# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.67 棋譜ファイル --- 対局ID:16400 記録ID:658ce991dc22a737231cdf5f 開始日時:2024/02/04 09:00 終了日時:2024/02/04 17:35 棋戦:第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局 戦型:角換わり腰掛け銀 持ち時間:4時間 秒読み:60秒 消費時間:129▲202△176 場所:富山県魚津市「新川文化ホール」 備考:昼休前86手目23分\n 振り駒:4,0,藤 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:00〜13:00 昼休前消費時間:86手23分 手合割:平手   先手:藤井聡太棋王 後手:伊藤匠七段 先手省略名:藤井聡 後手省略名:伊藤匠 手数----指手---------消費時間-- *藤井聡太棋王に伊藤匠七段が挑戦する第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負が開幕。第1局は富山県魚津市「新川文化ホール」で2月4日9時開始。本局の主催は北日本新聞。 *持ち時間は各4時間。昼食休憩は12時から13時。おやつは10時と15時に出される。開幕局の本局は、藤井の振り歩先(歩が多ければ藤井の先手)による振り駒で先後を決める。 *立会人は森内俊之九段、記録係は吉田響太三段(所司和晴七段門下)。現地大盤解説会は、解説が村田顕弘六段、ゲストに服部慎一郎六段、聞き手は野原未蘭女流初段。 *4日朝、伊藤は8時40分ごろに対局室入りした。藤井は8時47分入室。信玄袋から扇子やデジタル時計、ハンカチなどを取り出す。おしぼりで手をぬぐったあと、息をつき、少し間を置いてから一礼して駒箱を開けた。藤井は大橋流、伊藤は伊藤流で駒を並べる。駒を並べ終えて、吉田三段が振り駒を行う。歩が4枚出て、藤井の先手に決まった。 *【北日本新聞webunプラス|富山のニュース情報サイト】 *https://webun.jp/ * *(棋譜・コメント入力=銀杏) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。#は局後の感想が追記された指し手。【】はブログやリンクのタイトル] 1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00) *立会人の森内俊之九段が「定刻になりました。藤井棋王の先手で開始してください」と告げて、対局が始まった。 *藤井はいつも通りにお茶をひと口。そして、初手の▲2六歩を指した。 * *◆藤井 聡太(ふじい そうた)棋王(竜王・名人・王位・叡王・王座・王将・棋聖)◆ *2002年7月19日生まれ、愛知県瀬戸市出身。杉本昌隆八段門下。2016年、四段。2021年、九段。棋士番号は307。 *タイトル戦登場は21回。獲得は棋王1期、竜王3期、名人1期、王位4期、叡王3期、王座1期、王将2期、棋聖4期の計19期。棋戦優勝は10回。 2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00) *◆伊藤 匠(いとう たくみ)七段◆ *2002年10月10日生まれ、東京都世田谷区出身。宮田利男八段門下。2020年、四段。2023年、七段。棋士番号は324。 *タイトル戦登場は2回。棋戦優勝は1回。 3 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00) *藤井の2023年度成績は39勝6敗(0.867)。 *勝率ランキング1位、勝数ランキング3位、対局数ランキング6位。 *昨年度の成績は53勝11敗(0.828)。 *通算成績は357勝69敗(0.838) *(未放映のテレビ対局を除く) 4 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00) *伊藤が4手目△8五歩を指したところで関係者が退室した。 * *伊藤の2023年度成績は43勝13敗(0.768)。 *対局数ランキング1位、勝数ランキング1位、勝率ランキング4位。 *昨年度の成績は37勝14敗(0.725)。 *通算成績は132勝41敗(0.763)。 *(未放映のテレビ対局を除く) 5 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *藤井は棋王戦に第43期から出場。棋王戦の成績は23勝7敗(0.767)。前期は五番勝負に初登場。当時の渡辺明棋王に3勝1敗でタイトル獲得し、20歳8ヵ月での史上最年少の六冠王となった。 6 3二金(41) ( 0:00/00:00:00) *伊藤は棋王戦に第47期から出場。棋王戦の成績は17勝4敗(0.810)。前期はベスト4に進出。 *今期もベスト4に進み、そこで広瀬章人九段に敗れた。敗者戦に回って、豊島将之九段、本田奎六段に勝ち、挑戦者決定二番勝負で広瀬九段に連勝して挑戦権を得た。 7 7七角(88) ( 0:00/00:00:00) *棋王戦は共同通信社が主催する棋戦。優勝棋戦として創設され、1975年にタイトル戦に昇格した。特別協賛はコナミグループ、協賛はCalorie Mate。 *予選通過者とシード者で挑戦者決定トーナメントを戦う。本棋戦の特徴は、挑戦者決定トーナメントのベスト4以上は敗者復活戦(ダブルエリミネーション方式)を取り入れていること。ベスト4以上は1敗しても挑戦者のチャンスがある。 *挑戦者決定戦は本戦優勝者と敗者復活戦優勝者による変則二番勝負で、本戦優勝者は2局のうち1勝すれば挑戦権を得るが、敗者復活戦優勝者は2連勝が条件となる。棋王と挑戦者は例年、2月から3月にかけて五番勝負を争う。現在のタイトルホルダーは藤井聡太棋王。 *【囲碁・将棋|共同通信社】 *http://www.kyodo.co.jp/igo-shogi/ *【コナミグループ】 *https://www.konami.com/ja/ *【Calorie Mate】 *https://www.otsuka.co.jp/cmt/ 8 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *本局の観戦記は後藤元気さんが担当する。 *棋王戦の観戦記は北日本新聞のほか、河北新報、下野新聞、千葉日報、新潟日報、信濃毎日新聞、山梨日日新聞、静岡新聞、北國新聞、京都新聞、日本海新聞、山陰中央新報、山陽新聞、中国新聞、愛媛新聞、高知新聞、佐賀新聞、長崎新聞、熊本日日新聞、南日本新聞、沖縄タイムスの計21紙に掲載される。 *【棋王戦掲載紙一覧】 *https://www.shogi.or.jp/match/kiou/#ancSponsorship 9 6八銀(79) ( 0:00/00:00:00) *本局はABEMAでライブ中継される。解説・聞き手は北浜健介八段、井田明宏四段、本田小百合女流三段、加藤結李愛女流初段が務める。 *【第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局 藤井聡太棋王−伊藤匠七段】 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/9Zztxf1cXxPikX 10 7七角成(22) ( 1:00/00:01:00) *本局は現地と渋谷区「駒テラス西参道」で大盤解説会が開かれる。 *現地は村田顕弘六段、服部慎一郎六段、野原未蘭女流初段が担当する。村田顕六段は魚津市、服部六段と野原女流初段は富山市出身である。 *「駒テラス西参道」では、松尾歩八段と伊奈川愛菓女流二段が解説を務める。こちらはともに所司和晴七段門下。 *【北日本新聞創刊140周年記念 第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局|北日本新聞webunプラス】 *https://webun.jp/feature/event/6582af99905bd4b00b000001 *【駒テラス西参道「第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局 大盤解説会」開催|イベント|日本将棋連盟】 *https://www.shogi.or.jp/event/2024/01/491.html 11 同 銀(68) ( 0:00/00:00:00) *戦型は角換わりになった。二人の対戦は、藤井先手のときは角換わり、伊藤先手のときは相掛かりになる。前夜祭の戦型予想でも先手藤井のときの角換わりは本命だった。 *過去の対戦成績は藤井の6勝0敗。2023年度は第36期竜王戦七番勝負で対戦し、藤井が4連勝で防衛した。棋王戦では前期の敗者復活戦1回戦で対戦して、角換わり戦を藤井が制した。 12 2二銀(31) ( 0:00/00:01:00) *伊藤は第36期竜王戦七番勝負に次いでタイトル挑戦。藤井の活躍は別格として、21歳でタイトル戦に2回挑戦したのは相当に優秀な戦績だ。竜王戦七番勝負で藤井に敗れたあとも高い勝率を挙げている。 *富山県の棋王戦対局は、今回で7回目となる。森内九段は2000年2月の第25期五番勝負第1局の▲羽生善治棋王−△森内俊之八段戦を富山市で指した(肩書は当時)。その将棋も角換わり腰掛け銀で、羽生棋王が制している。 *当時29歳の森内九段にとって第25期棋王戦は2回目のタイトル戦だった。21歳で2回目のタイトル戦登場となる伊藤の活躍がいかに早いかがうかがえる。 13 1六歩(17) ( 0:00/00:00:00) *富山県での棋王戦は2019年2月の第44期五番勝負第2局▲渡辺明棋王−△広瀬章人竜王戦(肩書はいずれも当時)以来5年ぶり。そのときも本局と同じ魚津市「新川文化ホール」での対局だった。 *【第44期棋王戦五番勝負第2局 ▲渡辺明棋王−△広瀬章人竜王戦】 *http://live.shogi.or.jp/kiou/kifu/44/kiou201902100101.html 14 1四歩(13) ( 1:00/00:02:00) *魚津市は富山県の東部にある市で、人口は約39000人。蜃気楼やホタルイカ、魚津埋没林を三大奇観としている。特に蜃気楼は「蜃気楼の見える街」をキャッチフレーズとしてアピールしており、2020年に「魚津浦の蜃気楼(御旅屋跡)」として国の登録記念物に登録された。 *「天然のいけす」と呼ばれる富山湾に面しており、ホタルイカ、ブリ、白エビ、紅ズワイガニなど、魚介類の名物が多い。特産のバイ貝をふんだんに使った炊き込みご飯の「バイ飯」はご当地グルメとして知られる。 *魚津市出身の棋士に田村康介七段、村田顕弘六段がいる。富山県出身の棋士・女流棋士はほかに山本武雄九段、中田章道七段、服部慎一郎六段、千葉涼子女流四段、野原未蘭女流初段。 *【魚津市】 *https://www.city.uozu.toyama.jp/top.aspx *【魚津浦の蜃気楼(御旅屋跡)文化遺産オンライン】 *https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/441376 15 3八銀(39) ( 0:00/00:00:00) *対局場の新川文化ホールは1994年に開館した県立のホール。今年で30年になる。日本音響家協会の「優良ホール100選」に選ばれている。和室などもある複合施設だ。 *【ミラージュホール│新川文化ホール】 *http://www.miragehall.jp/ *【音響家が選ぶ優良ホール−一般社団法人日本音響家協会公式ウェブサイト - SEAS】 *https://www.seas-jp.org/%E5%84%AA%E8%89%AF%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB100%E9%81%B8/ 16 3三銀(22) ( 0:00/00:02:00) *北日本新聞は1884年に前身の中越新聞が創刊。今年は創刊140周年になる。本局も創刊140周年記念事業である。部数は朝刊約20万部で、県内シェア率は約60%を誇る。 *【北日本新聞webunプラス|富山のニュース情報サイト】 *https://webun.jp/ *【会社案内 | 北日本新聞社 採用サイト】 *https://www.webun-saiyo.jp/outline 17 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00) *140年前の将棋界は八代伊藤宗印十一世名人の時代だ。江戸時代が終わり、家元に俸禄が支給されなくなった苦しい時代だった。宗印は棋譜を掲載した「将棊新報」を出版するも、1883年の第五集で最後になっていた。時代が進み、新聞に将棋や詰将棋の掲載が増えてきて、棋士の生活が少しずつ安定していく。 *「近代将棋の父」として知られる関根金次郎十三世名人は伊藤宗印門下。両対局者を含めて多くの棋士は伊藤宗印の系譜にあたる。 *【日本将棋の歴史(2)|将棋の歴史|日本将棋連盟】 *https://www.shogi.or.jp/history/story/index02.html *【棋士系統図|棋士データベース|日本将棋連盟】 *https://www.shogi.or.jp/player/diagram.html 18 6二銀(71) ( 0:00/00:02:00) *2024年2月4日は暦の上では立春。今日の魚津市の最高気温は7度程度。まだ寒い日は続く。 *対局場へ向かう車中で街の様子を見ると、先々週に降った雪が駐車場の脇などに集められて残っていた。 19 7八金(69) ( 0:00/00:00:00) *藤井の先手角換わりの序盤は、最終的に目指す局面は同じでも少しずつ手を変える。例えば、直前の△6二銀の局面は、昨年10月の第36期竜王戦七番勝負第2局▲藤井聡−△伊藤匠戦と同じ。そのときは▲3七桂から▲4六歩を優先して速攻含みだった。本局の▲7八金なら、速攻の考えが薄いと考えられる。 20 6四歩(63) ( 0:00/00:02:00) *【検分】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-42ac.html *【前夜祭】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-eb5f.html 21 6八玉(59) ( 0:00/00:00:00) *今日はNHK杯藤井−伊藤戦の放送日でもある。分身するのではなく、前もって収録されたものだ。対局同日に同じカードが放送されるのは珍しい。特に日曜日の対局はタイトル戦以外ではほとんどない。両対局者がよく勝っている証といえる。 22 6三銀(62) ( 0:00/00:02:00) *伊藤を見ると、後ろの髪が少し跳ねている。寝癖かもしれないが、対局への集中を垣間見るようでもある。 23 9六歩(97) ( 0:00/00:00:00) *今日は千葉県野田市「関根名人記念館」で、岡田美術館杯第50期女流名人戦五番勝負第3局▲西山朋佳女流名人−△福間香奈女流四冠戦が行われている。福間女流四冠が2連勝してタイトル獲得にあと1勝。西山女流名人はカド番だ。 24 9四歩(93) ( 0:00/00:02:00) 25 4六歩(47) ( 0:00/00:00:00) 26 7四歩(73) ( 0:00/00:02:00) 27 3七桂(29) ( 0:00/00:00:00) 28 4二玉(51) ( 0:00/00:02:00) *時刻は9時20分。テンポよく進む。△4二玉としたが、後手は手待ち作戦が主流だ。先手の様子を見ながら右玉に切り替える可能性は残っている。 29 4七銀(38) ( 0:00/00:00:00) 30 7三桂(81) ( 0:00/00:02:00) 31 4八金(49) ( 0:00/00:00:00) *以前は▲5八金・▲2八飛の形が多かった。▲4八金は▲2九飛と引くつもり。この構え自体は昔からあったが、一段目の飛車が優秀と再認識されてきた。相掛かりや矢倉でも一段目に飛車を引く将棋が増えている。 32 6二金(61) ( 1:00/00:03:00) 33 5六銀(47) ( 0:00/00:00:00) *以前は▲2九飛が多かった。▲5六銀はここ1年ほどでよく指されている。結局、先手はあとで▲2九飛と引くが、▲5六銀を急ぐほうが後手の指し方を牽制しやすい。例えば△8一飛▲6六歩△4四歩には▲4五歩とすぐに歩をぶつけられる。 34 8一飛(82) ( 0:00/00:03:00) 35 6六歩(67) ( 0:00/00:00:00) 36 5四銀(63) ( 0:00/00:03:00) 37 2九飛(28) ( 0:00/00:00:00) *ここ6、7年ほどの角換わり腰掛け銀の重要なテーマ図。公式戦では350局以上の実戦が指されている。前期五番勝負では第3局と第4局で指された。 *二人の対戦でも、昨年11月の第36期竜王戦七番勝負第4局で指されている。途中は後手の伊藤が有利とみられていたが、最後は藤井が長手数の詰みで勝った。 38 5二玉(42) ( 1:00/00:04:00) *先後同型にするには△4四歩だが、▲4五歩と攻めて先手十分とみられている。そこで、△5二玉と手を変えて待機した。 39 6九玉(68) ( 0:00/00:00:00) *単に▲7九玉とするのではなく、▲6九玉から▲7九玉と1手ずらすのが、近年よく見られる指し方。間合いを取って、仕掛けの形を模索している。 40 4四歩(43) ( 1:00/00:05:00) *△4二玉や△6三銀と待機する指し方もあるところ。 41 7九玉(69) ( 0:00/00:00:00) 42 4一飛(81) ( 1:00/00:06:00) *△4四歩から△4一飛は4筋を支えて仕掛けに備える指し方。角換わり腰掛け銀は4五(後手なら6五)で駒がぶつかるのが基本になる。現状は▲4五歩としても、先手の駒数が足りない。 43 8八玉(79) ( 0:00/00:00:00) 44 4二玉(52) ( 0:00/00:06:00) 45 4五歩(46) ( 3:00/00:03:00) *仕掛けないと、△3一玉と引かれて戦機を失う。△5四銀・△4四歩・△4一飛・△3一玉の形は仕掛けにくいので、その直前に攻めるのが先手の一つの考え方となる。現局面は、後手の飛車の利きが止まっており▲4五歩の好機といえる。 46 3一玉(42) ( 0:00/00:06:00) *公式戦では昨年3月のA級順位戦▲藤井聡−△稲葉陽八段戦で初めて現れた局面。▲2四歩として、相手の態度を見たのが藤井の工夫だった。 47 2四歩(25) ( 1:00/00:04:00) *ここまでノータイムだった藤井は、初めて1分の消費時間を使って▲2四歩とした。 48 同 銀(33) ( 0:00/00:06:00) *△2四同歩▲4四歩△同飛▲4五歩△4二飛▲5一角と進んだのが、46手目の棋譜コメントで紹介した昨年3月のA級順位戦▲藤井聡−△稲葉戦。玉の堅さを頼みに激しく攻めかかって藤井が勝った。 49 7五歩(76) ( 0:00/00:04:00) 50 同 歩(74) ( 0:00/00:06:00) 51 4四歩(45) ( 0:00/00:04:00) 52 6三角打 ( 0:00/00:06:00) *△4四同飛もあるが、▲5八金で▲7四歩や▲7一角を狙われる展開になる。△6三角は昨年8月の棋王戦▲遠山雄亮六段−△永瀬拓矢王座戦で初めて出た手(肩書は当時)。▲7四歩を受けつつ、△9五歩▲同歩△9七歩▲同香△8六歩▲同銀△9六歩のように、反撃も含みにしている。 *今年1月のB級1組順位戦▲千田翔太七段−△羽生善治九段戦でも指されており、△6三角の実戦例はまだ3局しかないが、重要なテーマの一つといえる。藤井の前傾姿勢が深くなる。 *森内九段は「後手が誘導していて、しばらくは研究通りに進むでしょう。先手は右側から攻めるのは難しいので、▲7六歩と合わせて左側からも攻めていくことが予想されます」という。 53 7六歩打 ( 6:00/00:10:00) *▲7六歩は森内九段が示していた筋。▲5八金△8一飛▲6七金右と厚くしてから▲7六歩と打つ指し方もあった。 54 4四飛(41) ( 1:00/00:07:00) *△4四飛が指されたあと、二人が天を仰ぐしぐさを見せた。一日中、盤の前で向かい合っていると、お茶を飲むなどの動きがシンクロすることもよくあるものだ。 55 5八金(48) ( 0:00/00:10:00) *先手の飛車が△4九飛成を防いでいる。一段目の飛車が柔軟な対応を可能にした。 56 4一飛(44) ( 0:00/00:07:00) 57 7五歩(76) ( 0:00/00:10:00) *控室で「まだ10時前ですよ」の声。1分で1手進んでいるような早さだ。前期五番勝負は角換わり腰掛け銀が続いたシリーズで、やはり1時間で60手近く進むことが多かった。角換わり腰掛け銀は60手近くまで互いに研究範囲であることも珍しくないのだ。 *だから、観戦者は見ているだけで目が回りそうになるが、対局者はシャキッとしている。 58 9五歩(94) ( 0:00/00:07:00) 59 同 歩(96) ( 0:00/00:10:00) 60 9七歩打 ( 0:00/00:07:00) *伊藤が席を外すと、藤井は棋譜を借りて進行を確認した。52手目のコメントで触れた▲千田−△羽生戦を踏襲している。どちらがどこで変化するか。 61 同 玉(88) ( 3:00/00:13:00) *歩を取らないと△9五香から△9一飛で9筋を攻め込まれてしまう。歩を取るのは妥当だが、▲9七同香は△8六歩▲同銀△9六歩で香を取られてしまう。よって、怖いようでも▲9七同玉が有力になる。 *10時になり、午前のおやつが出された。藤井は「いちご大福、冷たい緑茶」。伊藤は「加積りんごのタルトタタン、アイスティー」。「加積(かづみ)りんご」は、魚津市を中心に収穫されているりんごで、果汁が多く、歯ざわりのよさも特徴だ。 *【午前のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-02c9.html 62 3五歩(34) ( 5:00/00:12:00) *伊藤は△3五歩としてから棋譜を借りて進行を確認する。これまでに触れてきた前例の▲千田−△羽生戦は△6五歩だった。△3五歩で公式戦の前例はなくなった。先手の玉形を乱してからの桂頭攻めで伊藤は複雑に指している。 63 7四角打 ( 7:00/00:20:00) 64 3六歩(35) ( 1:00/00:13:00) 65 4五桂(37) ( 0:00/00:20:00) *中空にポーンと跳ねていく。△4五同銀は▲6三角成△同金▲5二角がある。タダより高いものはない。前手▲7四角はこの▲4五桂を狙ったものだった。 *ABEMAでは森内九段がゲスト出演している。 66 9五香(91) ( 0:00/00:13:00) 67 9六歩打 ( 0:00/00:20:00) 68 同 香(95) ( 0:00/00:13:00) 69 同 玉(97) ( 0:00/00:20:00) 70 4五銀(54) ( 0:00/00:13:00) *伊藤は香を捨てて細工をしてから桂を取った。左右で揺さぶりをかけている。今度、▲6三角成△同金▲5二角なら△9一飛が王手だ。△9五香が遅いと、▲8八玉と頑張られてしまったかもしれない。伊藤の手順は香を捨てて大胆でも細心の注意を払っていることがわかる。 71 6三角成(74) ( 3:00/00:23:00) 72 同 金(62) ( 0:00/00:13:00) *伊藤は少し首をかしげてから△6三同金と応じた。 73 9四歩打 ( 0:00/00:23:00) *▲5二角は△9一飛がぴったり。先手が何もしなくても△9一飛▲9五歩△8四桂と攻める手段があった。▲9四歩は即席の屋根を作って大雪に備えたようなものだ。▲9三歩成となればかなり厚い。「初見だと形勢判断が難しいです」と森内九段。 74 5六銀(45) ( 3:00/00:16:00) 75 5二角打 ( 3:00/00:26:00) *▲5六同歩が普通に思えるのに、わずか3分で▲5二角。伊藤が準備してきた進行にも藤井はすぐに対応していく。 76 9一飛(41) ( 0:00/00:16:00) 77 9三香打 ( 0:00/00:26:00) *1時間で60手進むのは現在ではさほど珍しくないが、そのあとの十数手をポンポン指しているのが信じられない。森内九段も「恐るべしですね」とつぶやいた。 *▲6三角成は△9四飛▲9五歩△8四桂で押しこまれてしまう。▲9三香は△9二歩なら、そこで▲6三角成のつもり。 *【創刊140周年】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/140-b096.html 78 6二金(63) ( 0:00/00:16:00) *新川文化ホールのロビーで村田顕六段、服部六段、野原女流初段による指導対局が行われている。3日は新川文化ホールで「ミラたん杯こども棋王戦」が開かれ、3人とも出場者に指導対局を行った。 *【指導対局】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-cc07.html 79 9一香成(93) ( 0:00/00:26:00) 80 5二金(62) ( 0:00/00:16:00) *※局後の感想※ *「飛車角交換になって、持将棋に持ち込めるというところかなと思っていました」と伊藤。このあたりは想定通りのようだ。 81 5六歩(57) ( 0:00/00:26:00) *時刻はまだ10時30分を過ぎたばかり。先手は▲9三歩成のと金が厚いし、▲8一飛の王手も攻防になる。よって、かなり寄りにくいし入玉もしやすそうだ。入玉という言葉を10時30分に使うことになるとは…。 *後手はどうだろう。玉が一段目なので、すぐ入玉とはいかない。また、▲7四歩から桂を取られるのは困るので△3八角▲3九飛△5六角成と馬を作ることが予想される。 82 3八角打 ( 2:00/00:18:00) *10時35分の局面。ここでようやく、藤井が初めて熟考している。 *午前中に終盤戦の入り口といってもよさそうな局面だが、攻め駒が少ないため、互いに相手玉を寄せるのは簡単ではない。もし相入玉になると、持ち歩の多い後手は点数負けの可能性は低く、持将棋が予想される。伊藤は意識してこうした展開に持ち込んだのかもしれない。 *前期棋王戦の敗者復活戦1回戦で両者が対戦して角換わり腰掛け銀になったのだが、そのときも、伊藤は相入玉を含みにした作戦を用いていた。 *ここで先手が▲7一飛を利かすと、後手も△8四銀を考えた組み立てで攻めやすく、▲8一飛だと7三桂を取れない。よって、先手は単に▲7九飛と飛車を逃がすのがいいようだ。△5六角成にまたどうするか。 *【持将棋の可能性】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-1bab.html 83 7九飛(29) (52:00/01:18:00) *11時28分の着手。▲7九飛までの消費時間は▲藤井1時間18分、△伊藤18分。 *52分の長考だった。 *【富山県での棋王戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-e080.html *※局後の感想※ *▲5九飛△5六角成に▲6八金右△3四馬▲7四歩△3七角▲4九飛△4六歩▲7三歩成△3八銀▲7九飛△4七歩成といった進行が検討された。 84 5六角成(38) ( 3:00/00:21:00) *後手は3歩得しており、それが持ち歩の数にも反映されている。 85 6七金(58) ( 4:00/01:22:00) *11時36分の着手。ここは後手の分岐点。攻めを狙うなら(1)△8三馬と引いて、▲8一飛に△6一角と頑張る。これなら△9五歩▲同玉△9四馬のように、先手玉を押し込む狙いが生まれる。(2)△4五馬や(3)△3四馬だと、後手陣も安定するが先手玉への直接の攻めが難しい。 *11時52分、立会人の森内九段がスッと対局室に入った。11時56分ごろ、伊藤が記録の吉田三段に声をかけた。早めの休憩にするよう告げたようだ。少しして藤井、伊藤の順に席を外す。この場合、伊藤が昼食休憩時刻の12時まで時間を使ったことにして消費時間に加える。 *伊藤が23分使ったところで12時になり、昼食休憩に入った。消費時間は▲藤井1時間22分、△伊藤44分。対局は13時再開。対局者の昼食は、藤井が「魚津産紅ずわい蟹のスパイシーカレー オムレツのせ、アイスウーロン茶」、伊藤は「松花堂弁当、緑茶」。魚津市は紅ずわいがにの水揚げ量が富山県1位。また、「かに籠漁」の発祥の地でもある。松花堂弁当には、バイ貝を使った炊き込みご飯「バイ飯」や、200m以深に生息する深海魚の「げんげ」の唐揚げが使われている。 *【地元の食材を扱った昼食】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-c87c.html *【昼食休憩時の対局室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-e82f.html 86 3四馬(56) (24:00/00:45:00) *3日の「ミラたん杯こども棋王戦」で小学生低学年の部、小学生高学年の部、中学生の部の優勝、準優勝者の6人は、対局再開に立ち会った。記録机の後ろに控えて、緊張の面持ちで対局者の様子を見ている。 *13時になり、吉田三段が「時間になりました」。伊藤は少ししてから△3四馬とこちらに馬を引いた。先手玉が8八にいれば△5五桂▲6八金引△6七銀の攻めがうるさい。ただ、現局面は9六なので、先手玉にはまだ響かない。先手にとっては玉が9六にいるのが8八よりも好位置ということだ。 *関係者が退室すると、藤井は羽織を脱いだ。 *【対局再開】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-2985.html *※局後の感想※ *△8三馬は▲8一飛△6一角▲9三歩成△9五歩▲9七玉△7二馬▲8四飛成が検討された。藤井は「先手玉が上にいく展開になったときに得しているか微妙ですか」と尋ねると、伊藤は「そうですね。忙しいのかなと思いました」と答えた。藤井は「開拓していく感じなら、わざわざ8三にいく必要はないということですか」とこの変化について総括していた。 87 7四歩(75) (10:00/01:32:00) *▲9三歩成も大きい手だったが、▲7四歩は▲7三歩成と桂を取りながらと金を作りにいく欲張った手だ。ここで△3七歩成▲7三歩成と進めば、桂を取る実利のほかに、と金と玉の距離の関係で先手が得(と金を守りに活用しやすい)と考えられる。 88 3七歩成(36) (10:00/00:55:00) 89 7三歩成(74) ( 0:00/01:32:00) 90 2二玉(31) ( 1:00/00:56:00) *あらかじめ▲7一飛や▲8一飛の王手をかわす早逃げ。これで△8四銀と上部を押さえる手も指しやすくなった。また、3七のと金に近づいた意味もあり、入玉作戦に現実味がより帯びてきた。伊藤はまだ1時間使っていないのはすさまじい。 *それにしても、午前から「相入玉」や「持将棋」という言葉が出てくるのは極めて異例だ。現地の新川文化ホールでは大ホールで13時から大盤解説会が開かれている。このホールは固定席が1186もある。開会前に様子を見にいくと、すでに多くの方が着席していた。 *【施設のご案内|ミラージュホール│新川文化ホール】 *http://www.miragehall.jp/facilityguide/index.html *■ABEMA■ *北浜健介八段>先手は▲9五玉としてみたいです。後手はどう入玉を目指すか。△3三玉から△4四玉は先手の駒に近づいて危険です。△3五銀で▲4六桂を防いで安定させてから、△3三玉〜△2四玉〜△2五玉のように先手の駒から遠ざかりたいですね。1九香を取れれば入りやすいです。 91 8二飛打 (13:00/01:45:00) *仮に相入玉の点数勝負になった場合、大駒は5点、小駒は1点で数える。後手は歩を6枚も持っているのは心強い。一方、先手は7九飛を小駒で取られてしまうと点数で損してしまうから神経を使う。相手玉に迫ったり、自玉を敵陣に入れたりするほかに、先手は飛車の処置をどうするかという課題がある。かなりややこしい。現状で先手は25点、後手は29点ある。 92 3五銀(24) ( 7:00/01:03:00) *放っておくと、▲2六桂△2五馬(△4三馬は▲4四歩)▲3四銀△2六馬▲5二飛成という攻めがあった。△3五銀は玉の脱出路を作りながら▲2六桂や▲4六桂を防いでいる。 93 9三歩成(94) (11:00/01:56:00) *控室に服部慎一郎六段が訪れた。「先手が持将棋を目指せば、そうなりそう」という。入玉模様の将棋は玉を詰ますのと考え方が変わるため、点数を稼ぐ、稼がせないといった特殊技能が必要になる。若い二人なので、これまでの人生で持将棋になったことはほとんどないはずだ。手元のデータベースで公式戦の対局を調べると、藤井は持将棋の経験はない。伊藤は昨年に1局あった。 *【大盤解説会】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-693c.html *※局後の感想※ *▲5九飛は△5四銀と受けられて次の手が難しかった。 94 3六角打 (17:00/01:20:00) *14時14分の着手。△3六角までの消費時間は▲藤井1時間56分、△伊藤1時間20分。パッと見では、急所に利いていないように思えるが、△7二歩と飛車の利きを止める手を用意しつつ上部を厚くして入玉を目指しやすくしている。また、△4六歩〜△4七歩成〜△5八と〜△6九との飛車取りを見せてプレッシャーをかけた意味もある。 *ABEMAでは服部六段がゲスト出演している。「ニンニン」とポーズを決めていた。幼稚園から小学4年生のころまで魚津市に住んでおり、幼稚園のころにお遊戯会で新川文化ホールを使ったことがあるとエピソードを話していた。大盤解説会には1000人近い来場者だと話していた。 *※局後の感想※ *「馬と角が近いので不安だった」と伊藤。 *「△3六角痛い。打たれてむしろ、飛車が助からない可能性が結構あると思った」と藤井。 95 9五玉(96) (22:00/02:18:00) *先手は7九飛を安全にできれば点数不足の懸念が低くなる。考え方はいくつかあって、(1)▲9七桂〜▲8五桂のあと、9九香をどかして▲9九飛と転じる、(2)▲6八銀〜▲8八金、あるいは▲6八金寄〜▲8八銀のように7筋を開けるのが考えられる。 *【持将棋の条件】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-76d1.html 96 4六歩打 ( 7:00/01:27:00) *難しい局面が続いているが、伊藤の指し手は早い。ABEMA出演から戻ってきた服部六段は「考えたことのある方針に沿って進めているのかもしれません」という。 *1筋から5筋は後手の駒が多く、6筋から9筋は先手の駒が多い。ゾーンがくっきり分かれており、攻め駒が相手玉の間近に迫れていない様子を示したものともいえる。 97 5六金(67) (14:00/02:32:00) *「すごいですねぇ」と森内九段。藤井の金がただのところに出ていった。指されてみると、△5六同馬なら▲5二飛成、放置すれば▲4五銀で馬と角の両取りとわかるが、思いつくかどうかで天と地の差がある。ただ、後手に金を渡すと、△6九金の1手で飛車が詰んでしまう。進行次第では、持将棋の可能性は下がりそうだ。 *ここで15時になり、午後のおやつが出された。藤井は「加積りんごジュース、アイスティー」。伊藤は「いちご大福、温かい緑茶」。藤井の飲み物は対局室に出されており、15時10分過ぎにりんごジュースを飲んでいた。 *【午後のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-ecc5.html 98 同 馬(34) (40:00/02:07:00) *40分の長考だった。金の取り合いは、先手は後手の守りを弱め、後手は△6九金の狙いが生じて互いに主張がある。 99 5二飛成(82) ( 0:00/02:32:00) 100 3四馬(56) ( 1:00/02:08:00) *この手で100手に達した。△3四馬までの消費時間は▲藤井2時間32分、△伊藤2時間8分。時刻は15時40分を過ぎたばかり。戦いはまだまだ続きそうだ。 101 5三竜(52) ( 1:00/02:33:00) *森内九段は△4七歩成を予想する。△4四銀打と弾くのは、駒の重複が気になるという。かといって、△4四銀と引くのは薄い受け方で▲2六桂が生じてまずい。 102 4七歩成(46) ( 6:00/02:14:00) *96手目△4六歩の顔を立てた。△5八とから△6九とで飛車を取れる形になる。プレッシャーがかかって、先手は忙しい。そこで、▲4二金と張りつく手が有力視されている。 *控室のモニターで対局室を見ると、藤井も視線を後手玉周辺に向けている様子だ。 *※局後の感想※ *△6九金は▲2六桂から攻められるのが嫌。 103 7六銀(77) (24:00/02:57:00) *大盤解説から野原女流初段が控室に戻っている。大盤解説会では▲6八銀から▲6七金として飛車をさばく指し方が示されていたという。 *藤井は▲7六銀。▲8五銀から▲8八金のように、歩を取りながら飛車をさばこうとしている。ただ、▲6八銀から▲6七金のように金銀の連携が取りにくく、その分だけ飛車も安定しにくい。また、ここで△4三馬が竜と銀の両取りになる。先手は少し不安がある局面だ。 104 4三馬(34) (10:00/02:24:00) *伊藤は▲7六銀に反応した。藤井は24分使って指したので、△4三馬も対策を考えているだろう。再び時間を使って、残り1時間を切った。 *先手が駒損しないなら▲4三同竜△同金の進行は自然だが、竜がいなくなると後手玉を寄せるのも大変だ。 *控室では森内九段と野原女流初段の師弟が、▲6四竜△7六馬▲3三歩△同桂▲3四歩△7五銀▲3三歩成△同金▲6二竜△3二歩の進行を検討している。▲6四竜と逃げて、▲3三歩から攻め合う姿勢だ。銀を取らせるので先手玉の安全度がどうか。 105 同 竜(53) (17:00/03:14:00) *藤井は再度時間をかけて▲4三同竜。「これは後手が(先手陣に)入りやすくなったのでは」と森内九段がいう。竜で荒らされる脅威がなくなったためだ。△4三同金のあと▲8五銀〜▲6七金〜▲6二と〜▲7三飛成のようにさばくことはできるが、この手順は飛車を成るまでに4手もかかっており、その分だけ後手に余裕が生まれる。 106 同 金(32) ( 0:00/02:24:00) 107 8五銀(76) ( 0:00/03:14:00) 108 3三玉(22) (10:00/02:34:00) *※局後の感想※ *藤井は二段目に飛車を打たれて▲8八金を牽制されるのが嫌だったが、伊藤は「飛車をどこに打つか難しい。結局持将棋なのかなと思った」と話していた。 109 8八金(78) ( 3:00/03:17:00) *▲8五銀と▲8八金の2手で飛車の道が切り拓かれた。▲8八金は8九桂を支えて守備意識が強い。 *森内九段は「先手は飛車を成り込みたいですが、1九香を取られて入玉されやすくなります。先手は飛車をどうするかが難しいです」という。 *【蜃気楼のまち】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-5dce.html *【師弟で検討】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-6ffa.html 110 3四玉(33) ( 2:00/02:36:00) *いよいよ後手玉も四段目に出てきて、相入玉の雰囲気が濃くなってきた。 *後手が引き分けを目指すために千日手を狙う作戦は昔からあった。例えば、昭和中期は角換わり腰掛け銀が下火だったのだが、それは後手の手待ち作戦を先手が打ち破れなかったためだ。 *本局では伊藤が持将棋になる可能性が通常よりも高い作戦を選んだ。引き分けにしても、千日手ではなく持将棋を目指すのはこれまでになかった戦略で新しい考え方である。一つの進歩ともいえる。 111 7四飛(79) ( 1:00/03:18:00) *現状は両者27点ずつ。自陣の駒を全部助けるのは難しいだろうが、被害の少ない形で逃がしたい。先手は▲8四玉〜▲8三と左〜▲9二香成で1枚助かる。現局面で先手番なら▲6五歩も一案。歩を逃がしながら6四の歩を取りにいく。 *後手玉は1九香を取って、△2五玉とすれば捕まらない形になる。ただ、森内九段は「後手のほうが駒を取られやすそう」という。また、後手は1九香を取りにいくために飛車をどこに打つかは課題だ。△5九飛だと▲4九金△同飛成▲6七角の王手竜取りも気になる。伊藤は時間を使っている。 112 4四金(43) (18:00/02:54:00) *後手は▲6一角で玉と金をにらまれるのが嫌だった。△4四金は駒の連結をよくしながら▲6一角を緩和した意味がある。 *立会人の森内九段は、2020年7月の第5期叡王戦七番勝負第3局▲永瀬拓矢叡王−△豊島将之竜王・名人戦で持将棋になったときも立会人を務めていた。この対局は持ち時間が1時間で、第4局も1時間で同日に行われるシステムだった。第4局は日付が変わる直前に232手で後手の永瀬叡王勝ち。長い一日だった(肩書は当時)。 113 6四飛(74) ( 0:00/03:18:00) *普通、相入玉模様の将棋は残り時間が少ないことが多い。一分将棋が続いた末に入玉ということもあるだろう。しかし、本局は両者の残り時間がまだたくさんある。しかも、手数もまだ普通の対局の終盤戦と同じ程度だ。かなり珍しい。 114 4五玉(34) ( 0:00/02:54:00) *先手の駒に近づくので△4五玉はためらわれそうだが、△4四金からの読み筋。入玉一直線だ。 115 6一飛成(64) ( 0:00/03:18:00) *持将棋は引き分け。囲碁でも持碁という言葉があるが、「持」は引き分けを意味する。 *相入玉で互いの玉が詰む見込みがなくなり、点数勝負でも決着がつかないため引き分けというわけだ。 *予選などの対局は当日に指し直すが、タイトル戦では一局として完結する。両者、0勝0敗1分の状態で第2局を行うことになる。 116 4六玉(45) ( 0:00/02:54:00) *入玉一直線とはいえ、ポロポロと駒を取らせても大丈夫だろうか。▲2一竜とされると、後手は25点なので少し寒い。 117 2一竜(61) ( 1:00/03:19:00) 118 2九飛打 ( 0:00/02:54:00) *大事な手。1一香よりも2三歩のほうが価値が高い(助けられそうな可能性が高い)駒だ。▲2三竜から▲2二竜とされると、点数不足の懸念も出てくる。△2九飛は歩を助けながら△1九飛成と香を取って点数を確保する意味がある。 119 9四玉(95) ( 2:00/03:21:00) 120 2四歩(23) ( 1:00/02:55:00) *これで一安心。後手は先手陣の駒(1九香・8七歩・8八金・8九桂・9九香)を何枚か取れる形なので、点数は足りそうだ。 121 1一竜(21) ( 1:00/03:22:00) *後手の2筋の歩を取ることは難しいので▲1一竜と香を拾う。 *もし持将棋になれば、タイトル戦では112手目の棋譜コメントでも紹介した2020年7月の第5期叡王戦七番勝負第3局▲永瀬拓矢叡王−△豊島将之竜王・名人戦以来となる(肩書は当時)。 122 1九飛成(29) ( 0:00/02:55:00) *棋王戦五番勝負で持将棋は、1988年3月の第13期五番勝負第3局▲高橋道雄棋王−△谷川浩司王位戦がある。五番勝負はもつれて、2勝2敗1分のフルセットに。第6局は同年4月5日に行われて、谷川王位が勝って棋王に復位して二冠王となった。谷川王位は第46期名人戦にも挑戦しており、名人も獲得して史上5人目の三冠王に輝いた(肩書は当時)。 123 6五歩(66) ( 0:00/03:22:00) 124 4八と(37) ( 1:00/02:56:00) 125 6四歩(65) ( 0:00/03:22:00) 126 3七玉(46) ( 0:00/02:56:00) *淡々と指し手が進んでいく。1六歩も落ちているため、後手が24点未満になることはない。 127 6三歩成(64) ( 0:00/03:22:00) *持将棋は長い戦いの末になることが多い。150手以上のことがほとんどだろう。しかし、本局はまだ130手にも満たない。持将棋模様においてはかなりの短手数だ。早い段階で相入玉が視野に入っていたため、手数が短いものと考えられる。 128 3八玉(37) ( 0:00/02:56:00) *「そろそろですね」と森内九段。 129 8三玉(94) ( 0:00/03:22:00) *伊藤が藤井に「持将棋ですかね」などと声をかけた。すぐに藤井は「はい」と答えて合意した。この129手目▲8三玉で持将棋が成立した。終了時刻は17時35分。消費時間は▲藤井3時間22分、△伊藤2時間56分。双方の玉が相手陣に入って詰む見込みがない。また、現状は先手29点、後手25点。1六歩を確実に取れるため、後手が24点未満になる可能性はほぼない。予選なども含めて、藤井は初、伊藤は2回目の持将棋である。 *タイトル戦での持将棋は一局と見なして完結するため、指し直し局は行わない。第1局が引き分けとなる異例の幕開けとなった。タイトル戦では112手目の棋譜コメントでも紹介した、2020年7月の第5期叡王戦七番勝負第3局▲永瀬拓矢叡王−△豊島将之竜王・名人戦以来となる。特にタイトル戦の開幕局での持将棋は、1991年10月の第4期竜王戦七番勝負第1局▲谷川浩司竜王−△森下卓六段(肩書・段位はすべて当時のもの)以来だ。両者0勝0敗1分の状態で第2局を指す。第2局は2月24日に金沢市「北國新聞会館」で指される。 *【終局直後】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-bb10.html *【大盤解説会に対局者登場】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-cfff.html *【感想戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2024/02/post-10da.html *※局後の感想※ *感想戦は18時20分ごろまで行われた。先手がはっきりよくなるような代替案は示されず、伊藤の作戦は角換わり腰掛け銀に一石を投じることになるか今後の動向が注目される。 130 持将棋 ( 0:00/02:56:00) まで129手で持将棋