# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.05 棋譜ファイル --- 対局ID:6425 記録ID:5955e683a635a10004af7d7a 開始日時:2017/07/05 09:00 終了日時:2017/07/06 18:10 表題:王位戦 棋戦:第58期王位戦七番勝負 第1局 戦型:角交換型振り飛車 持ち時間:各8時間 消費時間:144▲479△405 場所:三重・湯の山温泉 湯元 グリーンホテル 備考:昼休前26手目26分\n2日目昼休前70手目14分\n封じ手時刻:18:00<40手目>\n 図:投了 振り駒:4,0,羽 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:30〜13:30 昼休前消費時間:26手26分 手合割:平手   先手:羽生善治王位 後手:菅井竜也七段 先手省略名:羽生 後手省略名:菅井 手数----指手---------消費時間-- *第58期王位戦七番勝負がいよいよ開幕する。7連覇を目指す羽生善治王位に挑戦するのは、タイトル戦の初陣となる菅井竜也七段。第1局は2017年7月5日(水)から6日(木)にかけて、三重県三重郡菰野町の「湯の山温泉 湯元 グリーンホテル」で行われる。対局開始は9時。12時30分から13時30分が昼食休憩。持ち時間は各8時間。1日目の18時を過ぎた時点で手番の棋士が封じ手を行い、2日目9時に再開する。本局の立会人は石田和雄九段、副立会人は杉本昌隆七段、記録係は石川優太三段(森信雄七段門下)、現地大盤解説会は解説を杉本昌七段、聞き手を甲斐智美女流五段がそれぞれ務める。先後は振り駒で決定する。 *5日朝は曇り空。雨は次第に上がっていく。気温は27度まで上がるようだ。8時25分、初々しい紺の羽織をまとった菅井が早くも入室した。布を借りて丁寧に盤を拭く。対局室には早々に入室する菅井のいつもの所作だ。囲碁ではよく見られる光景らしいが、関係者から将棋のタイトル戦では初めてのことかもしれないとの声が上がった。羽生は8時51分の入室。一斉にカメラのシャッター音が鳴る。8時53分に両者が一礼を交わし、羽生が駒箱に手をかけた。8時54分、羽生が玉(王将)を定位置に据え、時間をかけて位置を整えると、それが終わるのを待って菅井が玉に手を伸ばす。羽生は菅井の手が駒から離れないうちに手を伸ばし、金を手にして玉の横に並べていく。 *石川三段が白布を広げ、羽生の陣の3〜7筋の歩を手に取る。先後を決める振り駒だ。合わせた両の手のひらの中でよく振り、白布の上に5枚の歩を散らす。振り駒の結果、歩が4枚出て羽生の先手になった。 * *【第58期王位戦七番勝負開幕】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/58-18a8.html *【対局1日目】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-4ea0.html *【開始前の様子(4)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-a447.html * *(棋譜・コメント入力=飛龍) *[棋譜表示の*はコメントつきの指し手。#は局後の感想が追記された指し手] *【】内は中継ブログタイトルならびにリンク 1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *9時になり、対局開始。着手までに1分近い間を置き、羽生は▲7六歩と角道を開ける。着手の際にも撮影に配慮してだろう。ゆったりと時間をかけた。 2 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *菅井のタイトル戦、初の着手は△3四歩。角道を開ける。しばらくして報道陣や関係者が退室していく。王位戦七番勝負は今期からAbemaTVの将棋チャンネルで中継される。1日目の放送については以下のとおりで、すでに放送は開始された。今後の放送予定は下記、番組表のリンクから確認できる。 * *7月5日(水)8時30分〜19時 *解説:伊藤真吾五段、今泉健司四段 *聞き手:室谷由紀女流二段、貞升南女流初段 * *【将棋チャンネルの番組表】 *https://abema.tv/timetable/channels/shogi *【第58期王位戦七番勝負第1局1日目】 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/9vxpQ8ezAAqY1u *【AbemaTV(1日目)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/abematv-6b55.html 3 9六歩(97) ( 5:00/00:05:00) *◆羽生 善治(はぶ よしはる)王位(王座・棋聖)◆ *1970年9月27日生まれの46歳、埼玉県所沢市出身。(故)二上達也九段門下。1985年、四段。1994年、九段。棋士番号は175。 *タイトル戦登場は131回。獲得は竜王6期、名人9期(十九世名人)、王位18期(永世王位)、王座24期(名誉王座)、棋王13期(永世棋王)、王将12期(永世王将)、棋聖15期(永世棋聖)の計97期。棋戦優勝は44回。 * *5分使い、▲9六歩と端歩を突いた。相振り飛車を含みにした打診だ。日本将棋連盟常務理事として現地を訪れている脇謙二八段と、甲斐女流五段は羽生の3手目▲9六歩は珍しいと声をそろえる。実際、羽生が先手でこの局面に進めたのは初めてだ。 * *【対局開始】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-75cb.html *【羽生善治王位】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-da7e.html * *※局後の感想※ *羽生「ちょっと変わったことをやろうと思っていました」 *本譜は「普通の将棋」になったという。 4 9四歩(93) ( 4:00/00:04:00) *◆菅井 竜也(すがい たつや)七段◆ *1992年4月17日生まれの25歳、岡山県岡山市出身。井上慶太九段門下。2010年、四段。2015年、七段。棋士番号は278。 *タイトル戦登場は1回、棋戦優勝は2回。 * *4分の少考で△9四歩と受けた。どのような戦型に進めていくのか、序盤から駆け引きが始まっている。対局室カメラの調子が悪いようだ。盤面はやぐらを組んだ天井カメラで撮影されており、着手の様子はリアルタイムで分かる。控室では脇八段、甲斐女流五段に杉本昌七段が加わり、序盤の形からさまざまな方面に話題が及ぶ。 *「▲2六歩から相居飛車になると端の突き合いは……?」(甲斐女流五段) *「矢倉になると棒銀ができるようになりますね」(脇八段) *石田和九段が控室に戻ってきた。「どうですか」のあと、局面を見て「まだ」とポツリ。4手しか進んでいない局面で羽生が手を止めている。 * *【菅井竜也七段】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-d470.html 5 2六歩(27) (18:00/00:23:00) *羽生の本年度成績は5勝2敗(0.714)。連勝ランキング16位タイ。 *通算成績は1371勝545敗(0.716)。 * *18分の考慮で2筋の歩を突いた。居飛車で戦う意向を固めたのか。関係者が対局室に入って調べたところ、対局室カメラは昼食休憩中に復旧させるようだ。 * *■AbemaTV■ *室谷由紀女流二段>先ほど伊藤先生(真吾五段)と次の一手を予想していたのですが、私は▲6六歩、伊藤先生は▲7五歩でした。 *今泉健司四段>僕もひょっとして▲7五歩ではないかなと思っていました。 6 5四歩(53) (11:00/00:15:00) *菅井の本年度成績は10勝3敗(0.769)。対局数ランキング2位タイ、勝数ランキング2位タイ、勝率ランキング16位タイ、連勝ランキング4位タイ。 *通算成績は242勝89敗(0.731)。 * *【開始前の様子(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-a137.html *【開始前の様子(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-004b.html *【開始前の様子(3)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-8b2d.html 7 2五歩(26) ( 2:00/00:25:00) *対戦成績は1勝1敗。王位戦で顔を合わせるのは初となる。直近の対戦は2012年2月の第5回朝日杯将棋オープン戦の準決勝だ。これまでの2戦は持ち時間が各40分以下の比較的短時間の将棋であり、菅井は事前のインタビューで初手合いに近い状況だと述べている。 * *【過去の羽生−菅井戦】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-fc53.html *【将棋世界】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-689b.html 8 3二飛(82) ( 1:00/00:16:00) *三間飛車に振った。この局面は10万局以上に及ぶデータベース上の前例から離れている。 *「△3二飛自体が珍しいですよね。それに端歩が入っているから」(杉本昌七段) *9筋の突き合いのない類例は4局。今年3月の初出から、後手番で菅井が3局指していた。▲2二角成〜▲5三角がパッと見えるが、「それは先手が指しにくい」と脇八段。 *「▲2二角成△同銀▲5三角に△3五歩で、放置すると△4二角がありますので▲8六角成か▲9七角成。以下、△3六歩▲同歩△5五角▲8八銀△2八角成▲同銀△3六飛で、そこで▲5三馬と突っ込むと△3八飛打があります。こう進めば1日目で終わってしまう将棋ですね」(脇八段) *10時を回り、関係者によると対局室に午前のおやつが運ばれた。羽生は草もちとホットレモンティー、菅井はフルーツ盛り合わせ(メロン、パイナップル)とアイスコーヒー。 * *【三間飛車】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-49a3.html *【1日目午前のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-62f1.html * *※局後の感想※ *菅井「三間飛車は初めから予定でした」 9 6八玉(59) (18:00/00:43:00) *10時過ぎ、▲6八玉までの消費時間は▲羽生43分、△菅井16分。 *王位戦は新聞三社連合(北海道新聞・東京新聞・中日新聞・神戸新聞・徳島新聞・西日本新聞)の主催で、七番勝負は各局持ち回りで主催紙が異なる。今期の幕開けとなる本局の主催は中日新聞社だ。観戦記は内田晶さんが担当する。 * *【新聞三社連合の概要】 *http://live.shogi.or.jp/oui/sansha.html 10 8八角成(22) ( 2:00/00:18:00) *△8八角成と角を換えた。こうなると穏やかな進行が予想され、駒組みに移りそうだ。前例はなく、9筋の端歩を突いていない類例は菅井が後手の3局に絞られている。今期の挑戦者決定リーグ白組で5月に丸山忠久九段、渡辺明竜王を相手に立て続けに採用して勝った形だ。 * *【第58期王位戦挑戦者決定リーグ白組5回戦 千日手指し直し局▲渡辺明竜王−△菅井戦】 *http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/58/oui201705220102.html 11 同 銀(79) ( 0:00/00:43:00) *羽生は居飛車を主戦場としながらも、何でも指しこなす。相手からすれば穴を見つけにくい。過去の菅井との2戦では2局とも菅井のゴキゲン中飛車を居飛車で迎え撃っている。 12 4二銀(31) ( 0:00/00:18:00) *10時10分、脇八段が現地をあとにした。 *菅井は振り飛車党から何でも指すようになっている。居飛車も振り飛車も指せるほうが得だという考え方を持つ。昨日の前夜祭では、杉本昌七段は菅井の将棋を「盤面全体で、たたき潰すみたいな感じ」と表現した。 * *【前夜祭(6)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-249a.html 13 7八玉(68) ( 8:00/00:51:00) *前期王位戦七番勝負の後、この一年のタイトル戦を見ると糸谷哲郎八段、久保利明九段(当時。王将奪取)、千田翔太六段、稲葉陽八段、斎藤慎太郎七段、菅井の順に、関西本部所属の棋士が続々と番勝負に登場している。7棋戦中、6棋戦だ。菅井も含め、千田六段以降は皆初挑戦だった。菅井と同じく岡山県出身の棋士のタイトル戦に登場するのは、1990年に対局が行われた第15期棋王戦の(故)大山康晴十五世名人以来、27年ぶりとなる。 14 2二飛(32) ( 4:00/00:22:00) *向かい飛車に振り直す。菅井は類型でも指しており、通い慣れた道といえようか。現局面で前述の▲渡辺明−△菅井戦など、2局の菅井の実戦例に合流した。 15 4八銀(39) ( 5:00/00:56:00) *三重県出身の棋士には小林宏七段(度会郡玉城町)と、今期、菅井と挑戦者決定戦を戦った澤田真吾六段(鈴鹿市)がいる。前夜祭では、澤田六段に言及する挨拶も聞かれた。記録係の石川三段も三重県の出身、在住で澤田六段の弟弟子だ。 * *【前夜祭(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-8f9f.html 16 6二玉(51) ( 9:00/00:31:00) *菰野町は三重県の北部に位置し、東と南は四日市市、北はいなべ市(旧員弁郡大安町)、西は鈴鹿山脈を県境として滋賀県に接している。北緯は県の東側に入り込む伊勢湾の北端に近く、西に目を向ければ町役場は京都市役所の緯度に近い。人口は4万人あまり。町のホームページからは年々緩やかに人口が増加し、この30年弱で9千人近く増えていることが読み取れる。地元の食材としてはイネ科の多年草であるマコモ(真菰)が挙げられ、菰野町はマコモが原野に多く生えていたことからついた名だという。 * *【三重県菰野町公式ホームページ】 *http://www2.town.komono.mie.jp/ 17 4六歩(47) ( 8:00/01:04:00) *湯の山温泉は鹿が湯に浸かって傷を治したところから、別名「鹿の湯」ともいわれ、養老2年(718年)に発見されたと伝わる。栄枯盛衰を繰り返すも、1959年の御在所ロープウエイ開通が人気の追い風になった。標高1212メートルの御在所岳(御在所山)の麓に位置し、関西の奥座敷とも呼ばれる。泉質はアルカリ性ラジウム泉だ。冬は菰野町内、山頂付近にある御在所スキー場の客も温泉入浴を楽しむ。対局場のグリーンホテルは2つの源泉から湯を引き、かけ流しで提供している。 * *【湯の山温泉 グリーンホテル】 *http://www.green-hotel.jp/ *【前夜祭(4)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-8889.html *【湯の山温泉グリーンホテル】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-8897.html 18 7二玉(62) ( 6:00/00:37:00) *両対局者は昨日、御在所ロープウエイ近くの見晴らしのよい場所で記念撮影が予定されたが、天候に恵まれず、ホテルの庭園での撮影となった。その後、検分、揮毫と進む。検分ではふたりとも着座するも、立会人の石田和九段を待つ時間があった。その間はさながら対局直前のような、緊張感の高まる空気が流れたかもしれない。 * *【グリーンホテル到着】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-2073.html *【検分(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-a556.html *【検分(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-bd89.html *【検分(3)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-202b.html 19 4七銀(48) ( 5:00/01:09:00) *11時頃、▲4七銀までの消費時間は▲羽生1時間9分、△菅井37分。 *▲4八銀〜▲4六歩〜▲4七銀と、右銀を手早く4七から使うのが羽生の構想だった。15手目▲4八銀で再び前例を離れている。次の△6二玉の局面は、9筋の突き合いのない類型を含めても前例がない。ただし、そうした局面で後手の手番のものは合わせて10局あまりある。本局は△3二飛〜△2二飛で後手が手損している勘定だ。杉本昌七段は、手損のない形なら先手が面白くない変化だという。 *「本譜は1手損しても、この形に持ち込めたというのが菅井さんの主張でしょうね」(杉本昌七段) * *【揮毫(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-face.html *【揮毫(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-cf27.html 20 8二玉(72) (12:00/00:49:00) *【角交換】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-7532.html 21 5八金(49) (10:00/01:19:00) *【前夜祭(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-b995.html *【前夜祭(3)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-5d4f.html *【前夜祭(5)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-4d49.html 22 7二銀(71) ( 2:00/00:51:00) *前手、▲5八金右の局面で1局の前例に合流した。菅井が後手で四間飛車から向かい飛車に振り直したものだ。さらに現局面は4局の将棋と合流し、前例は5局に増えた。結果は▲1勝、△3勝(1千日手)。 23 7七銀(88) ( 5:00/01:24:00) *継ぎ盤を挟む杉本昌七段と甲斐女流五段は、先手は矢倉に組むよりも▲7五歩と位を取りたいと見ている。羽生は対振り飛車の玉頭位取りを嫌う傾向があるが、後手の左銀が4二にいると7筋の歩を伸ばしやすい。 24 5三銀(42) (15:00/01:06:00) *「△5三銀なら▲7五歩はないですね」(杉本昌七段) *いつでも△6四銀があり、7筋に伸ばした歩が負担になりそうだ。現局面、前例6局はすべて▲8八玉が指されている。石田和九段は筋違い角を打って3四の歩を狙いたいという。 *「4一の金が玉のほうにいけば弱いところを狙いますからね」(石田和九段) *▲8八玉〜▲7八金で玉形を整え、▲3六歩で△3五歩を防ぎ、▲6六歩と懐を広げてから5六か6七に角を据える構想を披露した。 25 8八玉(78) (20:00/01:44:00) *本日は大盤解説会がなく、昼食休憩を前に控室はのんびりムードだ。現地大盤解説会は明日のみ、14時から行われる。AbemaTVでは、伊藤真五段が次の手は△7四歩から囲いを整備する順を本命としながら、いくつか選択肢を示した。予想は当たるのかどうか。 *この局面で定刻の12時30分になり、昼食休憩に入った。▲8八玉に対して菅井が使った時間は26分。ここまでの消費時間は▲羽生1時間44分、△菅井1時間32分。昼食は羽生がカレーライス(サラダつき)、菅井が天ぷらそば。対局は13時30分から再開される。昼食休憩に入り、対局室カメラの整備がなされた。 *昼食休憩を挟んで早めに入室した菅井は、和服を白系の夏物に替えている。朝から冬仕立てで暑いものを着ていたのには理由があった。初となるタイトル戦の対局で、地元の後援会「竜棋会」から送られた和服を着て臨みたいとの思いがあったのだ。竜棋会の方々が特別に対局室に入り、再開の様子を見守る。 *13時30分になり、対局再開。定刻を少し過ぎてから羽生が戻ってきた。観戦記者の内田さんによると、羽生は着座の際に少し動きを止めたそうだ。菅井は腕を組んで考え続ける。AbemaTVの今泉四段は、菅井はしばらく指さないだろうと予想した。 * *■AbemaTV■ *伊藤真吾五段>次の手は△7四歩か△6四銀か△3三桂か△8四歩。これだけ言えば、どれか当たると思います。 * *【1日目昼食休憩】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-70fe.html *【1日目の昼食】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-bc1d.html *【昼食休憩時の対局室】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-e82f.html *【1日目、対局再開】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-95d4.html *【和服】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-8aac.html 26 8四歩(83) (35:00/01:41:00) *再開から10分近くして、菅井は玉頭に△8四歩と突いた。伊藤真五段の予想もカバーした手だ。前例では△3三桂が半数以上の多数派だったが、△8四歩も指されている。2013年12月の第62期王座戦一次予選▲村中秀史六段−△宮田敦史六段戦で、以下▲7八金△8三銀▲6八金右△7二金▲9八香の進行。先手の穴熊、後手の片銀冠となった。結果は164手で後手の勝ち。あぐらに崩した羽生は記録係から棋譜を受け取って目を通す。扇子をあおいで盤上に視線を注ぐ。杉本昌七段と甲斐女流五段は、継ぎ盤を挟んで検討を進める。▲6六角△4四銀▲8四角は△8三銀▲7五角△7四歩▲8六角に△6二金(△4二金は▲2四歩△同歩▲2三歩で後手危険)があり、先手の角の位置がよくない。 27 5六銀(47) (25:00/02:09:00) *14時過ぎ、▲5六銀までの消費時間は▲羽生2時間9分、△菅井1時間41分。 *25分の考慮で▲5六銀と腰掛ける。金の締まっていない玉形に不安は残るが、銀の進出を優先した。この局面は前例がなく、9筋の突き合いのない類例もない。 28 3三桂(21) ( 1:00/01:42:00) *1分の少考で△3三桂と跳ね、▲4五銀を防ぐ。着手の直前、菅井は棋譜を手に取って目を通していた。継ぎ盤ではこの局面でも▲6六角〜▲8四角の進行を調べている。銀が5六にいれば、6六角の形に不安が少ない。 29 6六角打 (15:00/02:24:00) *15分の考慮で▲6六角を決行。8四の歩を取り、▲8六歩から玉頭にじっくりと圧力をかける展開になれば先手が、手持ちの角を生かして動いていくことができれば後手がよくなるだろうと見られている。 * *※局後の感想※ *羽生「銀冠に組まれるとつまらないと思いました」 *代えて▲7五歩は△6四銀▲6六歩△2一飛が並べられ、どうなるかよく分からない将棋だという。 30 3二金(41) ( 1:00/01:43:00) 31 8四角(66) ( 3:00/02:27:00) *石田和九段が控室に戻った。進行を確認する。菅井の△8四歩にも感心した様子だったが、羽生の構想にも驚く。 *「面白いやり方だけど、(8四に)歩を突いたのをとがめにいったんですね。1歩取りましたけど、生角ですからね。うーん」(石田和九段) * *※局後の感想※ *代えて▲3六歩は△4四歩(△4四銀は▲8四角)▲3七桂△4三金▲4八飛△4二飛の順が考えられる。 *羽生「少し単調ですかね。本譜は歩得ですが、角がどれくらい使えるかの将棋です」 32 6四銀(53) ( 1:00/01:44:00) *△6四銀と上がり、△5五歩を見せる。先手は角を追われる展開は避けたい。 *15時になり、両対局者に午後のおやつが出された。羽生はつぶあんのどら焼きとホットコーヒー、菅井はフルーツ盛り合わせ(オレンジ、キウイ)とアイスコーヒー。羽生が30分ほど考えている。現局面までの消費時間は▲羽生2時間27分、△菅井1時間44分。 * *【1日目午後のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-59ae.html 33 3六歩(37) (43:00/03:10:00) *43分の長考で3筋の歩を突いた。単刀直入に桂頭を狙っていく。放置すれば▲3五歩△同歩▲3四歩の攻めがある。石田和九段と杉本昌七段が検討していたのは△5五歩▲4七銀△4四歩▲3五歩△4三金▲3四歩△同金▲3八飛△3五歩▲3六歩の変化。そこから先は分岐が多く、一例となるが、△4五歩▲3五歩△4六歩▲3四歩△4七歩成の一直線の進行は後手が指せそうだ。以下、(1)▲4七同金は△7四角▲4八飛△4二飛、(2)▲3三歩成は△3八と▲2二と△4九飛▲6八金寄△4七角▲7八金上△4八との順がそれぞれ考えられる。菅井は口元に手を当てながら側面を向いて考え、羽生は扇子をあおぐ。 * *【桂頭狙い】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-a759.html 34 5五歩(54) (46:00/02:30:00) *46分の長考で、銀取りに△5五歩と突いた。AbemaTVで今泉四段が1時間は考えると言った矢先の着手だ。 * *※局後の感想※ *代えて△6二角は▲6六角△2一飛▲3七桂△5一飛▲2四歩△同歩▲同飛△5五歩▲4七銀△2三歩▲3四飛の順が一例で、後手自信なし。 35 4七銀(56) ( 0:00/03:10:00) 36 6二角打 ( 0:00/02:30:00) *6二に角を放つ。▲3五歩に△同角を用意し、桂頭を守っている。一方的に手持ちだった角を手放すだけに、決断の一手だ。 *16時頃、△6二角までの消費時間は▲羽生3時間10分、△菅井2時間30分。 *「変な将棋だねえ。菅井君の将棋は独特だね、しかし」(石田和九段) * *【封じ手用の封筒】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-5a26.html * *※局後の感想※ *▲8六歩から歩切れの玉頭を狙うのは、羽生は「2筋を逆襲される」という。 37 6八金(58) (16:00/03:26:00) *16分考え、6八に金を寄った。懸念だったバラバラの玉形を引き締める。 * *※局後の感想※ *△6五銀は▲5六歩△同銀▲同銀△同歩▲5四歩△6五銀▲5八飛。後手は2二の飛車が使いづらい。 *菅井「味が悪いですね」 *羽生「いやあ、よく分からないですね」 38 2一飛(22) ( 5:00/02:35:00) *飛車を引き、可動域を広げた。5筋の位を生かして中飛車に構える狙いが見える。 *「△5一飛を用意して▲5六歩に対応しやすくしたのだと思います」(甲斐女流五段) 39 5六歩(57) ( 4:00/03:30:00) *構わず5筋の歩を突いた。角を3九まで引けるようにし、狭さを解消する。石田和九段、杉本昌七段、甲斐女流五段らの継ぎ盤では、△5六同歩▲同銀△2四歩に▲3八飛が挙がった。以下、△2五歩なら▲3五歩△同角▲同飛△同歩▲3四歩と攻めて先手が指せる。飛車を渡すが、直前の▲6八金寄が駒の連結をよくして生きる変化だ。 *17時になり、封じ手の定刻まで1時間を切った。▲5六歩までの消費時間は▲羽生3時間30分、△菅井2時間35分。菅井は30分あまり考えている。伊藤真五段は、まずは△5六同歩と応じるだろうと予想した。放置すると先手からの▲5五歩が大きいという。菅井が考えているのを見て、このまま封じ手に入る可能性にも触れた。解説者が交代し、今泉四段は△5一飛も候補に挙げる。ちょうどそのとき、控室でも石田和九段が△5一飛の可能性に言及した。一方の先手は、▲3九角や▲7八金上など指したい手がパッと見え、方針が分かりやすい。 *18時を回り、菅井は間もなく次の手を封じる意思を示した。封じ手に費やした時間は1時間32分。1日目の消費時間は▲羽生3時間30分、△菅井4時間7分。対局は明日の9時から指し継がれる。 *明けて2日目。現地は晴れの天気に恵まれた。菅井は1日目にも増して早く、8時20分に入室している。副立会人の杉本昌七段以下、関係者は見越してすでに対局室で待機していた。羽生は8時52分に入室。着座して一礼の後、8時54分に駒箱を開けて駒袋から駒を取り出し、盤上に散らす。駒を初形に並べたあとは記録係の読み上げに従い、互いに1日目の指し手を再現していく。その間に9時を過ぎそうだ。 * *■AbemaTV■ *今泉健司四段>ここは菅井七段の指し手が悩ましいです。 *貞升南女流初段>△5六同歩の一手ではないのですか。 *今泉健司四段>△5一飛も考えられます。以下、▲5八飛△5六歩▲同銀の局面は、現局面から△5六同歩▲同銀△5一飛▲5八飛と同じですが、後手の指し手がかなり難しいです。 * *【決断の角打ち】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-5bd8.html *【長考】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-7ec1.html *【菅井七段が40手目を封じる】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/40-7d1a.html *【封じ手の様子(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-9bc5.html *【封じ手の様子(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-7cd2.html 40 同 歩(55) (92:00/04:07:00) *9時4分、封じ手が開封された。菅井の指し手は△5六同歩。2日目の戦いが始まる。△5六同歩は予想される本命ともいえる自然な手だ。9時7分頃、両者は窓のほうにしばらく視線を向けていたが、やがて盤に向き直る。 * *【対局2日目】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-f98b.html *【封じ手は△5六同歩】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-ef23.html *【2日目開始まで(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-e4df.html *【2日目開始まで(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-22b1.html *【2日目開始まで(3)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-bb6a.html 41 同 銀(47) ( 5:00/03:35:00) *5分の少考で、自然に▲5六同銀と応じた。本日は昨日に引き続き、AbemaTVで動画中継されている。2日目の放送については以下のとおり。 * *7月6日(木)8時30分〜22時 *解説:金井恒太六段、石田直裕四段 *聞き手:藤田綾女流二段、飯野愛女流1級 * *【第58期王位戦七番勝負第1局2日目】 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/AXjmJvxtmR5aVd *【AbemaTV(2日目)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/abematv-5191.html * *※局後の感想※ *菅井が長考で前手△5六同歩を封じたのは、この局面でどう指すかを考えていたからだった。△2四歩▲同歩△2六歩と2筋を逆襲するのは、▲5八飛△2四飛▲5五銀で先手好調。羽生はこの変化に備えて37手目▲6八金寄とし、▲5八飛を作っている。 42 5一飛(21) ( 1:00/04:08:00) *石田和九段、杉本昌七段、甲斐女流五段は控室に戻ると、さっそく継ぎ盤を囲む。杉本昌七段は▲5八飛△2四歩▲4七銀の順を一例に挙げた。以下、△5八飛成なら▲同銀と引き締める味がいい。その順は後手として踏み込みづらいという。 43 5八飛(28) ( 7:00/03:42:00) *本日、2日目は対局場のある湯の山温泉湯元グリーンホテル1階宴会場「たかの間」で現地大盤解説会が行われる。13時開場、14時開演。途中、休憩を挟んで終局まで。解説は杉本昌七段、聞き手は甲斐女流五段だ。 * *【第58期王位戦イベント情報】 *https://www.shogi.or.jp/event/2017/06/58_9.html#58-01 *【現地大盤解説会のお知らせ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-403b.html 44 5五歩打 ( 0:00/04:08:00) *昨日のAbemaTVで今泉四段が後手の指し手が難しいと挙げていた局面だったが、ノータイムで△5五歩と押さえた。封じ手を挟んでじっくり考えた結論だろう。飛車交換になりにくくしている。 * *※局後の感想※ *菅井「(△5五歩は)打ちますよね?」 *羽生「ええ、打たれるかと」 45 4七銀(56) ( 0:00/03:42:00) 46 8三銀(72) ( 0:00/04:08:00) *パタパタと指し手が進む。角を追い、手順に銀冠に組み替えるようだ。ゆっくりした流れになれば先手の歩得が生きてきそうに思えるが、菅井の構想やいかに。 47 3九角(84) ( 9:00/03:51:00) *代えて▲6六角は相手の銀に近く、いずれ目標になりそうだ。▲3九角といちばん遠くに引き揚げる。 48 7二金(61) ( 0:00/04:08:00) *△8三銀と△7二金はワンセット。次に△7四歩で角筋が通り、玉頭の弱点もカバーできる。菅井は玉形を整備して相手の出方をうかがう方針か。 49 7八金(69) (10:00/04:01:00) 50 7四歩(73) ( 0:00/04:08:00) *「後手は玉頭にキズがあるので、いずれ▲8六歩とは突くと思います」(杉本昌七段) 51 9八香(99) ( 4:00/04:05:00) *▲9八香と上がり、穴熊への組み替えを見せる。穴熊の可能性は杉本昌七段も言及していた。▲9九玉のあとは▲8八銀もあるが、▲8八金〜▲7八金右の固め方も有力だという。 *10時が近づき、両対局者に午前のおやつが出された。羽生はキウイとオレンジジュース、菅井はフルーツ盛り合わせ(メロンとパイナップル)とアイスコーヒー。 * *【2日目午前のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-ee89.html * *※局後の感想※ *羽生「歩得はしたのですが、あまりやる手がないので手待ちの意味も」 52 4二金(32) ( 7:00/04:15:00) *左金を玉に近づける。杉本昌七段は、後手はこの金を5四辺りに配置しないと戦いづらいと見ていた。とはいえ、△4四歩〜△4三金〜△5四金のルートを目指すと、△4四歩のときに▲3五歩など、後手として気になる変化が多い。本譜、この金はどのように動いていくのか。 53 9九玉(88) ( 4:00/04:09:00) *10時頃、▲9九玉までの消費時間は▲羽生4時間9分、△菅井4時間15分。 * *【穴熊へ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-3a29.html 54 5三金(42) ( 4:00/04:19:00) *5三に金を繰り出す。次に△5四金と立てば6四の銀を7三に引いて玉を固めやすい。問題は現局面だ。角の利きが止まり、▲3五歩が見えるだけに大胆に映る。杉本昌七段は▲8八金から固めれば長くなり、▲3五歩で戦いになる可能性を示唆した。石田和九段の継ぎ盤では▲2四歩△同歩▲2三歩の順が挙がる。以下、(1)△2一飛▲3五歩△4四金▲3四歩△同金に▲3二歩が手筋だ。また(2)△5二飛なら▲3七桂と活用する味がいい。 * *※局後の感想※ *▲8六歩は△5四金▲8五歩△7三銀で後手不満なし。 *羽生「穴熊で位を取るのは相性悪いですよね」 55 3五歩(36) (20:00/04:29:00) *20分の考慮で▲3五歩と突いた。桂頭を狙い、積極的によさを求める。 56 4四金(53) ( 0:00/04:19:00) 57 3四歩(35) ( 0:00/04:29:00) 58 同 金(44) ( 0:00/04:19:00) *3二にいた金が4手連続で動き、桂の上にやってきた。再び玉から遠くなっている。 59 3八飛(58) ( 0:00/04:29:00) *金を3四に誘い、金取りに飛車を回った。直線的な順だ。 60 3五歩打 ( 0:00/04:19:00) 61 5八飛(38) ( 0:00/04:29:00) *55手目▲3五歩が指されると、互いにノータイムの着手で現局面まで進行した。相手を歩切れにさせ、飛車を5筋に戻る。3四の金は活用しにくい。悪形にさせて満足と見たのか。杉本昌七段は△5四飛を示す。 *「△5四飛がいい手か。菅井君らしい手だよね」(石田和九段) *以下、▲1六歩△2五金▲1七角△5六歩の順が検討に挙がる。あるいは▲3七桂や▲6六角も考えられるようだ。 * *【後手番連勝中】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-ea98.html * *※局後の感想※ *羽生は一連の手順で△4四金を牽制した。 *羽生「3筋の歩が切れていると、金が寄りにくいですね」 62 4四歩(43) (26:00/04:45:00) *26分の考慮で4筋の歩を突いた。自然な手でありながらも、杉本昌七段を中心とする控室の面々は意外そうな声を上げる。代えて△5四飛が現代調で、菅井らしい手だと見られていた。 *11時頃の局面。△4四歩までの消費時間は▲羽生4時間29分、△菅井4時間45分。羽生は前傾姿勢で考え、菅井は記録係から棋譜を受け取って目を通した。 63 8八銀(77) ( 7:00/04:36:00) *▲8八銀と引き、穴熊を固める。控室では、具体的な形勢の差は現れていないものの、先手に不満がないとの見解が示された。 64 5四飛(51) ( 7:00/04:52:00) *時間差で△5四飛と浮き、次に△4五歩▲同歩△同金の動きを見せる。 *「△4四歩と突いてから△5四飛ですか。駒を中央に使って、いちばん本筋といえば本筋ですよね。△4五歩▲同歩△同金と進めば一人前の形です」(杉本昌七段) *▲3七桂にも構わず△4五歩。▲同桂なら△2五桂の跳ね違いがある。穴熊に組んだ先手に不満がないはずが、思わしい手段が見つからない。 *「菅井君の指し方も独特だねぇ」(石田和九段) *「駒の繰り替えがうまいですよね」(杉本昌七段) *▲6六歩△4五歩▲2八角には△8四角を甲斐女流五段が示した。羽生はあぐらに崩している。額に手を当て、扇子を使う。菅井もあぐらに崩している。 65 6六歩(67) (29:00/05:05:00) *30分近く考え、▲6六歩と突いた。格言は「歩越し銀には歩で対抗」と教える。 * *※局後の感想※ *代えて▲6六角△7三角▲7七桂△4五歩▲同歩△同金▲4六歩△4四金▲8六歩△8四歩▲8七銀が並べられた。7七に桂を跳んだことで先手玉は薄くなり、本譜との比較は「微妙なところ」と羽生。 66 4五歩(44) ( 2:00/04:54:00) 67 2八角(39) ( 0:00/05:05:00) *検討の本線の順に進んだ。△8四角▲7七金右△5六歩▲同銀△4六歩▲同角△4五金▲5五歩△4四飛▲4五銀△同桂▲5四歩△6九銀▲5三歩成△5八銀不成▲5四金の進行が継ぎ盤に並ぶ。難しい変化のようだ。 68 7三角(62) ( 2:00/04:56:00) *角を7三に上がる。僅か2分の少考だった。本譜が想定の進行だったか。コビンを守り、次に△4六歩▲同銀△5六歩の狙いを見せる。 *「角を上がっていなければ△4六歩▲同銀△5六歩に▲6五歩がありました。7三に角を上がったので、▲6五歩には△同銀と取れます」(杉本昌七段) *12時頃、△7三角までの消費時間は▲羽生5時間5分、△菅井4時間56分。現局面で羽生が15分ほど考えている。額に手を当ててうつむき、悩ましそうな様子だ。石田和九段は▲7七桂を示した。▲6五歩〜▲8五桂が実現すれば調子がいい。玉は薄くなるが、駒が入れば8九に埋める発想だ。ただ、△7五歩の反動もきつい。 * *【難解な中盤戦】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-7d15.html *【周辺散策】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-8d74.html * *※局後の感想※ *羽生は「あまりやる手がない」と、有効手が難しいことを明かす。 69 5九飛(58) (30:00/05:35:00) *30分の考慮で、じっと飛車を引いた。△4六歩▲同銀に、(1)△4五歩なら▲6五歩が利きそうだ。以下、△4六歩▲6四歩△4七歩成の進行は、飛車を引いた効果でと金が当たらない。(2)△4五金には▲4九飛。続けて△4六金▲同飛△4五歩▲2六飛と進めば、先手に不満がないだろう。 *この局面で定刻の12時30分になり、昼食休憩に入った。▲5九飛に対して菅井が使った時間は14分。ここまでの消費時間は▲羽生5時間35分、△菅井5時間10分。昼食は羽生が幕の内弁当、菅井が天ぷらそば。対局は13時30分から再開される。 *休憩中、菅井は13時前には対局室に入り、羽生は13時29分に入室。 * *【2日目昼食休憩】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-7583.html *【2日目の昼食】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-e1b6.html *【2日目休憩時の対局室】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-5ca4.html 70 4四金(34) (14:00/05:10:00) *13時30分になって対局が再開されると、菅井は直ちに着手した。金を4四に寄る。控室では、後手から戦いを起こすと、先手の穴熊の堅さが生きそうだと見られていた。後手は攻めてきてもらってから手を作りたいという。△4四金はその方針に沿っている。 * *【2日目、対局再開(1)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-5638.html *【2日目、対局再開(2)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-56bd.html 71 6七金(68) ( 5:00/05:40:00) *5分の少考で、右の金を6七に立つ。7八の金が離れ駒になるが、上部の厚みを優先した。 72 9二香(91) ( 0:00/05:10:00) *玉側の香をひとつ上がる。今度は菅井が穴熊への組み替えを見せ、さらに相手の動きを待つ。 *14時頃、△9二香までの消費時間は▲羽生5時間40分、△菅井5時間10分。現局面で羽生が20分以上、考えている。 *1階の会場では大盤解説会が始まった。関係者によると出足は好調で、椅子席は埋まりつつあるとのことだ。 * *■AbemaTV■ *金井恒太六段>ここでどう指すか。▲7九金か▲6五歩か▲4五歩ではないかと思います。 *飯野愛女流1級>▲1六歩はないのでしょうか。 *金井恒太六段>▲1六歩は、次に▲1七角としてもそんなにうれしいわけではありませんね。 * *【現地大盤解説会のお知らせ(再掲)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-9121.html *【現地大盤解説会】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-403b-1.html 73 8六歩(87) (42:00/06:22:00) *どこかで突きたいといわれていた▲8六歩を実行。42分の長考だった。 * *※局後の感想※ *石田和九段は代えて▲7七桂を指摘。羽生も第一感だという。以下、△9一玉▲8六歩△6二角▲8七銀△7三銀▲8八玉△8二銀の順が並ぶ。 *石田和九段「穴熊が入れ替わっちゃって。(先手が)損なんですか?」 *羽生「桂は跳びたかったのですが、意外と効果がないかと思いました」 74 9一玉(82) ( 5:00/05:15:00) 75 8五歩(86) ( 2:00/06:24:00) *じっと歩を伸ばし、圧力をかける。相手の歩のない筋に歩を伸ばすのは手筋だ。 *控室に竹内貴浩指導棋士四段と中澤沙耶女流初段が、それぞれ差し入れを手に現れた。ふたりの師匠はいずれも杉本昌七段だ。 76 7五歩(74) ( 6:00/05:21:00) *8筋に空間ができたところ、7筋に歩を突っかける。玉頭で戦いを起こすのか。羽生は首を突き出すようにして盤をにらむ。 77 7七金(67) ( 9:00/06:33:00) *9分の少考で7七に金を寄った。8筋の空間をケアしている。控室の検討には挙がっていなかった。△7六歩が当たってくるが、構わないと見たのだろう。 *「こうですか。へえぇ、感覚が違うねぇ。穴熊だけど、どっちの穴熊も弱いね」(石田和九段) * *※局後の感想※ *代えて(1)▲7七銀は△7六歩▲同銀△7四銀で先手自信なし。続けて▲7七桂は△8六歩がある(次に△4六歩〜△7五歩が厳しい)。菅井は(2)▲8七銀を指摘した。以下、△7四銀▲8六銀△8二金▲6五歩△同銀直▲7五歩△8三銀が予想される。 *菅井「よく分かりません」 *羽生「こちらが少し薄いですかね」 *最後に(3)▲7五同歩が調べられた。すんなり歩切れを解消させるだけに、羽生は「損かと思った」という。△7五同銀▲7六歩に(A)△6四銀は▲7七金寄△8二角▲3九角、(B)△8六銀は▲8四歩△同飛▲8七歩△7七歩▲同桂△同銀成▲同銀△4六歩▲同銀△9五歩▲同歩がそれぞれ考えられる。これらの進行は本譜にまさる可能性があった。 *羽生「難しそうですね。微妙ですが、▲7五同歩も考えないといけませんでした」 78 7六歩(75) ( 3:00/05:24:00) *大盤解説会場は席を170まで増やしたが、すでに空席が少なくなってきたそうだ。 79 同 金(77) ( 0:00/06:33:00) 80 7四銀(83) ( 0:00/05:24:00) *2枚目の銀を四段目に上がった。玉頭戦に持ち込めば、2八の角や4七の銀がボケてくる。先手は直前の▲7七金寄〜▲7六同金と、金の動きで手損となった。その代償が見えにくい。 * *【玉頭での戦い】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-f5ab.html 81 7七銀(88) ( 4:00/06:37:00) *銀を7七に戻り、上部に援軍を送る。大盤解説会が休憩に入り、控室に杉本昌七段と甲斐女流五段が帰ってきた。杉本昌七段は一手一手が意外だというが、石田和九段は▲7七銀を予想どおりだったと返す。 *15時頃の局面。▲7七銀までの消費時間は▲羽生6時間37分、△菅井5時間24分。消費時間に1時間以上の差がついている。石田和九段は、羽生が歩得をいかに生かすのか、ここしばらくは神経を使ったのではないかとの見解を示す。 *対局室に午後のおやつが運ばれた。羽生はブルーベリーレアチーズとホットレモンティー、菅井はフルーツ盛り合わせ(メロン、パイナップル、オレンジ、キウイ)で、多めにとのリクエストをしている。飲み物はアイスレモンティーとオレンジジュース。 * *【2日目午後のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-4a35.html 82 8二金(72) (15:00/05:39:00) *△8二金と寄り、囲いを固めた。じりじりとした展開が続く。 83 8六銀(77) ( 2:00/06:39:00) *▲8六銀と上がり、▲7五歩△8三銀▲6五歩の押さえ込みを見せた。それを嫌って△7五歩は、▲7七金引で後手の歩切れを主張にする。 * *■AbemaTV■ *石田直裕四段>△7五歩に▲7七金引で、先手陣が引き締まります。それが羽生王位の狙いですね。 *藤田綾女流二段>そこで後手の指し方が難しいですね。銀も前に出られません。 *石田直裕四段>6六歩や8六銀が後手の駒を押さえています。羽生王位は、こういうところがうまいですね。先手のほうが指し手が分かりやすいです。 84 6二角(73) ( 7:00/05:46:00) *持ち歩は使わず、△6二角と引く。▲6五歩に対して銀を引くスペースを7三に作った。▲7五歩△8三銀▲6五歩なら△7三銀で、手順に囲いが堅くなる。 85 7五歩打 ( 3:00/06:42:00) *※局後の感想※ *羽生「ちょっと困りましたね。歩を打つしかないけど、やる手が……」 *菅井はまずまずと見ていたようだが、今後の進行を見通しにくい。 86 8三銀(74) ( 0:00/05:46:00) *「先手は7六金・8六銀でなく7六銀・8六金の形が理想ですが、繰り替えは難しいです。コビンが開いていますし、金銀2枚が上ずっていますので、四段目の金か銀のどちらかは引きつけたいですよね」(杉本昌七段) *控室に戻ってきた石田和九段は、本譜の曲線的な順に感心している。先手はいずれ△8七歩が気になるとして、どこかのタイミングでの▲8八玉を指摘した。杉本昌七段と甲斐女流五段は再び大盤解説会場に向かう。 *「しかし、進まない将棋ですねぇ。解説しにくい将棋ですよ」(石田和九段) *手数は86手に及んだが、互いに角を打ち合ったあとは歩以外の駒がぶつからず、2日目の15時30分を過ぎても目に見える戦いは始まっていない。水面下では、ずっと好形を巡ってつばぜり合いが展開されているのだろう。 87 4五歩(46) (24:00/07:06:00) *24分の考慮で、20手以上前にぶつかった歩に手をかける。先手の持ち歩が4枚になった。 88 同 金(44) ( 0:00/05:46:00) 89 8四歩(85) ( 0:00/07:06:00) *銀取りに▲8四歩と突き出す。△8四同角なら角が近づき、目標になる。 * *【羽生王位、残り1時間を切る】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-45bb.html 90 同 角(62) ( 2:00/05:48:00) *2分の少考で△8四同角と応じた。代えて△8四同銀は、囲いが薄くなるのを嫌ったか。 91 6五歩(66) ( 0:00/07:06:00) *△8四同角を見て▲6五歩と突く。△7三銀なら▲8五歩で角が6二に戻れない。 92 8五歩打 ( 3:00/05:51:00) *「焦点の歩」の手筋を放つ。▲8五同銀なら7五への利きの数がまさり、△7五銀がある。▲8五同金なら△6五銀だ。 * *※局後の感想※ *▲8五同銀△7五銀▲8四銀と進めば角を取れるが「角を取っても全然うれしくない」と羽生。本譜は粘りにいく順だという。 93 6四歩(65) ( 4:00/07:10:00) 94 8六歩(85) ( 0:00/05:51:00) 95 8八歩打 ( 0:00/07:10:00) *銀の取り合いに進め、▲8八歩と受ける。△8七銀と打ち込まれてはいけない。次に▲6三歩成が残り、手番は握っている。 96 6四飛(54) ( 0:00/05:51:00) 97 6五歩打 ( 0:00/07:10:00) *直前の▲8八歩は石田和九段の評判が悪い。 *「羽生さん、変調ね」(石田和九段) *大盤解説会場でも、杉本昌七段が92手目△8五歩の切り返しが鋭く、後手が指しやすくなっていると解説しているそうだ。 * *【変調】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-3d8d.html 98 5四飛(64) ( 1:00/05:52:00) 99 4六銀(47) ( 0:00/07:10:00) *残り時間が少なくなってきている。▲4六銀とぶつけ、戦いを挑む。駒を蓄えての▲7一銀が1つの狙いになる。 *16時過ぎ、▲4六銀までの残り時間は▲羽生50分、△菅井2時間8分。 * *※局後の感想※ *菅井は難しいと見ていたようだ。羽生は現局面でどう指されるか「全然分からなかった」という。 100 8七歩成(86) ( 7:00/05:59:00) 101 同 歩(88) ( 1:00/07:11:00) 102 8六歩打 ( 0:00/05:59:00) *歩を成り捨て、継ぎ歩を放つ。▲8六同歩に△8七歩、▲8六同金には△7七歩がそれぞれ狙いになる。 103 7一銀打 ( 5:00/07:16:00) *8六の歩にはどう応じても味が悪い。放置して▲7一銀と引っかける。一気に寄せ合いに進むのか。先手は角の利きが通ってくる展開になればうまい。(1)△7三銀や(2)△9三銀なら▲8二銀成〜▲8八金打が挙がる。後手は(3)△7二金で勝てれば話が早いが、▲4五銀△同桂▲5五飛のような順が見えるだけに怖い。 * *※局後の感想※ *「少し苦しいというか、そんなにいいわけではないと」が、菅井のこの辺りの印象だった。一方の羽生は「千日手になれば御の字という感じ」との感想を残す。(3)△7二金にも自信のなさを見せる。検討の結果、▲4五銀△同桂▲5五飛△7三角▲5四飛△2八角成▲6二金△同金▲同銀不成△6九銀▲7一金△8二金と進めて後手が勝ちそうだ。以下、(A)▲4一飛は詰めろ(▲8一金△同金▲同飛成△同玉▲5一飛成以下)だが、△3三角が詰めろ逃れの王手で後手が勝つ。(B)▲7七金引も△3三角が攻防の一打となる。 *羽生「ダメですか。そうか、足りない気がします」 *菅井「そうですね」 104 9三銀打 (15:00/06:14:00) *15分考え、9三に銀を埋めた。△7三銀と違い、△7三角の余地を残す。▲8二銀成△同銀▲8八金打で長い展開が見込まれている。石田和九段が絶賛する順で、大盤解説会が休憩に入った杉本昌七段も、▲8八金打で囲いが相当堅いと認めた。 *「そう進むと△8七歩成が悪手になります」(杉本昌七段) * *※局後の感想※ *▲8二銀成△同銀に、(1)▲8八金打の順は両者ともに気がついていなかった。検討の結果、△8七歩成(A)▲同金右に△6七銀、(B)▲8七同金直は△5六金で後手の攻めがうるさい。羽生は改良案として、(2)▲4五銀△同桂▲8八金打の順を示した。 *羽生「そうか、銀を埋めても堅くなりませんが、金だと堅いですね」 *菅井も自陣を銀で補強するのは堅くならないと認め、攻めるしかないという。以下、△8七歩成▲同金直△8六歩▲同金寄△6六銀▲8五歩△7三角▲6九飛の順が示され、ここまで進むと先手が面白い。 *羽生「そうか、なるほど。金がいっぱいいる形は心強いですね。相当やりづらいですが(笑)。その順で金と銀の違いを主張するのがいいのですね」 *菅井「▲8八金打が見えていたら(本譜△9三銀に代えて)△7二金を掘り下げます」 105 8六歩(87) ( 9:00/07:25:00) *7一の銀をクサビとして残し、▲8六歩と手を戻す。着手した羽生はグラスの水を口に運ぶ。「▲8六歩を指したからには△7二金は大丈夫と見たのか」との声が上がった。 * *※局後の感想※ *△7二金には▲8五歩△7三角▲8四歩△同飛▲8二歩△同銀▲8五歩△4四飛▲8二銀不成の順が並べられる。この進行は先手も戦えるようだ。 *菅井「少し嫌ですか」 *羽生「そうですね」 106 8七歩打 ( 2:00/06:16:00) *狙いの垂れ歩を放つ。次に△4六金▲同角△8八銀▲同金△同歩成▲同玉と進めば、先手玉は裸になる。 107 8二銀(71) ( 4:00/07:29:00) 108 同 銀(93) ( 0:00/06:16:00) 109 8七金(78) ( 0:00/07:29:00) *後手の穴熊の金を取ってから嫌みな垂れ歩を払う。側面が弱くなったうえに手番を渡した。ゆっくりしていたら▲8八金打で固める狙いが指摘される。 110 6七銀打 ( 3:00/06:19:00) *△7八銀が予想されていたが、6七に銀を打った。放置すれば△7六銀成▲同金に△8七歩が厳しい。 * *※局後の感想※ *▲4五銀△同桂▲8八金打は、△7八銀打で先手が食いつかれている。 111 8八金打 ( 4:00/07:33:00) *17時頃、▲8八金打までの残り時間は▲羽生27分、△菅井1時間41分。 112 7六銀成(67) ( 2:00/06:21:00) 113 同 金(87) ( 0:00/07:33:00) 114 5六金(45) ( 4:00/06:25:00) *金を5六に活用。先手陣に向かう。代えて△4六金は▲同角で、先手の銀をさばかせる意味がある。 * *※局後の感想※ *羽生「本譜は△5六金の辺りで少し困っていますね」 115 7七金(76) ( 8:00/07:41:00) *8分の考慮時間を割き、7七に金を引いた。6七の死角を消す。羽生の残り時間は20分を切り、菅井は1時間30分以上を残している。石田和九段は両者の読みがかみ合っていない可能性を指摘した。意外な手が飛んできて、羽生は時間を使わされる展開になったのではないかという。 * *【石田九段が解説会場へ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-d5b3.html 116 7三角(84) ( 8:00/06:33:00) *△7三角と引き、5五に利きを足す。4六の銀のさばきを許さない。 117 8七金(77) ( 3:00/07:44:00) 118 6七金(56) ( 1:00/06:34:00) *前手▲8七金寄で利きのなくなった6七に金が突っ込む。この金は3二〜4二〜5三〜4四〜3四〜4四〜4五〜5六〜6七と遠征して先手陣に到達した。 119 6四歩(65) ( 1:00/07:45:00) *すかさず▲6四歩と突き出す。6七に金がきたため、△6四同飛は飛車先が重い。 120 同 角(73) ( 2:00/06:36:00) *「△6四同飛は▲5五銀から角を斜めに使われるのが嫌ではないですか」と竹内指導棋士四段が話していたところで△6四同角と応じた。▲6五銀の飛車角両取りは見えるが、後手としてさほど痛くないようだ。 * *【角の働き】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-745e.html 121 6五銀打 ( 2:00/07:47:00) 122 7七歩打 ( 0:00/06:36:00) *飛車取りは放置し、△7七歩と垂らす。次に△7八歩成と絡めば攻めが切れる心配はなさそうだ。とはいえ、▲7七同金寄も△同金▲同金△7五角▲5四銀に△7六歩が厳しい。 123 6四銀(65) ( 3:00/07:50:00) *ただで取れる飛車ではなく、角を取った。角のほうが後手玉に近い。 124 7八歩成(77) ( 2:00/06:38:00) 125 5五銀(46) ( 0:00/07:50:00) *▲5四銀〜▲6三銀直成まで回れば詰めろ。後手玉は3手スキだ。菅井はどのように寄せるのか。 * *※局後の感想※ *先手玉は意外と耐久力があった。菅井は(1)△8八とだと▲同金△7六金▲6五角△8七歩▲同金△同金▲同角で寄せが分からなかったという。続けて△7八金打に、(A)▲8八金△同金▲同玉△6八金打の順が示された。以下、▲5四銀△5九金の局面で後手玉に有効な詰めろがかからず、先手が勝てない。▲6三銀直成は▲8二角成以下の詰めろだが、△5八飛から2八の角を抜かれる。菅井は(B)▲7九金があるとして、難しいと見ていた。さらに△6八金打でどうか。(2)△6四飛▲同銀△同歩は2枚換えでカナ駒を増やす順だが、▲6四同角△7三銀打▲同角成△同銀に▲5五角が粘り強い。対して△8二銀打には▲6一飛があり、後手が大変だ。 126 7六歩打 ( 3:00/06:41:00) *7六に歩を垂らす。次に△7七金打で△8八と▲同金△同金▲同玉△7七金打以下の詰めろがかかる。 * *※局後の感想※ *▲6八歩の手筋があった。△6八同金は▲5四銀で、次に▲6三銀直成が詰めろ。先手玉には有効な詰めろがかからない。 *羽生「ん、そうか。まだ大変でしたか」 127 7三角打 ( 2:00/07:52:00) *駒の利きの足りていないところ、▲7三角とねじ込む。控室で驚きの声が上がった。(1)△7七金打なら▲同金上で金が手に入り、▲8二角成△同玉▲7三金以下の詰めろになりそうだ。(2)△6四歩▲8二角成△同玉▲5四銀△6六角は、▲6四角のときに合い駒が悪い。仮に△7三銀なら▲6二飛△7二金▲7三角成△同桂▲6六飛成で角を抜ける。 * *【強手】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-7e37.html 128 5二飛(54) ( 3:00/06:44:00) *当たっていた飛車を引き、受けに利かす。 129 8二角成(73) ( 2:00/07:54:00) 130 同 飛(52) ( 0:00/06:44:00) 131 7一銀打 ( 0:00/07:54:00) *▲7一銀と引っかける。どこかで▲6六銀が攻防手になる組み立てがあればうまい。 132 7七角打 ( 1:00/06:45:00) *7七に角を放り込んだ。▲8二銀成〜▲4二飛のときに何を合駒するのか。 133 8二銀(71) ( 0:00/07:54:00) 134 同 玉(91) ( 0:00/06:45:00) 135 4二飛打 ( 0:00/07:54:00) 136 7二金打 ( 0:00/06:45:00) *金を手放すのに抵抗はなかった。(1)▲7七桂△同歩成▲6六銀は△8八と寄▲同金△同と▲同玉△7七銀以下、先手玉に詰みがある。単に(2)▲6六銀は△同角成だ。 *羽生はこの局面での考慮中に一分将棋に入った。 137 7七桂(89) ( 5:00/07:59:00) 138 同 歩成(76) ( 0:00/06:45:00) *控室の面々は固唾をのんでモニターを見つめる。 139 6六銀(55) ( 0:00/07:59:00) 140 8八と(77) ( 0:00/06:45:00) *菅井の着手は早い。読みきりだろう。 *「いやぁ、菅井君は強いねぇ……」(石田和九段) 141 同 金(87) ( 0:00/07:59:00) 142 同 と(78) ( 0:00/06:45:00) 143 同 玉(99) ( 0:00/07:59:00) *△7七銀でも△7八金打でも詰む。 144 7八金打 ( 0:00/06:45:00) *△7八金打を見て羽生が頭を下げ、投了した。▲8七玉△7七金打▲同銀△同金寄▲9七玉△8八銀まで、先手玉は詰む。関係者が対局室に向かう。終局時刻は18時10分。消費時間は▲羽生7時間59分、△菅井6時間45分。七番勝負はタイトル戦初陣の菅井が先勝。第2局は7月25日(火)から26日(水)にかけて、福岡県福岡市の「ホテル日航福岡」で行われる。 * *本局は北海道新聞・東京新聞・中日新聞・神戸新聞・徳島新聞・西日本新聞の各紙上において、内田晶さんによる観戦記が9月13日(水)から24日(日)まで掲載の予定になります。詳しくはそちらもあわせてご覧ください。 * *【菅井七段が初陣を飾る】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-f303.html *【終局直後】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-bb10.html *【大盤解説会場へ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-8e33.html *【感想戦】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2017/07/post-10da.html * *※局後の感想※ *105手目▲8六歩に代えて▲8二銀成△同銀▲4五銀△同桂▲8八金打がまさり、羽生が「いずれにしても8八に金を打つべきでしたね」とまとめたのを受けて石田和九段が締め、感想戦は19時54分に終了した。 145 投了 ( 0:00/07:59:00) まで144手で後手の勝ち