# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.52 棋譜ファイル --- 対局ID:10749 記録ID:5ee85c0bd23f0500049dff80 開始日時:2020/06/28 09:00 終了日時:2020/06/28 18:38 表題:ヒューリック杯棋聖戦 棋戦:第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負 第2局 戦型:矢倉 持ち時間:各4時間 消費時間:90▲230△235 場所:東京・将棋会館 備考:昼休前45手目9分\n 図:投了 振り駒:なし 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:00〜13:00 昼休前消費時間:45手9分 手合割:平手   先手:渡辺明棋聖 後手:藤井聡太七段 先手省略名:渡辺明 後手省略名:藤井聡 手数----指手---------消費時間-- *第91期ヒューリック杯棋聖戦(主催:産経新聞社、特別協賛:ヒューリック株式会社)五番勝負は藤井が第1局を制して第2局を迎えた。▲渡辺明棋聖−△藤井聡太七段戦。6月28日(日)9時に対局開始。対局は東京・将棋会館「特別対局室」で行われる。持ち時間は各4時間。立会人は屋敷伸之九段、記録係は田中大貴三段(北島忠雄七段門下)が務める。先手番は渡辺。 * *本局はABEMAでライブ中継が行われる。解説は藤井猛九段、阿部健治郎七段、聞き手は加藤桃子女流三段、山根ことみ女流二段が務める。8時30分から放送開始。 * *【産経新聞社】 *https://www.sankei.com/ * *【ヒューリック株式会社】 *https://www.hulic.co.jp/ * *【ABEMA】 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/CwYrWRYrx8QyqR * *終局後に窪田義行七段による解説を掲載いたします。記載箇所は6手目、9手目、13手目、16手目、20手目、23手目、28手目、31手目、34手目、36手目、41手目、44手目、46手目、47手目、49手目、50手目、57手目、59手目、65手目、70手目、72手目、75手目、81手目、82手目、90手目です。 * *窪田義行七段>おはよう御座います。七段の窪田です。本日はテレワーク解説を仰せ付かりました。生姜担当者様、宜しくお願い致します。皆様には、日曜日ながら“Stay Home”運動の一環としてお楽しみ頂ければ何よりです。戦型予想ですが、1局目で藤井挑戦者の先手矢倉を受けて立って敗れた渡辺棋聖ながら、本局では先手矢倉で臨むのではないかと思います。藤井挑戦者は早繰り銀等の急戦ではなく、1局目の渡辺棋聖同様に持久戦で応じるでしょう。その中で定跡最前線というよりは、もっと斬新な展開になるかを楽しみにしています。 * *【お知らせ】 *本局は将棋連盟LIVE中継において動画配信を行います。Menuから「動画実験」を選択してご視聴ください。動画を消すにはMenuから「動画を消す」を選択してください。 * *(棋譜・コメント入力=生姜) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。♯は窪田義行七段の解説または局後の感想が追記された指し手。【】内は中継ブログタイトルならびにリンク] 1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *◆渡辺 明(わたなべ あきら)棋聖(棋王・王将)◆ *1984年4月23日生まれ、東京都葛飾区出身。所司和晴七段門下。2000年、四段。2005年、九段。棋士番号は235。 *タイトル戦登場は35回。獲得は竜王11期(永世竜王)、王座1期、棋王8期(永世棋王)、王将4期、棋聖1期の計25期。棋戦優勝は11回。 2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00) *◆藤井 聡太(ふじい そうた)七段◆ *2002年7月19日生まれ、愛知県瀬戸市出身。杉本昌隆八段門下。2016年、四段。2018年、七段。棋士番号は307。 *タイトル戦登場は1回。棋戦優勝は3回。 3 6八銀(79) ( 1:00/00:01:00) *本日の千駄ヶ谷は雨。朝8時から関係者が多く東京・将棋会館の前に詰めかけていた。 *8時36分、立会人の屋敷九段が対局室に入室。 *8時42分、藤井が先に対局室に入室。 *8時43分、日本将棋連盟会長の佐藤康光九段が入室。後方に座り、見守る。 *8時48分、渡辺が入室。 4 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *8時50分、両者一礼して、渡辺が駒箱に手を伸ばした。両者とも淡々とした手つきで駒を並べていく。対局室はシャッター音が鳴りやまない。 *8時53分、両者駒を並べ終えた。藤井はマスクを外してお茶をひと口。 *9時、屋敷九段が開始を告げて対局が始まった。 5 7七銀(68) ( 0:00/00:01:00) *「おっ矢倉ですか」と日本将棋連盟常務理事の鈴木大介九段。 *第1局と同じ戦型になった。戦型が決まり控室の継ぎ盤が動き出す。検討の中心には佐藤康九段が座っており、関係者らと談笑している。 6 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00) *両者の過去の対戦は2局。初手合いは2019年の第12回朝日杯将棋オープン戦決勝。相雁木の力のこもった戦いを128手で藤井が制した。2局目は今期ヒューリック杯棋聖戦第1局だ。相矢倉の大熱戦を制したのは藤井。最後の王手ラッシュをかいくぐり、逆王手で締めたのは記憶に残っている方も多いことだろう。 * *※解説※ *窪田義行七段>先手が矢倉を表明した所で、後手は急戦矢倉も含みに右銀を起用しました。△4二銀や△5四歩であれば陽動振り飛車の含みもありますが、相居飛車を確定させて急戦矢倉の含みを持たせる方が主流となっています。 7 2六歩(27) ( 0:00/00:01:00) *【渡辺の公式戦成績】 *通算成績は659勝334敗(0.664) *昨年度成績は41勝15敗(0.732) *今年度成績は2勝3敗(0.400) 8 4二銀(31) ( 0:00/00:00:00) *【藤井の公式戦成績】 *通算成績は178勝33敗(0.844) *昨年度成績は53勝12敗(0.815) *今年度成績は9勝1敗(0.900) 9 2五歩(26) ( 0:00/00:01:00) *棋聖戦は産経新聞社が主催する棋戦。特別協賛はヒューリック株式会社。一次予選、二次予選でトーナメントを行ったあと、勝ち上がった棋士とシード棋士16人で決勝トーナメントを行い、挑戦者を決める。挑戦者と棋聖は五番勝負を行う。 * *※解説※ *窪田義行七段>飛先不突矢倉が流行った頃からは先祖返りしたかの様ですが、後手に△3三銀と上がらせて急戦矢倉を減少させるのみならず、先手が単調にならないだけの駒組み及び仕掛けの技術を向上させた意味もあります。 10 3三銀(42) ( 0:00/00:00:00) *今期ヒューリック杯棋聖戦は中学生棋士同士によるシリーズとなった。藤井の17歳10ヵ月20日のタイトル挑戦はこれまでの史上最年少記録だ。それまでの記録は奇しくも本棋戦で挑戦者となった屋敷九段の17歳10ヵ月24日。 11 4八銀(39) ( 0:00/00:01:00) *【朝の様子】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-b35b.html * *【対局開始】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-75cb-2.html 12 3二金(41) ( 1:00/00:01:00) *両者は過密スケジュールであることが共通している。まずは藤井の6月以降の対局日程と結果を見ていこう。 * *6月2日 佐藤天彦九段 ○(棋聖戦) *6月4日 永瀬拓矢二冠 ○(棋聖戦) *6月8日 渡辺明三冠  ○(棋聖戦) *6月10日 大橋貴洸六段 ●(王座戦) *6月13日 阿部健治郎七段○(王位戦) *6月20日 杉本昌隆八段 ○(竜王戦) *6月23日 永瀬拓矢二冠 ○(王位戦) *6月25日 佐々木勇気七段○(順位戦) * *強敵揃いの相手だがご覧の通り勝ちまくっている。王位戦は挑戦者になり、竜王戦はランキング戦3組で優勝した。 13 3六歩(37) ( 0:00/00:01:00) *続いて渡辺の6月以降の対局日程と結果。 * *6月8日   藤井聡太七段   ●(棋聖戦) *6月10・11日 豊島将之竜王・名人○(名人戦) *6月18・19日 豊島将之竜王・名人●(名人戦) *6月25・26日 豊島将之竜王・名人●(名人戦) * *藤井と比べると対局数は少ないが(藤井が異常ともいえる)、2日制のタイトル戦を並行して戦っているため、大変であることは間違いない。対局日の前後は移動日であるため、体力的な負担も相当である。 * *【藤井七段3日に1局ペース、異例の過密日程の両者】 *https://www.sankei.com/west/news/200627/wst2006270005-n1.html * *※解説※ *窪田義行七段>先手意表の一着で、急戦矢倉を匂わせる積極策です。6七歩型なので4六銀・6六銀型の『カニカニ銀』もあり得ますが、後手が受けに回ると攻め切れないという事で下火になりました。ただし、早繰り銀+引き角であれば有力であり、カニカニと違ってどこまで玉を囲うかが焦点となります。 14 7四歩(73) ( 1:00/00:02:00) *本日の藤井は和服姿で臨んでいる。これまで公開対局やイベント等での着用はあったが、タイトル戦での着用は初である。師匠の杉本昌隆八段から贈られた品とのことで、本局にかける思いは強そうだ。 15 5六歩(57) ( 4:00/00:05:00) *手元のデータベースで調べてみると、現局面の前例は2局あった。1994年、1997年に指された将棋であり、藤井はまだ生まれていない。どちらの将棋も先手が▲3七銀〜▲4六銀として急戦を仕掛けていた。本局はどうだろうか。 16 4一玉(51) ( 7:00/00:09:00) *佐藤康九段は「(後手は)5筋を突いていないのが現代風ですね」とコメント。保留する意図としては△6四歩〜△6三銀として腰掛け銀に組む構想が考えられる。 * *※解説※ *窪田義行七段>後手が引き角にするなら△5四歩と受けるのが自然であり、急戦矢倉に対しても金矢倉+引き角での対応が有力です。しかし、先後共に5筋保留型が受容されており先手の5六歩型に対する主張としてそうする展開もあり得ます。 17 5八金(49) ( 4:00/00:09:00) 18 5二金(61) ( 2:00/00:11:00) 19 7八金(69) ( 1:00/00:10:00) 20 3一角(22) ( 3:00/00:14:00) *両者とも少考で指し進めている。このあたりから互いの構想が明らかになってくるころだ。 * *【戦型は矢倉】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-1b25.html * *※解説※ *窪田義行七段>3一角型は、腰掛け銀でもいわゆる4手角で角をカクカクと動かす事で、7三や8四といった好位置を占める事ができます。しかし、タイミング良く△5四歩と突く展開が本線でしょう。先手は▲6六銀からの急戦矢倉を残しているので、5筋を争点にしない用心ともなります。 21 6九玉(59) ( 2:00/00:12:00) *先手も居玉を解消した。 22 4四歩(43) ( 1:00/00:15:00) *4筋の歩を突く。ここでも5筋の歩を突かないということは、やはり角道を止めて戦おうという構想なのかもしれない。渡辺は腕を組んで天井に視線を向ける。 23 4六歩(47) ( 6:00/00:18:00) *▲4六歩と突いた。これで第1局の「脇システム」とは違った形の将棋になった。 * *※解説※ *窪田義行七段>4四歩型は金矢倉へと盛り上がれる分攻めの当たりが強くなりますので、いかにも先手が狙い澄ました印象を受けます。6六銀型ながら▲5五歩と突き捨てて弾みを付ける形ではないので、一気に▲5五銀と後手陣まで乗り上げて行きたいです。 24 4三金(52) ( 1:00/00:16:00) *1分の考慮。4三に金を配置する。△5一銀〜△4二銀上〜△4三銀というルートで銀矢倉に組む構想もあるが、本局はオーソドックスな金矢倉を作った。 25 3七桂(29) ( 1:00/00:19:00) *攻めの桂を活用。 26 8五歩(84) ( 0:00/00:16:00) *【午前の控室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-785b.html * *【観戦記は産経新聞に掲載】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-6503.html 27 6六銀(77) ( 2:00/00:21:00) *先手は急戦矢倉の布陣だ。▲4五歩△同歩▲同桂として攻勢をかけようとしている。 28 7三銀(62) ( 2:00/00:18:00) *△7三銀と上がった。次に△6四銀として銀を向かい合わせるのだろう。こう進んでみると藤井が5筋の歩を突いていない理由が明らかになってきた。▲5五歩と歩をぶつける手がなく、5筋の争点をなくしている。 *時刻は10時を回った。藤井は水分補給をしつつ、盤上を見つめている。渡辺は腕を組んだり、あごに手を当てたり。早くも思案に暮れている様子だ。 * *※解説※ *窪田義行七段>もう棒銀は間に合わないので△6四銀と上がり『銀には銀で対抗せよ』と行きたいですが、一手遅れている印象です。しかし、▲4五歩△同歩▲同桂△4四銀▲5五銀△同銀▲同角と仕掛けられても7三銀が八方にらみの角を遮っています。8五歩型を優先して反撃を用意する実戦の機微と言えます。 29 4七銀(48) (10:00/00:31:00) *急戦矢倉の基本形が完成した。藤井は棋譜用紙に目を通す。 30 6四銀(73) ( 0:00/00:18:00) *「前例はあるんですか」と佐藤康九段。調べてみると1局見つかった。2019年10月に行われた第9期加古川青流戦決勝三番勝負第1局▲服部慎一郎三段(肩書は当時)−△池永天志四段戦。その将棋は▲4五歩△同歩▲同桂△4四銀▲4六銀と進んだ。結果は後手が制している。 31 4五歩(46) ( 4:00/00:35:00) *10時11分、歩がぶつかった。「ああ、仕掛けましたか」と佐藤康九段。 * *※解説※ *窪田義行七段>先手▲5五銀とぶつけられますが、後手に△5四歩▲6四銀△同角とあしらわれそうです。▲9六歩もありますが8筋を切られますので、ここは3七桂・4七銀型急戦矢倉らしく4筋から仕掛けたいです。 32 同 歩(44) ( 0:00/00:18:00) *【藤井七段の和服】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-fad7.html 33 同 桂(37) ( 0:00/00:35:00) *颯爽と桂を跳ねる。着手後、渡辺は桂の上にあった小さなゴミを払い、位置を整えた。 34 4四銀(33) ( 0:00/00:18:00) *代えて△2二銀と引いて△4四歩を狙うのは危険。▲5五銀△同銀▲同角△6四銀▲4四歩と攻め込まれてしまう。ここは上に逃げた。 * *※解説※ *窪田義行七段>後手は桂先の銀で自然な応対です。実は△2二銀▲5五銀△同銀▲同角△6四銀▲4四歩に、強く△5五銀▲4三歩成△同金▲5五歩△3七角と2枚替えに甘んじて馬に期待する反撃策もありますが、先手が強く▲4八飛と回れば攻め合い勝ちしそうです。 35 4六銀(47) ( 0:00/00:35:00) *「駒をたくさん使っていますね」とABEMAの阿部健七段。桂を支えながら右の銀も前線へ。エンジンが温まってきた。いよいよ戦いが始まりそうな雰囲気がある。藤井はうつむいて読みを入れている。 *なお、30手目に記載した前例局と同じ進行だ。さらに前例局を進めると、△5四歩▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2七飛△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8二飛と進んでいる。佐藤康九段は「私の中ではこれしか浮かばなかったですが」と前置きしながら△2二角が第一印象と話す。次の手に注目している。 36 2二角(31) (17:00/00:35:00) *佐藤康九段の予想手が当たった。「そうでしょう」とニッコリ。ただ、「やっぱり△4二角だと思います」と発言した直後の指し手だった。 *ただ、藤井側の継ぎ盤に座る佐藤康九段はどこか自信がなさそうだ。現局面から▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2七飛の進行を挙げる。佐藤康九段は55対45で先手持ち。後手陣はバランスが悪いのではとの見解だ。また、2筋の歩交換後の飛車の引き場所は「この将棋でいまのところいちばん関心があります」と佐藤康九段は相当興味を示している。違いは1%くらいのものだが、その1%が勝敗を分けると。 * *※解説※ *窪田義行七段>後手△5四歩では先手の攻めに顔面を突き出す印象ですが、△2二角でも指し手の脈絡が問われそうです。とは言え、引き角を右翼に展開できないままに攻められてしまうと危険なので、2筋への攻めが心配いらなければ2二に戻して戦いの起こった筋を支えるべきでしょう。 37 2四歩(25) (33:00/01:08:00) *11時4分の着手。33分の考慮だった。▲2四歩までの消費時間は、▲渡辺明1時間8分、△藤井聡35分。 38 同 歩(23) ( 0:00/00:35:00) *【高い防衛率、渡辺棋聖】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-aa3d.html * *【好調ではなく順調、藤井七段】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-20c7.html 39 同 飛(28) ( 0:00/01:08:00) *本局のおやつは15時に出される予定だったが、今回用意されたものは焼き菓子のため、すでに対局室と控室に出されている。 *今回のおやつは東京・吉祥寺「アテスウェイ」からの提供。色鮮やかなマドレーヌ、フィナンシェ、フロランタンなどが楽しめる。 * *【おやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-6c0a.html 40 2三歩打 ( 0:00/00:35:00) *【同門解説】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-2aa1.html 41 2九飛(24) ( 0:00/01:08:00) *注目の引き場所は2九だった。「まあ、そうでしょうね」と佐藤康九段。検討では最終的に2九がいいのではと見ていた。現局面から佐藤康九段は△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8二飛▲9六歩まで挙げ「私の中ではこれで決まっているんですが」とコメント。特に▲9六歩はこだわりがあるようで、価値の高い手と見ている。桂を渡したときに△9五桂の筋を防いでいるのが大きい。 * *※解説※ *窪田義行七段>先手は3七の穴から飛車を遠ざけたいですが、5四歩型なら▲5五歩と突いて5筋の歩が切れると後手から△5七歩の叩きが嫌みでもあり、先例では▲2七飛と引いています。しかし、▲4七飛と回った際に4筋からの連打で止められてしまう筋等を考えると、2九が自然でしょう。2八飛も横利きが強いので一長一短ですから、実戦で優劣を見定めるのは大変で最後は将棋観が問われそうです。 42 5四金(43) (12:00/00:47:00) *「ええーっ」と佐藤康九段が絶叫。「意外というか、1秒も考えませんでした。あまり説得力がないでしょうけど」と続ける。なんとも力強い金上がりだ。△5四金は4五桂を取りきってしまおうとしている。▲4九飛で受かるようだが、そこで△4二飛と数を足すのかもしれない。 *ABEMAでは藤井猛九段と阿部健治郎七段が解説中。ふたりは西村一義九段門の兄弟弟子だ。 *藤井猛九段は「渡辺棋聖も戸惑っているかもね。『あれ? 今日はずいぶん前にくるじゃん』って」とユーモラスに△5四金に対しての印象を語っている。 * *【意表の一手】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-a792.html * *※局後の感想※ *「この局面になればやってみたかった手だった」と藤井。 *渡辺は「前例もあまりない将棋だったので……互角くらいの手を探していたんですけれど」とコメント。 43 4九飛(29) (24:00/01:32:00) *24分の考慮。労せず△4五銀▲同銀△同金と取られては面白くないので、飛車を4九に転回して利きを足した。4九飛は遠く後手玉をにらんで迫力満点。▲5五銀左とぶつければ凄まじい戦いになる。藤井は棋譜用紙に目を通した。丁寧に両手で湯呑を持ち、数度口をつける。 44 4二飛(82) ( 6:00/00:53:00) *11時50分の着手。 *昼食休憩まであと10分を切っていたところだったが、藤井は△4二飛を着手。控室でも挙がっていた手だ。玉飛接近の悪形になるが構わず取りにいく。それにしても意欲的な構想だ。後手玉は何か網が破れてしまうと甚大な被害を被りかねない。それを藤井はカバーできると見ているのだろう。 *屋敷九段が対局室へ。12時になったのを確認して「休憩時間に入りました」と発した。この局面で渡辺が9分使って昼食休憩に。ここまでの消費時間は、▲渡辺明1時間41分、△藤井聡53分。昼食の注文は渡辺が「うな重(桜)、肝吸」、藤井が「海老天重、吸物」。いずれも「渋谷 松川」の出前。デザートは西荻窪のタルト専門店「アングレーズ」の「タルトアナナス」と「白桃のジュレ」。対局は13時から再開される。 *12時54分、藤井が対局室に戻ってきた。控室に佐藤康九段と屋敷九段。ふたりとも現局面を見て「凄まじいですね」と声を上げた。 *「昔はあまりこういう手は『幸せになれない』とひと言で済ませていたんですけどね」とは佐藤康九段の言葉。パッと感覚でまずいと判断してしまいそうだが、藤井は読みで感覚を打ち破ろうとしているようだ。ほどなくして渡辺も戻ってきた。 * *【昼食休憩】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-bc24-2.html * *【休憩中の対局室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-eb76.html * *※解説※ *窪田義行七段>力強く右金を繰り出した勢いで、先手の4五桂をへし折りに掛かりました。矢倉ですから4二玉型はあり得ないとして、右金の去就次第で玉飛接近ながらこういう反撃も可能になります。8五歩型との脈絡がない様でも、仕掛けを誘ったのみならず最終盤で▲7七玉〜▲8六玉という逃走を防いでもいます。 45 5七銀(66) (12:00/01:44:00) *13時02分の着手。 *対局再開。昼食休憩後の指し手。 *▲5七銀左として8八角の利きを通した。「いきなり取るのはやりにくいですね」と佐藤康九段。△4五銀のことで、以下▲2二角成△同金▲4五銀△同金の局面はいかにも後手が怖い。ABEMAの解説では▲6一角△5二銀▲3一銀△同玉▲5二角成△同飛▲4五飛が一例で並べられた。 *▲5七銀左に代えて▲5五銀左は△同銀右▲同歩△4五金▲同銀△同銀▲4三歩△同飛▲4四歩△同飛▲5四歩が考えられた。激しい駒交換となるが、これはこれで難しいようだ。難し過ぎるのか「大人は読みを打ち切っちゃいますけどね」と佐藤康九段から苦笑いも。藤井は姿勢を前傾させている。しばらく考えるのかもしれない。 * *【対局再開】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-2985-2.html 46 7三桂(81) (50:00/01:43:00) *50分の考慮で△7三桂と跳ねた。自然な一着で控室でも予想されていた手で、何かのときに△6五桂と跳ねて襲い掛かることができるのが大きい。 * *※解説※ *窪田義行七段>先手が▲5五銀右とぶつけていれば大戦争でしたが、後手も△4五銀を自重した事でお互いに一旦は回避した事になります。味が良い急戦矢倉の手筋ながら腰が引けた感のある▲5七銀左なので、自然に右桂を起用しつつ『引かば押せ』の呼吸を示しました。 47 3五歩(36) ( 2:00/01:46:00) *13時56分の着手。 *わずか2分の考慮で▲3五歩と突く。「攻め合いですね」と佐藤康九段。継ぎ盤には△6五桂が示されている。ノーガードの撃ち合いになるかもしれないようだ。 *14時8分、中村修九段が控室に訪れた。研修会の指導を終えてきたようで「小学生は強い」とポツリ。 *藤井側を持って検討中の佐藤康九段は「確かにこうなるんなら主張が通っていますよね」と前向きなコメント。後手も戦えるという見解だ。続けて「△5四金がいまの10代の常識ですか」とも。 *14時28分、鈴木九段が控室に再訪。佐藤康九段と中村修九段の検討に加わる。 * *※解説※ *窪田義行七段>先手は、攻めのお手本になりそうで爽やかな突き捨てです。しかし、組み立て上で無理ながら▲4五歩△同歩▲3五歩△同歩▲4五桂という筋であるべきでした。後手は△6五桂とお返しするのでなければ、一手溜めて▲3四歩に△3七歩と垂らす筋も有力なので、△5二玉と這い出す手もありそうです。ただし、▲3四歩△3七歩▲4八飛と辛抱されて△3八歩成▲同飛△4五銀▲2二角成△同飛に▲3一角と打たれると大変そうです。▲4八飛の瞬間に△6五桂とはねて、入るかどうかですが…。 * *【鳩森八幡神社(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-9ed0.html * *【鳩森八幡神社(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-352e.html * *【攻め合い不可避】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-eb9c.html 48 6五桂(73) (58:00/02:41:00) *14時54分の着手。58分の連続長考だった。△6五桂までの消費時間は、▲渡辺明1時間46分、△藤井聡2時間41分。 * *【14時30分の控室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/1430-a006.html 49 6八銀(57) ( 2:00/01:48:00) *銀を逃げながらカニ囲いを再構築。 *15時2分、渡辺大夢五段が控室に訪れた。本局はそれまで渡辺大五段の師匠の石田和雄九段と観戦していたようで、△5四金にふたりとも驚いたとのこと。特に石田九段は「これ定跡なのかね?」と仰天だったという。 *「パッと見て指す手が難しいですね。△4五銀▲同銀△同金で先手に何かあるかどうか。そこで何かないのなら△4六桂があるので後手がよさそうですね。あとは△8六歩▲同歩△8七歩をどこで利かすか。▲8七同金とは取りづらいですよね、△9五桂の筋がありますから。ほかには当たりを近づける△4七歩もあります。形勢はどっちも持ちたくないですね(笑)」(渡辺大五段) *15時14分、勝又清和七段が控室に来訪した。勝又七段は産経新聞の観戦記者を務めている。第91期の決勝トーナメント準決勝、決勝を担当した。 *藤井がまたも時間を使う。残り時間は1時間を切った。 * *※解説※ *窪田義行七段>先手の左銀がぐるっと一回転してカニ囲いになりました。▲6六歩がありますのでもう後手は△4五銀か金を決行するしかなさそうです。角金と角銀桂の交換から▲6一角△5二銀に▲3一銀と打てない点では後者が優りそうですが、▲4三歩△同飛▲4四歩△同飛に▲6六角で先手の反撃が成功しそうです。大駒を近付けて受ける△4七歩も効果がはっきりしませんので、△4五銀から攻防の△4六桂に期待して決戦を挑むのでしょうか? * *【悩ましい局面】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-0b54.html 50 4五銀(44) (29:00/03:10:00) *15時27分の指し手。29分の考慮だった。消費時間には大きな差がついている。 *控室の継ぎ盤では▲2二角成△同金▲4三歩△同飛▲6一角△5二角が並べられている。その変化は後手が指せるようだ。▲5二同角成△同玉で玉が5二に引っ張り出されてしまうようだが、玉が広いほうが「藤井調」(勝又七段)という。 *控室の評判は「先手苦しそう」(佐藤康九段)。 *「なるほどって手が出ないと」と中村修九段も続けた。 *ABEMAでは鈴木九段が現地から中継で出演している。藤井猛九段と見解を交わした。▲2二角成△同金▲4五銀△同金▲4三歩△同飛▲6六角という順はあるようだ。形勢は難しいという会話もあった。ABEMA出演から戻ってきた鈴木九段、控室に▲6六角の筋を持ち帰ってきた。再び検討に熱が入る。時刻はもうすぐ16時。 *16時ごろ、伊藤真吾五段が研修会の指導を終えて控室に来訪した。▲4五同銀は△8八角成とされて損になりそうなので、初手は▲2二角成の一手と見られている。 *「勝負どころですね」(伊藤真五段) * *※解説※ *窪田義行七段>後手はすぐに4五桂を食いちぎりました。先手は、角交換から▲6一角が有力ながらすっぽ抜けるとひどいでしょう。▲2二角成△同金▲4三歩△同飛▲6六角というテクニカルな攻めがありますが、△4八歩▲同飛△3三角でどうでしょうか? ▲4五銀△同金を入れてから▲6六角なら、△4六桂の刺し違えがあるかも知れません。そろそろお互いに詰みまで読み切らないと決断できない雰囲気で、終盤戦に突入しました。 * *【3手に2時間17分】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/17-0872.html 51 2二角成(88) (40:00/02:28:00) *考えること40分、渡辺の手が動いた。 52 同 金(32) ( 0:00/03:10:00) *【午後の控室(16時25分)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/1625-ac1f.html 53 4五銀(46) ( 0:00/02:28:00) 54 同 金(54) ( 0:00/03:10:00) *このあたりまではほぼ必然。代えて△4五同飛は▲同飛△同金▲4三銀が一例で後手玉はもたない。 55 4三歩打 ( 0:00/02:28:00) 56 同 飛(42) ( 0:00/03:10:00) 57 6六角打 ( 0:00/02:28:00) *有力と見られていた手。2二の金取りが直接の狙いだが、▲4四歩と打って4五金を取る狙いも含んでいる。例えば△3二玉は▲4四歩で先手がよさそうだ。後手はどう受けるのか。控室では(1)△1二金が挙がった。▲4四歩なら△同金▲同角のときに、4四角を動かすと△4九飛成の返し技がある。また、(2)△3二金も検討されており、▲1一角成△1四角、あるいは△2七角の変化も難しいようだ。変化は多岐にわたる。明快な結論は出ていない。伊藤真五段は現局面から(3)△4六桂▲2二角成△5八桂成▲同玉△2五角▲4七歩△3八銀▲3二銀△5二玉▲4三銀成△同玉の変化を挙げ、「それは楽しいですね」と話す。これも難しい。 *控室にサンケイスポーツの局後解説を担当する飯島栄治七段が来訪。 *検討がひと通り調べられて、また現局面に継ぎ盤が戻った。「写真判定ですよ。これ肉眼でわかるんですかね」と鈴木九段。非常に難解であることがうかがえる。藤井は体を揺らし、前傾姿勢。渡辺は腕を組んで斜め上を見ている。 * *※解説※ *窪田義行七段>ちょっと細いかな、という手順に先手が飛び込みました。4筋で飛交換になれば後手は△4九飛でひっくり返せますので、良く見ると▲4四歩は見た目ほどではありません。△3一銀▲4四歩△同金▲同角に△1四角と遠見の角を据えれば、先手が進退に窮していそうです。 58 3一銀打 (23:00/03:33:00) *23分の考慮。藤井の残り時間は27分。 *控室に「えっ」「えっ」と声が響く。あまり本命視されていなかった手だ。「しかしいいんですかね」と佐藤康九段が訝しげに検討の駒を動かす。継ぎ盤に▲2五銀が示された。△1四角の筋を消しつつ、▲3四銀の攻めを見た攻防手。ただ、▲2五銀に△4六桂の攻め合いで後手がよさそうという。 *ここで▲4四歩は△同金のつもりだろう。(1)▲同角は次に角を動かすことができないので、△2五角でも先手が困っている。(2)▲同飛は△同飛▲同角△4九飛が王手角取りだ。 *△3一銀は控室の検討で挙がっていない手ではあったが、打たれてみると先手が何を指すかは難しいようだ。「いい手じゃないですか」と飯島七段。 *ABEMAではここで▲7九玉を解説中。△4六歩で押さえ込まれてしまうようだが、▲8四角△7三桂▲6六歩がうるさいか。控室も▲7九玉の検討に入った。「よさそうな気がしますね」と佐藤康九段。藤井は扇子を手にしてくるくると回転させるようにしてリズムを取っている。時刻は17時を回った。 * *【意表の一手2】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-8d42.html * *※局後の感想※ *この手はあまり自信があって打った手ではなかったと藤井は明かす。代えて△4六桂も考えていたそうだ。 *渡辺は△3二金だと思っていたとのこと。「全然読めていなかった」とコメントした。 59 7九玉(69) (28:00/02:56:00) *じっと早逃げ。△2五角や△4六桂の筋を緩和している。△4六歩と打たれる前に、という意識があると指せない手であり、柔軟な一着だ。 * *※解説※ *窪田義行七段>先手の早逃げは、正に現代将棋らしい攻守のギアチェンジです。後手は△4六歩の先受けが絶対として、▲8四角に△8六歩と突いても▲同歩△7三桂▲6六歩△8三歩とは進まず、▲6二角成と突入されそうです。ただし、△5二玉▲6六歩△7二桂と玉のふところに抱きかかえるようにして角を逮捕すれば、桂が残ってもいずれ7六へ跳ね出せそうですので有力です。 60 4六歩打 ( 1:00/03:34:00) *不安定だった4筋の関係がこれで解消された。 61 3四歩(35) ( 2:00/02:58:00) *鈴木九段が「▲8四角じゃ勝ちづらいと思いますよ」と発したあと、ややあって渡辺の手が伸びた。▲3四歩と取り込んでプレッシャーをかける。「こっちのほうがしっくりきますよね」と鈴木九段。渡辺は席を立った。藤井は体を小刻みに揺らし、前のめりの状態で考えている。 *「優勢なんですかねえ。そうは見えないんですけど」と藤井側に立って検討をしている佐藤康九段。 * *※局後の感想※ *終局直後の渡辺は、この手が悠長だったのではないかと悔やんだ。 62 8六歩(85) ( 2:00/03:36:00) *ここは△1四角も見えるところだが、ひとまず8筋の突き捨てを入れた。 63 同 歩(87) ( 2:00/03:00:00) 64 8七歩打 ( 0:00/03:36:00) *手筋の攻め。▲8七同金なら△9五桂の筋が厳しい。放っておかれても先手玉の逃げ道をふさいでいるので立派に働いている。渡辺は背筋を伸ばし、盤上を見下ろす。あごに手を当ててゆっくりと盤に近づいた。 65 9六歩(97) ( 5:00/03:05:00) *渋い歩突き。「△9五桂打たれちゃダメなんだ」と佐藤康九段。この歩を突いてから▲8七金と垂れ歩を除去しようとしている。 *ABEMAの解説では△7五歩を示している。▲同歩は△7六桂の攻めがうるさい。△7五歩に対しては▲8七金△7六歩と進みそうだ。 * *※解説※ *窪田義行七段>急に先手左翼に戦線が移りました。△1四角には▲4八金と一旦しのぎつつ▲8七金〜▲8八玉と入城して持ちこたえる狙いです。後手も自陣には手を入れにくいので、▲8四角を防ぎつつ△7四桂を作る△7五歩が自然です。△7四桂を打たせまいとする▲7四銀のクリンチには、△5二玉がぴったりでしょうか…。 66 7五歩(74) ( 7:00/03:43:00) *筋よく△7五歩と前進。控室の継ぎ盤には△3六角が示されており、そちらも有力だったようだ。藤井はハンカチを顔に当てて汗を拭う。 *17時31分、勝又七段が控室に再訪。「いかにも筋のよさそうな手だね」とコメントして継ぎ盤の検討にまた加わった。 67 8七金(78) (10:00/03:15:00) *10分の考慮。ひとまず歩を払う。 68 7六歩(75) ( 0:00/03:43:00) 69 8八玉(79) ( 2:00/03:17:00) *ここで△7五桂が痛いと控室の検討陣。玉を入城する自然な一着だが、どうやら急に差が開いたという雰囲気だ。 *控室では「△3一銀がいい手だった」という意見が出ている。と同時に「我々の検討は何だったんだ」とのボヤキも。「マネしちゃいけないですよ」と佐藤康九段が話すと、勝又七段は何やらツッコミを入れたそうな様子で佐藤康九段を見る。 * *【後手優勢】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-8036.html 70 7五桂打 ( 4:00/03:47:00) *▲7六金と逃げる手には△4七歩成が継続手。▲同金は△5八角、▲同飛は△6九角が痛い。「明快」という言葉も検討陣から聞こえる。 *佐藤康九段は65手目の▲9六歩からの指し手がどうだったかと振り返る。ただ、元々が先手苦しかったのかもしれないという。渡辺は何かひねり出せるか。考慮は10分を超えた。あさっての方向を見つめている。扇子を眉間に当て、表情が歪んだ。 * *※解説※ *窪田義行七段>後手は68手目に△7四桂とぶっ放してしまうかと思いましたが、急所の7筋で溜めを作ってから満を持して先手陣の要たる8七金をえぐる桂を放ちました。8七金型は▲9七玉と『小部屋』に逃げ込んだ時の手厚さもあって昨今好評価を得ていますが、的にされると銀冠よりダメージが大きくなります。 71 7六金(87) (14:00/03:31:00) *14分使って▲7六金。代えて▲9七金も△8七歩が厳しかった。時刻は18時。 72 4七歩成(46) ( 2:00/03:49:00) *厳しい歩成り。藤井の2連勝が近づいている。 *渡辺はしばらく下を向いたあと、視線を上げて腕を組む。 * *※解説※ *窪田義行七段>「綺麗に崩れるなぁ」と驚くより呆れる様な想いです。▲同飛は△6九角で先手陣が崩壊しますが、▲同金でも△5八角▲4八飛に△6九角成▲7八歩に△8七歩があります。▲4八金が最善ですが、△4九角成▲同金に△6九飛▲5九金△8七桂成▲同玉△8九飛成▲8八銀に△7五歩が後手の決め手になりそうです。 73 5九金(58) ( 5:00/03:36:00) *なんと取らずに金を引いた。「すごい辛抱ですね」と勝又七段。 *この瞬間に厳しい寄せがなければ7五桂を外す余裕ができる。▲5九金は部分的には苦しくてたまらない手だが、諦めずにチャンスをうかがう。 * * *【鬼辛抱】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-6cf0.html * 74 8七歩打 ( 5:00/03:54:00) *残り6分まで使って△8七歩と打った。ここは代えて△5七と、△4八歩、△5四角などいろいろな手が検討陣から挙がっていた。△8七歩も有力と見られていた手。7五桂を外される前に拠点を作っていく。 75 9八玉(88) ( 2:00/03:38:00) *※解説※ *窪田義行七段>と金を放置する先手のすさまじい辛抱ですが、▲7五金△同銀▲同角でも△7六金で楽になりません。とは言え、後手は△5七桂成ではぬるいと見てか、叩きで玉の逃げ場所を打診して▲7八玉なら△8八角と攻防の6六角を清算する構想でしょう。9八では米長玉というより崖っぷちという印象で、△7八飛を狙う△3八とで窮しています。 76 5七桂成(65) ( 0:00/03:54:00) *「手堅い」と控室の検討陣。▲5七同銀に△5四角が厳しいようだ。藤井が差を広げている。 * *窪田義行七段>急所のと金や桂を清算して味消しの様でも、先手▲同銀△同とに▲4四歩と一矢を報いると、後手に△8八歩成〜△8七銀の倍返しされてとどめとなります。7八玉型なら、5七の成桂がこびんをにらんでいるので更に厳しくなります。 77 7五角(66) ( 5:00/03:43:00) *7五桂を外す非常手段。代えて▲7五金は△同銀▲同角△7六金の筋が痛かったか。 78 5四角打 ( 0:00/03:54:00) *角を取らずに強烈な一着。「いやー」と控室からため息が漏れる。すぐさま「強い」と声が上がった。金取りの処置が難しい。▲8七玉は△7五銀、▲7七金も△7五銀と角をボロッと取れる。 * *【後手勝勢】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-ac14.html 79 7七銀(68) ( 4:00/03:47:00) *取られそうな銀を上がって頑張った。 80 7五銀(64) ( 0:00/03:54:00) *控室は終局近しのムード。 81 同 金(76) ( 1:00/03:48:00) *※解説※ *窪田義行七段>『角道は止めにくし』とは正にこのことです。それでも先手に▲6五銀の一手が入ると持ち直しますので、後手は4九飛を直通させないまま△4八と▲同金△同成桂▲同飛△8八歩成▲同玉△8七金と清算して抑えつけ、▲7九玉に△5七角が必殺手です。 82 6七成桂(57) ( 0:00/03:54:00) *後手玉は安全なのでゆっくりした攻めが間に合う。中盤ではいかにも不安定に見えた陣形だったのだが。 * *※解説※ *窪田義行七段>いまや7七銀が最後の守りのかなめなので、がりがりとはがしに行きました。▲6五銀には△同角▲同金△7七成桂▲同桂△7六銀でぴったりです。 83 6五銀打 ( 2:00/03:50:00) *まだまだ諦めない。 84 同 角(54) ( 0:00/03:54:00) *控室では▲6五同金△7七成桂▲同桂△7八銀が挙がっている。これで先手玉は必至がかかると控室。 85 同 金(75) ( 0:00/03:50:00) 86 7七成桂(67) ( 0:00/03:54:00) 87 同 桂(89) ( 0:00/03:50:00) *藤井は扇子を握りしめ、緩んだ様子を見せず前に向かう。渡辺は上体を起こして飲み物に口をつけた。 88 7六銀打 ( 1:00/03:55:00) *7六から銀を打った。△9七銀▲同玉△7九角以下の詰めろ。 89 6一角打 ( 0:00/03:50:00) *6一に角を打って形を作る。 90 9七銀打 ( 0:00/03:55:00) *この局面で渡辺明が投了した。終局時刻は18時38分。消費時間は、▲渡辺明3時間50分、△藤井聡3時間55分。藤井は2連勝。第3局は7月9日(木)東京都千代田区「都市センターホテル」で行われる。 * *【藤井七段が第2局を制す】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-d119.html * *【感想戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2020/06/post-10da-2.html * *※解説※ *窪田義行七段>先手玉は9八まで逃げこんだものの、そこが最期の地となりました。▲6一角の代わりに▲7九銀でも△8八銀で無効だったので、最後は形作りか投了かという状況で仕方なかったでしょう。4九飛と5九金に目移りしない、後手のまっしぐらな寄せが印象深いです。 * *<一局の総評> *先手の渡辺棋聖が王者に相応しく矢倉で臨んだかと思いきや、後手の藤井挑戦者が5筋不突型でガードを固めているにも係わらず急戦矢倉で31手目▲4五歩から殴りにいく展開で、なりふりには構わない1勝への執念を感じました。後手の対応は、5四の空間を活かした42手目△5四金をベースに玉飛接近をいとわない積極的なもので4筋でのねじり合いは手に汗をにぎりました。58手目△3一銀は受けとしてもいわゆる『弱い手』のはずですが、先手が突き破れないとなると差が付いたように思います。62手目△8六歩からしばらく先手左翼への攻めに専念した後手が、一転して72手目△4七歩成と右翼への挟撃に転じた呼吸が絶妙で決め手になりました。78手目△5四角に頼らない構想でも勝てそうですが、矢倉ながら5四の空間にこだわった流れの到達点を見た思いです。渡辺棋聖が精細を欠いた内容でしたが、後手番ながら本局の藤井挑戦者に優るとも劣らない積極策での巻き返しに期待したいです。 * *※局後の感想※。 *第3局に向けて藤井は「次戦も気負わずに臨みたいと思います」と抱負を述べた。 *渡辺は「均衡を取れるように指していたつもりだったんですけど、一気にバタバタッとダメになってしまった内容だったです。ちょっと差がついてしまったので、もう少しいい将棋を指さないといけないと思います」と述べた。 91 投了 ( 0:00/03:50:00) まで90手で後手の勝ち