# --- Kifu for Windows (HTTP) V6.51d 棋譜ファイル --- 対局ID:1373 開始日時:2012/08/01 09:00 終了日時:2012/08/02 18:46 表題:王位戦 棋戦:第53期王位戦七番勝負 第3局 持ち時間:各8時間 消費時間:99▲471△479 場所:長崎・ホテルニュー長崎 図:投了 手合割:平手   先手:羽生善治 後手:藤井猛 先手省略名:羽生 後手省略名:藤井 手数----指手-- *羽生善治王位に藤井猛九段が挑戦する第53期王位戦はここまで1勝1敗のタイ。注目の第3局は8月1・2日に長崎市「ホテルニュー長崎」で行われる。 *立会人は加藤一二三九段。副立会人は山崎隆之七段。大盤解説会の聞き手は室田伊緒女流初段。記録係は藤原結樹三段(23歳。森信雄七段門下)。 *過去の対戦成績は羽生34勝、藤井15勝。本局は両者の50局目の対戦となる。 *8時50分過ぎに両対局者がそろい、大橋流で駒を並べていく。 *【Twitter解説】 *佐藤秀司>本日の解説を務めさせていただきます佐藤秀司です。今日一日、よろしくお願い致します。気合が入って早起きしてしまいました。朝シャンして今、パソコンの前です。戦型予想は、藤井さんにシステムを発動して欲しいと思うのですが、やはり一手損角換わり振り飛車かなぁ、と思います。 *(棋譜・コメント入力=銀杏) *※は感想戦の内容。 1 7六歩(77) *先手番の羽生の初手は▲7六歩。 *先手番の羽生善治(はぶ・よしはる)王位は1970年9月27日生まれの41歳。埼玉県所沢市出身。二上達也九段門下。棋士番号は175。 *85年12月、15歳で四段昇段。89年に初タイトルの竜王を獲得。93年8月、第34期王位戦で王位戦七番勝負初登場。郷田真隆王位(当時)を4連勝で破り、王位獲得。22歳の若さで五冠王(最年少記録)に。その後、王位9連覇を達成。永世王位の資格を得た。タイトル獲得は王位13など計81期。棋戦優勝は40回。 *オールラウンドプレーヤーで、一時期は相振り飛車も多用した。 2 3四歩(33) *9時6分、5分以上使って△3四歩が着手された。控室に立会人の加藤九段と山崎七段が入ってくる。 *後手番の藤井猛(ふじい・たけし)九段は1970年9月29日生まれの41歳。群馬県沼田市出身。西村一義九段門下。棋士番号198。 *86年に6級で奨励会入会。91年4月、20歳で四段。98年、第11期竜王戦で初タイトルの竜王を獲得。以降3連破達成。タイトル獲得は竜王3期。棋戦優勝は7回。王位戦七番勝負は初登場。 *四間飛車の革命である「藤井システム」の創案者。現在は角交換振り飛車の分野も開拓している。本局の作戦は? 3 2六歩(27) *「△4二飛でしょうね。変える理由はないでしょう」と山崎七段。前夜祭のときに、序盤は内容的に藤井ペースで進んでいると話していた。 *【前夜祭(4)】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2012/07/post-8889.html *【Twitter解説】 *佐藤秀司>関係者も控室に戻られましたかね。昔話を一つ。あるタイトル戦の記録係を務めたときですが、始まって写真撮影も終わり、関係者は控室に去られたのですが、その控室というのはそんなに対局室と離れていなかったんですね。 *ドアや障子も開け放っていた(確か暑い時期でした)ので9時5分ぐらいには、ジャラジャラ…と麻雀の洗牌の音が聞こえるんですよ。対局者も笑うしかなかったですね(笑)。確かあの時は、故・大山康晴十五世名人や故・加藤治郎名誉会長がおられました。懐かしい思い出です。 4 4二飛(82) *開始局面で紹介したように、過去の対戦成績は羽生34勝、藤井15勝。 *藤井にとって対羽生戦の後手番は鬼門。2勝19敗(3千日手)と厳しい結果だからだ。先手番は13勝15敗(1千日手)とほぼ五分なのだが…。羽生自身、昨年の12月から公式戦で18勝2敗(1千日手)と9割の勝率を挙げている。七番勝負を制するには、後手番をどうにかしなければならない。後手番だった第1局は千日手。 *控室ではその千日手の話。加藤九段が「千日手は将棋の難しさ、素晴らしさを示すセールスポイントだと思っています」と早くも熱弁をふるっている。 5 4八銀(39) *ゆったりした進行。▲4八銀が指されたときの時刻は9時20分だった。 *王位戦の特色として、対局室に設置された対局カメラによる連続静止画中継がある。1分ごとに画像が更新される。対局者の生の姿をご覧いただきたい。9時24分の対局カメラを見ると、羽生はお茶を飲んでいるところだった。 *【対局カメラ】 *http://live10.shogi.or.jp/oui/camera/3/index.html 6 6二玉(51) *長崎市での王位戦対局は初めてとのこと。長崎県内では何度も行われ、第51期王位戦第4局▲深浦康市王位−△広瀬章人六段戦は佐世保市で指された。そのときの立会人も加藤一二三九段だった。 *対局前日に観光した際に、加藤九段が九十九島水族館でイルカとキャッチボールを楽しんでいた姿を昨日のことのように思い出す。 *【第51期王位戦第4局】 *http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/oui20100810_11.html *【第51期王位戦第4局ブログページ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/514/ 7 6八玉(59) *羽生は第2局で藤井の角交換四間飛車に敗れた。対振り飛車戦で敗れたのは前期王位戦第5局の広瀬章人王位戦以来だった(前期王位戦第5局以降対中飛車7勝、対四間飛車4勝1千日手、対三間飛車1勝、相振り飛車1勝)。 *1年近く対振り飛車戦で負けていなかったことになる。 8 8八角成(22) *本局の観戦記者は小池大志氏。 *現在、王位戦を主催する西日本新聞・北海道新聞・東京新聞・中日新聞・神戸新聞・徳島新聞に、信濃桂氏による挑戦者決定戦▲渡辺明竜王−△藤井戦の観戦記が掲載されている。本局の観戦記は9月2日から12譜(12日分)で主催紙に掲載予定。 *【Twitter解説】 *佐藤秀司>東京は今日も暑いのですが、長崎はそれ以上でしょうか。それはそうと、台風が心配ですね。対局が終わっても帰るに帰れぬなんてことになったら、忙しい両者に影響が出てしまうかもしれませんし。 9 同 銀(79) *控室で加藤九段が四間飛車について話している。「僕は『四間飛車をやってくるなら棒銀で吹っ飛ばしますよ』と言っているんだけれども、この角交換のやつは話が違うんだよな。普通の四間飛車で△4二金型のやつは破れますよと『将棋世界』で書いたんだけれど、これはちょっとなぁ」。 10 7二玉(62) *1日目の対局スケジュールは以下の通り。 *9時   対局開始 *10時30分 午前のおやつ *12時30分 昼食休憩 *13時30分 対局再開 *15時   午後のおやつ *18時   封じ手 *2日目は朝に封じ手が開封され、夕食休憩なしで終局まで行われる。 11 7八玉(68) *羽生の本年度成績は18勝7敗(0.720)。 *対局数と勝数ランキングで1位。連勝ランキング3位。勝率ランキング19位。 *通算成績は1195勝459敗(0.723)。 *通算1200勝まであと5勝。 12 2二銀(31) *藤井の本年度成績は9勝7敗(0.563)。 *通算成績は522勝368敗(0.587)。 *【Twitter解説】 *佐藤秀司>やはりというか角換わり振り飛車ですか。最近は相居飛車でも居飛車対振り飛車でも角交換の将棋が多いんですね。 13 7七銀(88) *時刻は10時。ここまでの消費時間は羽生34分、藤井21分。 *羽生と森内俊之名人により争われた第70期名人戦七番勝負では、午前中から指し手がバシバシ進んでいた。今回の王位戦ではゆったりした進行。角交換四間飛車は定跡化が進んでいない戦型だからだろうか。 *「このペースじゃ、まだ検討する気分じゃないな。ネット中継を見ている人も、ゆっくりとうなぎでも食べていただいて午後の進行を待ちましょう」と加藤九段。加藤九段のうなぎ好きはよく知られている。 14 8二玉(72) *第1局の千日手局では△3三銀だった。その将棋を加藤九段、山崎七段、室田女流初段が控室で並べている。加藤九段は「藤井さんと指すときのために研究しないとね」と笑い、序盤の駒組みを見て「ほぉ、へぇ」と驚く。 * *長崎市は鎖国していた江戸時代にも貿易港の出島を持ち、古くから外国への玄関口として発展してきた。 *外国から多くの文化が流入したため、グラバー園や大浦天主堂、中華街、眼鏡橋など名所が多い。食文化でもカステラ、ちゃんぽん、皿うどん、ご当地グルメのトルコライスなど名物多数。 15 8八玉(78) *ホテルニュー長崎はJR長崎駅に隣接し、港が見える眺めのいいベイサイドホテル。ここからは長崎の観光名所の一つである稲佐山も見える。ホテル内にはチャペルもあり結婚式が行われる。 *http://www.newnaga.com/ *【Twitter解説】 *佐藤秀司>最近は棋士でもTwitterをやっている人が増えましたね。ある時ですが、後輩の棋士(夫人が女流のおしどり棋士)に「○○くんの奥さんて、1分おきにつぶやいているらしいけど、そんなに暇なの?」と訊いたら「あっ、暇ですねぇ」との返答(笑)。 16 3三銀(22) *羽生の考慮中に10時30分になり、午前のおやつが出された。羽生はホットレモンティー、藤井はホットコーヒー。 *本局の副立会人である山崎七段は第1局1日目のTwitter解説を担当した。本局の直前に行われた竜王戦で勝ち、挑戦者決定戦に進出した。 *【第53期王位戦第1局(千日手局)】 *http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/53/oui201207100101.html *山崎七段「△8二玉だったので、第1局とは違いますね。あと、あのときは▲5八金右が早かったのが珍しいと思っていました。第1局は△2四歩と突いていたので、▲4六歩と突いたのだと思うので、ここで▲4六歩は△4四歩とされそうです。ここでは▲7八金でしょうね。でも、羽生さんが考えていますね。▲7八金じゃないのかなと不安になりますね」。 17 7八金(69) *ここまでの消費時間は羽生50分、藤井39分。 *本局の主催は西日本新聞。将棋のページでは、本局の前夜祭の動画や検分の様子などの写真だけでなく、主催した七番勝負のアーカイブが見られる。 *http://www.nishinippon.co.jp/nlp/shogi/ *西日本新聞の特設ページは、棋譜中継ページと対局カメラに加えて、Twitterでタグをつけてつぶやくことで、感想がダイレクトに反映される枠も設置されている。 *http://event.nishinippon.co.jp/shogi/oui/53oui/twitter.php *控室では加藤九段の話がかれこれ1時間以上続いている。加藤九段の話の泉は枯れることがないようだ。 *10時55分の話題は棒銀と新手。振り飛車破りといえば、加藤一二三。数多くの新手法を編み出した。「山崎さんも新手が多いんですね。覚えておかないと」と加藤九段。 *11時20分には話題がうなぎに。「関西将棋会館の近くにはうなぎ屋があまりありませんね」。 *【Twitter解説】 *佐藤秀司>何度か副立会人をさせて頂きましたが、2日制の1日目はホントにのんびりとしたものです(控室の話です 笑)。今年の3月の副立会いの時は、1日目ではなく前夜に握り詰めを作ったりもしたかな? 視聴者サービスというより、暇つぶしですが(笑)。 18 2四歩(23) *11時37分、藤井は1時間の長考で2筋の歩をつまんだ。 *両対局者と関係者は、前日に対局場近くの出島に観光した。1636年に築造された出島は、1859年にオランダ商館が閉鎖されるまで日本で唯一西欧に開かれた窓として、日本の近代化に大きな役割を果たした。 *明治以降、埋め立てが進んだため、扇形の原形ではなくなった。1996年以降、長崎市では貴重な歴史的遺産である出島の復元事業を進めている。 *【両対局者 出島を歩く】 *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2012/08/post-daf4.html *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2012/08/post-b237.html *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2012/08/post-a3cc.html *http://kifulog.shogi.or.jp/oui/2012/08/post-2a2e.html 19 4六歩(47) *第1局でも見られた間合いの取り方。△2四歩と突いたことで、歩が2筋でぶつかりやすくなったため、△4四歩はやや突きにくい。 *【Twitter解説】 *佐藤秀司>うなぎの話で盛り上がっているようなので、また昔話を。 *もう15年以上前のことです。私はC2順位戦、加藤先生はA級順位戦を指していました。夕食の時間になりました。加藤先生の注文は当時の定跡であったうな重(ちなみにもちろん、昼食もでした)。 *そして私はその時初めてうな重を注文しました。一足先に控室に入って、いくつか置いてあったうな重の蓋を開けて頬張ろうとしたその時、給仕をする塾生くんが「あーっ!」と声を上げたんです。 *そう、それは加藤先生の鰻重だったんです。今なら重箱の違いで分かりますが、何にせよ初めてで分からなかったのです。それで塾生君と話して、品代の差額分(加藤先生は上。私の注文したのは下)を私が加藤先生に返すということで話をして貰い、OKの返事。 *これで話は終わりかと思いきや、そうではありません。再開して、不利であったこともあり私は程なく投了。また、加藤先生は日付が変わるころには必勝形を築いていました。しかし、やはり夕食に食べたうなぎがいつもより小さかったこともあり加藤先生は、いわゆるガス欠になったんですね。相手玉の詰みを逃した挙句、自玉が頓死してしまいました…。 *ちなみにその時の加藤先生の相手は私の師匠である中原永世十段(当時)。つまり、私が師匠のアシストをしたという涙ぐましい話になってしまいました(苦笑)。ただ、その期は両先生とも残留されたのでホッとしたことをおぼえています。まぁ、オチはともかく加藤先生が注文されるものというのはやはり色々カロリー計算等もしているんでしょうね。 20 7二銀(71) *現地では明日の15時から終局までで大盤解説会が行われる。 *・場所  ホテルニュー長崎「鳳凰閣東の間」 *・料金  無料 *・解説者 山崎隆之七段、 *・聞き手 室田伊緒女流初段 *・備考  次の一手クイズあり。 *【西日本新聞社の社告】 *http://www.nishinippon.co.jp/info/announce/syakoku/20120718/20120718_0003.shtml 21 4七銀(48) *ここで藤井が32分使って昼食休憩に入った。消費時間は羽生1時間1分、藤井2時間18分。昼食は羽生はうな丼、藤井はざるうどん大盛りとオレンジジュース。 *副立会人の山崎七段に局面のポイントを聞いた。「先手は4九金や4七銀を動かすタイミングが難しいですね。▲5六銀と上がると左辺が厚いのですが、△3五歩と突かれる恐れがあります。 *▲5八金の方が動きやすいですが、金よりも先に端歩などで様子を見る可能性もありますね。ここら辺は駆け引きですね。 *▲9六歩に藤井先生が受けない可能性もあります。先手は▲9六歩△9四歩の交換が入るなら、先手は後の端攻めが権利なので入れたいのです。▲5八金か▲9六歩。僕は▲9六歩のタイプです。 *後手の立場で見ると、△2二飛が一般的。△4四銀などで牽制したいんです。△5二金左と上がると、▲3六歩に△4四銀から△3五歩▲同歩△同銀と攻めたときに▲3八飛で反撃されやすいんです(△4四銀に▲3一飛成がある)。 *金はいずれ上がるでしょうけど、タイミングよく指したいです。この戦型では、制約を与える駒組みをしたいので△5二金左と形を決めたくないですね。 *(後手陣の)美濃囲い自体は珍しくないですが、形を決めるスピードが早いですね。持久戦になると進展性の差があるんです。居飛車の方がやりたい手が多いですから。この戦型は、振り飛車は銀冠に組みにくいんです。 *藤井先生が美濃囲いから動く手を切り開いてくれたら、振り飛車党は大喜びでしょうね」。 22 3五歩(34) *13時37分、バシッとした手つきで指された。藤井から動きを見せた。「後手は▲5六銀を見て△3五歩と突く方が普通なので珍しい。▲4七銀に△3五歩は新たな挑戦です。先駆者ですね」と山崎七段。 *加藤九段と山崎七段は▲2三角△3四角▲同角成△同銀▲5六角△3二飛に▲3六歩や▲2五歩△同歩▲3六歩を調べている。山崎七段は類型が昨年のB級1組▲橋本崇載七段(当時)−△藤井戦で現れたと言う。そのときは△7二玉型で薄い玉形だった。本局は美濃囲いで堅いことが藤井の工夫のようだ。 *加藤九段は上記手順の▲5六角に△1二角を推奨する。△4四歩から△4五歩の4筋攻めが厳しいという考え。 *14時過ぎ、△3五歩に▲3六歩△4四歩▲3五歩△4五歩▲同歩△同飛▲4八飛を調べる。▲4八飛を見て「ジレットかみそりか」と加藤九段がうなる。 *【Twitter解説】 *佐藤秀司>午後もよろしくお願い致します。△3五歩ですか。藤井さんの序盤作戦は最近の傾向の、千日手も辞さず!という指し方はあまりしませんね。なので見ていてとても楽しいです。△3五歩には王位も意表を突かれたのでしょう。ここは時間を投入して考えたい所です。 *※感想戦 *△4四歩もあった。(1)▲5六銀ならそこで△3五歩。(2)▲5八金なら△4五歩▲同歩△同飛▲4六歩△4二飛▲2五歩△同歩▲同飛△2二飛▲2三歩△4二飛という展開が考えられた。後手は△2四歩から△3二金で2三歩を狙う要領。 23 3六歩(37) *「やっぱり羽生さんは▲3六歩とやらないと面白くないよな」と加藤九段。△3五歩にすぐ反発して最強の一手といえる。以下△3六同歩▲同銀△4四銀▲2五歩の進展が一例。▲3六歩は1時間6分の長考で着手された。 *加藤九段は関係者が用意したようかんを、お茶と一緒に楽しむ。佐賀県小城市の「小城ようかん」とのこと。 24 同 歩(35) 25 同 銀(47) *【Twitter解説】 *佐藤秀司>駒がぶつかりましたね。これでこそ、こちらも元気が出ます。藤井さんは3筋の折衝で手損しました。しかし、最近はあまり手数にこだわらない傾向にありますから、どうなりますか。 26 2二飛(42) *ノータイムで△2二飛。ワンテンポ遅れているように思えるが、すぐに山崎七段が「先に動くことで、先手を固めにくくしているのですね」と分析した。▲5八金なら△4四銀から動く。対して、後手は△5二金左と固めやすい。「第1局は後手が固めるのが苦労しましたが、今度は先手が固めにくい。でも、いまの瞬間の後手はリスクが高いですよ」と山崎七段は続ける。 *近年の将棋の傾向で、小競り合いの後に玉を固める手法がよく見られるが、それを警戒しての動きのようだ。高等戦術。 *15時になり、午後のおやつが出された。羽生は島原産ざる豆腐を使用した豆腐白玉、黄粉、黒蜜添えとホットコーヒー。藤井がマンゴーとホットストレートティー。 *小池記者が「1日目からこれだけ研究しているのは珍しいですね」と言うと、「中終盤もいいですけど、プロはこういう序盤を考えるのが役に立つと思いますね」と加藤九段。 *【Twitter解説】 *佐藤秀司>ここで△2二飛とは…。玄妙なる手渡しというところでしょうか。 27 5八金(49) *「これは藤井九段の作戦の成否が出ますね。▲5八金自体は自然な手です。▲7五歩もあるかと思いましたが、加藤先生には一蹴されてしまいました」と山崎七段。▲7五歩も有力(形は違えど第1局でも出た筋)だが、加藤九段は明快な筋を好む。得意戦法が棒銀や(矢倉模様からの)腰掛け銀なのもその現れだ。加藤九段は▲7五歩は明快ではないのだと言う。 *さて、この局面は先手がかなり手得している。以前、別棋戦の観戦記で、「していい手損としてはいけない手損がある」と藤井が話した記述を見たことがある。本局はしていい手損なのだろう。その判断基準を理解することは、藤井の将棋観を理解することそのものだろう。 *【Twitter解説】 *佐藤秀司>単純に計算すれば後手は4手損。このまま組み合うというのでは手損の分、押さえ込まれそう。何か動いて行きたいのですが。 *※感想戦 *▲5九金も検討された。以下△4四銀▲4五歩△5五銀▲6八金上△3二飛▲3七歩△4六銀▲2三角△3一飛。これは後手も十分のようだ。 28 4四銀(33) *後手は△2二飛と回っていないと、▲2五歩で困るところだった。△2二飛はその防ぎ。▲2五歩△同歩▲同銀なら△2七歩▲同飛△4九角と反撃できる。 *【Twitter解説】 *佐藤秀司>ここで先手がボケーッとしていれば△3二飛です。▲3八飛の受けは△4九角や△3七歩があるので不可。穏やかに▲3七歩と受けれくれれば△2二飛と戻して、後手だけ歩を手持ちにしているのを主張していきます。 *※感想戦 *羽生は△5二金左と思っていた。▲6八金右△6四歩で後手は手に乗って指す。 29 4五歩(46) *時刻は16時10分。消費時間は羽生2時間54分、藤井3時間1分。午後に入ってから羽生の考慮が目立つ。検討されていたのは△3二飛。以下(1)▲2三角△3六飛▲3七歩△4六飛▲4四歩△5一金左の進展は後手がいい。(2)▲3七歩△3五銀▲同銀△同飛▲4四歩△同歩▲2三角△5二金左も後手十分と言われている。 *16時30分、加藤九段は羽生ならこうやりそうと言いながら△3二飛▲3七歩△3五銀に▲2三角を示す。加藤九段は「羽生将棋は攻めをつなげていくのがうまい。多少の駒損でも攻めが続くならいいというところがある。僕もそういう将棋で2回やられたことがあるんだ。羽生さんは悪くなったときの中原さんと似ているの。攻め味を残しているんだよな」。 *【Twitter解説】 *佐藤秀司>▲4五歩と突きました。もうこの将棋は千日手の心配はないでしょうね。第一感は△3二飛ですね。それに対し、▲3七歩は△3五銀。または△5五銀もありそうですね(次に△4六銀のすり込みが狙い)。 *▲4五歩に△3三銀は退嬰的でちょっと指せませんね。かといって△5五銀と出るのは狙われるだけの駒になりそうで、これも指しにくいですね。具体的に▲4七金ぐらいで。ここで△6四角も考えられるかな? *△3二飛▲3七歩△3五銀に▲2三角ですか…。しかし、△3六銀▲3二角成△同金▲3六歩の後に△6四角でも△6九銀でも自信はないですね。 *※感想戦 *▲6八金右は△3二飛▲3七歩△2二飛▲9六歩△9四歩▲1六歩△5四歩で難しいながら後手は不満がない。 30 3二飛(22) *局面の焦点は3筋。▲3八飛は△4九角があるので▲3七歩が検討されている。加藤九段の予想は▲3七歩に△3三銀。 *【Twitter解説】 *この△3二飛にどう対応しますかねぇ。▲4七金は指しにくいですが一応、候補に入れときますか。これに△4五銀は▲2三角があります。 *※感想戦 *△5五銀は有力。(1)▲3五銀△5二金左▲9六歩△9四歩▲1六歩△5四歩▲3四歩△6四角。(2)▲5六歩△3二飛▲3五歩△4六銀▲2三角△3一飛▲4一角成△同飛▲3二金△1四角が検討された。 *「△5五銀でも悪くないと思っていた。チャンスとみて動きたくなりますね」と藤井。 31 4四歩(45) 32 3六飛(32) *銀の取り合いは後手十分と言われていたが、羽生の真意はどこにあるのだろう。 *▲3七歩は△4六飛と回り込まれてしまうので、受けるなら▲3七銀だが、△3三飛がピッタリで▲3四歩に△2三飛と逃げ込めると言われていた。 *本譜の進行を聞いて、加藤九段は△2三飛に▲4八飛を予想。△4四歩▲同飛とさばくつもりだ。 *【Twitter解説】 *佐藤秀司>何とも激しいことになりましたね。この局面、楽観派が多い振り飛車党なら「終わってますね」と言うかも知れませんね(笑)。 耐えがたきを耐えて、▲3七銀△3三飛に▲3六歩として▲2二角だけを狙うのは…△3八歩でつらそうですね。 33 3七銀打 *加藤九段の予想した展開に進みそうだ。 *ちなみに、加藤九段は藤井側を、山崎七段は羽生側を持って検討している。検討していると、千日手模様の変化が出てくる。「関係者の皆さまにご心配をおかけしますが」と加藤九段がジョークを飛ばす。 34 3三飛(36) *17時に指された。封じ手は18時。「銀を打たされているので先手は自信がある感じではありません」と山崎七段。手損していたにもかかわらず、気付けば後手ペースと言われている。魔法を見ているようではないか。 *予想されているのは▲3四歩△2三飛▲4八飛△4四歩▲同飛に△4三歩か△4二歩か。 *前者は▲4八飛△4二金と固めて▲6六角に備える。後者は▲4八飛に△4三飛のぶつけを狙う。 35 4八飛(28) *▲4八飛までの消費時間は羽生3時間19分、藤井3時間33分。 *「えっ、▲3四歩を打たなかったの。銀で辛抱したんだから歩を打つかと思ったけど」と加藤九段が驚く。驚いた理由は△3六歩と打ちやすいから。 *「ここは難しいところだ。△4四歩もあるし、△3六歩や△6九銀も見えますから」と加藤九段。羽生は▲2二角でもたれるつもりのようだ。 *しばらくして、評価が変わってきた。(1)△4四歩は▲2二角△3六歩▲2八銀でどうするか。(2)△3六歩▲2八銀に△3七銀は▲4五飛△4四歩▲同飛△4三歩▲2四飛で△2三歩と打てない(△3六歩で歩切れ)。△3六歩は△1四角の攻防のラインが消える懸念もあるという。(3)△3二金で▲4三歩成△同飛と狙う手も検討されている。これは△3六歩▲2八銀を利かす(2)との複合技もあって、変化が広くて深い。加藤九段は(4)△1四角も指摘する。 *ここは手が広い。よって、封じ手になりそうだ。 *「△3三飛には▲3四歩を打ってしまいますね」と山崎七段が言えば、加藤九段は「ところが違うんだ。そうか、▲4八飛と回って、急に羽生さんらしくなってきた。これはニャンともいえない」。 *なお、▲4八飛ですぐに▲2二角の攻め合いは△3六歩から△6四角で後手がいいといわれていた。▲3三角成と飛車を取っても後手陣に響かない。 *17時55分、加藤九段は検討に力を入れていたが、封じ手時刻が近づいたため対局室に入った。18時を過ぎても藤井は考え続けている。「涓滴」と揮毫した扇子をあおぐ。18時7分、藤井が56分考えた末に席を立った。封じ手の意思表示をしたようだ。 *1日目の消費時間は羽生3時間19分、藤井4時間29分。 *【Twitter解説】 *佐藤秀司>▲4八飛ですか。これは△3六歩なら▲2八銀ということなんでしょうか。私が指すならともかく、羽生さんがですか…(苦笑)。ここで封じ手にするかも知れませんね。色々と手があり、王位も絞れないでしょうし。 *五輪で思い出すのですが、昔の大将棋と中将棋には〔銅将〕があったんですよね。それと〔鉄将〕というのも大将棋にはあって。封じ手ですが、諸々を含みに△4四歩とするのではないでしょうか。 *1日目の感想ですが、藤井さんは時間を使っていますが、実はここまでは研究範囲という気がします。 *伊藤果>ぼくも封じ手予想に参加させていただきます。手が多く難解ですが、本命は△4四歩です。でも藤井九段の棋風から察すると、△6九銀だと思います。 *1日目から早くも緊迫感が漂っていて明日が楽しみですね。 *(2日目朝)おはようございます。今日はよろしくお願いします。もうスタンバイOKです(笑)。長崎は好きな街です。封じ手開封、どきどきしますね。さて、なんでしょうか?楽しくて、わかりやすい解説を心掛けるようにと思っています。長丁場ですが、どうぞよろしく。 *※感想戦 *▲3四歩△2三飛▲4八飛を指摘されると、「いやぁ…」と羽生。藤井も自信を持っていた。 36 3六歩打 *8時50分までに両対局者が入室。駒が並べられ、藤原三段の読み上げによって1日目の指し手が再現されていく。指し手が再現された後、立会人の加藤九段により、封じ手が開封された。注目の封じ手は△3六歩。山崎七段と室田女流初段が予想していた一着だ。 *控室に戻ってきた山崎七段は「加藤先生は一拍止まっていらっしゃっていましたね」。加藤九段の封じ手予想は△1四角だった。 *※△3二金は▲4三歩成△同飛▲同飛成△同金▲4一飛が厳しい。また、△1四角は▲4三歩成△4七歩▲同金△4三飛▲3六歩で「自信ないです」と藤井。手順中、▲4三歩成に△5八角成▲同飛△4三飛とさばくのは▲1六角が絶好手になる。 37 2八銀(37) *「ここで△6五角を昨日予想しましたが、当たるかどうか。▲2二角の反撃にうまい手があれば、自然な手は△4四歩です。△6五角はややひねっていますから」と山崎七段。 *【Twitter解説】 *伊藤果>封じ手は△3六歩。ビックリです。こういう直接手は読みにくいですね。羽生さんも虚を憑かれた?感じではないでしょうか。銀取りの歩でしたから、▲2八銀は当然の一着ですね。さあ、藤井さんの次の手が注目です。 *露骨に行けば△3七銀ですか。あと▲4五飛△2八銀不成▲4三歩成△5四銀…これは後手がつらいですね。 38 4四歩(43) *ゆったりとした手つきで指された。と金の種を取り除く。 *【Twitter解説】 *伊藤果>なるほど。ここでじっと、△4四歩なのですね。藤井さんの△3六歩は2八銀を遊び駒にしようという考えでしたか。 *※感想戦 *このあたり、手が広いところだった。(1)△3七銀は▲4九飛で後手面白くない。(2)山崎七段の△6五角は有力だった。▲5六歩なら△3二金で緩やかな流れにして2八銀と手駒の銀の差を主張する。 *藤井は(2)も考えていたが、「昨日考えているうちに、△5五角がよく見えた」と話した。 39 2二角打 *山崎七段は△5五角を予想する。ここで△6五角は▲3八歩と受けられたときに、攻めが重くなるという。 *局面を見ると、戦場は3筋と4筋に絞られている。角交換四間飛車は低い玉形で戦いが起こるため、飛車側の局地戦になりやすい。一方、藤井システム対居飛車穴熊模様の将棋では、相矢倉戦のように盤上全体が戦場になる。将棋のつくりがまったく異なっているわけだ。その二つの四間飛車を自在に操るところに、近年の藤井将棋の特徴がある。 40 5五角打 *9時25分、中央に角を据えた。昨日から考えていたためか指し手が早かった。「振り飛車党だと、このラインに角を打つんですね」と山崎七段。▲5六歩は△3七歩成▲同桂△同角成▲同銀△同飛成▲1一角成(▲4四飛は△4三歩▲同飛成△3二金がある)△6九銀で後手がいい。「攻めの催促には最速の寄せがあります」と山崎七段。 *9時35分、控室に加藤九段が戻る。「私の予想は外れましたなぁ」と言いながら継ぎ盤の前に座って検討を始めた。昨日からの将棋体力に驚嘆。 *▲6八金右と寄ると、△5九銀▲5八飛△6八銀成▲同飛△3五飛▲1一角成△3三桂。先手香得ながら後手の駒もさばけている。 *【Twitter解説】 *伊藤果>▲2二角は羽生さんの狙いの一打です。そして切り返しに△5五角とは!なにかすごい応酬ですね。まさにプロの芸です。どちらが読み勝っているのでしょうか。△5五角の是非はまだわかりませんが、大上段の角、とてもカッコイイですね。しびれます。 *封じ手からこの△5五角まで、藤井さんの流れのようで自信がなければ指せない展開でしょうね。羽生さんは▲1一角成、▲3三角成、▲5六歩…どの選択か、時間を使うと思います。 *※感想戦 *△3一飛▲1一角成△3三桂▲2二馬△6九銀も並べられたが、複雑な手順だ。 41 5六歩(57) *9時50分ごろの局面。ここまでの消費時間は羽生3時間50分、藤井4時間44分。藤井は1時間以上考えている。残り時間は2時間ちょっと。 *催促に驚きの声が上がった。(1)△3七歩成から最速の攻めがあると言われていたからだが、山崎七段が▲同桂△同角成▲同銀△同飛成に▲4四飛△4三歩は▲同飛成と取れることに気付いた。以下△3二金の両取りに▲5五角成△3八竜▲4八竜で先手良し。後手は▲4四飛に△5一金左が勝り、▲1一角成に△6九銀で難解。 *「うーん、私には▲5六歩は指せないな。羽生さんは柔と言っているんですけど、柔らかいでしょ。よく指しましたね。下手すると1手パスですから」と加藤九段。加藤九段は藤井なら(2)△2八角成だろうと予想する。▲同飛△3七歩成▲3三角成△同桂▲3七桂△3六歩▲4八飛△3七歩成▲4四飛△5一金左。こうなれば、△6九銀があって後手は十分に指せていそうだ。「何はなくとも江戸むらさきでしょう」。「これは、まずい権八」。山崎七段と検討している加藤九段は舌好調だ。 *10時30分になり、午前のおやつが出された。二人ともホットコーヒー。 *【Twitter解説】 *伊藤果>羽生さんは▲5六歩でしたね。この選択、意外にも短時間なので驚きます。ということは、この局面羽生さんも自信があるのでしょう。両者の駆け引き、実に見応えがあります。数手で、一挙に終盤を迎えるかも知れない激しい将棋です。やって来い!という▲5六歩。カッコイイ手は許さないという▲5六歩。羽生さんに強い意志を感じます。男藤井の見せ場が来ました。 *考えられる進行は、△3七歩成▲同桂△同角成▲同銀△同飛成▲4四飛△4二歩でしょうか。この将棋、9筋の歩を互いに突き合っていません。つまり、どちらも玉が狭いわけです。終盤どう影響するかが最大のポイントになりそうです。 *藤井さん長考です。そばに将棋の神様がいたら、きっとどちらが優勢かご存知なんでしょうね。そっとぼくに知らせてくれませんかね。 42 3七歩成(36) *11時過ぎ、1時間11分考えていた藤井の手が動いた。加藤九段の予想とは違ったが、「これは自然で、第一感の手です」とのこと。 *【Twitter解説】 *伊藤果>決断の△3七歩成でした! *※感想戦 *△2八角成も検討された。藤井は▲同飛△3七歩成▲3三角成△同桂▲3七桂△3六歩に(1)▲3八歩で自信がなかったという。以下△3七歩成▲同歩△4五桂▲2一飛△5二金左▲1一飛成が一例。なお、▲3八歩で控室で検討していた(2)▲4八飛は△3五角▲3四飛△3七歩成▲4九飛△3八銀▲5九飛△2六角で後手がやれる。「と金を作ればやる気する」と藤井。 43 同 桂(29) *11時20分ごろ、羽生が15分使ってと金を取る。 44 同 角成(55) 45 同 銀(28) 46 同 飛成(33) *11時20分過ぎ、ここまでの消費時間は羽生4時間5分、藤井5時間55分。 *角と銀桂の2枚換えだが、先手は遊びそうだった駒がさばけた意味もある。ここで検討されていたのは▲4四飛△5一金左。そこで先手がどう指すのか分かっていない。 *山崎七段と室田女流初段は大盤解説会前の指導対局のために控室を退室。加藤九段が一人で検討を進めている。 *42手目に△2八角成▲同飛△3七歩成とする変化と似ているが、2二に角が残っていることと3七の駒が竜かと金かが違い。 47 4四飛(48) 48 3一金(41) *逆に。 *※感想戦 *△5一金左は▲1一角成△6九銀▲6八金右△7八銀成▲同金△4六歩▲2四飛で「どうも悪い」と藤井。▲2四飛は馬の利きを自陣に通しつつ▲2一飛成を見て一挙両得。 49 1一角成(22) *「△3一金は間に合わせな、応急処置的な一手なんだけれども」と加藤九段。 50 6九銀打 *藤井はここ数手ほとんど時間を使わずに指している。長考したときの読み筋通りに進んでいるとみられる。△3一金と弾いたことで手番を握り続けている。自分の流れに乗せられれば後手が面白そうだ。▲6八金右△7八銀成▲同金にどう指すか。 *加藤九段が腕を組んで「ふうむ」とうなる。「(△2八角成の変化と違って)と金がないんだよな。と金があればジワッと行けるんだけれど」。加藤九段は▲5五角が利くと絶好と言う。 *【Twitter解説】 *伊藤果>バタバタと、あっという間に進みました。まだお昼前ですよ。一気に終盤戦です。△6九銀は寄せのハガシの手筋で、▲6八金右は△7八銀成▲同金△6九銀とまた絡まれて嫌です。 51 6八金(58) 52 7八銀成(69) 53 同 金(68) *「そう、次の一手がご注目で、当てた方にはご褒美を」と加藤九段。今日の控室には長崎名物のカステラが出されている。継ぎ盤で示されたのは△6九銀、△6五桂、△4六歩、△3八竜。加藤九段推奨手は△3八竜。▲5五角を避けつつ、△6九銀を狙う。 *ここで藤井が46分使って昼食休憩に入った。消費時間は羽生4時間20分、藤井6時間45分。藤井の残り時間は1時間15分。昼食は羽生が天ざるうどん、藤井は和牛のカレーとオレンジジュース。 *【Twitter解説】 *伊藤果>羽生さんの4四飛が死角になっていて、1一馬が自陣に利いていません。この飛車をどうさばくかが焦点になりそうです。駒割りでは角金交換で、羽生さんが有利。手番は藤井さん、この差をどう埋めていくかに興味があります。 *藤井さんは攻めをつなげていくよりありません。第一感はやはり△6九銀です。△3八竜だと、▲3九歩△2八竜▲5五角が気になります。△6五桂も有力です。 *いまは昼食休憩なのですが、すでに終盤の局面では食事の楽しさが対局者にはないかも知れませんね。長崎は3年前に訪れましたが、やはり本場の皿うどんと、チャンポンは美味しかったです。意外ですが、餃子も美味しく、忘れがたい味の一つです。 *僕は自称イケメン?で、昼ご飯は週に5回は麺類です。家でも皿うどんやチャンポンも作ります。作るのは詰将棋だけではありません。先ほどは冷やし中華を食べました。さあ、これからが佳境ですね、どんな結末が待っているのか楽しみです。 54 3八龍(37) *13時30分、対局が再開されるとすぐに△3八竜が指された。△6九銀を狙う。加藤九段が力説していた手だ。先手は▲5五角が竜取りに加えて先後の玉に利く攻防手。5五に角を据えられると▲2一馬△同金▲7四桂が生じるため、後手玉が危険になる。△3八竜はそれを避けた意味もある。 *13時45分、山崎七段が控室に戻って、大盤解説会前に検討する。大盤解説会は入場無料。近隣の方は足を運んでいただきたい。 *山崎七段は48手目△3一金はどうだったかと言う。▲1六角△2八竜▲6八銀打と打たれると後手が攻め切るのは大変ではないかとのこと。▲1六角は受けと▲6一角成の強襲を見ている。△5一金左に▲1六角〜▲6一角成は効果が薄いのだが。 *以下(1)△6九銀には▲7九金△5八銀成▲3八香。(2)△6五桂は▲4五飛△7七桂成▲同馬!で鉄壁になる。14時を過ぎて、山崎七段から先手を持ちたいという意見が。羽生は1時間以上考えている。14時25分、控室に加藤九段が戻る。継ぎ盤で上記の(1)の▲3八香を見て「ほぉぉ」と声を上げた。続いて▲1六角から▲6八銀打に△8五桂と打ち、ノータイムで▲4五飛と応じられると「ははぁ、これはなっとくのカレーだ」。 *「これはうなるところだ。えーと、こうやって、大先生はこうしたのか。見れば見るほど(先手が)厚いなぁ。▲6八銀打がいいんですね。本当の話、困りましたね」と加藤九段。加藤九段と山崎七段の一致した。 *【Twitter解説】 *伊藤果>ほう…△3八竜。なにも手を加えずにですか。これはひとまずは▲3九歩と打ちたいですね。ただ、本当はこの歩を3二へ打ちたいのですが…。 *それと▲1六角はないでしょうか?以下△2八竜▲3二歩△6九銀▲7九香ではどうでしょう。 とにかく藤井さんの△3八竜は危険な匂いがします。同時に勇気も感じます。 *羽生さん、かなりの長考ですね。珍しいです。プロはどうしてこんなにも考えるのか?考えれば考えるほどいい手が見つかるかというと、そうでもないのです。考えれば考えるほど迷うときもあるのです。どちらなのか…? *※感想戦 *すぐ△6九銀▲7九金△3八竜▲6八銀打△5八銀成▲4七角△4八竜▲5八角△同竜▲3二歩で先手がいい。 55 1六角打 *14時56分ごろ、羽生が1時間26分使って、ついに着手した。予想されていた▲1六角。攻防だ。ここまでの消費時間は羽生5時間46分、藤井6時間45分。羽生が長考したところだが、消費時間はまだ1時間近い差がある。 *大盤解説会に山崎七段と室田女流初段、関係者が向かったため、控室では加藤九段が一人で調べている。対局中のような厳しい表情で△2八竜▲6八銀打△6九銀▲7九金△5八金▲3八香△3七歩▲3二歩という手順を並べる。 *15時に出される午後のおやつは、羽生がフルーツの盛り合わせ(白桃とマンゴー)とホットレモンティー。藤井は羽生と同じフルーツの盛り合わせとホットストレートティー。 *【Twitter解説】 *伊藤果>真意はわかりませんが、ついに▲1六角が放たれました。 *少し前の藤井さんの△5五角、いまの羽生さんの▲1六角、どちらも攻防の自陣角です。角を打つセンス勉強になります。 *※感想戦 *単に▲6八銀打は△6五桂▲6六銀△6九金▲4六角△6八金▲同金△5九銀がうるさい。「(▲1六角と)受けに使うのは仕方ない」と羽生。あまり打ちたくないニュアンスだった。 56 2八龍(38) *3筋に逃げるのは、▲1六角を0手で打たれた理屈で面白くない。しかし、この△2八竜も53手目の局面で指せたので、やはり0手で▲1六角を打たれたことになる。 *羽生側から見れば、この角をうまく使えれば不満はない。 57 6八銀打 *山崎七段が指摘していた手順。横からの攻めに備えて1手で堅くなった。▲1六角が利いたので、3八に歩や香を打って竜の利きを止めることもできる。 *山崎七段や加藤九段の検討では、54手目のコメントで記したように、後に▲3八香と金取りに打つ手順を調べていた。 *【Twitter解説】 *伊藤果>そうですかあ、▲6八銀打と玉の堅めですか。次に▲3二歩という狙いなんでしょうね。 58 6九銀打 59 7九金(78) *「羽生さんは▲6八銀打で少し指せていると感じているのではないかと思います」と加藤九段。 60 5八銀成(69) *15時20分、控室では黙々と加藤九段が継ぎ盤の駒を進めている。あっという間に30手近く進めて、納得してから元に戻した。「直感精読」をモットーにする加藤九段。まず、直感の赴くままに指し手を進めるとどうなるかを確かめたようだった。そして、精読して読みの形を整えていく。加藤九段の思考の一端を垣間見る場面だった。 *ひとしきり並べ終えると、加藤九段が大盤解説会に出演するために会場へ向かった。15時30分に出演する手はずになっていたのだ。会場はすでに150人近いファンが訪れている。初めての長崎市での王位戦対局。対局者は羽生、藤井。解説も加藤、山崎、室田と役者がそろっている。 *加藤九段は大盤解説会場で「王位戦はわれわれ棋士にとって大変ありがたい棋戦で、熱心に棋士に支援してくださっています。そのことに謝意を表したいと思います。いま王位戦は目が離せませんね」とあいさつした。 61 3二歩打 *羽生は手抜いた。△6四桂や△6五桂が見えているので、継ぎ盤では▲3八香が示されていた。考慮中の藤井は残り1時間を切っているようだ。 *【Twitter解説】 *羽生さんの1一馬と、4四飛のバランスの悪さが気になりますね。なんだかここ数手を見て、藤井さんが優勢に思えてきました。 *ついに、▲3二歩が決行されました。長らく待たされましたが、ここでとは…。黙って金を取らす人はいません。藤井さん怒りのスパークという場面ですが、ひょっとしてですが、千日手なんてこともあり得そうです。たとえば△6八成銀▲同銀△5七銀▲7七銀打△6八銀成…の千日手です。 *※感想戦 *「これは足りないと思った。際どいけど」と藤井。なお、▲3八香は△3二歩。「香を打っても、結局△1九竜から来られて」と羽生。 62 6九金打 *16時5分、藤井の手が駒台の金をつかみ、4九から6九にグワッとスライドさせた。金銀に金銀をぶつけて守りを削ろうとしている。ガジガジ流を連想させる。 *▲同金△同成銀にどうするか。節約して受けるなら▲4八歩、駒を使うなら▲7八金が浮かぶところ。 *【Twitter解説】 *伊藤果>△6九金で千日手は解消されましたか。それにしても、藤井さんは一段目に駒を打つのが好きなんですね。 63 同 金(79) 64 同 成銀(58) *藤井の手つきに力が入っていた。▲3一歩成から▲4二飛成を許すと、1一馬が先手陣に利いてくる。その前に食いつきたい。 *※感想戦 *「一番迫っているはずなんだけど、(後の攻めで)いい組み合わせがなかった」と藤井。 65 4八歩打 *16時15分、残り時間は羽生1時間43分、藤井34分。 *▲7八金なら堅いが、後手の駒が少し前に進んでしまう。 66 1九龍(28) *16時20分、加藤九段が控室に戻ってくる。 *▲3一歩成に△8六桂!を指摘。▲同歩に△8七香▲同玉△6八成銀(8九桂取り)を狙っている。先手玉が寄っているのかどうか。「私はタケシだよ」と興奮気味にネクタイを締め直した。 *【Twitter解説】 *藤井さんの駒台に香が1枚増えました。これは△8四香という狙いもあって大きな補充と思います。 67 3一歩成(32) *先ほど記した、△8六桂▲同歩△8七香の攻めは▲同玉△6八成銀▲同銀△8九竜▲7七玉と逃げられて寄せ切るのはなかなか大変のようだ。 *駒の損得は角と桂の交換。先手がかなり駒得している。 *16時30分。精読してみると、上記の▲7七玉に△7四桂があった。以下▲8八金の受けは△7八金▲同金△8六竜で頓死してしまう。△7四桂に▲同飛と切ることになるようだ。 *【Twitter解説】 *伊藤果>えっ!手抜きで▲3一歩成。大胆過ぎではないですか。この局面、100%近く藤井さんは△8六桂でしょう。 68 8六桂打 *出た!▲7九香は△同成銀なので桂を取る。取るにしても、▲同銀は△6八成銀なので▲同歩となる。先手の4四飛は、玉が上部へ逃げたときに、受けに働いているが、1一馬を止めている意味もある。微妙な駒だ。 *加藤九段は腕を組み、目を閉じながら「こうやって、こうなる、そうしてえーっと」。頭をフル回転させている。羽生の次の一手は?羽生は座り直す様子がモニターに映る。 *16時55分、△8六桂に▲同歩△8七香▲同玉△6八成銀に▲8八金と受ける手が検討されている。後手の寄せもギリギリかもしれない。「▲8八金はこの一手だ」と加藤九段。この局面の残り時間は羽生1時間38分、藤井18分。羽生は20分以上考えている。時刻は17時を過ぎた。 *いまの局面で▲7八香も示されている。 *【Twitter解説】 *伊藤果>これは羽生さんの見落としか?勝敗はまだわかりませんが、ここで手が止まったのは明らかに羽生さんが変です。 *△8六桂が利いたのも、香の補充が役立っています。▲3一歩成は負ければ敗因となります。 69 同 歩(87) *17時11分、33分使って指された羽生の応手は▲8六同歩だった。 *※感想戦 *▲7八香は△7九金と張り付かれる。 70 8七香打 *「▲同玉は寄りなので、▲7八玉なんですね」と加藤九段。 *▲8七同玉は△6八成銀▲8八金に△8九竜▲同金△9五桂▲9六玉△8七銀▲8五玉△7四金で受けが難しかったという。次いで▲同飛△同歩▲5五馬は△7三銀。 *※感想戦 *△6八成銀は▲同銀△8七銀▲同玉△8九竜▲7七玉△6四香▲8八金で受かる。 *また、ここで▲8七同玉なら、藤井は上記の△6八成銀▲8八金△8九竜▲同金△9五桂▲9六玉△8七銀▲8五玉に△7四歩のつもりだったという。 71 7八玉(88) *羽生は4九にバリケードを築こうとしている。△8九香成に▲4九香△6八成銀▲同銀。△6八成銀なら▲同玉で右辺へ逃げ出せる。手持ちの時計では、藤井がここで7分以上考えている。 *【Twitter解説】 *伊藤果>そうなんですよ。この▲7八玉もあるので、先に△6八成銀▲同銀△8七香かなと思っていました。 72 6八成銀(69) *※感想戦 *△8九香成は▲9五桂が羽生の予定。△9五桂の筋を消しつつ、次の▲4二飛成が1一馬を利かす攻防の詰めろになる。 73 同 玉(78) 74 8九香成(87) *△6五桂のしばりを狙う。それを避けようと▲5七玉なら△1七竜があると加藤九段。 *藤井が71手目▲7八玉の局面で、三社連合の藤本記者が対局室に入った。そのとき藤井の残り時間は8分だったという。ここで(1)▲4一飛成としても、詰めろになっていない。以下△6五桂としばられて、▲7一銀△同金▲同竜△同玉▲6二金△同玉▲5四桂△同歩▲4四馬に△5三金が唯一の合駒で詰まない。 *17時40分、加藤九段は(2)▲4三角成を指摘。△6五桂と△1七竜に備えている。そして、次に▲5三馬が▲7一銀以下の詰めろになる。「先手勝ちだとは思いますが、断言はできません。手が多いですので」と加藤九段。▲4三角成△1七竜に▲4七金が予想されている。 *18時、羽生は35分以上使っており、残り30分を切った。前傾姿勢で読みを入れている。 *【Twitter解説】 *伊藤果>藤井さんが寄せられるかどうか、際どい終盤戦になりました。藤井さんは次に△6五桂と打てれば勝ちです。 *羽生さんの持駒が増えましたね。しかし、まだ藤井陣に詰めろは掛かりません。羽生さん、最後の長考ですね。ここをしっかりクリア出来れば勝てると思って考えているのでしょう。 75 4二飛成(44) *40分ほど考えて指された。 *※感想戦 *「最初▲6一角成とできると思った」と羽生。以下△同銀▲4二飛成△6二桂▲5七玉△1七竜▲4七香△4六歩を気にした。 *ここでは▲4一飛成がよかった。本譜は後手玉が絶対に詰まないが、▲4一飛成なら先手に駒が入れば、後手玉が▲7一銀以下詰む。よって、△6五桂には▲6六銀から受けて先手が勝っていた。 76 6五桂打 *△7九竜▲5八玉△5七金の詰めろがかかった。 *藤本記者が、大盤解説会場で山崎七段が▲7四桂△同歩▲5五馬は△7三桂打▲1九馬△5七銀▲7八玉△7七桂成▲同玉△6八銀打▲8七玉△7七金▲9六玉△9四歩と先手玉を端に追って寄っていると解説していたと教えてくれた。手順中の△7三桂打が先手玉への寄せに働いている。 *「ん、これはどうするつもりなんだろう。ひやぁ。分からん、次にどうするのか分からん」と加藤九段。ここで▲6六銀は△1七竜が詰めろ角取りになる。 *【Twitter解説】 *伊藤果>羽生さんの▲4二飛成はすごい手です。△6五桂を打たせてもいいと…。藤井さんにとってはこの△6五桂が打てれば悔いなしと思います。 77 6六銀(77) 78 7七銀打 79 5八玉(68) *△7七銀で△1七竜は「▲5五馬のつもりなんだな」と加藤九段。 *▲5五馬は△5七銀▲7八玉△8八金▲6九玉に△1九竜を防ぎながら▲7四桂からの詰めろを見た、詰めろ逃れの詰めろだ。 80 6六銀(77) 81 同 馬(11) *「ふうむ、そうか。これは羽生さんが正確に読み切ったんだな。受かっています。これはお見事です」と加藤九段が言う。 82 5七銀打 *4六からスライドさせて△5七銀。「とはいえ、まだ何とも言えない。楽観はいけない。▲同馬△同桂成▲同玉△7九角まで行くんだけども」と加藤九段。 83 同 馬(66) *【Twitter解説】 *伊藤果>羽生さんの受けはまさしく、肉を切らして骨を絶つ感じです。 84 同 桂成(65) *※感想戦 *自然に思えるが…。△6九竜が勝負手だった。▲4七玉△5七桂成▲3六玉と逃げ出したときに、△3四歩が▲同角に△3九竜を見た好手。△3四歩以下▲4五玉△3九竜▲3八金△5四角▲3四玉△3八竜▲同角△4三金▲同竜△同角▲2三玉△3三飛▲1二玉△3八飛成▲2二金とすれば、先手玉が捕まらないので後手が負けそうだが、際どいところが多かった。「ちゃんと指せば残していましたか」と羽生。「こちらは楽しめた」と藤井。 85 同 玉(58) *ここで△7九角は▲4七玉で大丈夫のようだ。次いで△1七竜には▲2七金。 86 7九角打 *後手は▲6一角成がなくても、▲8五香から▲8三香成の詰み筋が受けにくい。4二竜が攻防に利いている。 87 4七玉(57) *藤井は攻防手が欲しい。△4五歩は詰めろ。▲同竜と取らせれば、後手玉が少し楽になる。次いで△1七竜▲2七金△1六竜▲同金△2七角が竜金両取りになる。しかし、△2七角に▲6六桂が詰めろになるという見解だ。 *18時25分、関係者は加藤九段の検討を見守っている。 *藤井はここで4分以上考えている。残り5分を切った。 88 4五歩打 *「(△4五)歩と打ちました」の関係者の声に、「まあ、当然ですよね」と加藤九段。 *残り時間は羽生17分、藤井2分。 89 同 龍(42) 90 9九成香(89) *藤井の目は盤の隅に向いていた。 *「ふうん、なるほど、はーはー、香を取ったんですね」と加藤九段。 91 6六桂打 *羽生の手は少し震えていた。▲7四桂打△同歩▲同桂△7三玉▲8二銀△7四玉▲7五金の詰みを狙っている。 *「△7四香と受ければ、▲2七金で攻めがないですね」と加藤九段。 *【Twitter解説】 *伊藤果>ついに藤井陣に詰めろが掛かりました。 92 7四香打 *藤井はここから1分将棋に入った。 93 8五香打 *これは詰めろではないが、羽生は勝ちとみている。 94 1七龍(19) 95 2七金打 *△1六竜▲同金△2七角は▲4二竜が▲8三香成からの詰めろ。そのために93手目▲8五香を打った。 96 1六龍(17) 97 同 金(27) *「ちょっとねぇ…。駒の補充が利かないのがねぇ」と加藤九段。 98 4六歩打 *▲3六玉で良いようだ。加藤九段が対局室に向かった。継ぎ盤を動かす人がいない。少しして、対局カメラに加藤九段の姿が映る。 *18時44分、羽生が席を立った。 99 3七玉(47) *羽生は3七に逃げた。これでも先手玉は捕まらない。ここで藤井の投了となった。後手玉は詰まないものの、次に▲4二竜や▲9五桂で一手一手の寄せとなる。 *終局時刻は18時46分。消費時間は羽生7時間51分、藤井7時間59分。第4局は8月8・9日兵庫県神戸市「中の坊瑞苑」で行われる。 *※感想戦は20時55分ごろに終了。大盤解説会に出演した後、2時間ほど行われた。羽生は「3筋の歩交換は危なかったか」、藤井は「(42手目で)△2八角成が利かなかったのが誤算だった」と話した。 *【Twitter解説】 *伊藤果>羽生さんの玉は、危機脱出でしたね。 *序盤から藤井さんらしい将棋で、やはり魅せる人です。羽生さん終盤ぐらっときたかと思いましたが、倒れませんでした。第4局も藤井さんは藤井さんの将棋で向かっていくと思います。7番まで期待します。 *朝から長時間でしたが、スリリングな展開で将棋の素晴らしさを再認識させられました。お付き合い、ありがとうございました。楽しかったです。また機会がありましたら、よろしくお願いします。 100 投了 まで99手で先手の勝ち