# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.55 棋譜ファイル --- 対局ID:11304 記録ID:5f9676e82e3bd100045a8419 開始日時:2020/11/05 10:00 終了日時:2020/11/05 15:11 表題:大山名人杯倉敷藤花戦 棋戦:第28期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負 第1局 戦型:ゴキゲン中飛車 持ち時間:各2時間 消費時間:115▲112△120 場所:関西将棋会館 備考:昼休前58手目▲39分△79分\n 図:投了 振り駒:3,0,里 計時方式:チェスクロック 秒読み:60秒 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:00〜13:00 昼休前消費時間:58手▲39分△79分 手合割:平手   先手:里見香奈倉敷藤花 後手:中井広恵女流六段 先手省略名:里見香 後手省略名:中井 手数----指手---------消費時間-- *里見香奈倉敷藤花に中井広恵女流六段(フリー棋士)が挑戦する、第28期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負がいよいよ開幕。第1局は11月5日(木)に、大阪市福島区「関西将棋会館」で行われる。持ち時間は各2時間(チェスクロック使用)で、使いきると1手60秒未満での着手となる。対局は10時開始予定で、先後は振り駒で決まる。12時から13時までは昼食休憩。立会人は小林健二九段、記録係は北村桂香女流初段がそれぞれ務める。観戦記は北村實・大山名人記念館館長が執筆する。 * *【第28期三番勝負は11月5日(木)関西将棋会館で開幕】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/2811-ac21.html * *(棋譜・コメント入力=武蔵) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。#は局後の感想が追記された指し手。【】内は中継ブログタイトルならびにリンク] 1 5六歩(57) ( 0:04/00:00:04) *原孝吏・倉敷市副市長が行った振り駒の結果、歩が3枚出て里見の先手に決まった。 *10時、立会人の小林健九段が対局開始を告げた。両対局者がと深々と頭を下げる。やがて里見の手がゆっくりと5筋の歩に伸びた。 * *【対局開始】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-75cb.html 2 8四歩(83) ( 0:22/00:00:22) *中井もさして時間を使わずに△8四歩と突いて、居飛車を示した。 3 7六歩(77) ( 0:10/00:00:14) *◆里見 香奈(さとみ かな)倉敷藤花(清麗・女流名人・女流王位)◆ *1992年3月2日生まれ、島根県出雲市出身。森けい二九段門下。2004年、女流2級。2020年、女流六段。女流棋士番号は33。 *タイトル戦登場は51回。獲得は清麗2期、女王1期、女流王座4期、女流名人11期(クイーン名人)、女流王位6期(クイーン王位)、女流王将7期(クイーン王将)、倉敷藤花10期(クイーン倉敷藤花)の計41期。 * *【里見香奈倉敷藤花】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-2970.html 4 6二銀(71) ( 0:20/00:00:42) *◆中井 広恵(なかい ひろえ)女流六段◆ *1969年6月24日生まれ、北海道稚内市出身。(故)佐瀬勇次名誉九段門下。女流フリー棋士。1981年、女流2級。2002年、女流六段。 *タイトル登場は44回。獲得は女流名人9期(クイーン名人)、女流王位3期、女流王将4期、倉敷藤花3期の計19期。棋戦優勝は10回。 * *【中井広恵女流六段】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-00bd.html 5 5五歩(56) ( 0:34/00:00:48) *大山名人杯倉敷藤花戦は倉敷市、倉敷市文化振興財団、山陽新聞が主催する棋戦。倉敷市出身の大山康晴十五世名人の功績を顕彰して、倉敷市芸文館の開館に合わせて1993年に創設された。棋戦名は倉敷市の市の花が「藤の花」であることにちなむ。 * *【倉敷市公式ホームページ】 *http://www.city.kurashiki.okayama.jp/ *【アルスくらしき(倉敷市文化振興財団)】 *http://arsk.jp/ *【山陽新聞】 *http://www.sanyonews.jp/ 6 4二玉(51) ( 0:28/00:01:10) *例年、三番勝負の第2局と第3局は倉敷市芸文館で公開対局が行われる。今期は今月21日(土)に第2局、1勝1敗となった場合のみ22日(日)に同館で第3局を戦う。しかし、今年は新型コロナウイルスの影響により、公開対局は行われず、大盤解説会(要事前申込)のみの開催が決まっている。 * *【第28期大山名人杯倉敷藤花戦イベント情報】 *https://arsk.jp/geibun/event/7987/ 7 5八飛(28) ( 0:15/00:01:03) *主催の倉敷市と倉敷市文化振興財団は倉敷藤花戦以外にも、全国小学生倉敷王将戦を開催しており、将棋のまちとして将棋文化を推進している。若手棋士の多くはこの大会の出身者だ。 *令和3年1月に開催予定だった「大山名人杯争奪第19回全国小学生倉敷王将戦」は、新型コロナウイルスの感染拡大の状況をふまえ、中止が決まっている。 * *【全国小学生倉敷王将戦】 *https://www.shogi.or.jp/tournament/elementary_school/index.html *「第19回全国小学生倉敷王将戦」全国大会中止のお知らせ *https://www.shogi.or.jp/event/2020/09/19_17.html 8 5二金(61) ( 0:52/00:02:02) *関係者が対局室から控室に戻ってきた。静かだった控室がにぎやかになる。 * *【対局開始前(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-a3c3.html *【対局開始前(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-c9dc.html 9 4八玉(59) ( 0:07/00:01:10) *里見の今年度女流棋戦成績は16勝4敗(0.800)。 *女流棋戦通算成績は283勝97敗(0.745)。 10 1四歩(13) ( 1:22/00:03:24) *中井の今年度女流棋戦成績は9勝3敗(0.750)。 *女流棋戦通算成績は676勝343敗(0.663)。 11 1六歩(17) ( 0:05/00:01:15) *里見の倉敷藤花戦成績は36勝8敗(0.818)。第16期で自身初となるタイトルを獲得。それから5期連続で防衛を果たした。第21期で甲斐智美女流王位に敗れて失冠するも、第23期で再びタイトルを奪い返してから5期連続でタイトルを保持している(肩書きは当時)。 12 8五歩(84) ( 2:18/00:05:42) *中井の倉敷藤花戦成績は72勝27敗(0.727)。第9期から第11期の計3期でタイトルを保持した。 *2007年に行われた女流名人戦五番勝負以来、13年半ぶりのタイトル戦の登場。17期ぶりの復位を目指す。 *今回の挑戦で、これまでの女流タイトル挑戦の最年長記録である清水市代女流七段の49歳8か月を51歳4か月に更新した。そのほか、中井は女流棋戦タイトル挑戦の最年少記録(13歳)も持っており、最年少記録と最年長記録をあわせ持つことになった。 13 7七角(88) ( 1:05/00:02:20) *倉敷藤花の座に最も多く就いたのが、里見と清水女流七段でともに通算10期。通算5期獲得が有資格条件の称号であるクイーン倉敷藤花を得ているのもふたりのみである。 *今期、里見がタイトルを防衛すれば、倉敷藤花在位数で単独トップとなる。 14 3二銀(31) ( 0:28/00:06:10) *中井の女流タイトル獲得は通算19期。この数字は清水女流七段の43期、里見の41期に次ぐ第3位の記録である。中井は女流棋士で唯一、通算対局数が1000局を超えており、女流公式戦では通算で676勝を挙げている。これは女流史上類を見ない記録で、現在も更新を続けている。 * *【両者のタイトル戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-ce40.html 15 6八銀(79) ( 0:17/00:02:37) *両者は過去に12局の対戦があり、ともに6勝と五分の成績。2015年以来、約5年ぶりの対戦でタイトル戦を戦うのは今回が初である。中井の勝ち星である6勝のうち、5勝は大和証券杯ネット将棋・女流最強戦でのもの。大和証券杯はネット対局での早指し戦で、2007年から2012年まで行われた。そのうち、中井は2009年から2011年まで3連覇を果たしている。 16 3一玉(42) ( 0:18/00:06:28) *立会人を務める小林健九段は、ここまでの進行を以下のように話す。 *「里見さんの中飛車、中井さんの居飛車という予想どおりの戦型になりました。居飛車側の工夫は角道を突いていない点で、今後、好機に△3四歩と突くのでしょう。また、右銀をどのように活用するかもポイントのひとつで、△7四歩〜△7三銀〜△6四銀と使うのか、△6四歩〜△6三銀とするのかで将棋が変わってきます。先手は左銀を早めに5六まで移動したいところです」(小林健九段) 17 3八玉(48) ( 0:09/00:02:46) *両者の過去の戦型はすべて里見の振り飛車、中井の居飛車という対抗形。1局だけ里見が三間飛車を採用しており、そのほかはすべて中飛車だった。 18 4四歩(43) ( 1:28/00:07:56) *本局に使用している盤や駒台、駒箱は大阪市北区の老舗料亭「芝苑」からの提供によるもの。芝苑は第8回全日本プロトーナメント決勝三番勝負第2局(1990年、羽生善治竜王−谷川浩司名人戦)を始め、数々の名勝負が繰り広げられた場所。2006年には「第13回大山康晴賞」を受賞した。 *しかし、今年の5月、新型コロナウイルスの影響により、惜しまれつつ閉店となった。 19 5七銀(68) ( 0:15/00:03:01) *日本将棋連盟ホームページ内のコラムでは、紋蛇記者が執筆した今期三番勝負の展望記事が掲載されている。 * *【13年ぶりの挑戦!第28期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負展望】 *https://www.shogi.or.jp/column/2020/11/28kurashiki_outlook.html 20 3四歩(33) ( 2:53/00:10:49) *△4四歩と突いてから△3四歩と角道を開くのが工夫か。△4四歩の前に△3四歩と突くと、▲5四歩から角交換を迫られる可能性があった。 21 2八玉(38) ( 0:11/00:03:12) *現局面の前例は4局あり、▲1勝、△2勝(1千日手)。 22 3三角(22) ( 4:39/00:15:28) *角を上がって囲いの発展を目指した。 23 3八銀(39) ( 0:32/00:03:44) *里見も美濃囲いを構築した。 *「先手は早めに▲1六歩と突いていたので、穴熊よりも美濃囲いのほうが有力でした」(小林健九段) 24 7四歩(73) ( 1:28/00:16:56) 25 5六銀(57) ( 0:09/00:03:53) *「▲5六銀はすごくいい形ですよね。賛否が分かれるとは思いますが、自分は振り飛車側を持ってみたくなります」(小林健九段) 26 6四歩(63) ( 1:22/00:18:18) *6筋の歩を突いて▲6五銀を防ぐ。 27 4六歩(47) ( 0:09/00:04:02) *「昔は飛車を振る場合、必ず▲6六歩と角道を止めていましたが、いまは角道を止めずに飛車を振れるようになったので、駒組みの幅が広がりました」(小林健九段) 28 4三金(52) ( 1:06/00:19:24) *金を上がって高美濃に囲いを発展した。▲4五歩からの交換に備えている。 29 3六歩(37) ( 0:10/00:04:12) *現局面で前例が1局ヒットした。2018年の第8期加古川青流戦▲出口若武三段(現四段)−△井田明宏三段の一戦で、現局面から△6三銀▲2六歩△7二飛として、後手が7筋から動いている。結果は先手の勝ち。 * *【戦型は先手中飛車】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-621c.html 30 6三銀(62) ( 1:46/00:21:10) *居飛車側の右銀をどのように活用するかがポイントのひとつ。△6三銀で5筋を補強した。 31 2六歩(27) ( 0:09/00:04:21) 32 7二飛(82) ( 3:23/00:24:33) *先手の弱点ともいえる角頭を狙って飛車を寄った。▲6六角には△8二飛と戻し、▲7七角△7二飛▲6六角△8二飛……と進めば千日手模様になる。 33 3七桂(29) ( 0:12/00:04:33) *角頭は受けない。桂を跳ねて自陣の整備を急ぐ。 *対局開始から40分が経過した。早い進行だったが、現局面で中井が手を止めている。前述した▲出口−△井田戦は△2四歩と突いていたが、△7五歩からの仕掛けも十分考えられるところだ。 34 7五歩(74) (10:33/00:35:06) *10分の少考で、△7五歩と歩交換を挑んだ。この手で前例から離れている。 35 同 歩(76) ( 0:07/00:04:40) 36 同 飛(72) ( 0:07/00:35:13) 37 6六角(77) ( 0:08/00:04:48) *角を上がり、飛車に当てて反発する。用意の切り返しだったのだろう、里見はほとんど時間を使わずに着手した。 *「6筋の歩の保留を生かしましたね」(小林健九段) 38 7二飛(75) ( 6:27/00:41:40) *しばらく時間をかけてから飛車を引き揚げた。 39 7八飛(58) ( 0:10/00:04:58) *飛車をぶつけて交換を迫った。△7八同飛成▲同金と交換できれば、後手陣のほうが打ち込みの隙が多い。△6九飛と先着されても、▲7九歩で後手の飛車は動けない。 *中井は左手の上に右手を重ね、体を前傾させる。里見は膝に両手を置いた。自身の読み筋を追うかのように、右手の中指がトントンと動く。 * *【早くも戦いに】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-2087.html 40 同 飛成(72) ( 9:14/00:50:54) *控室では代えて△7四銀を本命視していたが、中井は強く飛車を交換した。控室では驚きの声が上がる。 *「中井さんは強気ですね。飛車の交換は成算がなければ指せません」(小林健九段) * *※局後の感想※ *「△7四銀と上がっても、このあといい形にはならないかなと」(中井) 41 同 金(69) ( 0:06/00:05:04) 42 6五歩(64) ( 1:36/00:52:30) *飛車を打つ前に角取りに歩を突いた。▲6五同銀なら、いつでも△7三桂と銀に当てて跳ねる筋が残る。 *11時、両対局者に飲み物が運ばれた。里見は黒烏龍茶と特茶、中井はアイスコーヒー。おやつは両対局者の控室に、「ハイジ」の「ダックワーズ」という焼き菓子が用意されている。 * *【対局者のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-95ec.html 43 7七角(66) ( 1:51/00:06:55) *突き出された歩は取りづらかったか。 *「▲7七角は冷静な一着です。将来、▲7一飛と打ったとき、△7三飛の合わせが金取りになるのを防いでいます。▲6五同銀は好機に△7三桂の活用を見せられるのと、△3五歩が気になったのでしょう。5六に銀がいれば△3五歩には▲4七銀引と形よく受けられます。先手は▲6一飛が楽しみで手には困りません。逆に、後手はここからどのように手を作っていくのでしょうか」(小林健九段) 44 3五歩(34) ( 7:20/00:59:50) *11時7分の着手。△3五歩までの消費時間は、▲里見6分、△中井59分。 * *※局後の感想※ *代えて△8六歩の突き出しは考えられたか。以下、▲8三飛△8七歩成▲同飛成△7三桂の局面で、先手の指し手が悩ましい。一例として▲6八角△3五歩▲4七銀引△3六歩▲同銀△3五歩▲2七銀引△4五歩が示された。 *「後手の攻めがつながると厳しそうです」(里見) *「ただ、こちらも歩が少ないので、攻め続けられるかどうか自信はありません」(中井) 45 4七銀(56) ( 0:28/00:07:23) *銀を引いて形よく3六の地点を補強する。先攻されたものの、後手の攻めは飛車と歩のみ。受け止めさえすれば、先手は後手陣に飛車を打ち込む楽しみがある。 46 3六歩(35) ( 1:41/01:01:31) *持ち時間に大きな差がついている。この手で中井の残り時間が1時間を切った。対して里見はわずか7分しか消費していない。 *「後手は▲3六同銀に△3五歩と打って拠点を作るのでしょう」(小林健九段) * *※局後の感想※ *「3筋を攻めると、こちらもキズになります」(中井) 47 同 銀(47) ( 0:13/00:07:36) 48 3五歩打 ( 0:13/01:01:44) *飛車を打ち込まれる隙は後手陣に多く、忙しい。歩を打って位を保持した。▲3五同銀は△3四歩で銀が取れるので、先手はこの歩を取れない。 *里見は膝の上で両手を組んだ。中井は腕を組んで、盤を眺めている。 49 2七銀(36) (12:22/00:19:58) *本局でいちばん時間を使い、玉頭に銀を引いて銀冠を完成させた。金銀3枚が手を取って、バランスがよく堅い。 *「後手の手を作らせないという考えで、時間を使っていたのではないでしょうか。ここで後手の手が難しいように思います」(小林健九段) 50 5二銀(63) ( 7:04/01:08:48) *すぐに攻め入る手段はなかったようだ。先手の銀引きに歩調をあわせるように、中井も陣形を引き締めた。この銀引きで▲6一飛は消えたが、▲7一飛や▲8二飛などは残っている。依然、後手が忙しいことに変わりはない。 51 7一飛打 (11:07/00:31:05) *一段目に飛車を打つ自然な一着。 *「先手は▲8一飛成〜▲9一竜と桂香を取って、(1)▲9五角〜▲6二角成が一例です。ほかに、(2)▲4七桂と打ってから3五の歩を払うのも考えられます」(小林健九段) * *※局後の感想※ *代えて▲8二飛が有力だった。以下、△6六歩▲同角△7三桂▲7四歩△6五桂▲7三歩成△6九飛▲6二とに△6一銀というひねった受けがあるものの、▲2五桂や▲7九歩があるため、本譜よりもまさった可能性がある。 *「飛車は8二から打たないといけませんでした」(里見) 52 6六歩(65) ( 1:54/01:10:42) *控室では「これぞ筋」との声が聞かれた。先手の角の利きを遮る突き出し。6筋の歩が切れれば、△6一歩の受けも利くようになる。 *「(1)▲6六同角は△7三飛▲同飛成△同桂▲7四歩に△6五桂と逃げられます。以下、▲7三歩成には△7六飛が金取りとと金取りで返せます。歩の突き出しを放置して(2)▲8一飛成は、△6七歩成▲同金に△6九飛が金と桂の両取りです。先手陣は△3六桂が入れば、相当ぐらつきます」(小林健九段) 53 同 角(77) ( 6:29/00:37:34) *里見の手がモニターに映り、「どっちや」との声が響く。里見が選択したのは角だった。 54 7三飛打 ( 1:02/01:11:44) *飛車の合わせで対抗。▲8一飛成に△7八飛成を用意している。 55 同 飛成(71) ( 0:08/00:37:42) 56 同 桂(81) ( 0:02/01:11:46) *控室には脇謙二専務理事と井上慶太常務理事が訪れている。現局面から▲7四歩△6五桂▲7三歩成△7六飛▲7四飛△同飛▲同と△7六飛▲7五飛△6六飛▲同歩△5七桂成を示した。取られる寸前だった桂が伸び伸びと働き、見事に攻め駒に昇華する変化だ。 57 7一飛打 ( 2:03/00:39:45) *堂々とした対応。再び飛車を打って、桂と香の両取りをかけた。△6五桂には▲9一飛成と香を取って駒得になる。 *この局面で12時になり、昼食休憩に入った。ここまでの消費時間は、▲里見39分、△中井1時間19分。昼食は、里見がふな定のうな重、中井の注文はなかった。対局は13時に再開する。 * *【昼食休憩】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-bc24.html *【里見倉敷藤花の昼食】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-5588.html 58 6九飛打 ( 8:11/01:19:57) *中井は昼食休憩の間、ほとんど盤の前から動かず考え続けていた。里見も12時30分頃には対局室に戻っていた。 *13時、対局再開が告げられてすぐ、敵陣に飛車を打つ。 * *【対局再開】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-2985.html 59 7九歩打 ( 2:34/00:42:19) *飛車の利きを止める底歩を打って、桂取りを防いだ。 *「ここから△8六歩▲同歩△8八歩▲同角△6五桂として次の△5七桂成を見せ、先手で桂を逃げるのが中井さんの狙いかもしれません」(小林健九段) 60 6五桂(73) ( 2:30/01:22:27) *8筋の突き捨てを入れず、単に桂を逃げた。後手は桂を手にしてから△3六桂がいちばん速く先手玉に迫れる。五段目まで跳ねておけば、次に△7七歩から桂交換に持ち込めそうだ。 *中井は脇息に肘をつき、体を預ける。里見は両手を座布団につき、体を前に傾けたまま、盤を凝視している。 *13時25分頃、里見の考慮が続く。残り時間が1時間を切った。 *先ほどまでの見解とは打って変わって、現局面では先手の指し手が悩ましいようだ。△7七歩▲同桂△同桂成▲同角に△3六桂が入れば、(1)▲3九玉は△4九竜▲同銀△2八金までで先手玉が詰む。(2)▲1八玉や▲1七玉も△1五歩が「端玉には端歩」の格言どおりの一着で、後手玉が金銀4枚の堅陣が生きる展開が望める。 * *【桂をさばく】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-47a6.html 61 5八金(49) (28:52/01:11:11) *約30分考えての着手。持ち時間2時間の将棋で、30分の考慮は長考といっても過言ではない。次の▲6八金左で飛車の捕獲を狙った金上がり。玉から金が離れるだけに思いつきづらい。ひねり出した受けといえそうだ。 *しかし、これでも△7七歩は残っている。▲6八金左と寄るタイミングがあるかどうか。 62 7七歩打 ( 4:55/01:27:22) *「これは打つよね。ここで里見さんがどうするか。桂交換に応じて△3六桂が入っちゃうと、先手玉は薄いよ」(小林健九段) 63 3九歩打 ( 0:18/01:11:29) *ノータイムで歩を受けた。飛車の利きを閉ざし、△7八歩成には▲同飛成で後手の飛車を捕獲できる。先に金を損するだけに、思いつきにくい曲線的な手順だ。 *「これが里見さんの読み筋だったのか、びっくりするなあ。しかし、後手から何か技があってもおかしくない局面です」(小林健九段) 64 5一角(33) ( 6:40/01:34:02) *働きの弱かった角に活を入れた。先手の飛車の横利きに対して角と金の厚みを築き、横からの攻めにより強くなった。 *また、次に△9五角ののぞきを視野に入れているかもしれない。端に角が出れば、△7八歩成▲同飛成に△6八金と打って、飛車が助かる。 * *※局後の感想※ *代えて△1五歩ならどうだったか。▲同歩△同角▲同香△同香▲1六歩には△5六香が打てる。端で歩切れを解消できるうえに、金2枚を取る楽しみが残る形だ。 *「この変化はこちらも自信がありません」(里見) *「なるほど、角を引く前に端歩を突き出すんでした」(中井) 65 9六歩(97) ( 1:01/01:12:30) *落ち着いた端歩。前述した△9五角を消して、後手の角をさばかせない。 *「じっと端歩を突いたのはしぶいね」(小林健九段) * *【午後の控室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-2058.html 66 3三桂(21) ( 5:26/01:39:28) *角のいなくなったスペースを利用して桂を跳ねた。 67 7七桂(89) ( 6:00/01:18:30) *7七の歩を払って、先手から桂交換を迫った。△7七同桂成▲同飛成△3六桂までは、ほぼ必然の進行。いよいよ終盤戦に突入する。 *小林健九段は和服に着替えるため、足早に控室から出ていった。 68 同 桂成(65) ( 0:18/01:39:46) *【関西将棋会館ギャラリー】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-8dce.html 69 同 飛成(71) ( 0:07/01:18:37) *飛車を成り返って桂を取った。先手は常に▲6八金左を楽しみにしている。 70 3六桂打 ( 0:36/01:40:22) *待望の桂打ち。▲3六同銀は△同歩で手が続く。 71 2九玉(28) ( 4:16/01:22:53) *14時5分頃の局面。▲2九玉までの消費時間は、▲里見1時間22分、△中井1時間40分。 *玉を引いて王手をかわした。ただ、次に▲6八金左とすると△同飛成が△2八金までの詰めろになるので、注意が必要だ。 72 3四金(43) ( 2:09/01:42:31) *駒柱の完成。金の援軍を送り出した。次に△2四歩〜△2五歩や、△4五歩で縦からの攻めが手厚くなる。 * *※局後の感想※ *代えて△4五歩▲同歩に△3四金だったか。以下、▲7四竜△4三銀右▲4六桂△4五金▲同桂△同桂▲4四歩△5二銀▲5四歩△3三角が一例として示されている。 73 8八金(78) ( 1:30/01:24:23) *和服に着替えて控室に戻ってきた小林健九段は、開口一番「その手があったか」と大声を発した。次の▲7八竜で後手の飛車を生け捕りにできる。井上九段は「▲2九玉から▲8八金は大山名人を彷彿とさせる受けでしたね」と感想を述べた。控室の検討陣からも「これは痛い」との声が聞かれる。 *中井は正座に姿勢を正した。 *「こんなに冷たい手があるとは思いませんでしたね」(小林健九段) * *※局後の感想※ *「金を寄られてからは指す手に窮しました」(中井) * *【飛車の生け捕り】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-0924.html 74 1五歩(14) (17:29/02:00:00) *▲7八竜を受けるすべはない。時間いっぱいまで考えて、1筋の歩に手をかけた。 *中井はここから1手60秒未満の着手となる。 * *【中井女流六段、秒読みに】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-2ba4.html 75 7八竜(77) ( 1:09/01:25:32) *これで後手の飛車は動く場所がない。 76 1六歩(15) ( 0:00/02:00:00) *歩を取り込んで△1七歩成を見せる。 77 6九竜(78) ( 0:08/01:25:40) *ついに先手が飛車を手にして、大きく駒得を果たした。 78 4五歩(44) ( 0:00/02:00:00) *代えて△1七歩成として詰めろをかけても、▲同香△同香成に▲1一飛が王手香取りの返し技だった。 79 5四歩(55) ( 5:13/01:30:53) *角の利きを通す歩の突き出し。 80 7三角(51) ( 0:00/02:00:00) *後手も角の働きが弱かった。△7三角と出て次の△4六角を見せる。 *「ここで▲7一飛と角取りに飛車を打つと、△1七歩成で逆転もあるかもしれませんよ」(小林健九段) 81 7八竜(69) ( 2:43/01:33:36) *出てきた角に当てて竜を活用する。 82 6五歩打 ( 0:00/02:00:00) *先手の角取りに歩を打った。角を手にすれば、△1七角と放り込んで詰めろをかけられる。 83 7三竜(78) (12:12/01:45:48) *▲7八竜と活用したからには▲7三竜が自然か。代えて▲7五角も考えられたが、△5五角がヒヤッとする飛び出し。次に△8八角成と金を取られると、△2八金までの詰めろになる。△5五角に▲8九金とかわしても、△9九角成がやはり△2八香▲1八玉△1七歩成までの詰めろになる。最終盤、中井もワナを用意している。 84 6六歩(65) ( 0:00/02:00:00) 85 1六香(19) ( 0:08/01:45:56) *1筋の圧迫は先手の懸案事項。香を走って端歩のプレッシャーを緩和した。△1六同香なら▲1一飛△2一銀▲1六飛成で盤石となる。 86 1七角打 ( 0:00/02:00:00) *△2八角成までの詰めろ。 87 1九角打 ( 1:31/01:47:27) *角には角で詰めろを防ぐ。 88 6七歩成(66) ( 0:00/02:00:00) *歩を取って貴重な1歩を入手。▲6七同金なら△4八桂成も生まれる。 89 同 金(58) ( 0:34/01:48:01) 90 4八桂成(36) ( 0:00/02:00:00) 91 2八角(19) ( 0:34/01:48:35) *桂の利きがなくなったタイミングで角をぶつける。87手目の▲1九角は、この再活用を視野に入れたものだったようだ。 92 3八成桂(48) ( 0:00/02:00:00) 93 同 歩(39) ( 0:19/01:48:54) 94 2八角成(17) ( 0:00/02:00:00) *「中井さんが執念の追い込みを見せていますね」(小林健九段) 95 同 玉(29) ( 0:02/01:48:56) *後手の攻めを振りほどき、先手陣がさっぱりとした。 96 5五角打 ( 0:00/02:00:00) *竜と金の両取り。後手は攻め駒がほしい。 97 6四桂打 ( 1:04/01:50:00) *竜取りを防ぎながら銀に当てた返し技。1筋では香がにらみあっており、後手玉は見た目以上に狭い。 98 3六銀打 ( 0:00/02:00:00) *スピードを重視して銀を打ち込んだ。 99 1一香成(16) ( 0:28/01:50:28) *ほとんど時間を使わずに香を成った。▲1三角△4二玉▲5二桂成から王手が続く。 100 2七銀成(36) ( 0:00/02:00:00) *この手で100手に達した。△2七銀成までの消費時間は、▲里見1時間50分、△中井2時間0分。 101 同 玉(28) ( 0:04/01:50:32) 102 2五桂(33) ( 0:00/02:00:00) *角の利きを通す非常手段。簡単には諦めない。 103 5三歩成(54) ( 0:41/01:51:13) *じわじわと戦力を増やしていく。 104 3六銀打 ( 0:00/02:00:00) 105 2八玉(27) ( 0:10/01:51:23) 106 1一角(55) ( 0:00/02:00:00) 107 5二と(53) ( 0:12/01:51:35) *先手玉は△3七桂成や△2七香などで王手がかかるが、どれも致命傷にはならない。難しい手は必要なく、ただ後手玉を追い詰めればいい。 108 8八角成(11) ( 0:00/02:00:00) *金を取って形を作った。 109 4一と(52) ( 0:20/01:51:55) *後手玉には即詰みがある。 110 2一玉(31) ( 0:00/02:00:00) 111 3一飛打 ( 0:12/01:52:07) 112 2二玉(21) ( 0:00/02:00:00) 113 3二飛成(31) ( 0:08/01:52:15) 114 同 玉(22) ( 0:00/02:00:00) 115 2一銀打 ( 0:07/01:52:22) *この局面で中井が投了した。以下、(1)△2一同玉は▲2三竜△2二金▲1二金まで。(2)△4一玉も▲3二金△5一玉に▲5二銀まで、それぞれ即詰みとなる。終局時刻は15時11分。消費時間は、▲里見1時間52分、△中井2時間0分(チェスクロック使用)。里見が先勝し、防衛まであと1勝とした。第2局は今月21日(土)、岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」で行われる。 * *【第28期三番勝負第1局は里見倉敷藤花の先勝】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/28-bb67.html *【終局直後】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-bb10.html *【感想戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kurashikitouka/2020/11/post-10da.html 116 投了 ( 0:00/02:00:00) まで115手で先手の勝ち