# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.52 棋譜ファイル --- 対局ID:10758 記録ID:5ef18e81ebca100004483ecf 開始日時:2020/07/01 09:00 終了日時:2020/07/02 17:37 表題:王位戦 棋戦:第61期王位戦七番勝負 第1局 戦型:角換わり腰掛け銀 持ち時間:各8時間 消費時間:95▲429△450 場所:愛知・ホテルアークリッシュ豊橋 備考:昼休前43手目87分\n2日目昼休前60手目68分\n封じ手時刻:18:02<54手目>\n 振り駒:2,0,木 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:30〜13:30 昼休前消費時間:43手87分 手合割:平手   先手:藤井聡太七段 後手:木村一基王位 先手省略名:藤井聡 手数----指手---------消費時間-- *47歳と17歳のアツい夏が始まる。木村一基王位に藤井聡太七段が挑戦する、第61期王位戦七番勝負。第1局(主催:中日新聞社)は2020年7月1日(水)から2日(木)にかけて、愛知県豊橋市「ホテルアークリッシュ豊橋」で行われる。持ち時間は各8時間。対局開始は9時、12時30分から13時30分が昼食休憩。1日目の18時を過ぎた時点で手番の棋士が次の一手を封じ、2日目9時に再開する。 *本局の立会人は谷川浩司九段、副立会人は山崎隆之八段、記録係は中西悠真三段(久保利明九段門下)、観戦記の執筆は鈴木宏彦さんが務める。第1局の先後は、振り駒で決定される。 *戦型は何か。谷川九段、山崎八段、日本将棋連盟常務理事の西尾明七段に予想してもらった。 *「矢倉、角換わり、相掛かりのどれかだと思いますけどね。では矢倉。根拠はありません(笑)」(谷川九段) *「木村王位が先手なら相掛かりでしょうか。藤井七段が先手なら角換わりが有力ですが、後手の木村王位が横歩取りに誘導するかもしれません」(山崎八段) *「木村王位は早めに自分の土俵に引き込みたいんじゃないでしょうか。シリーズのために対藤井で用意している作戦があると思いますけど、始まってからのお楽しみですね。木村王位が先手なら角換わり腰掛け銀を避けるんじゃないですか。相掛かりで深く研究しているかもしれません。藤井七段が先手だと、最近は矢倉が多いので矢倉ですかね。経験値が上がっていますし、いまは忙しくて家でじっくり腰を据えて研究している時間はなさそうなので、早めに前例から離れる将棋になりそうです。最近、私は中継を一ファンとして楽しむことが多く、正直よく分からないですが(笑)」(西尾明七段) * *【中日新聞(CHUNICHI Web)】 *http://www.chunichi.co.jp/ *【王位戦中継サイト】 *http://live.shogi.or.jp/oui/index.html *【王位戦中継ブログ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/ * *(棋譜・コメント入力=紋蛇) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。【】内は中継ブログタイトルならびにリンク。#は局後の感想が追記された指し手] 1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00) *木村の振り歩先で行われた振り駒は、と金が3枚。藤井の先手が決まった。 *藤井はお茶を飲んでから、初手▲2六歩。そっとした手つきだった。 2 8四歩(83) ( 2:00/00:02:00) *木村と藤井は非公式戦で何度か指したことはあるが、公式戦は初手合いになる。 * *【対局開始】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-75cb.html *【対局開始まで(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-8564.html *【対局開始まで(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-2744.html *【対局開始まで(3)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-095c.html 3 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *王位戦は新聞三社連合が主催する棋戦。予選の勝ち上がり者とシード棋士4人の計12人が、紅白2つのリーグに分かれて戦い、各リーグの優勝者が挑戦者決定戦に進出する。王位と挑戦者は七番勝負でタイトルを争う。 *新聞三社連合は1950年に設立された団体で、中日新聞(東京新聞)、北海道新聞、西日本新聞のブロック紙3社が記事の相互利用などで連携している。現在は神戸新聞、徳島新聞が加わった5社で王位戦、女流王位戦、囲碁の天元戦を主催。 *七番勝負は各局持ち回りで主催紙が異なる。本局の主催は中日新聞社。 *本局は鈴木宏彦さんの観戦記が掲載される。本日の中日新聞朝刊には、相崎修司さんによる紅組2回戦の永瀬拓矢二冠−佐々木大地五段戦・持将棋指し直し局が始まった。 4 3二金(41) ( 1:00/00:03:00) *◆木村 一基(きむら かずき)王位◆ *1973年6月23日生まれ、千葉県四街道市出身。(故)佐瀬勇次名誉九段門下。1997年、四段。2017年、九段。棋士番号は222。 *タイトル戦登場は8回。獲得は王位1期。棋戦優勝は2回。 5 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00) *◆藤井 聡太(ふじい そうた)七段◆ *2002年7月19日生まれ、愛知県瀬戸市出身。杉本昌隆八段門下。2016年、四段。2018年、七段。棋士番号は307。 *タイトル戦登場は2回。棋戦優勝は3回。 6 8五歩(84) ( 2:00/00:05:00) *本局はABEMAで動画中継される。1日目は解説を中村修九段、遠山雄亮六段、聞き手を竹部さゆり女流四段、安食総子女流初段が務める。 * *【ABEMA】 *https://abema.tv/now-on-air/shogi * *☆お知らせ☆ *本局は『将棋連盟LIVE中継』において動画配信を行います。Menuから「動画実験」を選択してご視聴ください。動画を消すにはMenuから「動画を消す」を選択してください。 7 7七角(88) ( 0:00/00:00:00) *豊橋市は愛知県の東南部に位置する。東三河地方の中心都市で、中核市に指定されている。豊橋平野の平坦な地形と穏やかな気候を生かし、主な農作物は露地野菜、米、果樹(柿、なし、ぶどう等)など。三河港は国内屈指の国際貿易港で、主に自動車が輸出されている。 *対局場の「ホテルアークリッシュ豊橋」は旧豊橋西武跡地に建設されたホテルで、開業は2008年。JR豊橋駅から徒歩1分と利便性がよい。16階にあるメインロビーより豊橋の街並みが見渡せる。対局場はホテル内の音楽堂。木村はインタビューに「結婚式場のチャペルで指すことになりましたけど、私と藤井さんが結婚するわけじゃなくて将棋を指すので(笑)、将棋を頑張りたいと思います」と答えている。 * *【豊橋市】 *https://www.city.toyohashi.lg.jp/ *【ホテルアークリッシュ豊橋】 *https://www.arcriche.jp/ 8 3四歩(33) ( 1:00/00:06:00) *木村の今年度成績は3勝0敗(1.000) *通算成績は658勝380敗(0.634) 9 6八銀(79) ( 0:00/00:00:00) *藤井の今年度成績は10勝1敗(0.909) *通算成績は179勝33敗(0.844) 10 7七角成(22) ( 1:00/00:07:00) *戦型は角換わりへ。 11 同 銀(68) ( 0:00/00:00:00) *七番勝負日程は下記の通り。藤井が将棋会館以外でタイトル戦を指すのは、今回が初めてだ。また、第2局と第3局の間に18歳の誕生日を迎える。 * *第1局 7月1・2日(水・木) *愛知県豊橋市「ホテルアークリッシュ豊橋」 * *第2局 7月13・14日(月・火) *北海道札幌市厚別区「ホテルエミシア札幌」 * *第3局 8月4・5日(火・水) *兵庫県神戸市「中の坊瑞苑」 * *第4局 8月19・20日(水・木) *福岡県福岡市中央区「大濠公園能楽堂」 * *第5局 8月31日・9月1日(月・火) *徳島県徳島市「渭水苑」 * *第6局 9月14・15日(月・火) *神奈川県秦野市「元湯 陣屋」 * *第7局 9月28・29日(月・火) *東京都渋谷区「将棋会館」 12 2二銀(31) ( 0:00/00:07:00) *【記念撮影(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/06/post-0c05.html * *【記念撮影(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/06/post-29cb.html * *【検分】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/06/post-42ac.html 13 4八銀(39) ( 4:00/00:04:00) *藤井は初の2日制の対局となる。前日、木村が別室でインタビューを受けている間、谷川九段が藤井に封じ手の書き方や作法を教えていた。 *藤井は三段時代の2016年7月、師匠の杉本昌八段に連れられて愛知県犬山市で指された第57期王位戦七番勝負第1局・羽生善治王位−木村八段戦を観戦した。中日新聞のサイトには、佐々木勇気五段と盤を挟む写真が掲載されている(肩書・段位はいずれも当時)。 * *【2016年7月5日〜7月6日 第57期王位戦七番勝負 第1局 羽生善治王位 対 木村一基八段】 *http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/57/oui201607050101.html * *【中日新聞:将棋の王位戦 奇縁の2人、4年経て相まみえる】 *https://www.chunichi.co.jp/article/80586?rct=igo_shogi 14 6二銀(71) ( 2:00/00:09:00) *昨日の前夜祭は新型コロナウイルスに配慮し、YouTubeで「オンライン前夜祭」が配信された。その模様は中日新聞のYouTubeチャンネルで見ることができる。 * *【中日新聞・電子編集部YouTube 第61期王位戦第1局オンライン前夜祭】 *https://www.youtube.com/watch?v=2EP1XlnOCrM * *【オンライン前夜祭(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/06/post-d38f.html * *【オンライン前夜祭(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/06/post-c665.html * *【オンライン前夜祭(3)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/06/post-fac2.html 15 1六歩(17) ( 8:00/00:12:00) *「いやぁ、手を止めているから端歩を突くかなと思ったんですよ」(山崎八段) *△1四歩と受ければ、先手が早繰り銀から2筋で銀交換したときに△1五角の王手飛車がない。 *「細かいんですが、王手飛車の筋を消せば先手は▲6八玉を省略できます。先手の早繰り銀に対し、後手は腰掛け銀と相早繰り銀の両方がありますが、端歩の交換があると先手は玉上がりを省略できるので、後手は腰掛け銀の対策が間に合わないんです。つまり、端歩の交換があると先手は相早繰り銀に誘導しやすいんですよね。細かい工夫です」(山崎八段) 16 1四歩(13) ( 4:00/00:13:00) *少考して端歩を受けた。▲2四歩△同歩▲同飛は、△8六歩▲同歩△3三角の反撃がある。以下▲2八飛は△8八歩▲同銀△同角成で後手よしなので、▲3四飛と歩を取る。今度は△8八歩▲同銀△同角成だと▲3二飛成でシビレるので、△8八歩の筋は△2三銀と金にヒモをつけてからどうかだ。あとは△2三銀から△2八歩もあり、これは▲1七桂△2九歩成に先手の攻めがあるかどうか。 *ただ、こういった決戦策は4八銀型が裏目に出る。4筋が壁なので、先手玉は寄せられやすい。 17 3六歩(37) ( 6:00/00:18:00) *居玉のまま3筋を突いたので、山崎八段と西尾七段は早繰り銀を予想している。▲3七銀〜▲4六銀〜▲3五歩と攻める展開になれば、端歩の交換を生かせる。 18 3三銀(22) ( 2:00/00:15:00) *第61期王位戦記念扇子が発売される。木村は「気」、藤井は「信」としたためた。 *「気持ちの『気』を一文字書きました。このシリーズは自分の気の持ちようというのがかなり大きいと思いましたので、どんなことがあっても自分の気持ちをしっかり持って頑張りたいと思います。その思いを込めて書きました。藤井さんが挑戦者に決まってから、この字は決めました」(木村) *「信じるの『信』と書きました。王位戦は2日制の七番勝負で非常に長い戦いになると思いますが、最後まで自分を信じて戦えればと思っています。この字は棋聖戦第2局が終わったあとに考えました」(藤井) *記念品の申し込みは9月22日まで。扇子のほかに木村一基王位の揮毫が入った記念ビアカップ、藤井聡太七段の揮毫が入った記念湯呑みもあわせて発売される。 * *【中日新聞・第61期王位戦 記念扇子 一般販売】 *https://plus.chunichi.co.jp/join/article/74/21908/?_ga=2.116009743.828596399.1593522416-1705128628.1573692124 19 7八金(69) ( 3:00/00:21:00) *「ああ、▲7八金上がったから腰掛け銀か……。さっき、早繰り銀だといっちゃいましたよ。しかも戦型予想で定跡形はお互いに避けるんじゃないかと話していたのに」(西尾七段) *「私も早繰り銀だといっちゃいました」(山崎八段) *居玉で早繰り銀から仕掛けるなら、6九金型のまま決行することが多い。 20 6四歩(63) ( 2:00/00:17:00) *木村は腰掛け銀を目指す。 21 6八玉(59) ( 0:00/00:21:00) *『頂へ 藤井聡太を生んだもの』(中日新聞)は、中日新聞の岡村淳司さんが綴ったもの。藤井の地元紙の強みを生かし、幼少期からの足跡を丁寧にたどった内容だ。第59期王位戦の棋譜も収録されている。 * *【中日新聞:頂へ 藤井聡太を生んだもの】 *https://www.chunichi.co.jp/article/68335 22 6三銀(62) ( 3:00/00:20:00) *先月24日に『受け師の道 百折不撓の棋士・木村一基』(東京新聞)が発売された。著者は東京新聞文化部で将棋担当の樋口薫さんで、本日更新された日本将棋連盟ホームページには木村と樋口さんの対談が掲載されている。 * *【受け師の道 百折不撓の棋士・木村一基:東京新聞 TOKYO Web】 https://www.tokyo-np.co.jp/article/35062 *【日本将棋連盟コラム:『受け師の道 百折不撓の棋士・木村一基』刊行記念 木村一基王位インタビュー 自粛期間をどう過ごしたか? 書籍の感想は?】 *https://www.shogi.or.jp/column/2020/07/tokyo-newspaper.html?mi=side * *同書は東京新聞・中日新聞に2月から4月に連載された「百折不撓の心 王位・木村一基」を加筆、再構成し、1月に行われた「王位獲得記念トークショー」や「第六十期 王位戦七番勝負棋譜」も収録したもの。木村の少年時代から王位獲得の秘話が盛り込まれている。 23 9六歩(97) ( 0:00/00:21:00) *「お、これは早繰り銀じゃないですか。なぜかというとですね、△9四歩だと先手が早繰り銀で得する変化があるらしいんですよ。ひとから教えてもらったんです。6割方、早繰り銀だと思います」(山崎八段) *△9四歩に▲3七銀△5四銀▲4六銀△4四歩▲3五歩△4五歩▲3四歩△4六歩▲3三歩成△4七歩成▲3二と△4六角が、早繰り銀対腰掛け銀で有名な定跡手順だ。後手は金損でも、最後の角打ちに期待している。この激しい変化になれば、9筋が突いてあると先手玉の逃げ道が広い。だから、山崎八段が再び早繰り銀を有力視しているのだ。 *後手が早繰り銀を手堅く牽制するなら、現局面は△7四歩と指したい。それなら先手は▲9五歩と端を詰めるのだろうか。端の位はアドバンテージになる。 24 9四歩(93) ( 2:00/00:22:00) *10時、午前のおやつが出された。木村はリンゴジュース、藤井はブルーベリータルトとアイスコーヒー。 * *【1日目午前のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-62f1.html 25 4六歩(47) ( 1:00/00:22:00) *▲4六歩は腰掛け銀志向。早繰り銀は消えた。 *「先生、▲4六歩でした」(記者) *「なにぃ……。残念です」(山崎八段) 26 4二玉(51) ( 3:00/00:25:00) *木村は王位戦に第39期から参加し、通算成績は89勝44敗(0.669)。挑戦者決定リーグ参加は第39、43、49、50、51、55、56、57、58、59、60期の11回。七番勝負に初登場したのは第50期で、深浦康市王位に3連勝から4連敗と惜敗。第55、57期は羽生善治王位に敗れた。前期の第60期に4度目の挑戦をし、豊島将之王位をフルセットのすえに破り、47歳3ヵ月3日の史上最年長で初タイトルを獲得した(肩書はいずれも当時)。 * *【木村王位のタイトル戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-aa7c.html 27 3七桂(29) ( 0:00/00:22:00) *藤井は王位戦に第59期から参加し、13勝2敗 (0.867)。今期は竹内雄悟五段、西川和宏六段、出口若武四段、斎藤慎太郎七段を破って初の挑戦者決定リーグ入り。白組では羽生善治九段、上村亘五段、稲葉陽八段、菅井竜也八段、阿部健治郎七段に勝ち、全勝で白組を優勝した。挑戦者決定戦では永瀬拓矢二冠を破り、初の王位戦挑戦を決めた(段位はいずれも当時)。 * *【藤井聡七段のタイトル戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-3f86.html 28 7四歩(73) ( 1:00/00:26:00) *木村と藤井の年齢差は29歳0ヵ月26日で、タイトル戦の年齢差では歴代2位。第1位は1989年度の第15期棋王戦五番勝負・南芳一棋王−大山康晴十五世名人戦で、40歳2ヵ月26日。当時、大山は66歳で開幕局を迎えた。 *ちなみに、1989年度は後期の棋聖戦(当時、棋聖戦は年2期制)で屋敷伸之四段が中原誠棋聖に挑戦し、史上最年少タイトル挑戦・17歳10ヵ月24日の記録を作った。そして1990年前期棋聖戦でタイトル初獲得・18歳6ヵ月14日、1990年後期棋聖戦でタイトル初防衛・19歳0ヵ月7日の記録を打ち立てている。 *藤井は先月8日にヒューリック杯棋聖戦の挑戦で、タイトル初挑戦の記録を17歳10ヵ月20日に塗り替えた。もし藤井が棋聖を第5局で獲得しても18歳0ヵ月2日で史上最年少記録、王位戦をフルセットのすえに制した場合も18歳2ヵ月10日で更新する(肩書・段位はいずれも当時)。 29 4七銀(48) ( 2:00/00:24:00) *それにしても強い。藤井が永瀬二冠に第91期ヒューリック杯棋聖戦と第61期王位戦の挑戦者決定戦で2連勝したのは、トップ棋士を飲み込む力をつけたことの証といえる。ダブルタイトル戦登場を決めた日は、奇しくも木村の47歳の誕生日だった。 * *【2020年6月23日 第61期王位戦挑戦者決定戦 永瀬拓矢二冠 対 藤井聡太七段】 *http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/61/oui202006230101.html * *攻められても、藤井は落ち着いていた。△8九馬(72手目)と侵入されて困っているようだが、飛車を圧迫する▲6七桂から▲3七桂が自玉の危険筋を見切りながら陣形を整えた手順だった。▲3七桂が▲2九飛を作った価値の高い手で、後の展開を見れば分かるように下段飛車がよく利いて金をはがされても耐久力がある。右辺の逃げ道が開けているのも大きい。先手が駒を繰り替えて景色を変えたのに対し、後手は居玉と壁銀の悪形が残ってしまった。 *4八金・2九飛型など代表にされるように、バランスを重視する陣形は囲いが2つあるようなもので、囲いにしっかり玉を収めるというよりは、2つの金銀の塊の間に玉を配置し、相手が攻めてくればヒラリとかわして金銀の塊に逃げ込み「囲い」に昇格させる技術が必須である。 *対永瀬戦のすごみは、玉が流れ弾に当たりそうな状況でバランス型の陣形を作り、猛攻をしのいで右辺に逃げこんだところにあるのではないか。 30 7三桂(81) ( 6:00/00:32:00) *昨年の夏。木村は豊島王位と王位戦七番勝負に加えて、竜王戦挑戦者決定三番勝負を戦った。先に開幕したのは王位戦で、2連敗スタートと苦しかった。第3局でシリーズ初勝利を挙げたものの、直後の竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局は敗れた。だが、王位戦七番勝負第4局、竜王戦挑戦者決定三番勝負第2局に勝利と踏ん張る。王位戦七番勝負第5局と竜王戦挑戦者決定三番勝負第3局は連敗し、竜王戦の挑戦権は逃した。だが、王位戦七番勝負第6局と第7局を制す。「炎の十番勝負」を戦い抜き、王位獲得直後のインタビューでは涙を流した。 * *【木村新王位インタビュー】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2019/09/post-0aaa.html * *豊島王位といえば序盤からスピーディーに進め、勝負どころで大長考するスタイルだった。研究が行き届いているような時間の使い方で、木村は王位戦七番勝負第1局は15時43分に敗れている。後に木村は「段々と慣れました」と答えた(肩書は当時)。 * *【2019年7月3日〜7月4日 第60期王位戦七番勝負 第1局 *豊島将之王位 対 木村一基九段】 *http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/60/oui201907030101.html *【2019年7月30日〜7月31日 第60期王位戦七番勝負 第2局 *豊島将之王位 対 木村一基九段】 *http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/60/oui201907300101.html *【2019年8月8日〜8月9日 第60期王位戦七番勝負 第3局 *豊島将之王位 対 木村一基九段】 *http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/60/oui201908080101.html *【2019年8月20日〜8月21日 第60期王位戦七番勝負 第4局 *豊島将之王位 対 木村一基九段】 *http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/60/oui201908200101.html *【2019年8月27日〜8月28日 第60期王位戦七番勝負 第5局 *豊島将之王位 対 木村一基九段】 *http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/60/oui201908270101.html *【2019年9月9日〜9月10日 第60期王位戦七番勝負 第6局 *豊島将之王位 対 木村一基九段】 *http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/60/oui201909090101.html *【2019年9月25日〜9月26日 第60期王位戦七番勝負 第7局 *豊島将之王位 対 木村一基九段】 *http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/60/oui201909250101.html 31 4八金(49) ( 0:00/00:24:00) *金を上がり、先手はバランス型の陣形を目指す。次は▲2九飛の一段飛車だ。 32 8一飛(82) ( 2:00/00:34:00) *【戦型は角換わり】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-e51c.html 33 2九飛(28) ( 0:00/00:24:00) *【1日目10時台の控室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/10-c3e9.html 34 6二金(61) ( 3:00/00:37:00) 35 5六銀(47) ( 3:00/00:27:00) 36 5四銀(63) ( 5:00/00:42:00) 37 6六歩(67) ( 0:00/00:27:00) 38 4四歩(43) (12:00/00:54:00) *これが木村の用意していた局面だったか。△4四歩では△5二玉が多い。 *「現局面は初期に指されていたと思いますが、いまは後手が避けますよね。理由は分かってないですけど。理由は分かってないから、意味ないです」(山崎八段) *現局面の前例は35局あり、先手23勝後手11勝1千日手。▲4五歩と仕掛ける将棋が多い。藤井も先手で3局経験しており、3連勝している。 *近年、流行の角換わり6二金・8一飛型のきっかけを作ったのは、2016年に行われたNHK杯決勝▲村山慈明七段−△千田翔太五段戦だ。後手の一段飛車が優秀と認められ、今度は先手が採用するようになった。一段飛車に一段飛車で対抗し、後手が先手の手を真似していけば現局面は容易に現れる。後手は少しリスクのある局面で、4筋に争点があるため攻めを呼び込みやすい。例えば▲4五歩△同歩▲同銀に、△同銀は▲同桂△4四銀▲6三銀△同金▲7二角の筋があるし、△5二玉は▲7五歩△同歩▲7四歩と桂頭を攻められる。これを避けるために、後手は△4四歩を突かないで△5二玉と待機するのが多数派なのだ。△4四歩を突かなければ▲4五銀は△6三銀、▲4五桂は△2二銀から△4四歩で対抗しやすい(段位はいずれも当時)。 39 4五歩(46) ( 9:00/00:36:00) *9分で藤井が仕掛けた。 40 同 歩(44) ( 2:00/00:56:00) 41 同 銀(56) ( 0:00/00:36:00) *11時ちょうどの着手。▲4五同銀までの消費時間は、▲藤井聡36分、△木村56分。 *(1)△4五同銀なら▲同桂△4四銀に▲6三銀の調子がよい。なので、後手は(2)△5五銀か(3)△5二玉が考えられる。△5五銀は銀交換を避けながら、△6五歩や△4七歩で強く攻め合う方針。昨年12月の王位戦予選▲藤井−△出口若武四段戦は、△5五銀以下▲2四歩△同歩▲2五歩△同歩▲同桂△2四銀▲7五歩と進んでいる。2筋で継ぎ歩したのは▲3四銀と出られるようにした意味で、最後は7筋の桂頭攻めで戦線を拡大している。結果は藤井勝ち。(3)△5二玉は銀交換後の▲6三銀△同金▲7二角の筋を消しながら、△4一飛を見せている。1号局は昨年9月の叡王戦・▲千田翔太七段−△北島忠雄七段戦で、▲7五歩△同歩▲7四歩△4一飛▲8二角と進んだ。結果は先手勝ちだが、いま進行を見た谷川九段と山崎八段は難しいと話す。 42 5二玉(42) ( 1:00/00:57:00) *11時2分、1分で△5二玉。次に△4一飛と回れば間接的に金をにらむので、先手の動きを牽制できる。藤井は戦線を広げたい。現局面の前例は3局あり、後手の2勝1敗。 *「何も前例を見ていないなら、とりあえず(1)▲7五歩と突きますね。その前に2筋の突き捨てを入れるか、ちょっと考えますけど」(山崎八段) *(1)▲7五歩は狙いの桂頭攻めで、後手玉が7筋に近づいているのでかなり味がよい。ただ、歩切れになるので△4一飛が厳しくなり、先手はかなり忙しくなる。前述したように、昨年9月の叡王戦▲千田七段−△北島七段戦は△7五同歩▲7四歩△4一飛▲8二角と進んだ。結果は先手勝ち。 *叡王戦▲千田七段−△北島七段戦の次に指されたのが、先月6日の棋王戦▲松尾歩八段−△屋敷伸之九段戦。現局面からの進行は▲7五歩△同歩▲5四銀△同歩▲7四歩△4一飛▲4五銀△9二角だった。先手は歩切れになるのをいとわずにシンプルに攻め、△4一飛に▲4五銀で受け止めたようだが、△9二角が厄介だったか。遠見の角で間接的に飛車をにらめば、▲7三歩成を防げる。松尾八段は△9二角に▲3八角と応じたが、△4七歩▲同角△4六歩▲5六角△5五歩▲3八角△4七銀▲同金△同歩成▲同角に△4六金が厳しかった。 *(2)▲5六角は先月の竜王戦▲及川拓馬六段−△真田圭一八段戦だが、△5五銀▲7四角△6三金▲3八角△6五歩▲同歩△7四金▲6九飛△8六歩の進行をどう見るか。筋違い角を打ったのは先にラインを制した意味で、△4七歩▲同金△3八角の筋を先受けている。しかし、△5五銀から6筋を攻められて△7四金に▲6九飛と回った局面は後手に勢いがあり、先手は玉飛接近なので苦労する。 *藤井が長考に沈んでいる。12時2分、1時間が経過した。同20分過ぎ、木村と藤井が早めに席を立つ。どうやら昼食休憩に藤井が入れたようだ。この場合、藤井が12時30分までの時間は藤井の消費時間として計測される。 *12時30分、ここで藤井が1時間27分使って、昼食休憩に入った。消費時間は▲藤井2時間3分、△木村57分。昼食注文はともに三河鮮魚の海鮮丼で、飲み物は木村が冷たいウーロン茶、藤井が冷たい緑茶。海鮮丼には蒲郡産のガスえび、マダイ、スルメイカ、アカムツ、シラス、設楽産の絹姫サーモン、ウニ、イクラがのっている。対局再開は13時30分。 * *【1日目の11時頃、駒がぶつかる】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/11-8ce1.html *【1日目昼食休憩】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-70fe.html *【対局者の1日目昼食】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-0eba.html *【1日目昼食休憩中の対局室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-c9b0.html * *※局後の感想※ *局後の感想は、感想戦終了後の山崎八段の解説に基づく。△5二玉までが木村の用意した作戦だったが、藤井の組み合わせが木村の意表を突いた。 43 2四歩(25) (90:00/02:06:00) *対局再開。昼食休憩後の指し手。昼食休憩を挟み、1時間30分の考慮で▲2四歩。2筋も突き捨てたので、激しくなりそうだ。 * *【1日目対局再開】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-4672.html 44 同 歩(23) ( 2:00/00:59:00) *「▲1五歩や▲3五歩は攻め筋を広げるために突いておきたいんですけど、もう入らないかもしれないんですよね」(山崎八段) *先手の成功例は▲1五歩△同歩▲3五歩△同歩▲1二歩△同香▲5四銀△同歩▲4五桂△4四銀▲3四角で、これは最後に王手香取りがかかって先手よし。しかし、後手は1筋か3筋を取らずに△4一飛で銀をにらんだり、△4六歩で△4七歩成▲同金△3八角を狙う手があるため、突き捨てが通るかは何ともいえない。それならば、いきなり切り札の▲7五歩を放ったほうがいいかもしれない。 45 5四銀(45) ( 4:00/02:10:00) *銀を取る。△5四同歩にどう指すか。 46 同 歩(53) ( 0:00/00:59:00) 47 4五桂(37) ( 0:00/02:10:00) *銀を取ってから桂跳ねとは何ともシンプルだ。「これは本命のひとつなので、木村王位もかなり研究してきているでしょう」と山崎八段。 *△4四銀には(1)▲4六歩と支えて▲2四飛を楽しみにするのか、それとも(2)▲7五歩△4五銀▲7四歩と進めて▲7三歩成から▲4四桂を狙うのか。 *控室には取材で勝又清和七段が来訪している。(3)▲4二歩もあるという。△同玉なら▲6三銀△同金▲7二角が炸裂する。ただ△4二同金▲2四飛△4五銀と進むと、▲2二飛成に△3三角や△1三角から△5六桂の筋があるため、先手自信なしのようだ。 * *【勝又清和七段来訪】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-e917.html * *※局後の感想※ *「▲2四歩から▲4五桂までは前例になく、木村王位はあまり有力視されていなかったので、想定した順から少し外れたようですね。感想戦で▲4五桂に△4一飛も検討されましたが、▲4六歩△4四銀▲8三角△6三銀▲7五歩△4五銀▲7四歩で後手自信なしとされました。以下△4六銀は▲7三歩成△同金に▲5六角成の味がよく、先手有利です」(山崎八段) 48 4四銀(33) (21:00/01:20:00) *14時3分の着手。△4四銀までの消費時間は▲藤井2時間10分、△木村1時間20分。木村の手つきは朝からずっと力強い。気合が感じられる。 * *【出版物と対局者】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-613d.html 49 7五歩(76) (10:00/02:20:00) *14時13分の着手。6六歩型を生かした攻めで、6七歩型から▲7五歩と攻めても△同歩▲7四歩に△6五桂と逆用された。 *「(1)△7五同歩▲7四歩△4五銀▲7三歩成△同金▲4四桂は先手がよいので、(2)△4五銀▲7四歩でしょうか。しかし以下△4七歩▲3八金△4六桂▲7三歩成△同金▲4四桂は先手がよさそうに見えますね」(山崎八段) *(1)△7五同歩▲7四歩に△9二角と飛車をにらんで受けるのは、▲2四飛で先手ペース。 *時刻は15時。木村の考慮は47分に達した。対局室にはおやつが出されている。木村はレモンのムースとアイスコーヒー、藤井は豊市のどうまい牛乳プリン、アイスレモンティー。 * *【1日目午後のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-59ae.html 50 4五銀(44) (64:00/02:24:00) *1時間4分の考慮で桂を取る。瞬間は後手の桂得だが、▲7四歩ですぐに取り返されると▲4四桂のキズが響く。 51 7四歩(75) ( 1:00/02:21:00) *【中日新聞:結婚式場が舞台 対局場となった音楽堂】 *https://www.chunichi.co.jp/article/81797?rct=igo_shogi 52 9二角打 ( 7:00/02:31:00) *15時26分の着手。角で間接的に飛車をにらみ、▲7三歩成を牽制した。このまま△7四角と歩を払い、桂得をキープすれば後手ペースになる。ただ、▲7三歩成は十分に考えられる。△2九角成と飛車を取られても、▲6二とや▲4四桂から後手玉に迫れる。飛車を捨てる順に藤井が踏み込めば、一気に終盤だ。現局面は▲2四飛もある。以下△7四角なら▲7五銀△9二角▲7四歩と桂頭をしつこく狙う。 *時刻は16時30分を過ぎた。▲7三歩成からの順は詰むや詰まざるやまで読まないといけない。逆にいえば、すべて読みきれる見込みがある局面かもしれない。 *「このまま封じ手になる可能性もありますね。▲7三歩成を指したら、そこで木村王位が封じるかもしれません」(山崎八段) *山崎八段と勝又七段の検討では、▲7三歩成と▲2四飛のどちらも先手持ちという。 *17時前、谷川九段と山崎八段が継ぎ盤を挟む。日中はスーツに着替えていた谷川九段だが、まもなく封じ手とあっていまは和服に身を包んでいる。谷川九段は藤井側、山崎八段は木村側に座った。検討を始める前にサッと谷川九段が駒を入れ替える。藤井側が王将、木村側が玉将になっていたのだ。それを見た山崎八段が「いやいや、先生。いまだけは」と、また王将と玉将を取り換えた。 * *【戦い始まる】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-aa64.html *【16時台の控室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/16-4656.html *【豊橋市散策(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-1ebf.html *【豊橋市散策(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-e7e9.html 53 7三歩成(74) (96:00/03:57:00) *17時2分、藤井が1時間36分の考慮で踏み込んだ。藤井は席を立つ。木村は腕を組む。 *△2九角成に▲6二とと▲4四桂が浮かぶが、谷川九段と山崎八段、勝又七段の検討では▲6二とが本命視されている。△同玉に▲4四桂は△4二金▲4三歩△4一金▲4二銀が並べられたが、谷川九段は「銀の感触がよくない」と話す。そこで▲4四角が有力とされた。以下△5三銀は▲7二金△同玉▲5三角成△6三金▲5二馬とプレッシャーをかけ、△5三桂は▲6五桂△同歩(代えて△4三金は▲7二銀)▲6四銀が決め手になる。 *後手は飛車を取れるものの、取った瞬間は馬が遊んで先手玉に迫りにくい。飛車を打つ前に自玉の包囲網を築かれては、反撃のタイミングがなくなってしまう。△2九角成は自玉が寄らないかを勘案しないといけない手なのだ。 *封じ手が決まる18時まで、残り30分を切った。 *時刻は18時、木村が封じることになった。同2分、木村が封じ手の意思表示をする。54手目に使った時間は59分。1日目の消費時間は▲藤井3時間57分、△木村3時間30分。対局は明日の9時に再開される。 *封じ手予想は△2九角成で一致している。 *「最近では珍しい同型の出だしから、△5二玉と前例の少ない戦いに木村王位が持ち込みました。△5二玉の駒音は高かったですし、かなり研究されていたのが伺えます。藤井七段は攻め続け、木村王位が反撃に転じ、藤井七段がさらに踏み込んで封じ手の局面です。終盤に入りそうなところまで進み、緊迫感があります。何度も修羅場をくぐってきた木村王位が藤井七段の攻めを受け止めるか、それとも藤井七段がそれさえも突破してしまうのか。水面下で戦いが続いています」(山崎八段) *「木村王位が真っ向勝負を選ぶのは意表を突かれました。攻め将棋の谷川九段と山崎八段の検討を聞いて、1日目から非常に勉強になりました」(勝又七段) *「予想以上に速いのでびっくりしました。自分なりに読んでいましたが、あまり当たりませんでした。勉強不足なのかもしれませんが」(中西三段) * *【藤井聡七段、踏み込む】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-45f5.html *【封じ手手続き〜1日目終了(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-fefd.html *【封じ手手続き〜1日目終了(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-1962.html 54 2九角成(92) (59:00/03:30:00) *2日目の朝を迎えた。本日の豊橋市は快晴で、予想最高気温は29度と暑くなりそうだ。先に入室したのは藤井。時折、扇子を手に取り、座布団に手をついて前傾姿勢になる。藤井から10分ほどして、木村が対局室に入った。まずは駒を初形に並べて、記録係の声に従いながら1日目の指し手を再現していく。8時59分、谷川九段が封じ手を開封する。ハサミで封を切る前に、封筒が閉じたままであることを両対局者に示した。「封じ手は△2九角成です」。谷川が封じ手を読み上げると、木村は小気味いい手つきで飛車を取った。 *本日のABEMAは、解説を阿久津主税八段と広瀬章人八段、聞き手を長谷川優貴女流二段と和田あき女流初段が務める。 * *【ABEMA】 *https://abema.tv/now-on-air/shogi 55 6二と(73) ( 1:00/03:58:00) *「△6二同玉は▲4四角や▲4四桂、△4三玉は▲5二と(△同玉は▲4四桂)や▲4四歩△同玉▲5二とが予想されます」(山崎八段) *昨日の控室は△6二同玉を中心に検討し、▲4四角から追い込めそうと話していた。木村が手を止めている。 * *【2日目朝の対局再開(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-fe1b.html *【2日目朝の対局再開(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-4c55.html *【2日目朝の対局再開(3)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-f898.html 56 4三玉(52) (22:00/03:52:00) *9時24分の着手。 *「あ、逃げたよ、やっぱり」(勝又七段) *△6二同玉は▲4四角で寄り筋だったか。以下△5三桂は▲6五桂△同歩▲6四銀で受けがない。△5三銀は▲7二金△同玉▲5三角成△6三金▲5二馬△6二金に、馬を逃げずに▲6三銀△同金▲7五桂△7四馬▲6三桂成△同馬▲7三歩△同玉▲7四歩△同馬▲6二銀△8四玉▲7四馬△同玉▲5二角△8四玉▲6三角成で寄りそうとされていた。 *後手は先手の追撃をしのいで、飛車打ちや△3九馬を間に合わせるしかない。△4三玉は3三から1筋に玉を逃げ込もうとしている。しかし、先手は手番と豊富な持ち駒がある。うまい寄せがあっても不思議ではない。(1)▲5二とでよいなら分かりやすい。△同玉は▲4四桂があり、このまま後手が放置すると▲5三銀が詰めろになる。 *控室では山崎八段が中心になって、継ぎ盤を動かしている。山崎八段は「藤井七段はもっと時間がなくてきつい局面で正解を指し続けるからなぁ」と先手が押し切るのではないかと見ている。後に検討に加わった谷川九段は「どれでもいけそうだから、そういうのは悩みますね」と話した。 *現局面の候補手は(1)▲5二と、(2)▲3七桂、(3)▲4六歩。検討を進めた結果、見た目よりも後手玉に粘りがあるようだ。まず先手玉は△3九馬から△4八馬とされると、△6九金がきつくなる。▲同玉は△5九飛からの詰み、▲6七玉は△4九馬で厳しい。なので、先手は△4八馬の瞬間に後手玉が詰むように迫らないといけない。 *まず(1)▲5二とは△3九馬▲5三銀△3三玉▲4二とは、後手玉が詰めろになっておらず△4八馬で先手負け。(2)▲3七桂△3九馬▲4五桂△4八馬は後手玉の上部が広くて詰みがなく、やはり先手が負けそうだ。(3)▲4六歩は△同銀▲4五桂△4一桂で、△3九馬を上回る手が本当にあるかが不明。 *10時を回り、対局者にはおやつが出されている。木村はジンジャーエール。藤井は八丁みそまんじゅうとアイスコーヒー、冷たい緑茶。 * *【2日目午前のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-ee89.html *【2日目10時過ぎの控室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/10-011c.html * *※局後の感想※ *「藤井七段は▲3七桂△3六銀▲4五銀△同銀▲同桂がよかったかと話していました。この順は4五に桂を打つという意味で、控室で検討していた▲4六歩と似ています。でも、本譜で決まっているなら本譜でいいでしょうね」(山崎八段) 57 4四歩打 (52:00/04:50:00) *10時17分、52分考えて叩いた。 *「そうか、△3九馬と寄らせないのが急所なのか」(山崎八段) *(1)△4四同玉に▲1七角が好手。以下△3三玉▲4四金△2三玉▲4五金と進めば、先手の寄せが悠長なようでも△3九馬さえ消しておけば迫られない。(2)△3三玉は▲6三角や▲3七桂△3六銀▲6三角、▲4三金が厳しい。 *「(1)△4四同玉▲1七角△3五桂▲同歩△1九馬を気にするなら、▲1七角では▲2六角か▲3七桂を考えますね」(山崎八段) *▲2六角は金にヒモをつけて、△3九馬から△4八馬を受けている。▲3七桂は△3九馬に▲2六角から▲4五桂として、やはり4八の金を守りながら攻める狙い。 *山崎八段はABEMAの大盤解説を少し眺めて、「あ、そうか」とつぶやく。(1)△4四同玉に▲1七角ではなく、▲5二とも有力のようだ。 *「▲1七角や▲2六角と△3九馬を緩和する手もあるかもしれないですけど、▲5二とで攻め合い勝ちができるなら分かりやすいですね。以下△3九馬▲5三角△3三玉▲4四桂△4三金▲3二銀△5三金▲同と△3五歩(▲同歩は△4四玉から△3五玉で逃げられる)で先手に勝ちがあるかどうか。途中の▲5三角では▲4九歩もあって、△4七歩なら後に4八の金を取られる形が馬ではなくと金なので、先手が後に▲7九玉と逃げやすくなります」(山崎八段) *山崎八段の検討を聞く限りでは、先手に攻防の手段は多いものの、後手はするりと際どく逃げる変化も出てきている。水面下で詰むや詰まざるやを読み合う局面のようだ。 *11時17分、木村が手を止めて1時間がたった。 58 同 玉(43) (62:00/04:54:00) *現局面までの消費時間は▲藤井4時間50分、△木村4時間54分。木村が△4四同玉に使った時間は1時間2分だった。 * *【ホテルアークリッシュ豊橋の眺望】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-b0bf.html 59 5二と(62) ( 1:00/04:51:00) *11時21分、1分でと金を寄せていく。次は▲5三角△3三玉▲4四桂と迫る。▲4四桂は▲3二桂成△同玉▲4二角成からの詰めろになっている。現局面で(1)△3三玉は利かない。▲4四桂△同玉▲5三角△3三玉▲4二と△同金▲4四金で受けがなくなってしまう。しかし、どうやら(2)△4七歩で難しいようだ。以下▲5三角△3三玉▲4四桂△4三金▲3二桂成△同玉▲4二金△2二玉▲4三金△4八歩成と進むと、後手玉は詰まない。先手は△6九金の詰めろをどう受けるかの問題になる。 *12時14分、木村はじっくり棋譜を眺める。木村は「棋譜を見るのは読み筋を思い出すため」と語っていた。同20分、木村が対局室を出ていく。続いて藤井も席を立った。 *「ギリギリの終盤ですね」と山崎八段。木村と藤井はじっくり時間を使っている。手数は59手と短いが、水面下に複雑な寄せ合いが潜むのでかなり濃い。勝負どころだ。 *12時30分、ここで木村が1時間8分使って、昼食休憩に入った。消費時間は▲藤井4時間51分、△木村6時間2分。昼食注文は木村が新城源氏和牛カレーセット(ご飯少なめ)、藤井は冷やしきしめん御膳(キノコなし)、冷たいウーロン茶。対局再開は13時30分。 *対局者の昼食は、ホテルアークリッシュの今里武総料理長が30種類を用意した。メインに使う食材は東三河産。 * *【11時台の控室周辺】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/11-050c.html *【対局者の2日目昼食】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-879c.html *【中日新聞:王位戦の勝負めし、東三河の食材で 会場ホテルが30種用意】 *https://www.chunichi.co.jp/article/81150?rct=igo_shogi *【東京新聞:木村一基王位VS藤井聡太七段の王位戦 注目の「将棋めし」は?研究家に聞いた】 *https://www.tokyo-np.co.jp/article/39341 *【2日目昼食休憩中の対局室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-f439.html 60 3九馬(29) (68:00/06:02:00) *13時30分の着手。 *△3九馬は△4七歩と同じように攻めの方針。△3九馬は山崎八段の第一感だったが、昼食休憩中に記録係の中西三段から▲4九金打を指摘されたという。馬をはじかれるのを嫌うなら、△3九馬では△4七歩だった。 *「▲4九金打に△4八馬は負けそうなので、△2八馬でしょうか」(山崎八段) *(1)△4八馬は▲同金△に4七歩と攻める狙いだが、▲5三角△3三玉▲4四桂△4三金▲3二銀△5三金▲同と△3五歩▲4三と△3四玉▲2三角で寄ってしまう。これは後手負け。(2)△2八馬は辛抱だが、山崎八段が見つけた▲7二銀が面白い。△8二飛は▲7一角が王手飛車になるし、△3一飛は▲2三桂△同金▲5三角が刺さる。 *控室には藤井の師匠、愛知県在住の杉本昌隆八段が来訪している。 *「藤井七段は仕掛けてから守りの手を指していません。ここまで描いた進行だと思いますが、さすが木村王位という感じで粘り強い指し回しの印象です。現局面で▲4九金打だと△2八馬が検討されていた? なるほど。え、次の手が▲7二銀! はぁぁー。△3一飛だと▲2三桂! 山崎さんが思いついた? 才能の一手で気がつかないですねぇ」(杉本昌八段) *時刻は14時を過ぎた。同15分、両対局者の視線は盤上に注がれている。藤井は羽織を脱いでおり、手で扇子を軽くいじりながら考えている。木村は右手に握りしめた扇子を畳に突き立てていた。座布団についた左手のこぶしには、血管が浮き出ている。 *14時30分、藤井の考慮は1時間に達した。 * *【2日目昼の対局再開】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-d4ed.html *【豊橋市散策】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-7587.html *【一直線の寄せ合いは先手負け?】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-f137.html 61 5三銀打 (60:00/05:51:00) *ちょうど1時間考えて、藤井は攻めた。現局面までの消費時間は▲藤井5時間51分、△木村6時間2分。 *▲5三銀と打ったので、もう▲4九金打と自陣に手を戻さないかもしれない。▲4九金打と受けるなら、▲5三銀は決めないで▲5三角の含みを残したほうが寄せの手段が幅広かった。 62 3三玉(44) ( 0:00/06:02:00) 63 4四桂打 ( 2:00/05:53:00) *「あれ、桂なんですか。▲4四桂に代えて、▲4二と△4八馬▲4四角△2三玉▲3二とを谷川先生とやっていたんですよ。それで後手玉は必至になり、先手玉はギリギリ詰まないんじゃないかなって」(山崎八段) *▲5三銀から▲4四桂は俗手。これで決まっていれば分かりやすいが、△2二金や△3一金とかわされたときに詰めろを続けられるか。 64 2二金(32) (13:00/06:15:00) *木村、しのげるか。いや、しのがねば勝ちはない。何としても△4八馬を間に合わせるしかないのだ。 65 3二金打 ( 1:00/05:54:00) *長考後とあって、藤井の指し手が早い。このあたりは藤井の描いたレールで、木村は変化するのが難しい。 * *【コロンブスの卵】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-f816.html 66 同 金(22) ( 3:00/06:18:00) 67 同 桂成(44) ( 0:00/05:54:00) 68 同 玉(33) ( 0:00/06:18:00) 69 4二と(52) ( 0:00/05:54:00) *15時、対局者におやつが出された。木村は豊市のどうまい牛乳プリン、藤井はアイスミルクティー。 * *【2日目午後のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-4a35.html * 70 2二玉(32) (12:00/06:30:00) *谷川九段と山崎八段、勝又七段が検討しているが、空気が変わった。藤井が寄せきったのではないかと話している。△2二玉に▲2三歩と打つ。△同玉は▲3二角、△1二玉は▲1五歩が詰めろになってしまう。際どいのは△1三玉だが、▲3二と△2三玉▲2二金△1三玉▲2一金△2三金▲2二角△同金▲同金△3一桂▲1五桂まで進むと必至がかかる。▲1五桂の局面を見た谷川九段は「だめですね、これは」と話した。しかし、後手の代案は見つかっていない。 71 2三歩打 ( 0:00/05:54:00) 72 1三玉(22) ( 7:00/06:37:00) 73 3二と(42) ( 0:00/05:54:00) *▲2二角△2三玉▲3三金からの詰めろ。谷川九段は現局面で△3一金を調べている。(1)▲同となら詰めろが解除できるので、△4八馬が間に合うというわけだ。(2)▲2二角が怖いが、△同金▲同歩成に△3一桂の犠打があるので、簡単ではない。 *勝又七段が藤井側を持って動かすが、苦戦しているようだ。継ぎ盤から離れていた山崎八段は「え、受けがあるんですか」と驚いた様子。△3一金を知らされると「あきらめちゃだめなんだ……」とつぶやき、勝又七段の隣に座った。 74 3一金打 (17:00/06:54:00) *15時33分、谷川九段の指摘した手が指された。 75 2二角打 ( 1:00/05:55:00) *焦点は木村玉が寄るかどうかに絞られた。木村の受けか、それとも藤井の終盤の切れ味か。局所的に両者の持ち味が激突している。 76 同 金(31) ( 3:00/06:57:00) *15時40分、藤井は席を外している。木村はおしぼりで顔をぬぐう。ちらっと盤上を見たが、眼光は鋭かった。 77 同 歩成(23) ( 2:00/05:57:00) *絶体絶命に見える後手玉だが、△3一桂が妙手。しかし、まだまだ先は長い。 78 3一桂打 ( 1:00/06:58:00) *受けはあるものだ。(1)▲3一同と直は△2二玉で要のと金を払われて細くなるし、(2)▲3一同と右は詰めろがほどけてしまう。(3)▲1一とは詰めろでも、△2五歩で上部脱出のルートを作られてしまう。控室では(4)▲3三金△同桂▲同とで寄りかといわれていたが、△3二金!▲同と寄△4八馬で後手勝ち。先手は金をもらっても、斜め駒がないので後手玉が詰まない。 *藤井は一瞬、脇息にもたれかかった。そしてすぐに盤上に視線を戻す。あぐらなので少し考えそうだ。 *△3一桂の着手は15時42分だった。時刻は16時を過ぎた。現局面までの消費時間は▲藤井5時間57分、△木村6時間58分。 *山崎八段が谷川九段、勝又七段との検討を教えてくれた。 *「▲1五歩△同歩▲2六金で寄りそうなんです。以下△2三桂打は▲1五香△1四歩▲1一と△1五歩▲1二と△1四玉▲2一と左△2五歩▲1三と△2四玉▲3七桂、△1七桂は▲同香△同馬▲1五金△1四銀▲2五桂△同銀▲1一と。どちらも最後まで進めば先手勝ちなんです」(山崎八段) *▲1五歩以下の手順もやはりギリギリで、危険極まりない。寄せの構図にわずかでも穴があれば、奈落の底に落ちるのは藤井だ。 *16時17分、木村は下を向き、左手で脇息をつかんでいる。その薬指には指輪が光っている。 *16時43分、藤井が考えて1時間1分がたち、両対局者の消費時間が6時間58分で並んだ。 * *【難しい終盤戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-f340.html 79 1五歩(16) (61:00/06:58:00) *1時間1分の考慮で▲1五歩。端の香まで寄せに使おうとしている。藤井陣の右辺は遊び駒がない。 * *※局後の感想※ *「『▲1五歩は予定ですか』の問いに、藤井七段は『一応』と答えていましたね。現局面で△1七桂は▲2六金△1五歩▲1七香△同馬▲1五金△1四銀▲2五桂△同銀▲1一とで受かりません」(山崎八段) 80 同 歩(14) ( 1:00/06:59:00) *単純に▲1五同香は△1四歩でまずい。次に△1五歩と香を取られると、上部が広い。 81 2六金打 ( 0:00/06:58:00) *藤井は1筋から仕留めようとしている。▲2六金は▲1四金△同玉▲1五香までの詰めろ。後手は端を緩和するため、△2三桂打、△1七桂、△1四銀の受けが考えられる。ちなみに控室では端歩の突き捨てから▲2六金を本命視していた。 * *※局後の感想※ *「△1四銀に、▲1五香は△1八飛▲1四香△同玉と受けて意外と大変なんです。なので▲1五金がいいですね」(山崎八段) *以下(1)△同銀は▲同香△1四歩▲1二と△同玉▲2二銀△1五歩▲1四金で必至。(2)△1七歩は▲1二金△同香▲同と△2三玉▲2二と右△1三玉▲1六香△1五銀▲同香△1四金(代えて△1四桂は▲2一と直△2三金▲2二銀△同金▲同と引△2五歩▲1六桂まで)▲2三銀(代えて▲1二とは△同玉▲1四香△2三玉で寄らない)△同桂▲1二とまで。(3)△1七桂は▲同香△同馬▲2五桂△同銀▲1一とで受けなし。 82 2三桂打 ( 0:00/06:59:00) *木村はと金が利いているところに桂を打った。▲2三同とは△同桂で、1五の地点を手順に守れる。 * *【藤井聡七段、踏みとどまったか】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-a213.html 83 1五香(19) ( 8:00/07:06:00) *△1五同桂は▲同金が▲2五桂からの詰めろ。▲1五同金に△1四銀と受けても、▲2六桂で受けにくい。 84 1四歩打 ( 1:00/07:00:00) *後手玉は一歩も動けない状況が続いている。追い詰められやすい場所で、木村玉が踏ん張っている。 85 1一と(22) ( 2:00/07:08:00) *▲1二金の詰めろだが、△1五歩ですぐに逃げ道ができる。 86 1五歩(14) ( 1:00/07:01:00) *17時ごろの局面。現局面までの消費時間は▲藤井7時間8分、△木村7時間1分。 87 1二と(11) ( 0:00/07:08:00) *△1二同玉は▲1四香からの詰み。△1四玉しかない。 * *※局後の感想※ *「木村王位は『下から火あぶりだ』とおっしゃっていましたね。うまく表現されるなと思いました」(山崎八段) 88 1四玉(13) ( 3:00/07:04:00) 89 2一と(32) ( 0:00/07:08:00) *▲1三金をどう受けるか。「敵の打ちたいところに打て」の△1三香は、▲同と△同玉▲2五桂△同歩▲同金で押しつぶされる。 90 2五歩(24) ( 2:00/07:06:00) *▲2七金と引けば△4八馬で後手勝ち。しかし、決め手がある。 91 1三と(12) ( 1:00/07:09:00) *これで寄っている。△1三同玉は▲2五金で、後手は▲1四香と▲2四金打を同時に防ぐことができない。△2四玉は▲3七桂。以下△2六歩は▲2五香△3三玉▲4五桂からの詰み。 *関係者は終局に備えて、モニタを見守っている。17時16分、木村は棋譜を手に取った。ややあって藤井が席を外す。木村は目を閉じて考えることが増えてきた。 92 2四玉(14) (19:00/07:25:00) *木村は席を立った。 93 3七桂打 ( 0:00/07:09:00) *木村が戻ってくる前に指された。5三の銀まで包囲網に役立っている。39手目▲4五歩から藤井は1手も守りの手を指していない。小駒の攻めをつなげきった。 *17時34分、木村は緑茶をひと口。膝の上で手を組み、目を閉じる。 * *【先手勝勢】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-f178.html 94 4八馬(39) ( 5:00/07:30:00) *後手玉に詰みがある。藤井は緑茶を飲んだ。 95 2五金(26) ( 0:00/07:09:00) *この局面で木村が頭を下げて、投了を告げた。△3三玉に▲4五桂からの詰み。終局時刻は17時37分。消費時間は、▲藤井7時間9分、△木村7時間30分。 *開幕局から秘術を尽くした攻防だった。挑戦者の藤井は白星スタート。第2局は7月13・14日(月・火)に北海道札幌市厚別区「ホテルエミシア札幌」で行われる。 * *【感想戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-10da.html *【記者会見】 *https://kifulog.shogi.or.jp/oui/2020/07/post-1155.html * *※局後の感想※ *「一局をまとめると、藤井七段が未知の局面でしっかり読み、前例にとらわれずに自分の手を指し続けたんですね。ペースを握って最善手を指し、持ち味を出せた将棋でした」(山崎八段) 96 投了 ( 0:00/07:30:00) まで95手で先手の勝ち