b6.html *【2日目昼食休憩時の対局場】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-c792.html 70 3四歩打 (15:00/05:14:00) *13時30分、対局再開。香を近づける歩の犠打で、攻め合いではなく受けに回った。▲3四同香に△3三歩で香の利きを止められる。 * *【2日目対局再開】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-cbd8.html 71 同 香(35) ( 1:00/05:38:00) 72 3三歩打 ( 0:00/05:14:00) *攻め合いでなくとも、優位は維持できるとの判断か。後手は歩の連打で歩切れになった。ただ、香を持てば△5四香の楽しみが生まれる。 73 4六歩打 ( 6:00/05:44:00) *香は助からない。▲4六歩の桂取りに活路を求める。青野九段は△3四歩▲4五歩△同歩を示した。最後の△4五同歩で歩切れを解消し、角の視界が一気に広がる。 74 3四歩(33) ( 0:00/05:14:00) 75 9二飛打 ( 3:00/05:47:00) *飛車を打って後手玉とと金ににらみを利かせた。▲8一成香〜▲8二成香の2手が間に合うと、たちまち後手玉に危険が生じる。 76 8八と(98) ( 2:00/05:16:00) 77 同 銀(79) ( 0:00/05:47:00) *壁形が解消され、先手玉の移動が楽になった。現状は▲香△角の交換だが、桂取りが残っており、駒の損得はほとんどない。 *豊島は頬に手を添えたまま、盤を眺めて考える。時折、指を左右に振って読みを確認するような仕草も見られた。 *「73手目の▲4六歩で桂を捕獲して、2手前の▲9二飛で角取りを催促しました。角を取らせる代わりに玉の逃げ道を広げ、藤井王位が粘り強く指している印象です」(青野九段) 78 3七香打 (29:00/05:45:00) *強打を繰り出して、攻めにシフトチェンジした。▲3七同桂△同桂成▲同銀に△4七角が詰めろで打てる。後手は桂を持てば、△7六桂の王手銀取りも楽しみだ。ただ、70手目の△3四歩に代えて△3七歩の攻め合いが候補にあっただけに、このタイミング、しかも価値の高い香の代用は意表を突く。 *香打ちを見た藤井は、うつむいて片手で目を覆った。 *14時、現地では大盤解説会が始まった。 * *【大盤解説会】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-693c.html *【豊島竜王の強打】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-300b.html 79 同 桂(29) (14:00/06:01:00) 80 同 桂成(45) ( 0:00/05:45:00) 81 同 銀(38) ( 0:00/06:01:00) *先手は桂を手にした。▲8四桂が入れば、先手も攻め合いに希望が持てる。 82 4七角打 ( 0:00/05:45:00) *本局で初めて詰めろがかかった。▲5八香の受けには、△7六桂▲7九玉に△7五歩と飛車取りに角の利きを通す感触が抜群。以下、▲9四飛成△8八桂成▲同玉△7六歩が一例で、後手の攻めは止まらない。 83 5八香打 (10:00/06:11:00) *駒を節約して▲5八金は△7六桂の王手に対して、▲7九玉とかわしにくい。 *香を打って詰めろを防いだ。▲8四桂を見据えて攻め味を残す。 84 2九飛打 ( 5:00/05:50:00) *金取りに飛車を打った。▲3九香や▲3九桂と受けさせて、先手の戦力を削れる。 85 3九香打 ( 1:00/06:12:00) *2手連続で受けに香を使った。粘り強く辛抱を重ねて、▲8四桂のチャンスを待つ。 86 7六桂打 ( 2:00/05:52:00) *後手に気持ちのいい手が続く。かねてからの狙いだった王手銀取りが決まった。 87 7九玉(68) ( 0:00/06:12:00) 88 5八角成(47) ( 3:00/05:55:00) *バッサリと角を切り飛ばした。金と香の連係を外し、▲5八同金に△3九飛成が王手銀取りになる。 89 同 金(49) ( 2:00/06:14:00) *角を手にして攻守にわたって選択肢が増えた。攻めては▲8四桂のほかに▲9四角が生まれ、守っては△3九飛成に桂を合駒できる。 90 3九飛成(29) ( 0:00/05:55:00) *【豊島竜王が決めにいく】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-8aab.html 91 6九桂打 ( 0:00/06:14:00) *15時ちょうどの局面、▲6九桂までの消費時間は、▲藤井6時間14分、△豊島5時間55分。 *桂を盾にして王手を防いだ。先手は次に▲9四角が、桂取りと▲7二角成△同金▲同飛成の両狙いになる。 *青野九段は現局面から△3七竜の銀取りではなく、△4九竜を調べている。以下、▲4八金には△5九竜と逃げて、次の△6八香が厳しい。 *おやつはの注文は、藤井がジンジャーエール。豊島はわらび餅とグレープフルーツジュース、お茶(伊藤園)。対局者の指定を受け、飲み物は対局室に運ばれた。 * *【2日目午後のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-4a35.html 92 3七竜(39) (18:00/06:13:00) *18分の考慮だった。銀を取って戦力を補充する。一瞬は先手玉からにらみが外れるものの、次の△2八竜の金取りが露骨ながら厳しい。 93 9四角打 ( 0:00/06:14:00) *端角を放って攻め合った。△7一香の受けには▲7六角と桂を取って、粘りが利く格好になる。 94 2八竜(37) ( 0:00/06:13:00) *▲7二角成からの殺到をいとわず、金取りに竜を入って寄せに向かった。先手の持ち駒は歩しかなく、現状では金をかわすしか受けがない。 95 7二角成(94) ( 1:00/06:15:00) *いよいよ最終盤だ。金取りを無視して角を切り、後手玉に迫った。△5八竜は▲6一馬△同玉▲6二金までの詰みとなる。 96 同 金(61) ( 0:00/06:13:00) 97 同 飛成(92) ( 0:00/06:15:00) *角を犠牲にして、金と銀を入手。金銀は「カナ駒」と呼ばれ、攻めにも守りにも心強い存在だ。 98 4三玉(52) ( 1:00/06:14:00) *手駒は温存し、玉を逃げて王手をかわした。 99 5二銀打 ( 4:00/06:19:00) *銀を打って王手を続ける。△5四玉は▲6三竜△5五玉▲5六金までの都詰めだ。 100 3三玉(43) ( 0:00/06:14:00) *この手で100手に達した。△3三玉までの消費時間は、▲藤井6時間19分、△豊島6時間14分。 101 7三竜(72) ( 0:00/06:19:00) *桂を取り払った。△5八竜に▲2五桂を用意して、後手を楽にさせない。 *また、次に▲7四竜で銀取りを催促して玉が上に逃げ出す展開になれば、入玉も見えてくる。 102 5八竜(28) ( 6:00/06:20:00) *6分、慎重に読みを入れて金を取った。先手玉に△6八金や△7八竜からの詰めろをかけている。 103 2五桂打 ( 0:00/06:19:00) *桂を打って王手。△2四玉は▲1五金までの詰み。 104 4二玉(33) ( 0:00/06:20:00) *玉を引いて、(1)▲4一金は△5二玉で詰まない。先手玉は△6八金▲8九玉△7八金▲9八玉△9六香▲9七歩△8八金までの詰めろがかかっている。(2)▲6八金打の強防も△9八銀で次の△8九金が防げず、これ以上の受けが利かない。 *この局面で藤井が投了した。終局時刻は15時35分。消費時間は、▲藤井6時間19分、△豊島6時間20分。第1局は豊島が快勝。タイトル奪取に向けて幸先のいいスタートを切った。第2局は7月13日・14日(火・水)、北海道旭川市「花月会館」で行われる。 *本局は北海道新聞・東京新聞・中日新聞・神戸新聞・徳島新聞・西日本新聞の各紙上において、8月31日(火)〜9月11日(土)に、小池大志さんによる観戦記が掲載されます。詳しくはそちらもあわせてご覧ください。 * *【第1局は豊島竜王が制す】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-9aac.html *【終局直後のインタビュー】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-bb10.html *【感想戦(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-10da.html *【感想戦(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-6398.html *【大盤解説会場へ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2021/06/post-8e33.html * *※局後の感想※ *△3三桂(40手目)を跳ねて「後手番としてはまずまずの展開だったのかもしれない」と豊島は話す。対して、藤井は「こちらの玉形はキズが多く、まとめ方が難しい展開になった。▲4四歩〜▲1五歩(41手目、43手目)の順で形勢を悪化させたような気がする。△7三桂(38手目)あたりで違う指し方を選ぶべきだったかもしれない。全体的にもっと工夫が必要だった」とまとめた。感想戦は16時30分過ぎに終了した。 105 投了 ( 0:00/06:19:00) まで104手で後手の勝ち