# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.67 棋譜ファイル --- 対局ID:16477 記録ID:658ce992dc22a737231cdf83 開始日時:2024/02/24 09:00 終了日時:2024/02/24 18:28 棋戦:第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局 戦型:角換わり腰掛け銀 持ち時間:4時間 秒読み:60秒 消費時間:94▲227△221 場所:石川県金沢市「北國新聞会館」 備考:昼休前68手目83分\n 図:投了 振り駒:なし 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:00〜13:00 昼休前消費時間:68手83分 手合割:平手   先手:伊藤匠七段 後手:藤井聡太棋王 先手省略名:伊藤匠 後手省略名:藤井聡 手数----指手---------消費時間-- *藤井聡太棋王と伊藤匠七段が争う第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負。第1局は持将棋で引き分けとなった。第2局は2024年2月24日(土)、石川県金沢市「北國新聞会館」で指される。 *第2局の先手番は伊藤。持ち時間は各4時間。対局開始は9時。昼食休憩は12時から13時。立会人は久保利明九段、記録係は松下洸平初段(森安正幸七段門下)。観戦記は本間博七段が執筆する。現地大盤解説会の解説は船江恒平六段、聞き手は室田伊緒女流二段。ABEMAの解説者は藤井猛九段と星野良生五段、聞き手は中村真梨花女流四段と山根ことみ女流三段。 * *対局当日、金沢市は晴れ。やや雲が多い。予想気温は1度から9度で冷え込みそうだ。8時32分、松下初段が対局室で駒を磨いている。8時44分、立会人の久保九段や日本将棋連盟会長の羽生善治九段をはじめとした関係者が盤側に着いた。8時48分、伊藤、藤井の順に入室。藤井は身の回りを整えてから駒箱を開けた。駒袋には風神と雷神が描かれている。9時になり、久保九段が「それでは定刻になりましたので、伊藤挑戦者の先手番で始めてください」と告げた。 * *【第2局主催=北國新聞社】 *https://www.hokkoku.co.jp/ *【主催=共同通信社】 *https://www.kyodo.co.jp/ *【特別協賛=コナミグループ】 *https://www.konami.com/ja/ *【協賛=Calorie Mate】 *https://www.otsuka.co.jp/cmt/ *【藤井聡太棋王 対 伊藤匠七段|ABEMA】 *https://abema.tv/channels/shogi-live/slots/Ae4g1uw2JWEevK * *(棋譜・コメント入力=牛蒡) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。#は局後の感想が追記された指し手] 1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00) *◆伊藤 匠(いとう たくみ)七段◆ *2002年10月10日生まれ、東京都世田谷区出身。宮田利男八段門下。2020年、四段。2023年、七段。棋士番号は324。 *タイトル戦登場は2回。棋戦優勝は1回。 2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00) *◆藤井 聡太(ふじい そうた)棋王(竜王・名人・王位・叡王・王座・王将・棋聖)◆ *2002年7月19日生まれ、愛知県瀬戸市出身。杉本昌隆八段門下。2016年、四段。2021年、九段。棋士番号は307。 *タイトル戦登場は21回。獲得は竜王3期、名人1期、王位4期、叡王3期、王座1期、棋王1期、王将3期、棋聖4期の計20期。棋戦優勝は10回。 3 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00) *【伊藤の公式戦成績】 *通算成績は135勝42敗(0.763) *昨年度成績は37勝14敗(0.725) *本年度成績は46勝14敗(0.767) 4 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00) *【藤井の公式戦成績】 *通算成績は360勝70敗(0.837) *昨年度成績は53勝11敗(0.828) *本年度成績は42勝7敗(0.857) 5 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *伊藤の本棋戦成績は17勝4敗1持将棋(0.810)。第47期から参加。今期は挑戦者決定トーナメントから出場した。ベスト4で1敗を喫したものの、敗者復活戦から挑戦者決定戦も制して初の棋王挑戦を決めた。タイトル戦出場は昨年の竜王戦に続いて2回目。 6 3二金(41) ( 0:00/00:00:00) *藤井の本棋戦成績は23勝7敗1持将棋(0.767)。第43期から参加。前期が初戴冠。今期は2連覇を目指す。これまでタイトル戦は(今回の棋王戦を除いて)20回出場して、すべて獲得・防衛に成功。大山康晴十五世名人の記録(19回連続)を更新した。藤井は2022年秋の竜王戦からタイトル戦に11棋戦連続で出場している。こちらは大山十五世名人が50棋戦連続の記録を持つ。 7 7七角(88) ( 0:00/00:00:00) *対戦成績は藤井の7勝0敗1持将棋。伊藤の先手番は8局のうち4局あり、すべて相掛かりを指している。非公式戦の第52期新人王戦記念対局(2021年)も相掛かりだった。藤井が先手番のときは角換わり。それぞれ先後で用いる作戦はハッキリと分かれる。 *だが、今回は伊藤の先手番で角換わりになりそうだ。伊藤は相掛かりと角換わりを交互に指す傾向があり、21日の木村一基九段戦(竜王戦)も角換わりで新たな工夫を見せて勝った。 8 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *互いに腰掛け銀を目指せば、序盤はあっという間に進むだろう。60手台、70手台まで研究通りということもありうる。第1局の角換わりは午前中だけで86手も進んだ。 * *【棋王戦本社インタビュー|北國新聞】 *https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/1325858 *【朝の様子】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-b35b.html *【対局開始】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-75cb-1.html 9 8八銀(79) ( 0:00/00:00:00) 10 7七角成(22) ( 0:00/00:00:00) *棋王戦は共同通信社が主催、コナミグループが特別協賛、大塚製薬のCalorie Mateが協賛する棋戦。タイトルホルダーは藤井聡太棋王。予選通過者とシード者で挑戦者決定トーナメント(ベスト4以上は2敗失格制)が行われる。棋王と挑戦者は五番勝負でタイトルを争う。観戦記は20以上の地方紙に掲載される。 *番勝負の主催は掲載紙各社の持ち回り。第2局は北國新聞社が主催を務め、特別協力に金沢市、後援に金沢市教育委員会、テレビ金沢、北陸放送、金沢ケーブル、エフエム石川、ラジオかなざわ・こまつ・ななおが加わる。 11 同 銀(88) ( 0:00/00:00:00) *第2局の現地解説会は事前申込制。すでに応募は締め切られた。駒テラス西参道(東京都渋谷区)の大盤解説会は本日12時までチケットを販売している。解説は遠山雄亮六段、聞き手は加藤圭女流二段。3月3日の第3局も駒テラスで解説会があり、郷田真隆九段と戸辺誠七段のダブル解説が予定されている。また、第4局は現地の前夜祭と大盤解説の申し込みが始まっている。締め切りは3月7日。 * *【駒テラス第2局チケット販売】 *https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02ym646reti31.html *【駒テラス第3局チケット販売】 *https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02dz0ecmw9k31.html *【第4局現地イベント】 *https://www.shogi.or.jp/event/2024/02/494_13in.html 12 2二銀(31) ( 0:00/00:00:00) *第1局=富山県魚津市、第2局=石川県金沢市、第3局=新潟県新潟市と、今期五番勝負の前半は北陸を転戦する。北陸は1月1日の能登半島地震で各地に被害があった。日本将棋連盟の棋士会は11日、「復興支援オンラインチャリティイベント」を開催し、北國新聞社を通じて収益(一部経費除く)を寄付した。コナミグループも1千万円を北國新聞社に寄託。観光庁は「北陸応援割」(石川県・福井県・富山県・新潟県の旅行代金援助)の計画を進めている。 * *【金沢市の災害対応状況】 *https://www4.city.kanazawa.lg.jp/soshikikarasagasu/kohokochoka/gyomuannai/1/1/2/25777.html 13 7八金(69) ( 0:00/00:00:00) *金沢市は石川県の県庁所在地。県のほぼ中央にあり、北西部は日本海に面している。江戸時代に加賀藩の城下町として栄えた。現在も北陸の主要都市のひとつであり、観光人気も高い。兼六園や風情ある街並み、伝統工芸や海鮮も魅力だ。東京からは北陸新幹線で行くのが便利。同新幹線は来月16日、金沢から福井県敦賀までさらに続伸する。 *棋王戦の石川県開催は第23期が初めてで、第25期から今期まで続いている。第27期から金沢市開催になり、第33期から北國新聞会館が対局場になった。石川県出身には女流棋士が多く、田中沙紀女流1級は金沢市の出身。 14 3三銀(22) ( 0:00/00:00:00) *金沢対局には欠かせない人がいる。石川県珠洲市の塩井一仁さんだ。塩井さんは「関西駒の会」の会員であり、日本将棋連盟石川県支部連合会の理事も務める。2009年以降の金沢対局でほぼ毎年、対局で使用する盤駒を提供してきた。その塩井さんも能登半島地震で被災した。家が倒壊し、妻・紀美子さんを亡くした。がれきの中から遺品や棋具を探したところ、4組の駒がキズもなく見つかったという。今回の対局も塩井さんの盤駒が使われる。以下の記事から塩井さんのコメントを引用する。 *「駒だけでもきれいな状態で残ってくれて、涙が出そうになった。思い出の品には勇気をもらえた。見つけられて本当にうれしい」「妻も毎年棋王戦を楽しみ、盤と駒が使われることを喜んでいた。被災地が元気になるような熱戦が見たい」「石川の将棋愛好家にとって金沢の棋王戦は一大イベント。私の駒と盤が被災地の人々に希望を与えるような対局の舞台になってほしい」 * *【藤井八冠防衛戦に被災の駒 毎年提供・珠洲の塩井さん 自宅全壊、がれき下に発見】 *https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/1313198 15 3八銀(39) ( 0:00/00:00:00) 16 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00) *第1局は従来の持将棋にはない特徴がふたつあった。わずか129手で成立したこと、そして終局時に伊藤が1時間以上も残したこと。ひとしきり戦い、敵玉が上部に逃げ出して捕まらなくなり、やむなく相入玉を目指す。それが持将棋の一般的な流れだ。最後は駒を取り合う泥仕合になることも多く、必然的に長手数になる。しかし伊藤は作戦選択の段階から持将棋を視野に入れていた。短手数の決着や時間の使い方がその証左。第1局だけではなく、他棋戦でも持将棋模様の将棋を指している。この異端の後手番戦術は、いつしか「持将棋定跡」と呼ばれるようになった。 17 4六歩(47) ( 0:00/00:00:00) *伊藤の持将棋定跡には複数のバージョンがある。バージョン1は▲9五歩と先手が突き越した形で始まる。昨年6月の佐々木勇気八段戦(銀河戦)は110手で持将棋になった。手元のデータベース(1970年代以降の棋譜を主に集録。60年代の棋譜も一部含む)では史上最短の持将棋成立となる。昨年7月の丸山忠久九段戦(竜王戦)も同じ形になったが、こちらは丸山九段の寄せを伊藤がしのいで後手勝ち。先手の打開は失敗した。 *棋王戦第1局がバージョン2。これは両端を突き合う。現代角換わりの基本図(下記リンク先を参照)から派生する形であり、定跡に与える影響はバージョン1より大きいかもしれない。基本図から△5二玉▲6九玉△4四歩▲7九玉△4一飛▲8八玉△4二玉▲4五歩が実戦の進行だ。自然な仕掛けだが、その先にあるものが持将棋だとすれば、引き分けで先手番の優位を失う。先手は有力な変化をつぶされたことになる。 * *【角換わり基本図】 *https://kifulog.shogi.or.jp/photos/uncategorized/2024/02/21/kkgfig1_2.gif *【第1局昼食休憩の図】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/images/2024/02/04/20240204_85.jpg 18 7四歩(73) ( 0:00/00:00:00) *いまは将棋ソフトで対抗策がすぐに発見されることも多い。しかし持将棋に関しては簡単にいかないかもしれない。相入玉の裁定には24点法と27点法がある(詳細は以下のリンク先を参照)。プロの将棋は24点法を採用するが、一般的な将棋ソフトは27点法で評価値を算出する。たとえば先手が30点、後手が24点を確保する見込みであれば、ソフトは先手優勢の数値を示すだろう。だがプロの将棋だと引き分けになる。ソフトの評価値だけを頼りにした研究では、第1局の持将棋問題は解決しないのだ。 *もし伊藤に持将棋定跡のバージョン3、バージョン4があるとすれば、先手よしとされたほかの順も定説が覆る可能性がある。ソフトは将棋における未開の地を重機のように切り開いたが、持将棋模様が重機も入り込めない深い谷かもしれない。ひとつひとつの変化を人間の力で開拓していくことになる。 * *【よくある質問 持将棋の規定|将棋連盟】 *https://www.shogi.or.jp/faq/rules/#62 19 4七銀(38) ( 0:00/00:00:00) *ただ「持将棋定跡」も終局まで定跡化されたわけではない。あくまで持将棋になりやすい形というだけだ。第1局の終盤は極めて難解だった。藤井は敵玉に迫ろうと技を繰り出していたし、伊藤はそれを見事にしのいだ。実戦的な技術においても高度な将棋だった。 *棋王戦第1局の4日後には、▲遠山雄亮六段−△高田明浩四段戦(第82期順位戦C級2組)で同じ将棋が指されている。途中で先手が手を変えたが、後手が寄せを決めて勝った。先手の入玉も簡単なことではない。角換わりの今後の動静に注目したい。 20 1四歩(13) ( 0:00/00:00:00) 21 1六歩(17) ( 0:00/00:00:00) *あと1週間で3月になる。年度成績の上位争いが気になる時期だ。対局数1位は伊藤、連勝1位は佐々木大地七段でほぼ確定。勝数は1位の伊藤が46勝、2位の藤本渚四段が45勝で激戦。勝率は藤本四段が1位で0.865(45勝7敗)、藤井が2位で0.857(42勝7敗)とハイレベルで、中原誠十六世名人の史上最高勝率0.855(47勝8敗)の更新が期待される。 * *藤井はNHK杯(準決勝と決勝)と棋王戦五番勝負を残すのみ。NHK杯で優勝、かつ棋王戦をストレートで防衛すれば0.870(47勝7敗)で記録更新となる。棋王戦が3勝1敗だと1位タイ記録。棋王戦で2敗以上を喫するか、NHK杯で優勝を逃すと中原超えはない。 *藤本四段は王位リーグに参戦するなど勝ち残っている棋戦が多く、3月の対局数が読めない。参考までに、藤井が王位リーグを戦った2019年度3月(当時七段)の対局数は8だった。仮に藤本四段が6勝2敗だと1位記録に届かない。1敗以内で乗りきる必要がある。 *中原名人は20歳五段で記録を打ち立てた。タイトル戦に初めて挑戦した年である(翌年度に20歳10ヵ月で初戴冠)。勝率のキャリアハイは若手時代に達成することが多い。藤本四段は18歳で伸び盛りだ。藤井も21歳で成長途上にあるが、タイトル戦ばかりで記録に迫ろうというのだから恐ろしい。 * *【今年度棋士成績・記録】 *https://www.shogi.or.jp/game/record/year_ranking.html 22 6四歩(63) ( 0:00/00:00:00) *対局前日、藤井は愛知から東海道本線・北陸本線で、伊藤は東京から北陸新幹線で、それぞれ金沢に入った。藤井が乗車した「特急しらさぎ」は、北陸新幹線の続伸にともない、金沢−敦賀間の運転取り止めが計画されている。藤井は「いい機会だった」と話していた。 23 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00) *前日検分には塩井さんが同席した。用意された盤の厚さは6寸8分。駒は平田雅峰作の錦旗書と清定書。塩井さんは、木地、作者、書体について丁寧に説明したあと、「もしよろしければ」と清定書を対局者に勧めた。藤井は「こちらでお願いします」と承諾。伊藤も異存はなかった。 *錦旗書の駒には実績があった。タイトル戦で5回も使われている。しかし、塩井さんはあえて清定書を推薦した。清定書は「歩」の形に特徴があり、「少」の部分が「り」のように縦に長く伸びる。その異形ゆえか、タイトル戦ではまず見かけない。塩井さんもこの駒は初めて検分に持ち込んだという。「あまり使われない書体ですよね」と記者が話しかけると、塩井さんは「ゼロからスタートしたかったものですから」と推薦理由を語った。塩井さんの清定書の駒は、今回初めてタイトル戦で使用される。 * *【瓦礫から見つかった奇跡の将棋盤と駒で|テレビ金沢Youtube】 *https://www.youtube.com/watch?v=GnHG4BZRv7E *【対局検分1〜3】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-1734.html *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-c23c.html *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-aee7.html 24 7三桂(81) ( 0:00/00:00:00) *対局者は前日検分を終え、18時30分から金沢ニューグランドホテルで「金沢対局の集い」(前夜祭に相当)に出席した。藤井が金沢を訪れるのは今回で4回目。そのうち1回は家族旅行だったという。伊藤は初めて金沢を訪れた。 *二人は壇上に上がると、能登半島地震で被災された方々のお見舞いと復興を願い、明日の対局については次のように語った。 *「明日からまた新たな戦いが始まる」(藤井) *「まずは1勝を挙げられるように頑張りたい」(伊藤) * *【前夜祭1〜5】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-b995.html *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-8f9f.html *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-5d4f.html *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-8889.html *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-4d49.html 25 6八玉(59) ( 0:00/00:00:00) 26 6三銀(62) ( 0:00/00:00:00) *対局開始から19分で26手も進んだ。1手1分未満のペース。やはり早い。 27 9六歩(97) ( 0:00/00:00:00) *9筋の歩を受けるかどうかは重要な岐路だ。受けない方針なら△4二玉。△9四歩の1手を省略することで後手は先攻も可能になる。 28 9四歩(93) ( 1:00/00:01:00) *1分の考慮。本局で初めて時間を消費した。本間七段が盤側で観戦している。松下初段は自前の和服で記録係を務めている。 29 3七桂(29) ( 0:00/00:00:00) *定跡の駒組みが続いている。右桂は攻めの主力だ。▲4五桂や△4四歩を待って▲4五歩が攻めの第一歩になる。ただ、右桂を使うと敵玉の前進を押さえる駒が少なくなる。攻めるときは勢いよくいきたいが、攻めすぎると入玉を誘発することもある。 30 4二玉(51) ( 0:00/00:01:00) 31 4八金(49) ( 0:00/00:00:00) *先手は4八金・2九飛、後手は6二金・8一飛が現代角換わりで用いられる構えだ。17手目に紹介した基本図に近づいてきた。第1局の進行に合流している。 32 8一飛(82) ( 2:00/00:03:00) *後手は基本的に待ちの姿勢で指すことになる。さまざまな待ちの手法があるが、藤井はどの形にするか。 33 5六銀(47) ( 0:00/00:00:00) *△6二金▲2九飛△5四銀▲6六歩で先述の「基本図」になる。 34 7二金(61) ( 2:00/00:05:00) *自然に進めるなら△6二金だった。△7二金は前例の1〜2割程度で指されている。 35 2九飛(28) ( 1:00/00:01:00) *△6二金とすれば「基本図」に組み上がった際に手番がずれる。手待ちも角換わりの重要なテクニックだ。 36 5四銀(63) ( 3:00/00:08:00) *手番ずらしの△6二金ではなく7二金型で腰掛け銀にした。△5四銀も少数派の手で藤井の趣向だ。羽生九段は対局開始を見守ると帰途についた。会長職にあり、多忙な日々を送っている。 37 7九玉(68) ( 1:00/00:02:00) 38 6五歩(64) ( 2:00/00:10:00) *△6五歩は△6四角を見据えている。攻めるというよりも角のにらみで盤上を支配するタイプの構えになる。先手は現状が最善形のため、動けるものなら動きたい。船江六段は「▲3五歩△同歩▲4五桂でも後手の対応方法がわからない」という。 39 2四歩(25) ( 4:00/00:06:00) *「少し意外な仕掛けですが、お互いにまだ想定内の進行でしょう」(船江六段) *△2四同銀には3四歩の浮き駒を狙いに▲4五銀が予想される。△2四同歩には▲3五歩△同歩▲4五桂から▲2四飛。いま▲2四歩を突いたところだが、代えて▲3五歩△同歩▲4五桂△3四銀▲2四歩の順だと△4四歩があったかもしれない。 *前例は1局。昨年12月の第82期順位戦A級、▲佐々木勇気八段−△稲葉陽八段戦だ。▲2四歩に△同歩▲3五歩△同歩▲4五桂△2三金と進み、141手で先手が勝った。船江六段は「前例の△2三金には驚きました」という。稲葉八段とは同門の兄弟弟子だ。 40 同 銀(33) ( 1:00/00:11:00) *1分の考慮。△2四同銀で前例(△同歩)を離れた。 41 4五銀(56) ( 0:00/00:06:00) *前例を離れても指し手の早さは変わらない。研究将棋ではよく見られること。先に想定を外れるのはどちらか。最初の注目点。 42 同 銀(54) ( 0:00/00:11:00) 43 同 桂(37) ( 0:00/00:06:00) *銀を交換したことで▲6三銀△同金▲7二角の筋が生じている。 44 6三銀打 ( 0:00/00:11:00) *手厚く銀を埋めて前述の筋を消した。 45 9七角打 ( 1:00/00:07:00) *「すごいなあ。▲9七角は浮かぶ手ですが、事前に知っていないとすぐには指せません」と船江六段はうなった。攻めが続くという確信がなければ指せない手だ。伊藤はわずか1分で指した。 46 6二角打 ( 0:00/00:11:00) *△6二金は▲5三桂成△同金▲6二銀で続きそうだった。藤井はノータイムで角を投入。先手の攻めを受け止めれば、△4四歩や△9五歩が楽しみになる。 *本局の類型として、2022年6月15日の▲永瀬拓矢王座−△藤井聡太棋聖戦(第93期ヒューリック杯棋聖戦第2局、肩書は当時)が見つかった。1筋を1五歩・1七歩の形にして先後を入れ替えると同じ形だ。伊藤と藤井の指し手が早かったのも合点がいく。その将棋は△6二角以下、▲6六歩△9五歩▲6四銀△同銀▲同角△4四歩▲6五歩△8六歩▲同歩△4五歩と進んだ。 * *※局後の感想※ *上記の類型が本局のベース。 *伊藤「▲6六歩もあるところですけど」 *藤井「何をやられても自信はない」 47 6四銀打 ( 3:00/00:10:00) *これで前述の類型とも離れた。「決断の一手」といえそうな手をビシビシと指していく。 48 同 銀(63) ( 0:00/00:11:00) 49 同 角(97) ( 0:00/00:10:00) *先手は6三銀を盤上から消した。次は▲7五歩と攻めていくのか。以下△同歩に▲7四銀と無骨に打ち込む。 *現局面で△6三銀には、▲5五角△3三桂▲同桂成△同銀▲同角成△同金▲3五歩△同歩▲4五桂△3二金▲3四銀を船江六段は示す。 50 4四歩(43) ( 3:00/00:14:00) *先手の動きを催促した。 * *【角換わりからハイペース】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-d46b.html 51 7五歩(76) ( 0:00/00:10:00) *10時になった。午前のおやつの時間。伊藤の注文は「フルーツ盛り合わせ、レアチーズケーキ、アイスティー」。藤井は「フルーツ盛り合わせ、イチゴモンブラン、アイスティー」。 * *【顔合わせ会】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-ab77.html *【午前のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-02c9-1.html 52 同 歩(74) ( 4:00/00:18:00) *控室の面々から感嘆のため息がたびたび漏れる。難しい将棋のはずなのに、ほとんど時間を使わない。二人とも研究が深い。 53 5三角成(64) ( 2:00/00:12:00) *桂取りをかけられているので▲7四銀は間に合わなかった。本譜は桂をさばきつつ、5三で奪った歩を7筋に打つつもり。すなわち▲5三角成△同角▲同桂成△同玉に▲7四歩。先手が7三の桂を取り返せば、歩以外の駒の損得はなくなる。 54 同 角(62) ( 0:00/00:18:00) 55 同 桂成(45) ( 0:00/00:12:00) 56 同 玉(42) ( 0:00/00:18:00) 57 7四歩打 ( 0:00/00:12:00) *▲7三歩成は確定している。先手は歩切れ、後手は玉が不安定。どちらも不安を抱えての戦いになる。 58 5四歩打 ( 5:00/00:23:00) *玉頭を大事に。地味な手だが、すごみがある。▲7三歩成△同金に(1)▲6六歩△同歩▲6五桂や(2)▲8二銀△同飛▲7一角の筋は大丈夫だといっている。 * *※局後の感想※ *伊藤は「午前中に誤算があった」と話した。具体的には「本譜はやりすぎた」という。修正案として▲5六歩△6四銀が検討された。後手に銀を使わせた効果は後述。67手目の感想戦コメントに続く。 59 7三歩成(74) ( 6:00/00:18:00) *まだ10時19分である。早指しの棋戦かと錯覚してしまう。 * *※局後の感想※ *伊藤「本譜はもうひどい」 *藤井「え、そうなんですか」 *伊藤はこのあと形勢を悲観するようになる。藤井も自信がなかったようで、伊藤の言葉を意外そうに受け止めていた。 60 同 金(72) ( 4:00/00:27:00) 61 8二銀打 ( 6:00/00:24:00) *6分の考慮で指した。研究を離れた、という時間の使い方ではない。▲8二銀は△同飛▲7一角△6二飛▲同角成△同玉で先手が一時的に銀損となるが、▲8一飛や▲4一飛と打ち込めば桂か香は取り返せる。 62 同 飛(81) ( 1:00/00:28:00) *金を取られるわけにはいかない。一本道で飛車角交換まで突き進む。 63 7一角打 ( 0:00/00:24:00) *王手飛車取り。ただし先手は銀を先に捨てている。 64 6二飛(82) ( 0:00/00:28:00) *58手目△5四歩を入れていないと、ここで▲5四桂が激痛になった。 * *※局後の感想※ *藤井はこの3手後に大長考に沈む。本間七段が「研究の本線ではなかったですか」と質問すると、藤井は「△5四歩(58手目)は△6二飛に▲5四桂を消した手なので、それでもやってくるのは少し考えていなかった」と答えた。 65 同 角成(71) ( 0:00/00:24:00) 66 同 玉(53) ( 0:00/00:28:00) 67 4一飛打 ( 1:00/00:25:00) *「互いに想定内の進行が続いていると思います。先手は玉が堅いですね。細い攻めをつないでいくことになります。後手はすぐに攻められませんが、いずれは豊富な持ち駒を生かしてカウンターを狙いたい。そういう展開が予想されます」(久保九段) *船江六段は「次の一手が難しい」という。先手の攻め筋をいくつも想定しつつ、受けの手を2手、3手と続けて理想の防御陣を構築したいのだが、手の組み合わせが多いと読む量は膨大になる。 * *久保九段、船江六段、室田女流二段が継ぎ盤を囲む。検討用の盤駒も塩井さんが提供した。船江六段は「9一香を取られると受かる気がしない」と話し、(1)△5一桂▲2一飛成△3一銀▲1一竜△7四角を示した。最後の△7四角は△2二銀に▲4一竜の変化を消し、竜を捕獲する狙いがある。ただ△5一桂自体の感触はよくないようで「違う気がするなあ」とぼやいた。 * *藤井が手を止めて30分が経過した。▲8一飛を本命視していただろうか。さらに1時間が経過。どうやら研究勝負の第一段階は伊藤に軍配が上がった。 *検討を重ねて(2)△7四角が本命視されている。△7四角に(2a)▲9一飛成なら△7一銀から△8二銀打を狙う。▲9一飛成の変化をクリアできるなら検討当初の△5一桂より△7四角がまさる。(2b)▲2一飛成△3一銀▲4三桂は△2二銀打から竜を捕まえる。▲4三桂に代えて▲1一竜は難しい。 * *ここで藤井が1時間23分使って昼食休憩に入った。休憩時間は12時から1時間。ここまでの消費時間は、▲伊藤25分、△藤井1時間51分(持ち時間は各4時間)。昼食はふたりとも「加賀懐石弁当」。 *藤井は12時47分に戻り、すぐに盤上没我で考え始めた。伊藤は12時51分に入室。13時になり、松下初段が「時間になりました」と声をかけた。藤井はしばしうつむく。すぐに指す気配はない。谷川浩司十七世名人が現地を訪れた。谷川十七世名人も12手目に紹介した棋士会のチャリティイベントに出演した。 * *【午前中で終盤に】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-ddbf.html *【午前中の控室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-3d89.html *【対局者の昼食】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-7632.html *【昼食休憩時の対局室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-e82f-1.html * *※局後の感想※ *藤井「部分的に受けがない」 *伊藤「あまり自信はなかったですけど」 *このあと▲2一飛成を指せなかったのが伊藤の誤算。攻めが細くなったという。▲2一飛成△3一銀に▲4三桂は△2二銀打▲3一桂成△同金で竜を捕獲される。58手目に▲5六歩△6四銀を入れておけば、後手の持ち駒から銀が1枚減るので△2二銀打はなかった。 *とはいえ本譜も簡単ではない。藤井は▲2一飛成△3一銀▲1一竜でも難しいと考えていたようだ。▲1一竜のあとなら▲4三桂も指せる。たとえば(1)△9二香▲2一飛成△3一銀▲1一竜も「若干考えた」と藤井。そこで後手にさえた手がない。(2)△7四角▲9一飛成△6六歩▲6九飛も危険。△6六歩を指すと反動が大きい。 68 8六歩(85) (88:00/01:56:00) *対局再開。昼食休憩後の指し手。13時4分に指された。 *船江六段は△8六歩が指されたと聞いて目を丸くした。検討になかった手だ。歩切れの相手に歩を渡す手は指しづらい。しかも後手の狙い筋がわからない。(1)▲8六同歩△8八歩▲同玉△7六桂▲8七玉△8八歩が並べられたが、「それ痛いんかな」と懐疑的な声。次に△8九歩成が実現しても▲同飛が堅い。(2)▲9一飛成△8七歩成▲同金でも先手が耐えている可能性がある。(3)▲8六同銀は△7六桂が嫌みだが、それも後手がよいのかわからない。ただ、藤井が1時間28分をかけて指した手だ。はるか先に後手有望な局面を見つけたか。伊藤もすぐには指せないだろう。 *13時30分、現地の大盤解説会が始まった。14時、久保九段がABEMAの中継に出演し、藤井猛九段と意見を交わした。(2)▲9一飛成の順も有力とのこと。ABEMA側の検討手順として、△8六歩に代えて△7四角▲2一飛成△4一銀▲1一竜△3三角▲2一竜△2二金▲1一竜△3二金の千日手筋も紹介された。 * *【対局再開】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-2985-1.html * *※局後の感想※ *「▲8六同歩も利かされかと思って」(伊藤) *藤井は▲8六同歩に△8八歩▲同玉△7六桂▲8七玉△8八歩を示したが、それほど自信がある様子ではなかった。 69 9一飛成(41) (68:00/01:33:00) *14時13分の着手。1時間8分の長考だった。▲9一飛成までの消費時間は、▲伊藤1時間33分、△藤井1時間56分。 70 8七歩成(86) (11:00/02:07:00) 71 同 金(78) ( 0:00/01:33:00) *伊藤は対局再開から3手で香と歩を手にした。後手は8五の歩を突き捨てたので▲8五桂も警戒しなければならない。そうしたリスクも承知で攻めている。 * *【尾山神社1〜2】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-011e.html *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-8545.html 72 5五角打 ( 4:00/02:11:00) *14時30分の着手。△5五角は狭くて怖い手でもあるが、藤井は問題ないと読んだ。▲8二竜△7二金に▲6四香を消している。手番がくれば△8六歩や△8八歩から先手陣を崩していく。伊藤は69手目▲9一飛成を指した直後に羽織を脱いだ。白の和服がまぶしい。藤井は対局再開前から羽織を着ていない。 *15時になった。午後のおやつの時間。伊藤は「フルーツ盛り合わせ、レーズンサンド、紅茶」、藤井は「フルーツ盛り合わせ、レーズンサンド、アップルジュース」。 *対局再開から2時間で5手しか進んでいない。中盤の難所を迎えている。研究を抜けた先の中盤が対藤井戦の課題だと、伊藤は何度も話している。力を試される場面だ。 *久保九段が大盤解説会から戻ってきた。「ここで次の一手の問題を出すことになってしびれました」。▲5六香や▲9二竜を候補に挙げるも「当たる自信はありません」という。すっきりした順が見えないと先手も大変。後手も薄い玉を抱えて指しこなすのは苦労する。久保九段は「どちらも持ちたくない」と話す。 * *【谷川浩司十七世名人の見解】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-8570.html *【午後のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-ecc5-1.html * *※局後の感想※ *伊藤「△8七歩成▲同金で何をやられるのかと思っていたのですが、△5五角でしびれていますね」 *藤井「え、そうなんですか。▲6八玉でも自信がなかった」 *伊藤「そっちにいくんですね。発想になかったです」 73 9二竜(91) (74:00/02:47:00) *69手目▲9一飛成に続いて1時間超えの考慮。消費時間は逆転し、藤井の36分リードとなった。▲9二竜は5五角の利きをかわしつつの王手。△7二金には▲7三歩△同角▲7四香が決まる。7二に合駒を打てば▲8五桂で追撃する。味のよい王手に思えるが、△8二歩が手筋の中合いで「▲9二竜は得がどうかわからない」と久保九段は話していた。 *△7二銀はあるようだ。星野五段がABEMAで△7二銀▲8五桂△7四角▲7三桂成△同角▲5三金△同玉▲7二竜△6二金▲7一竜を検討している。そこで後手にうまい攻めがあるかどうか。 * *【現地大盤解説会】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-403b.html * *※局後の感想※ *△8二歩▲同竜△7二角▲8四桂△同金▲同竜△7三銀も検討された。「けっこう(先手が)悪い」と伊藤。「そうか、竜を押さえ込めるなら△8二歩でしたか」と藤井。△7二角がポイントになる手。△7三銀まで進めたときに▲5四竜がない。△7二角に代えて△7二金は▲8一竜、△7二銀は▲8四桂がうるさい。 74 7二銀打 (37:00/02:48:00) *△8二歩には▲9一竜があったか。竜が元の位置に戻るのだから先手は2手損になるが、後手も△8六歩や△8八歩が消えた。 75 8五桂打 ( 3:00/02:50:00) *強烈な一撃だが。 76 7四角打 ( 2:00/02:50:00) *△7四角が期待の一手。竜取りで手番を握りにいく。△6六歩が実現すれば△2九角成と△6七歩成の両狙いになる。 77 7三桂成(85) ( 0:00/02:50:00) 78 同 角(55) ( 0:00/02:50:00) *「(1)▲5三金△同玉▲7二竜△6二金▲7一竜で後手の手番が大きいかと思いましたが、以下△6六歩は▲6九飛で耐えていますか。先手にも▲8二銀で角を取る狙いがあるので大変ですね。(2)▲8三歩もありますが、次に▲8二歩成は△9二角で竜を取られます」(久保九段) * *※局後の感想※ *藤井は「△7二銀(74手目)と打った時点では▲5三金を軽視していた」という。ここで▲5三金△同玉▲7二竜△6二金▲7一竜は有力。先手は手番を失うことになるが、後手の攻めも難しい。 79 9四竜(92) ( 8:00/02:58:00) *角取りの先手で手番を握り続ける。 *△5二角は▲7四香で串刺しにされる。△8三角も▲同竜△同銀▲4一角が厳しい。角を逃げられないなら8四に駒を打つことになる。 * *※局後の感想※ *藤井「本譜は(後手が)指せている可能性があるのかなと」 *伊藤「そうですね。本譜はかなりまずい。悲観はしていたんですけど(前手で)▲5三金を打てば大変でしたか」 80 8四歩打 ( 5:00/02:55:00) *「後手陣が安定してきました。6五と7五の歩が厚みになっています。先手は9四竜の使い方が難しい。後手を持ちたいです」(久保九段) 81 7六歩打 ( 7:00/03:05:00) *角頭は急所。7五歩が安定すると後手陣はいよいよ要塞化した。攻めるならいましかない。△7六同歩は▲7五香が入る。 *後手が決着をつけにいくなら△6六歩だが、▲6九飛が常に難敵だ。以下△6七歩成は▲同飛が王手。かといって歩を成れないと▲6六銀から▲7五銀と逆用される。この事情を踏まえて久保九段は△6三桂を指摘した。その後に△6六歩と突けば▲6九飛△6七歩成▲同飛が王手にならない。 * *【7筋の勢力争い】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-aea1.html 82 6三桂打 (27:00/03:22:00) *7五の守りにも利いて絶品。71手目の局面は後手玉周辺に金が1枚あるだけだった。いまは見違えるほど味方の駒が多い。藤井の師匠、杉本昌八段も囲いの再構築を得意にしている。杉本昌八段は金銀を使うことが多かったが、藤井は角や桂で攻めを見せつつ、守り駒を増やした。藤井式のリフォーム術である。 83 8六金(87) (13:00/03:18:00) *勝負手。△7六歩▲同金△7五歩に金を逃げるようではつらかった。金を上がれば▲7五歩に△同桂が金取りにならないし、△7六歩▲同銀△7五歩にも▲同銀△同桂▲同金とできる。自玉の守りを薄くしても後手の厚みを突破しなければいけなかった。 * *【後手に形勢の針が傾く】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-af1a.html 84 8三角(74) ( 8:00/03:30:00) *「△8三角だと△6六歩の将棋にはなりません。竜を捕まえて、手にした飛車で攻める方針です」(久保九段) 85 同 竜(94) ( 1:00/03:19:00) *▲9三竜としても逃げ切れるものではなかった。 86 同 銀(72) ( 0:00/03:30:00) 87 7五歩(76) ( 0:00/03:19:00) *▲7四金や▲4一角に期待している。 88 5五角(73) ( 4:00/03:34:00) *▲7四金から先逃げしつつ、攻めに活用する。先手はこの角の利きを止めにくい。 89 5六香打 ( 5:00/03:24:00) *緊急手段で角を追う。△6四角に▲5四香は△5三歩があるため、この香をすぐに活用することはできない。 90 7六歩打 ( 4:00/03:38:00) *藤井はこぶしを口元に当て、視線を宙に飛ばして読みを入れていた。ギアを入れ替えて寄せにいく。▲8八銀は△同角成▲同玉△6八飛で王手金取り。▲5五香は△7七歩成▲同桂△5五桂で2枚換えになる。▲7六同金には△8七銀から△7八飛を狙う。 * *【藤井棋王が攻める】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-4858.html 91 同 金(86) (17:00/03:41:00) *残り時間は▲伊藤19分、△藤井22分。 92 8七銀打 ( 0:00/03:38:00) *ノータイム。先手は△7八飛を受けるしかない。 93 5八金(48) ( 2:00/03:43:00) *工夫した受けで△7八飛▲6九玉△7六銀成に▲7八玉を残した。 94 8六桂打 ( 3:00/03:41:00) *気づきにくい決め手だ。△7八銀成までの詰めろ。▲8六同銀は△8八飛、▲8六同金は△7七角成で受けがない。 *この局面で伊藤が投了。88手目△5五角からわずか7手で先手玉を仕留めた。終局時刻は18時28分。消費時間は、▲伊藤3時間47分、△藤井3時間41分(持ち時間は各4時間)。第2局を終えて藤井の1勝0敗1持将棋となった。第3局は3月3日(日)に新潟県新潟市「新潟グランドホテル」で指される。 *投了以下、▲8六同銀△8八飛▲6九玉は△8九飛成▲7九桂△7八銀成▲5九玉△7九竜▲4八玉△2九竜で飛車を抜かれる。▲8六同金△7七角成▲同桂は△8九飛▲6八玉△5九銀▲同金△8八飛成▲6九玉△7八竜で詰み。 * *【終局直後】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-bb10-1.html *【大盤解説会へ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-af8a.html *【感想戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-10da-1.html *【北陸ジュニア棋王戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-2e03.html * *※局後の感想※ *感想戦の時間は30分程度。伊藤は早い段階で形勢を悲観していた。藤井も薄い玉形で自信がないまま戦っていた。79手目▲9四竜に代えて▲5三金なら大変な勝負だった。 95 投了 ( 4:00/03:47:00) まで94手で後手の勝ち