# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.02 棋譜ファイル --- 対局ID:6560 記録ID:59818cf02122e70004892c8e 開始日時:2017/08/08 09:00 終了日時:2017/08/09 14:50 表題:王位戦 棋戦:第58期王位戦七番勝負 第3局 戦型:角交換型振り飛車 持ち時間:各8時間 消費時間:137▲428△276 場所:北海道札幌市・京王プラザホテル札幌 備考:昼休前38手目36分\n2日目昼休前88手目14分\n封じ手時刻:18:05<67手目>\n 振り駒:なし 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:30〜13:30 昼休前消費時間:38手36分 手合割:平手   先手:羽生善治王位 後手:菅井竜也七段 手数----指手---------消費時間-- *羽生善治王位に菅井竜也七段が挑戦する第58期王位戦七番勝負は、開幕から挑戦者が連勝。羽生が反撃の狼煙を上げるか、菅井が奪取に向けて前進するか。第3局は8月8・9日(火・水)、北海道札幌市「京王プラザホテル札幌」で行われる。持ち時間は各8時間、対局開始は9時。先手は羽生。 *立会人は屋敷伸之九段、副立会人は広瀬章人八段、記録係は齋藤明日斗三段(宮田利男八段門下)。現地大盤解説会の聞き手は渡部愛女流初段。 *1日目の8日、8時29分に菅井が入室。下座に着くと、記録係から乾拭き用の布を借りて盤を拭く。8時53分、羽生が入室。両者一礼して、羽生が駒箱を開ける。 * *※局後の感想※ *39手目、46手目、56手目、67〜69手目、73手目、77手目、88手目、111手目、137手目に記載。 * *(棋譜・コメント入力=文) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。#は局後の感想が追記された指し手] 1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *定刻の9時、屋敷九段が「それでは定刻となりましたので、羽生王位の先手番でお願いいたします」と告げる。両対局者が「お願いします」と礼を交わす。しばらくして羽生の手が盤上に伸びた。 * *【戦型予想】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-78cc.html 2 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *控室には石田直裕四段が訪れている。石田四段は名寄市の出身。菅井の着手後、対局室から関係者が退室した。 * *【対局開始】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-75cb.html 3 2六歩(27) ( 2:00/00:02:00) *◆羽生 善治(はぶ よしはる)王位(王座・棋聖)◆ *1970年9月27日生まれ、埼玉県所沢市出身。(故)二上達也九段門下。1985年、四段。1994年、九段。棋士番号は175。 *タイトル戦登場は131回。獲得は王位18期(永世王位)、竜王6期、名人9期(十九世名人)、王座24期(名誉王座)、棋王13期(永世棋王)、王将12期(永世王将)、棋聖16期(永世棋聖)の計98期。棋戦優勝は44回。 4 5四歩(53) ( 1:00/00:01:00) *◆菅井 竜也(すがい たつや)七段◆ *1992年4月17日生まれ、岡山県岡山市出身。井上慶太九段門下。2010年、四段。2015年、七段。棋士番号は278。 *タイトル戦登場は1回。棋戦優勝は2回。 5 2五歩(26) ( 4:00/00:06:00) *王位戦は新聞三社連合が主催する棋戦。予選の勝ち上がり者とシード棋士4人の計12人が紅白2つのリーグに分かれて戦い、各リーグの優勝者が挑戦者決定戦に進出する。王位と挑戦者は七番勝負でタイトルを争う。 *新聞三社連合は1950年に設立された団体で、中日新聞(東京新聞)、北海道新聞、西日本新聞のブロック紙3社が記事の相互利用などで連携している。現在は神戸新聞、徳島新聞が加わった5社で王位戦、女流王位戦、囲碁の天元戦を主催。タイトル戦では各主催新聞社の地元を転戦するのが特徴だ。第3局の主催は北海道新聞社。 * *【新聞三社連合の概要:王位戦中継サイト】 *http://live.shogi.or.jp/oui/sansha.html * *【どうしん電子版(北海道新聞)】 *https://www.hokkaido-np.co.jp/ 6 3二飛(82) ( 0:00/00:01:00) *9時11分、飛車を持った菅井の手は5筋を通り過ぎて3筋に。第1局は9筋の突き合いが入っていた。 *控室では継ぎ盤を囲む棋士から、「ゴキゲン三間飛車」「偽装三間飛車」という声。「何ていうんでしょうね」と広瀬八段が笑う。 * *【第58期王位戦七番勝負第1局 ▲羽生善治王位−△菅井竜也七段】 *http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/58/oui201707050101.html 7 6八玉(59) ( 3:00/00:09:00) *両者の対戦成績は羽生1勝、菅井3勝。この七番勝負以前では早指し棋戦で対局した。王位戦中継サイトでは池田将之さんの特集記事、屋敷九段と畠山鎮七段の対談による開幕事前特集が組まれている。 * *【第58期王位戦七番勝負開幕事前特集|王位戦中継サイト】 *http://live.shogi.or.jp/oui/feature.html 8 8八角成(22) ( 0:00/00:01:00) *第3局の観戦記者は鈴木宏彦さん。観戦記は10月7日から掲載される予定だ。今日の北海道新聞朝刊の観戦記は、挑戦者決定リーグ紅組の木村一基八段(現九段)−阿久津主税八段戦。こちらの執筆は相崎修司さん。 9 同 銀(79) ( 0:00/00:09:00) *本局の模様はAbemaTV(アベマTV)で中継される。1日目の解説は飯塚祐紀七段、田中悠一五段。聞き手は藤田綾女流二段、貞升南女流初段。2日目の解説は中座真七段、佐藤慎一五段。聞き手は本田小百合女流三段、飯野愛女流1級。 * *【第58期 王位戦 七番勝負 第三局1日目 | AbemaTV(アベマTV)】 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/CDxCzfeoTwghtT * *【第58期 王位戦 七番勝負 第三局2日目 | AbemaTV(アベマTV)】 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/9BndRzTygjNR2X 10 4二銀(31) ( 0:00/00:01:00) *大盤解説会は2日目の9日に現地と関西将棋会館でそれぞれ開かれる。現地の京王プラザホテル札幌は14時30分開場、15時開始。解説は広瀬八段、聞き手は渡部女流初段。関西将棋会館は17時開始。解説は北浜健介八段、聞き手は室田伊緒女流二段。 * *【現地】 *https://www.shogi.or.jp/event/2017/07/58_9.html#58-03 * *【関西将棋会館】 *https://www.shogi.or.jp/kansai/entry_images/ff893bbfa724baf0a9b63f8a8e620374.pdf 11 7八玉(68) ( 1:00/00:10:00) *札幌市は北海道の道庁所在地、政令指定都市。石狩平野の南西部に位置する。アイヌの人々が住んでいた蝦夷地が北海道と改称されて開拓使が置かれ、札幌は計画都市として誕生した。札幌の名の由来には、アイヌ語の「サリ・ポロ・ペッ」(その葦原が・広大な・川)や、「サッ・ポロ・ペッ」(乾いた・大きな・川)とする説などがある。現在の人口は190万人を超え、北海道の人口の約3割を占める。名実ともに北海道の中心都市である。 * *【札幌市公式ホームページ - City of Sapporo】 *https://www.city.sapporo.jp/ 12 2二飛(32) ( 0:00/00:01:00) *京王プラザホテル札幌は1982年開業。札幌駅から徒歩数分、周辺には札幌時計台北海道旧本庁舎、北海道大学植物園といった観光スポットがある。王位戦では3年前の七番勝負第3局、女流王位戦では昨年の五番勝負第2局でも対局場として使われた。 * *【札幌 ホテル│京王プラザホテル札幌】 *https://www.keioplaza-sapporo.co.jp/ * *【第55期王位戦七番勝負第3局 ▲羽生善治王位−△木村一基八段(肩書は当時)】 *http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/55/oui201408050101.html * *【第27期女流王位戦五番勝負第2局 ▲里見香奈女流王位−△岩根忍女流三段】 *http://live.shogi.or.jp/joryu-oui/kifu/27/joryu-oui201605260101.html 13 9六歩(97) ( 2:00/00:12:00) *控室に野月浩貴八段と、横浜F・マリノスでアンバサダーを務める波戸康広さんが訪れた。波戸さんは将棋ファンとしても知られ、日本将棋連盟から将棋親善大使を委嘱されている。 14 9四歩(93) ( 0:00/00:01:00) *北海道出身の棋士、女流棋士は多い。現役では屋敷伸之九段、日浦市郎八段、野月浩貴八段、広瀬章人八段、中座真七段、金沢孝史五段、石田直裕四段、中井広恵女流六段、石高澄恵女流二段、久津知子女流二段、渡部愛女流初段、和田あき女流初段がいる。羽生の師匠である二上達也九段、屋敷九段の師匠である五十嵐豊一九段、野月八段と広瀬八段の師匠である勝浦修九段も北海道の出身だ。 15 3八銀(39) ( 3:00/00:15:00) *戦型は本命と見られていた角交換振り飛車になっている。「テンポが速いですね」と広瀬八段。菅井は先月行われた第2局で、持ち時間を3時間以上残して勝利を収めた。 *広瀬八段は第51期の王位。第52期は王位として、第56期は挑戦者として羽生と七番勝負を戦った。 * *【第58期王位戦七番勝負第2局 ▲菅井竜也七段−△羽生善治王位】 *http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/58/oui201707250101.html 16 6二玉(51) ( 1:00/00:02:00) *対局前日の7日、両対局者は羽田空港から空路で北海道に飛んだ。新千歳空港からはバスに乗り換えて京王プラザホテル札幌に移動。17時から予定されていた検分は早めに始まり、17時前には滞りなく終了した。 *使用する盤と駒は北海道支部連合会所蔵のもの。盤は1960年の第1期王位戦七番勝負第1局で使用された。第1期七番勝負は大山康晴名人と塚田正夫九段で争われ、大山名人が4勝1敗で王位となった。駒は桂山師作、水無瀬書の盛上駒。 * *【検分(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-a556.html * *【検分(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-bd89.html 17 4六歩(47) ( 1:00/00:16:00) *羽生の今年度成績は9勝6敗(0.600)。 *対局数はランキング11位タイ、勝数は18位タイ。 *通算成績は1375勝549敗(0.715)。 18 7二玉(62) ( 0:00/00:02:00) *菅井の今年度成績は15勝4敗(0.789)。 *対局数はランキング2位タイ、勝数は2位、勝率は9位。現在4連勝中。 *通算成績は247勝90敗(0.733)。 19 7七銀(88) ( 1:00/00:17:00) *羽生の王位戦成績は127勝61敗(0.676)。初参加は第28期、七番勝負登場は23回、王位獲得は18期。永世王位の資格を持つ。第34期に初めて挑戦権を獲得、七番勝負で郷田真隆王位(当時)に4連勝して王位を奪取した。第38期、王位5連覇により永世王位の有資格者になる。前期は木村一基八段(現九段)の挑戦を4勝3敗で退けた。現在6連覇中。 20 8二玉(72) ( 1:00/00:03:00) *菅井の王位戦成績は28勝8敗(0.778)。初参加は第52期、挑戦者決定リーグ出場は3回。今期は挑戦者決定リーグ白組を4勝1敗で優勝、挑戦者決定戦で澤田真吾六段に勝って挑戦権を獲得した。タイトル挑戦は初めて。 21 8八玉(78) ( 0:00/00:17:00) *現地には日本将棋連盟会長の佐藤康光九段が訪れている。差し入れとして持ってきたお菓子には「大山名人もなか」が。佐藤康九段は5日、岡山県倉敷市で行われた全国将棋サミット2017に参加した。菅井もこのサミットに出演し、佐藤天彦名人と席上対局を行った。 22 7二銀(71) ( 7:00/00:10:00) 23 7八金(69) ( 1:00/00:18:00) *第1局と比較すると、後手は同じ陣形だが、先手は少し形が異なる。右の金銀よりも左の金銀の活用を優先しているのが本局での違い。まずは金銀2枚でコンパクトに玉を囲った。 *穏やかな序盤とあって、控室はのんびりとした雰囲気だ。10時、対局室におやつが運ばれた。羽生の注文はタピオカ入りココナッツミルク、ホットコーヒー。菅井の注文はタピオカ入りココナッツミルク、ホットレモンティー。 * *【1日目午前のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-62f1.html 24 3三桂(21) (29:00/00:39:00) *10時11分、菅井の手が動いた。29分は熟慮といえる。「△8四歩、△5三銀との比較だったのでしょうか」と石田四段。「ここで▲4七銀に△2五桂を気にしないといけないようなら、先手の駒組みを牽制しているといえます」と話す。△2五桂は▲同飛で桂損するだけのようだが、△2四歩からの飛車先逆襲が狙いだ。先手に歩があれば何でもない筋だが、角桂の持ち駒では2筋を伸ばす単純な攻めが意外に受けにくい。 *対局室では羽生がおやつを食べている。菅井は口元に手を当てて盤面に集中している。 * *【午前中の控室】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-3d89.html 25 6六歩(67) (21:00/00:39:00) *右の金銀はそのまま、陣地を少しずつ広げる。AbemaTVでは田中悠五段がここで△2五桂と跳ねる手について触れている。以下▲同飛△2四歩▲2八飛△2五歩となっても、先手は右銀が2筋を守っているので受けやすい。 26 3二金(41) ( 4:00/00:43:00) 27 3六歩(37) ( 4:00/00:43:00) 28 2一飛(22) ( 1:00/00:44:00) *角交換型の振り飛車は向かい飛車が好位置だ。バランスを取って△3二金と上がり、△2一飛と下段に引く形が角の打ち込みに強い。 29 3七桂(29) ( 7:00/00:50:00) *10時49分、羽生が着手。互いに陣形整備が続く。先手は桂を跳ねたことで△2五桂の筋は怖くなくなった。このあとの駒組みは▲4七銀〜▲5八金〜▲5六銀、▲4七銀〜▲4八金〜▲2九飛が考えられるところ。先手陣だけ見れば角換わりと同じ形だ。角換わりも角交換振り飛車も、角の打ち込みに注意しなければならないという共通点がある。 30 5三銀(42) (13:00/00:57:00) *第1局は25手目で昼食休憩に入っていた。本局は第1局が下敷きになっていることもあるのだろう、やや進行が早い。 31 6七角打 ( 9:00/00:59:00) *11時12分、羽生の手が駒台に伸びた。角を手放す決断の一手だが、羽生の考慮時間は9分。第1局から工夫した駒組みといい、ここまで予定のうちなのかもしれない。 32 4四銀(53) ( 3:00/01:00:00) 33 3四角(67) ( 1:00/01:00:00) *筋違い角は角交換振り飛車でよく出てくる。多いのはこうして桂頭の歩をかすめ取る筋だ。先手は歩得の実利を得たが、角を手放しているので一長一短がある。 34 7四歩(73) ( 6:00/01:06:00) 35 4七銀(38) (10:00/01:10:00) *先手は再び駒組みに入る。次は▲6七角〜▲3五歩〜▲3四歩と桂を取りにいく筋が映るものの、▲3五歩に△同銀▲3四歩△3六歩となって決戦になるので、一方的に桂を取れるわけではない。「▲3五歩のタイミングは難しそうですね」と屋敷九段。 36 8四歩(83) ( 4:00/01:10:00) *後手は銀冠を目指す。菅井は着手して棋譜用紙に目を通した。羽生が席を立つ。 37 1六歩(17) (15:00/01:25:00) *対局室に戻った羽生の手が端に伸びる。「この端歩は狙いがあるんです」と広瀬八段。先手は▲1五歩と伸ばしてから、▲1四歩△同歩▲2四歩△同歩▲1二歩、▲1四歩△同歩▲1二歩△同香▲2四歩と、角の利きを生かして香を狙う攻めがある。これを踏まえて、後手は△8三銀〜△7二金とゆったり構えていいものか、それとも反撃の用意を急ぐ必要があるのか。広瀬八段は「ここから△8三銀▲1五歩△7二金▲1四歩と進むと先手よしです。受けるなら△2二飛という手はありますが、それでは悔しいでしょうね」と話す。 *12時25分、菅井が時間を使っている。広瀬八段は「ここで△2二飛だと▲2四歩△同歩▲2三歩がありますね」という。どうやら受け方が難しいようだ。12時30分、菅井が36分使って昼食休憩に入った。菅井は手をつけていなかったおやつを食べる。消費時間は▲羽生1時間25分、△菅井1時間46分。昼食の注文は羽生、菅井ともに三色丼(うに、いくら、かに)とオレンジジュース。対局は13時30分に再開される。 * *【1日目昼食休憩】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-70fe.html 38 5五銀(44) (36:00/01:46:00) *13時30分、対局再開。スッと菅井の手が伸びる。先手陣に圧力をかける銀の進軍だ。羽生が数回、小さくうなずく。 *後手は次に△7三角と打って△4六銀を狙う攻めがある。ただ、ここで▲5六歩と突かれると銀をバックするしかない。例えば以下△4四銀▲1五歩で、後手が忙しい状況を迎えそうだ。広瀬八段は継ぎ盤で先に△7三角と打った場合を調べている。そこで▲5六歩なら、△5五歩など、後手から変化ができる。「何か嫌なことがあったんでしょうか」と広瀬八段。 * *【1日目、対局再開】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-95d4.html 39 1五歩(16) (24:00/01:49:00) *13時54分、羽生が着手。後手の銀は相手にせず、着々と攻撃準備を整える。後手が狙いの△7三角を決行するとどうなるか。継ぎ盤では▲4八飛△2四歩が示され、「(先手が)忙しいですね」と石田四段。 * *【封じ手用封筒】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-6892.html * *※局後の感想※ *ここで△7三角は▲4八金△4六銀▲同銀△同角▲2九飛で先手陣に隙がない。「さっぱりしちゃうかなと思いました。角は手持ちの筋でこられるほうが嫌でした」(羽生) 40 7三桂(81) ( 9:00/01:55:00) *菅井の手が7筋に向かう。手にした駒は桂だった。玉は薄くなるが積極的だ。次は△8五桂▲6八銀△6六銀と先手玉に肉薄する順がある。といって、ここで▲5六歩と銀を追い払うのは「角が狭くなるので一長一短」と石田四段。以下△6四銀▲1四歩△6九角▲5八金△7八角成▲同玉△4四金と進むと、先手は角の退路を塞いだことが裏目に出てしまう。 *14時20分ごろ、AbemaTVでは現地控室からの中継が始まった。野月八段と波戸さんが出演している。 * *【14時頃の控室】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/14-f2d4.html 41 1四歩(15) (20:00/02:09:00) *14時25分、羽生の手が動いた。後手の動きに構わず、我が道を行く。3連続で端を突き、いよいよ敵陣が目前に迫った。「1日目にしては進行が早い。のっぴきならない局面」と野月八段。 * *【北海道庁旧本庁舎】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-356a.html 42 同 歩(13) ( 5:00/02:00:00) *先手は手持ちの歩を生かして▲1二歩△同香▲2四歩と攻めることができる。控室では▲5六歩△6四銀の交換を入れてから▲1二歩△同香▲2四歩を調べている。「後手はどうすればいいのか。笑うしかないですね」と屋敷九段が笑う。野月八段は「銀を引くしかないのでは……」と首をかしげる。先手が▲5六歩と突いたとき、後手に何か手段はないか。 43 1二歩打 (22:00/02:31:00) *14時52分の着手。羽生は単にたたき、直線的に攻めていく。広瀬八段は「うーん、▲5六歩と突いたほうがいいように思いましたけど」と話している。 44 8五桂(73) ( 0:00/02:00:00) *菅井、すぐに桂を跳ねた。「早いですね」と屋敷九段が驚きの声を上げる。先手は▲1一歩成と香を取れるが、△同飛▲6八銀△6六銀▲2四歩△同歩▲同飛△4四角と進むと後手の攻めも迫力がある。香を取らずにじっと▲6八銀と逃げておくのも有力なようだ。「ここは考えると思います」と屋敷九段。 *15時、対局室におやつが運ばれた。羽生はショートケーキ、ホットレモンティー。菅井はフルーツ盛り合わせ。羽生は扇子ではたはたとあおぎながら、何度か「そっか」とつぶやく。 * *【1日目午後のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-59ae.html 45 6八銀(77) (23:00/02:54:00) *15時16分、盤面モニターに羽生の手が映った。香を取らずに銀を逃げておく。後手に△1二香と歩を払ってもらえば、先手からは▲2四歩が厳しくなるので、慌てて香を取る必要はない。 46 9五歩(94) ( 7:00/02:07:00) *手を止めずに端攻め。流れが激しい。いったい封じ手になるころにはどこまで進むのだろう。この手は屋敷九段が予想していた。野月八段は「香取って桂を取りにいってどう?」と話す。ここから▲1一歩成△同飛▲8六歩ということだ。 * *※局後の感想※ *ここで▲1一歩成は、△同飛▲9五歩のとき△3五歩の変化が生じる。以下▲3五同歩なら△3六歩だ。菅井は「悪そう」と話したが、羽生は気になる様子だった。「歩を渡すのを警戒した」と羽生。 47 同 歩(96) ( 6:00/03:00:00) *「羽生先生、3時間使われました」という声がかかった直後に指された。自然な対応。後手は相変わらず香が取られそうだし、▲8六歩と突かれると桂も危なくなる。忙しい。 * *【北海道大学(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-9fcb.html * *【北海道大学(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-e70e.html 48 1二香(11) (11:00/02:18:00) *後手は歩を払って手駒を増やす。先手は初志貫徹の▲2四歩か、桂を取りにいく▲8六歩か。 *15時51分、羽生はゆっくりと立ち上がって対局室を出ていく。 49 8六歩(87) (14:00/03:14:00) 50 9八歩打 ( 0:00/02:18:00) 51 同 香(99) ( 2:00/03:16:00) 52 9七歩打 ( 1:00/02:19:00) 53 同 桂(89) ( 0:00/03:16:00) 54 同 桂成(85) ( 0:00/02:19:00) 55 同 香(98) ( 0:00/03:16:00) *羽生が▲8六歩と指してから淡々と進んだ。後手は取られそうな桂を交換に持ち込んだが、歩切れになった。先手からはやはり▲2四歩が確実な攻めとして残っている。 56 7五歩(74) ( 5:00/02:24:00) *菅井、玉頭からこじ開けにかかった。▲7五同歩なら△7六桂があるとはいえ、美濃囲いの急所に空間を作るギョッとする手だ。尋常な手段では▲2四歩に対抗できないということだろう。ただ、先手も現状は持ち駒が桂と歩しかないので、すぐに▲7四桂と王手しても継続手がない。 *控室ではここから▲6七銀△7六歩▲5六歩△6四銀▲7六銀が示されている。以下△4二桂で角を取られて失敗のようだが、▲2四桂が鋭い切り返し。これは後手がしびれている。こうなると手順中▲5六歩は△7四角の筋を緩和して味がいい。 * *※局後の感想※ *羽生は「本当はこういう手をやりたい」と▲2四歩を示したが、△7六歩▲2三歩成△6六銀で後手の攻めも迫力がある。以下▲2二歩と打つのでは「ちょっと遅そう」と羽生。 57 5六歩(57) (21:00/03:37:00) *16時28分、羽生が着手。目障りな後手の銀に働きかける。ここで△6六銀は▲6七歩でいけない。 58 6四銀(55) ( 0:00/02:24:00) *菅井はすぐに銀を引いた。先手はここで▲6七銀と立てば、控室の検討手順と合流する。「ゆっくりしていれば先手がよくなります。後手が手を作れるかどうか。難解な中盤戦になると思います」と屋敷九段。 59 7七銀(68) (16:00/03:53:00) 60 7六歩(75) ( 2:00/02:26:00) 61 同 銀(77) ( 0:00/03:53:00) *細かい点で違いはあるが、検討で調べていた局面と合流した。ここで後手の指し手が難しいという評判だったが……。 62 7五歩打 ( 0:00/02:26:00) *「あっ、もう歩を打ったんですね。早い早い」と屋敷九段の声。消費時間には大きな差がついている。 63 6七銀(76) ( 2:00/03:55:00) 64 2二飛(21) ( 3:00/02:29:00) *先手の玉頭に嫌みをつけてから、香にヒモをつけて▲2四歩に備えた。また▲2四桂を緩和してもいるので、先手は△4二桂に注意が必要だ。ここで▲2四歩△同歩▲2三歩と攻めれば△2一飛と引かせることができて一時は気分がいいが、以下▲2四飛のときに△7六桂と打たれて先手が怖い形だ。「後手は△2三金と体当たりする切り札があります。▲7四桂は△8三玉と上がって何でもないので」と屋敷九段。AbemaTVの飯塚七段は△7六桂に代えて△7四角を解説していた。先手からの▲7四桂を消しつつ、△9六歩と△5五桂を狙った攻防手だ。 *先手は自陣に手を入れて安全にしたいが、△4二桂が気になるところ。広瀬八段は一案として、ここから▲5八金△4二桂▲3五歩を示した。角を取らせても3筋の歩が伸びて手順に桂を攻める格好になる。「▲5八金とやっている余裕があるかはわからないですが」と広瀬八段。とはいえ後手も歩切れが頭痛の種だ。 *羽生の考慮中に17時を過ぎた。駒台に手が伸びて引っ込む。封じ手の定刻まで1時間を切っている。控室にはAbemaTVの中継が入り、野月八段と波戸さんに加えて石田四段が出演。封じ手を入れる封筒を見せながら、封じ手について説明している。形勢判断は、野月八段が「60対40で羽生王位持ち」と話した。 * *【17時過ぎの控室】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/17-24d7.html 65 3五桂打 (35:00/04:30:00) *17時30分、羽生の手が動いた。意外な直接手。数の攻めで4筋を狙っている。後手は△5二金と受けるよりなさそうだが、この交換が先手にどのような利をもたらすのか。継ぎ盤では△5二金に、▲2四歩△同歩▲2三歩△2一飛▲2四飛△7四桂▲2二歩成△同飛▲2三桂成△同金▲同角成△7六桂という激しい順が並んだ。打った桂を使って2筋から強襲をかけたが、これは踏み込んだ先手にも不安が残る。続いて挙がったのは、△5二金に▲9四歩と突き出す手。以下△4二桂なら▲2四歩△同歩▲9三歩成△同香▲同香成△同玉▲2三香という狙いがある。先手は2筋に▲2三歩と打つのでは△2一飛と逃げられてしまうが、▲2三香なら飛車の逃亡を許さずに攻めることができる。 *17時33分、控室に久津知子女流二段。菅井の考慮中に17時50分を過ぎた。 66 5二金(61) (26:00/02:55:00) *封じ手になるかと思われたが、17時56分、菅井の手が盤上に伸びた。羽生はじっと盤面を見つめる。定刻の18時を迎えた。屋敷九段が「羽生王位の封じ手となります」と告げる。羽生はすぐには封じない。封じ手の定刻を過ぎると次の手を指すことはできないが、残り時間を使って考えるのは対局者の自由だ。18時5分、羽生が「封じます」と盤側に声をかけた。羽生は封じ手の用紙と封筒を手にして外に出ていく。封じ手に使った時間は8分、1日目の消費時間は▲羽生4時間38分、△菅井2時間55分。しばらくして羽生が対局室に戻り、菅井に2通の封筒を差し出す。菅井が署名を入れて羽生に返し、最後に羽生が封筒を屋敷九段に預けて1日目が終了した。2日目は明日9日の9時から指し継がれる。立会人の封じ手予想は、屋敷九段が▲2四歩、広瀬八段が▲9四歩。 * *【封じ手の様子】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-bfc0.html 67 9四歩(95) ( 8:00/04:38:00) *9日、2日目の朝を迎えた。菅井は8時23分に入室。1日目と同様に記録係から布を借り、駒台と盤を丁寧に拭く。羽生は8時51分に入室した。羽生が駒箱を開け、2人が駒を並べていく。8時56分、1日目の指し手再現が始まった。齋藤三段が棋譜を読み上げ、両対局者が手を進めていく。9時4分、菅井が△5二金を指すと、屋敷九段が「封じ手を開封します」と立ち上がった。封じ手用紙を広げた屋敷九段は、「封じ手は▲9四歩です」と読み上げた。 *羽生が選んだのは端攻めを逆用する突き出し。先手にとって怖いのは△4二桂だが、これは▲2四歩△同歩▲9三歩成△同香▲同香成△同玉▲2三香と進めて切り返しが利く。 * *【2日目朝の対局室(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-5202.html * *【2日目朝の対局室(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-0ff8.html * *※局後の感想※ *「突かれて困った。▲2四歩くらいかと思っていた」と菅井。代えて▲2四歩△同歩▲2三歩△2一飛▲2四飛は歩と手番を渡すので、△7四角が気になる。「それはまずいかと思って、▲9四歩と突いた」と羽生。 68 8三銀(72) (18:00/03:13:00) *積極的な前進。展開次第では△9四銀と、棒銀の要領で端を攻めることができる。先手はここで▲9三歩成△同香▲同香成△同玉▲2四歩△同歩▲2三香と攻めてよければ話は早いが、以下△同金▲同桂成△2一飛▲3三成桂に△7六歩が気になる手。先手は2筋を突破できるが、後手も駒を蓄えて玉頭から反撃してくる。 * *※局後の感想※ *上記の順はやはり△7六歩で先手自信なし。「桂香をいっぱい持たれているので、反動がきつい」と羽生。 69 7七歩打 ( 6:00/04:44:00) *9時31分の着手。先手は玉頭のキズを消して様子を見る。△7六桂や△7六歩に備えたことで、▲9三歩成と▲2四歩を絡めた例の決戦策に出やすくなった。後手は強く反発するなら△9四銀だが、自玉が裸になるので覚悟がいる。 * *【封じ手用紙と封筒】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-685b.html * *※局後の感想※ *「少し悪い局面で、さらにいい手を指されてしまったという認識でした」と菅井。ここで△4二桂は▲2四歩△同歩▲9三歩成△同香▲同香成△同玉▲2三香△3四桂▲2二香成△同金▲2四飛で先手よし。 70 5三金(52) (19:00/03:32:00) *深謀遠慮の雰囲気漂う金上がり。飛車の活用を狙っているかもしれない。ここから▲9三歩成△同香▲同香成△同玉▲2四歩△同歩▲2三香△同金▲同桂成と進んだとき、△2一飛ではなく△7二飛で攻めに使うことができる。 *控室には昨日に続いて石田四段が訪れている。「▲2四歩△同歩▲2三歩としておきたいですね」と話す。以下△2一飛に▲2四飛と走って、次に▲2二歩成△同金▲2三桂成を狙う。10時、対局室におやつが運ばれた。羽生はやわらか杏仁豆腐、ホットコーヒー。菅井はフルーツ盛り合わせ、ホットミルクティー。検討が進み、▲9三歩成△同香▲同香成△同玉▲2四歩△同歩▲2三香△同金▲同角成△9二飛▲3三馬は有力と見られている。先手は手順中▲2三同角成で馬の活用を急ぐのがいいようだ。「先手が悪いということはないと思います」と広瀬八段。 * *【2日目午前のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-ee89.html 71 2四歩(25) (29:00/05:13:00) *10時20分、羽生の手が盤上に伸びた。 72 同 歩(23) ( 0:00/03:32:00) *菅井はすぐに歩を取る。ここで▲2三歩か、▲9三歩成か。 73 2三歩打 ( 4:00/05:17:00) *確実に一歩前進。これは▲2三香の筋に比べてすぐ駒得というわけにはいかないが、9筋に嫌みを残したまま攻めることができる点はメリットだ。 * *※局後の感想※ *羽生は「本当は成りたかった」と話した。代えて▲9三歩成は△同香▲同香成△同玉▲2三香△同金▲同角成△9二飛▲9四歩△同銀▲3三馬△7四桂がどうか。「逆に駒をさばかせてしまうかと思った」と羽生。 74 2一飛(22) ( 0:00/03:32:00) 75 2四飛(28) ( 1:00/05:18:00) *また一歩前進。次は単刀直入に▲2二歩成がある。△2二同飛は▲同飛成△同金▲4二飛や▲2三桂成、△2二同金は▲1二角成で好調な攻めが続く。直接▲2二歩成を受ける手段は難しいので後手は反発を狙いたいが、うまい手段があるかどうか。 *10時30分、菅井はおやつのフルーツを食べる。控室にはAmebaTVの中継が入り、広瀬八段と渡部女流初段が出演している。 76 4四金(53) (20:00/03:52:00) *10時47分、菅井が着手。金を使って先手の攻め駒に襲いかかる。▲2二歩成に△3四金を用意した手だが、「踏み込む手もあるかもしれません」と石田四段。以下▲3四同飛△2二飛▲2三歩△2一飛▲4五桂で、先手は角金交換の駒損でも攻めが続く。 77 1六角(34) ( 4:00/05:22:00) *羽生、少考で角を逃げた。冷静な対応なのか、それとも仕方のない撤退なのか。 * *※局後の感想※ *「本当は成って(▲2二歩成)いきたいが、駒を渡すので大変」と羽生。「本譜ははっきりしないですけど、角を残したほうがいいと思った」と振り返った。 78 2五歩打 ( 7:00/03:59:00) *歩で大駒の利きを止めた。気がつけば後手は陣形が大きく崩れている。必死の防戦という印象だ。次は△1五角の両取りがある。控室では広瀬八段と石田四段が継ぎ盤を挟み、ここで▲1三歩△同香▲2二歩成△同金▲1二歩を調べている。以下△3二桂なら、▲1一歩成△2四桂▲2一と△1六桂▲4二飛で先手よし。後手は合駒が悪いのが泣きどころだ。 79 2二歩成(23) (20:00/05:42:00) 80 同 金(32) ( 0:00/03:59:00) 81 4五桂(37) ( 0:00/05:42:00) *歩を成り捨ててからの桂跳ね。検討陣は代えて▲1三歩△同香▲1二歩を本命と見ていた。次は▲3三桂不成が厳しい狙いだ。後手はここから△4五同金▲同歩△3二桂▲5四飛△5三歩▲3四飛△4二桂と力ずくで飛車を取りにいく順はあるが、恐ろしく効率が悪いので選びにくい。 82 3二歩打 ( 5:00/04:04:00) *おとなしく先手の狙いを受けたが、▲1三歩△同香▲1二歩で「受けがわからない」と検討陣。後手は次の▲1一歩成△同飛▲2二飛成をまともに喫してはまずいが、△2三歩とは受けられない。▲1三歩△同香▲1二歩に、△4五桂▲同歩△3三角と無理やり受けるのも、▲2五飛△3四金▲2八飛△2五歩▲4三桂成△1五角▲4六銀で後手が思わしくない。 83 6五歩(66) (15:00/05:57:00) *11時41分の着手。銀を動かせば▲5三桂成と成り込んで△3二歩の逆を突くことができる。視野の広さを感じる手だ。 84 同 銀(64) ( 0:00/04:04:00) 85 5三桂成(45) ( 0:00/05:57:00) *先手の右桂が防衛線を突破した。後手は金銀4枚のうち3枚が玉から遠く離れてしまい、守りに役立っていないのがつらい。 86 9五歩打 ( 1:00/04:05:00) *「妖しい」と検討陣の声。先手から▲4三桂成や▲6三成桂が見えている中で、厳しい狙いがすぐには見えないこの手は意表を突く。後手は△9四香〜△9六歩で端を攻める狙いはあるが、先手もどこかで▲7九玉と早逃げして対応できそうだ。検討陣は▲1三歩△同香▲1二歩を有力と見ている。石田四段は「力がたまっているので」と成桂に触れる。 87 6六歩打 (32:00/06:29:00) *12時15分、羽生の手が動いた。銀を呼んで生じたキズを補修する。ただ、△7四銀引で▲6三成桂を受けられる点は一長一短だ。AbemaTVの佐藤慎五段は「▲6六歩は目に入っているけど気づかない手」と驚いている。継ぎ盤では△7四銀引▲4三桂成△同金▲同成桂△9四香▲3二成桂△2三金▲5四飛△9一飛▲5二飛成△7二桂が並び、「後手もチャンスがあるように見えます」と広瀬八段。 *対局室では菅井が両手で頭を抱えている。12時30分、菅井が14分使って昼食休憩に入った。消費時間は▲羽生6時間29分、△菅井4時間19分。昼食の注文は羽生がビーフカレー、オレンジジュース。菅井が北海道産黒米うどん(冷)、生寿司(なまずし)、オレンジジュース。対局は13時30分に再開される。 * *【2日目昼食休憩】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-7583.html 88 9四香(91) (14:00/04:19:00) *13時30分、対局再開。菅井はすぐに指すと、席を立った。銀を逃げない勝負手だ。 * *【2日目、昼食休憩明け】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-0ce4.html * *※局後の感想※ *代えて△7四銀引とするのだった。以下▲4三桂成△同金▲同成桂△9四香▲3二成桂△2三金▲4四飛△9一飛▲4二飛成△7二桂▲3三成桂△9六歩▲同香△同香▲7九玉で「まだまだ先が長い。長期戦になる可能性もあるかと思って指していた」と羽生。菅井は「局面は悪いですけど、このほうが駒が働くのでよかったですね」と話した。 89 6五歩(66) ( 1:00/06:30:00) 90 9六歩(95) ( 0:00/04:19:00) *命懸けの端攻めだ。「勝負しにいきましたね」と屋敷九段。 91 同 香(97) ( 4:00/06:34:00) 92 同 香(94) ( 0:00/04:19:00) 93 9七歩打 ( 0:00/06:34:00) *大事な受け。先手は△9七角と打たれてはたまらない。手番が回ってくれば▲6三成桂が大きな手だ。金が質駒になっているので、必要なときは▲2二飛成や▲4四飛ですぐ調達できる。 94 同 香成(96) ( 8:00/04:27:00) 95 同 玉(88) ( 0:00/06:34:00) 96 9六歩打 ( 1:00/04:28:00) 97 8八玉(97) ( 0:00/06:34:00) 98 9七角打 ( 0:00/04:28:00) *13時48分、菅井はすぐに角を打った。対局再開からパタパタと進んでいる。 99 8九玉(88) ( 0:00/06:34:00) 100 8六角成(97) ( 0:00/04:28:00) *上部開拓。後手は先手玉を攻めながら、上に逃げたときの安全を確保できればうまい。狙いは△9七歩成や△7六歩。と金ができれば先手玉を押さえながら、上部脱出を助ける大きな戦力になる。「後手は粘りにいっている感じです」と石田四段。広瀬八段は「先手も焦る展開かもしれません」と話す。先手は方針を決めたい場面だ。最強の駒を目標にするのは有力策で、▲8八香△9五馬▲8六銀と馬を攻めるのはどうか。 101 8八香打 (15:00/06:49:00) *玉頭戦で優位に立つと、自玉の安全を確保しながら敵玉を追い込むことにつながる。玉頭戦を制する者は勝負を制す。 102 9五馬(86) ( 0:00/04:28:00) 103 8六銀打 ( 0:00/06:49:00) *駒を増やすのが玉頭戦のコツ。後手は△9四馬と逃げるのでは、▲9五歩とがっちり押さえられて上部脱出の望みが消える。控室では△8六同馬▲同香△9七歩成で勝負する順を調べている。 * *【石山緑地(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-46f2.html * *【石山緑地(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-a69d.html * *【石山緑地(3)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-0228.html 104 同 馬(95) ( 5:00/04:33:00) 105 同 香(88) ( 0:00/06:49:00) 106 9七歩成(96) ( 0:00/04:33:00) *馬を切ってでも、先手玉に嫌みを残すことが重要だ。しかし控室の検討では、ここから▲6三成桂△8七桂▲9八歩で後手が思わしくない。 107 7九玉(89) ( 0:00/06:49:00) *羽生の選択は早逃げ。5筋方面に逃げれば、右の金銀が守り駒として働いてくる。 108 9三玉(82) ( 0:00/04:33:00) *菅井はすぐに玉を上がる。いよいよ上部脱出が始まった。先手は上に逃がさないように迫りたいが、持ち駒の少なさ、と金の存在が気がかりだ。うまく盤上の駒を活用したい。「ちょっと嫌な形ですか」と屋敷九段。継ぎ盤では▲6二角△8一香▲4三桂成△同金▲同成桂が並び、後手を持つ広瀬八段が「やっぱりきついです」。 109 9五歩打 (16:00/07:05:00) *後手玉の逃走路にフタをした。 110 7四桂打 ( 2:00/04:35:00) 111 2二飛成(24) ( 2:00/07:07:00) *14時34分の着手。バッサリ飛車を切った。金の入手もそうだが、△2二同飛と呼ぶことで、後手の飛車の横利きが消える効果も大きい。 * *※局後の感想※ *「香を取られちゃうと大変なので、ここでいけるかどうか」(羽生) 112 同 飛(21) ( 0:00/04:35:00) 113 7三金打 ( 0:00/07:07:00) *ペタッと貼りつく。▲7一角以下の詰めろ。 114 8二銀打 ( 1:00/04:36:00) *金に当てつつ受ける。先手はあとひと押しがほしい。 115 8三金(73) ( 1:00/07:08:00) 116 同 銀(82) ( 0:00/04:36:00) 117 7一角打 ( 0:00/07:08:00) 118 8二香打 ( 0:00/04:36:00) 119 7三銀打 ( 0:00/07:08:00) *着実に後手玉に迫っていく。▲8二角成までの詰めろで、△8一金と受けても▲8二角成△同金▲9四香△同銀▲8四銀成からの寄せがある。 120 8一金打 ( 0:00/04:36:00) 121 8二角成(71) ( 0:00/07:08:00) *羽生はそっと香を取った。 122 同 金(81) ( 0:00/04:36:00) 123 9四香打 ( 0:00/07:08:00) 124 同 銀(83) ( 0:00/04:36:00) 125 8四銀成(73) ( 0:00/07:08:00) 126 9二玉(93) ( 0:00/04:36:00) 127 9四歩(95) ( 0:00/07:08:00) *次に▲8三銀だけでなく▲9三銀から数で迫れる。後手玉は受けなしだ。 128 8六桂(74) ( 0:00/04:36:00) 129 9三銀打 ( 0:00/07:08:00) 130 9一玉(92) ( 0:00/04:36:00) 131 8二銀成(93) ( 0:00/07:08:00) 132 同 玉(91) ( 0:00/04:36:00) 133 9三歩成(94) ( 0:00/07:08:00) 134 7一玉(82) ( 0:00/04:36:00) *ここで▲6二金は△8一玉▲8二歩△9一玉で打ち歩詰めの形。ここは▲8二とと捨てるのが打ち歩打開の好手で、△同玉に▲7三金△8一玉▲8二歩△9一玉▲9二歩から、ぴったりの詰みだ。 135 8二と(93) ( 0:00/07:08:00) *打ち歩詰めを打開するために、あえて盤上の戦力を減らす。詰将棋のような手順だ。 136 同 玉(71) ( 0:00/04:36:00) 137 7三金打 ( 0:00/07:08:00) *この手を見てからしばらくして、菅井が投了した。後手玉は△8一玉▲8二歩△9一玉▲9二歩△同玉▲8三成銀△9一玉▲8一歩成△同玉▲8二金までの詰み。終局時刻は14時50分。消費時間は▲羽生7時間8分、△菅井4時間36分。羽生が制勝でシリーズ成績を1勝2敗とした。第4局は8月22・23日(火・水)、兵庫県淡路市「ウェスティンホテル淡路」で行われる。 * *【終局直後】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-bb10.html * *【感想戦】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-10da.html * *【大盤解説会場に】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/08/post-e4fe.html * *※局後の感想※ *羽生の▲6七角(31手目)が奏功し、リードを保っての完勝となった。後手は△3三桂(24手目)が隙を作った可能性がある。感想戦は15時32分ごろに終了。その後、両対局者は大盤解説会場に移動し、一局を振り返っての感想と第4局に向けての意気込みを語った。 *「歩得がどう生きるかずっと判断がつきかねる将棋で、一手一手が難しかった。第4局以降もコンディションを整えて臨めれば」(羽生) *「1日目から苦しくなってしまったと思った。△3三桂(24手目)と跳ねるところでもう少し考えないといけなかった。一局一局頑張っていきたい」(菅井) *両対局者はここで退場する予定だったが、菅井が会場に残って反省をしたいと話すと、外に出ていた羽生は「じゃあ私も」。急遽、大盤を使って感想戦が行われることになった。 138 投了 ( 0:00/04:36:00) まで137手で先手の勝ち