# --- Kifu for Windows (Pro) V6.64.11 棋譜ファイル --- 対局ID:5972 記録ID:589acf77a2fb8f00047fd935 開始日時:2017/02/18 09:00 終了日時:2017/02/18 19:15 表題:棋王戦 棋戦:第42期棋王戦五番勝負 第2局 戦型:矢倉 持ち時間:各4時間 消費時間:131▲234△239 場所:石川・北國新聞会館 備考:昼休前53手目18分\n 振り駒:なし 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:00〜13:00 昼休前消費時間:53手18分 手合割:平手   先手:渡辺明棋王 後手:千田翔太六段 先手省略名:渡辺明 後手省略名:千田 手数----指手---------消費時間-- *渡辺明棋王に千田翔太六段が挑戦する第42期棋王戦五番勝負は、第1局で挑戦者が先勝。渡辺が勝ってタイにするか、千田が連勝で初タイトルに迫るか。第2局は2月18日(土)、石川県金沢市「北國新聞会館」で行われる。対局開始は9時、持ち時間は各4時間。本局の先手は渡辺。 *立会人は森内俊之九段、記録係は岡井良樹三段(大野八一雄七段門下)。解説は広瀬章人八段、大盤解説聞き手は井道千尋女流初段。ニコニコ生放送の解説は佐々木勇気五段、聞き手は藤田綾女流二段が担当する。 *8時47分、千田入室。8時50分、渡辺入室。礼を交わしてから、渡辺が駒箱に手を伸ばした。両者駒を並べ終え、渡辺が2枚の余り歩をしまう。 * *【ニコニコ生放送】 *http://live.nicovideo.jp/watch/lv287417938 * *※局後の感想※ *42〜43手目、54手目、59手目、66手目、73手目、80手目、88手目、92手目、95手目、99手目、110手目、131手目に記載。 * *(棋譜・コメント入力=文) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。#は局後の感想が追記された指し手] 1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *定刻の9時、森内九段が「定刻になりました。渡辺棋王の先手番で対局を開始してください」と告げた。両対局者が「お願いします」と礼を交わす。しばらくして渡辺がゆっくりと盤上に手を伸ばした。千田の指し手に注目だ。今期の挑戦者決定二番勝負第1局では▲7六歩に△3二金と指した。 * *【対局開始前】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2017/02/post-cda0-1.html 2 3二金(41) ( 0:00/00:00:00) *千田、和服のたもとを押さえながら着手。挑戦者決定二番勝負第1局と同じ手だ。第1局では▲7八金という意表の初手が出た。本局も歩を突かない変わった出だしになった。 *この△3二金は相居飛車では態度を保留して手広いが、先手に振り飛車にされると△4二玉〜△3二玉と舟囲いにできないデメリットがある。 * *【第42期棋王戦挑戦者決定二番勝負第1局 ▲佐々木勇気五段−△千田翔太五段(肩書は当時)】 *http://live.shogi.or.jp/kiou/kifu/42/kiou201612160101.html 3 2六歩(27) ( 2:00/00:02:00) *◆渡辺 明(わたなべ あきら)棋王(竜王)◆ *1984年4月23日生まれ、東京都葛飾区出身。所司和晴七段門下。2000年、四段。2005年、九段。棋士番号は235。 *タイトル戦登場は26回。獲得は棋王4期、竜王11期(永世竜王)、王座1期、王将2期の計18期。棋戦優勝は9回。 4 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00) *◆千田 翔太(ちだ しょうた)六段◆ *1994年4月10日生まれ、大阪府箕面市出身。森信雄七段門下。2013年、四段。2016年、六段。棋士番号は291。 *タイトル戦登場は1回。 5 6八銀(79) ( 3:00/00:05:00) *4手目が指されたあと、関係者が対局室から退室した。渡辺はお茶を飲み、扇子ではたはたとあおぐ。今日の金沢市は晴れ。昨日17日は北陸地方で春一番が吹いた。 * *【対局開始】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2017/02/post-75cb-1.html 6 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *棋王戦は共同通信社が主催する棋戦。予選を勝ち抜いた棋士とシード棋士で挑戦者決定トーナメントを行う。挑戦者決定トーナメントはベスト4以上2敗失格のシステムが特徴。挑戦者決定戦は変則二番勝負で、挑戦権獲得にはトーナメントの勝者組優勝者は1勝、敗者復活戦優勝者は2勝が必要になる。 * *【株式会社共同通信社 | 株式会社共同通信社の情報ポータルサイト】 *http://www.kyodonews.jp/ 7 7七銀(68) ( 0:00/00:05:00) *「矢倉模様になりましたね」と広瀬八段。森内九段は「予想がばっちりですね」とにっこり。前夜祭で広瀬八段は「矢倉模様の力戦」と戦型予想をしていた。2人は勝浦修九段門下の兄弟弟子だ。 8 4二銀(31) ( 0:00/00:00:00) *本局の観戦記を担当するのは野間俊克さん。観戦記の掲載紙は河北新報・下野新聞・千葉日報・新潟日報・信濃毎日新聞・山梨日日新聞・静岡新聞・北日本新聞・北國新聞・京都新聞・日本海新聞・山陽新聞・中国新聞・愛媛新聞・高知新聞・佐賀新聞・長崎新聞・熊本日日新聞・南日本新聞・沖縄タイムス。 9 2五歩(26) ( 4:00/00:09:00) *渡辺は小刻みに時間を使って指している。対する千田はここまでノータイム。 10 3三銀(42) ( 0:00/00:00:00) *今日の北國新聞朝刊には棋王戦挑戦者決定トーナメント、阿部健治郎七段−佐々木勇気五段戦の観戦記が掲載されている。こちらの執筆は君島俊介さん。 *北國新聞は1893年創刊。発行部数は約30万部で、石川県内で高いシェアを誇る。棋王戦の主催は第22期から。同時に北陸ジュニア棋王戦を立ち上げ、地元の将棋普及に貢献している。 * *【北國新聞社 | ふるさと不足に読んで効く】 *http://www.hokkoku.co.jp/ 11 4八銀(39) ( 0:00/00:09:00) *棋王戦五番勝負では新しい試みが積極的に行われてきた。現在の恒例になっているニコニコ生放送のタイトル戦中継は、2011年の第36期棋王戦五番勝負第1局が初。七大タイトル戦のタブレット端末による記録は、2015年の第40期棋王戦五番勝負第1局で初めて採用された。 12 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00) *金沢市は石川県の中央南部に位置する県庁所在地。江戸時代に「加賀百万石」とうたわれた加賀藩の城下町として栄えた。土塀のある武家屋敷跡や入り組んだ街路などに、往時の風情を感じさせる街並みが残っている。日本三名園のひとつである兼六園を擁する。伝統的な美術工芸が盛んで、金箔、加賀友禅、加賀蒔絵漆器、九谷焼、大樋焼、桐工芸などが有名。高湿な気候は箔打ちや漆塗りに適しており、中でも金箔は全国の生産量の99パーセントを占めている。金沢市での棋王戦開催は16年連続。近年は北國新聞会館が対局場になっている。 * *【金沢市公式ホームページ いいね金沢】 *https://www4.city.kanazawa.lg.jp/ 13 5六歩(57) ( 0:00/00:09:00) *対局前日、渡辺は東京から、千田は大阪からそれぞれ陸路で現地入り。東京は春めいた陽気だったが、金沢に到着すると冷たい雨が降っていた。金沢は「弁当忘れても傘忘れるな」といわれるほど雨の多い土地だ。両対局者は宿泊先の「金沢ニューグランドホテル」に到着すると、すぐに手荷物検査を受けた。その後はホテルで関係者顔合わせとスケジュールの確認が行われ、対局者は滞在中の食事や対局中のおやつを決めた。 * *【顔合わせ会】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2017/02/post-ab77.html 14 5四歩(53) ( 0:00/00:00:00) *前日の17時30分ごろ、両対局者は北國新聞会館に移動して検分を行った。本局で使われる盤と駒は日本将棋連盟石川県支部連合会理事の塩井一仁さん所蔵のもの。駒は2組用意され、渡辺は「どっちがカメラ映りがいいかな」と駒とにらめっこ。塩井さんから「盤が赤柾なので、駒は普通の柾目のものだとコントラストがあっていいかと思います」という意見を聞き、雅峰師作、錦旗書の盛上駒を選んだ。 * *【対局検分】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2017/02/post-1734-1.html * *【対局使用駒】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2017/02/post-5dad.html 15 5八金(49) ( 0:00/00:09:00) *渡辺の今年度成績は23勝15敗(0.605)。 *対局数はランキング16位タイ、勝数は18位タイ。 *通算成績は551勝276敗(0.666)。 16 3一角(22) ( 2:00/00:02:00) *千田の今年度成績は45勝11敗(0.804)。 *対局数はランキング2位、勝数は1位、勝率は3位。現在6連勝中。 *通算成績は147勝53敗(0.735)。 17 6六歩(67) ( 1:00/00:10:00) *後手が角を引いたのを見てから▲6六歩と突いた。慎重な駒組みだ。先手は7手目で▲6六歩とする駒組みもあったが、すると6筋を争点にした急戦を狙われやすい。近年の矢倉は後手が積極的に急戦に出てくるようになった。 18 8五歩(84) ( 1:00/00:03:00) *2人は今期五番勝負第1局が初手合い。現地を訪れている日本将棋連盟専務理事の青野照市九段は、第1局の立会人を務めた。前夜祭では「渡辺さんが優勢だった将棋を千田さんが最後の最後でひっくり返しました」と触れていた。 * *【第42期棋王戦五番勝負第1局 ▲千田翔太六段−△渡辺明棋王】 *http://live.shogi.or.jp/kiou/kifu/42/kiou201702050101.html 19 7八金(69) ( 0:00/00:10:00) *8筋を補強。代えて▲6七金は△8六歩▲同歩△同角の強襲があってまずかった。 20 6四角(31) ( 3:00/00:06:00) *八方にらみの好位置に角を出る。挑戦者決定二番勝負第1局と似た形だが、後手が△8五歩と伸ばして先手に▲7八金と受けさせている点が注目すべき違いだ。先手は▲6八玉〜▲7八玉という早囲いの含みがないが、後手は8筋に桂を跳ねることができなくなっている。一長一短だ。 21 6九玉(59) ( 3:00/00:13:00) *渡辺の棋王戦成績は36勝18敗(0.667)。初参加は第27期、五番勝負登場は6回。第38期、2度目の棋王挑戦で郷田真隆棋王(当時)を破って棋王奪取。現在4連覇中で、5期連続でのみ得られる永世棋王資格を目指す。 22 4一玉(51) ( 0:00/00:06:00) *千田の棋王戦成績は14勝2敗(0.875)。初参加は第40期、挑戦者決定トーナメント出場は今期が初。今期の挑戦者決定トーナメントを負けなしで勝ち進み、挑戦者決定二番勝負第1局で佐々木勇気五段に勝って挑戦権を獲得した。 23 6七金(58) ( 2:00/00:15:00) *控室で「普通ですね」との声。がっちりと組み合う矢倉になりそうだ。先手は現状▲3六歩が突けないので、▲7九角〜▲4六角と角をぶつけることになるだろう。継ぎ盤で使われている駒は酔棋師作、森内名人書の盛上駒。森内九段が十八世名人の有資格者になった記念に作られたものだ。 24 5二金(61) ( 0:00/00:06:00) *穏やかな序盤になった。先手はここで▲6五歩と突けば角をどかすことができるが、あとで6筋から攻められてまずい。突いたときは気分がよくても、争点を作るのであとで負担になってしまう。矢倉では注意したい筋だ。 25 7九角(88) ( 0:00/00:15:00) 26 7四歩(73) ( 1:00/00:07:00) 27 4六角(79) ( 1:00/00:16:00) *角をぶつける。どちらも角が取れる形だが、相手の角を取ると歩が伸びてくるので、自分からは取りたくない。しばらくは角が向かい合ったまま駒組みが進むことになる。 28 4四歩(43) ( 3:00/00:10:00) 29 3六歩(37) ( 1:00/00:17:00) *データベース上で見つかる実戦例はいずれも昭和期に指されたもの。古い形だ。ポイントは右銀の動向で、先手は▲3七銀と攻勢を取ることが多い。後手は△7三銀なら攻め合い志向、△5三銀なら受けに回ってからのカウンターが狙いになる。 30 3一玉(41) ( 4:00/00:14:00) 31 7九玉(69) ( 2:00/00:19:00) *千田の考慮中に10時になり、対局室におやつが運ばれた。渡辺はフルーツ盛り合わせとホットコーヒー、千田はフレッシュオレンジジュース。 * *【午前のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2017/02/post-02c9-1.html 32 7三銀(62) (10:00/00:24:00) *攻勢を目指す銀の活用。この手を見た渡辺はフルーツに手をつける。千田もジュースを飲む。 33 3七銀(48) ( 4:00/00:23:00) 34 4三金(52) ( 0:00/00:24:00) 35 8八玉(79) ( 0:00/00:23:00) 36 2二玉(31) ( 0:00/00:24:00) *美しさを感じる先後同型。依然として角は自分から交換したくないので、先手は1筋と9筋、どちらの歩を突くか。▲9六歩と玉側の歩を突くと端攻めを誘うことにもなるので、▲1六歩が多いところ。 37 1六歩(17) ( 1:00/00:24:00) 38 9四歩(93) ( 0:00/00:24:00) *ここで再び先手は分岐点。▲9六歩と端を受けるか、▲1五歩と端を詰めるか。データベース上には200局以上の実戦例があり、うち150局ほどで▲9六歩、残る50局ほどで▲1五歩が指されている。どんな違いがあるのか森内九段に尋ねると、「右手と左手くらい違います」とにやり。それほど違わないようにも思えるし、大違いにも思える。深い言葉だ。 39 9六歩(97) ( 5:00/00:29:00) *先手が▲9六歩と突くと、後手は△4二角と引く手が候補に挙がる。9筋に争点ができたので、角交換を避けて自分だけ端攻めを楽しみにしようという指し方だ。森内九段が「角を引くのは渡辺さんが好きですよね」と話すと、「かなり勝っている印象です」と広瀬八段。本局は自分の得意な形を相手に許すことになるが、どうなるか。 40 1四歩(13) ( 0:00/00:24:00) *千田、ノータイム。「迷いがないですね」と森内九段。渡辺がうつむいて額に手をやる。調べてみると、▲高見泰地五段−△石井健太郎四段戦(2017年2月、順位戦C級2組)が最新の実戦例。ここから▲6四角△同銀▲2六銀△6九角▲1五歩△同歩▲同銀△4七角成▲2四歩△1五香▲2三歩成△同金▲1五香△2七歩▲2六香と進んだ。目がくらむような激しい順だが、定跡書で紹介されていてもおかしくない変化だ。森内九段は「超オーソドックスな形です」と話す。 41 6四角(46) ( 5:00/00:34:00) *角交換すると手損になるが、先手は手詰まり気味だった。代えて▲2六銀と出るのは△4六角▲同歩△4七角が常用の反撃で、▲3七銀と引く羽目になる。 42 同 歩(63) ( 0:00/00:24:00) *千田は角を駒台に置き、歩を進めた。自然な手に見えるが、驚いたことに、データベースで同一局面が見当たらない。103局ある実戦例はすべて銀で応じていた。「研究手ですね」と森内九段。「後手の銀が8四に出ている形では▲6三角と打ち込んで△7三銀と引く順がありますけど、ここで▲6三角は損ですよね。先手は銀をどちらかに出るくらいですか」と継ぎ盤を見つめる。ここから▲4六銀を示して「受け身すぎかなあ」。次に▲2六銀と出て比べてみる。後手はいずれにせよ△6五歩▲同歩△7五歩▲同歩△3九角が狙い筋になる。 *10時35分、渡辺は両手で顔を覆ってうつむく。千田は背を伸ばしてからうつむき、席を立つ。しばらくして戻ってきた。渡辺は眼鏡を外して目をつむっている。 * *※局後の感想※ *「(△6四同銀が)当たり前の定跡だと思っていたけど、そういう手があるのか。研究課題ですね」(渡辺) 43 2六銀(37) (19:00/00:53:00) *渡辺、19分の考慮で銀を出る。「先手の棒銀が使いにくい気がしたんですが」と森内九段。ただし▲4六銀がまさるかというとそうでもなく、どちらがいいかは難しいという。森内九段は「好みが出そうなところだと思います。私は左に出たいところでした」と話した。 * *※局後の感想※ *「▲4六銀は狙いがない。端を攻めないとしょうがないと思った」(渡辺) 44 6五歩(64) ( 0:00/00:24:00) *千田はすぐに指す。既定路線なのか、決断がいい。▲6五同歩△7五歩▲同歩△3九角▲3八飛△7五角成▲1五歩△同歩▲同銀△同香▲同香△1三歩は「先手を持って自信がないです」と森内九段。先手は棒銀を使っての端を攻めるが、後手に歩が多いので受けやすいと感じるという。 45 同 歩(66) ( 6:00/00:59:00) 46 7五歩(74) ( 0:00/00:24:00) *角を持って△6五歩▲同歩△7五歩は矢倉における手筋のひとつ。▲7五同歩に△3九角と打って馬を作ることが狙いになる。後手は角を取ってもらったことで手順に6筋の歩が伸び、スムーズにこの筋を実現できた。 * *■ニコニコ生放送■ *佐々木勇気五段>▲7五同歩△3九角▲6八飛△7五角成▲1五歩△同歩▲同銀△3九馬▲3七桂△2九馬という順が研究されていたと思います。先手が攻めて後手が受けるという展開です。 47 同 歩(76) (16:00/01:15:00) *11時6分、渡辺が着手。消費時間に大きな差がついている。千田の早指しが目立つ。 48 3九角打 ( 0:00/00:24:00) *千田はすぐに角を打つ。渡辺が天井を見上げる。 49 1八飛(28) ( 1:00/01:16:00) *飛車の逃げ場所は1筋だった。端に力をためている。 50 7五角成(39) ( 0:00/00:24:00) 51 1五歩(16) ( 0:00/01:16:00) *渡辺はすぐに歩を突き出す。千田は記録係に頼んで棋譜用紙を受け取り、目を通した。ここから△1五同歩▲同銀△同香▲同飛と進めば棒銀がさばける。後手がそれを面白くないと見れば、どこかで△3九馬と潜り込むのが一案だ。次に△2九馬と△1七歩を見て先手の攻めを牽制している。 *11時30分、千田が時間を使っている。ニコニコ生放送ではどちらを持ちたいかアンケートが行われた。森内九段は記者のパソコンから「後手持ち」に投票した。 * *■ニコニコ生放送■ *佐々木勇気五段>これは千田さんの想定を外れたと見ていいと思います。千田さんは馬が主張です。渡辺さんは攻めの銀の働きで差をつけたいですね。 52 8六歩(85) (32:00/00:56:00) *11時41分、ビシリと力強い手つきで指された。渡辺は席を立っている。しばらくして戻ってくると、前傾姿勢で盤に向かった。 *矢倉における飛車先の突き捨ては対応が悩ましい。▲8六同歩は玉頭に空間ができ、△8七歩のたたきと△8五歩の継ぎ歩攻めが生じる。▲8六同銀は玉のコビンが開き、6筋が薄くなる。広瀬八段が「第一感は銀です」というと、「羽生組ですね」と森内九段。かつて、突き捨てをどう取るか羽生善治三冠と森下卓九段が議論したことは有名なエピソードだ。羽生三冠は「端の突き合いがあれば銀」という意見だった。本局のように9筋の突き合いがある形では、▲8六同歩だと△8七歩のときに▲9八玉と逃げづらい。△9五歩が強烈な攻めになるからだ。 *控室ではここから▲8六同銀△3九馬▲1四歩△6六歩▲7七金寄△2九馬▲7四歩△同銀▲4六角△1八馬▲同香△5五歩を並べて、「先手が自信ないです」と広瀬八段。先手は▲4六角で端を集中攻撃したが、広瀬八段は「端だけでは寄らないです」と話す。 *12時、この局面で渡辺が18分使って昼食休憩に入った。消費時間は▲渡辺1時間34分、△千田56分。昼食は両者とも松花堂弁当。対局は13時に再開される。 53 同 銀(77) (19:00/01:35:00) *13時、対局再開。渡辺は歩を取って駒台の駒を整える。直後に千田が対局室に戻った。「指されました」と記録係の声。 54 3九馬(75) ( 0:00/00:56:00) *腰を下ろした千田はすぐに指した。打った角が馬になって舞い戻る。 * *【対局再開】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2017/02/post-2985-1.html * *※局後の感想※ *「△3九馬と入られるのが地味に痛かった」と渡辺。▲1八飛(49手目)では▲3八飛がまさった可能性がある。 55 3七桂(29) ( 1:00/01:36:00) *桂を取られないように逃げておく。後手はわかりやすく飛車を狙うなら△2九馬だが、桂が逃げているので効果半減の感はある。ほかには△1五歩▲同銀△1七歩で飛車を取りにいく順もあるが、銀を呼び込む点がどうか。広瀬八段は「△2九馬と寄ると思います」と予想する。これに▲1四歩は△1八馬▲同香△2八飛と両取りがかかって先手が忙しい。なのでいったん▲1七飛と浮いて、飛車を取らせる位置を変えたいという。以下△2八馬▲1四歩△1七馬▲同香△2八飛なら、両取りにならないだけ先手が得だ。「先手は戦力が端に集中していますが、すぐに端を破れるという感じではないです。▲7四歩と▲4六角をうまく組み合わせたいですね。ただ、具体的な手順はわからないのですが」と広瀬八段。▲7四歩は△同銀で、歩を渡して銀を近づけるデメリットがある。▲4六角は切り札といえる一着だけに、空振りに終わっては悲しい。タイミングを慎重に判断したい。 *13時26分、広瀬八段と井道女流初段は解説会場に向かった。13時45分、千田が長考に沈んでいる。ついに渡辺の消費時間を上回った。千田は脇息にもたれて頬杖をつく。「この一手は」と記録係に尋ねると、「46分使われました」と返ってきた。 * *【現地大盤解説会が始まる】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2017/02/post-c43d.html 56 6六歩打 (59:00/01:55:00) *14時2分、千田の手が動いた。59分の長考だった。馬の利きを生かして歩を打つ。拠点はできるが、▲7七金寄で金が連結するので先手玉が堅くなる面もある。広瀬八段は「得かどうかは微妙なところ」と話していた。 57 7七金(67) ( 0:00/01:36:00) 58 1五歩(14) ( 1:00/01:56:00) *「後手は△2九馬などで馬の利きがそれる前に△6六歩と打ちました。これで△7六歩とたたく狙いもあります。ただ、先手に飛銀桂香とすべての駒を使われていますし、馬を入ったので、先手から▲4六角〜▲7四歩という狙いもできました。ここは先手の手が広いですね。▲1三歩、▲4六角といった手が考えられます」(森内九段) * *■ニコニコ生放送■ *佐々木勇気五段>ここで手を戻すなら単に戻したかったような。予定変更に見えます。 * *【金沢の名所・兼六園】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2017/02/post-8675.html 59 4六角打 (12:00/01:48:00) *14時18分の着手。好点の角だ。後手陣の左右の急所に利いている。渡辺は立ち上がり、棋譜用紙をのぞき込んでから部屋を出ていく。千田は盤に顔を近づけて集中している。しばらくして渡辺が対局室に戻る。千田は前傾姿勢で盤に向かっている。 *後手は見返りなく▲7四歩と打たれてはいけない。手筋は△5五歩の突き出しで、▲同角なら端から利きがそれるので受けやすくなる。△5五歩を放っておいて▲1五銀と出るのは、△1七歩が生じるので悩ましい。以下▲同飛△同馬▲同香△1八飛▲1二歩△同香▲1三歩が進行の一例だが、「先手は歩が少ないのが気になりますね」と森内九段。そこで▲1五銀に代えて▲1三歩と垂らすのはどうか。取ってくれれば歩を節約できる。 * *※局後の感想※ *代えて▲1五同銀は△1七歩▲同飛△同馬▲同香△1八飛で後手よし。「こちらは攻めがない。本譜の▲4六角は苦し紛れ」と渡辺。 60 5五歩(54) (24:00/02:20:00) *筋の突き出し。歩を緩衝材にして角の威力を弱めている。 61 1三歩打 ( 1:00/01:49:00) *渡辺は1分使って垂れ歩で端を攻める。後手の△5五歩が▲7四歩を受けた手なので、逆サイドを狙った。△1三同香にどう攻めを続けるか。以下▲同角成の強襲は、△同桂▲1五飛△1四歩▲同飛△1二歩でうまくいかない。 * *【近江町市場】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2017/02/post-82fa.html 62 同 香(11) ( 5:00/02:25:00) 63 1二歩打 ( 1:00/01:50:00) *垂れ歩の連発で後手玉に嫌みをつける。「敵の打ちたいところに打て」で、△1二同玉なら△1二歩と受けるスペースがなくなる。「後手に手を渡して、攻めてきてくださいという手ですね。後手は持ち歩が増えたので、よさそうな手がいくつかありそうです。△8五歩▲9七銀△9五歩が一例です」と森内九段。△8五歩は飛車先が重くなるので浮かびにくい手だが、▲9七銀と引かせて△9五歩と端を攻めるのはかなりの迫力だ。なお、△8五歩に▲7五銀は△6七歩成でいけない。 *15時、対局室におやつが運ばれた。渡辺はガトーショコラ、ホットコーヒー。千田はフルーツ盛り合わせ。昨日、千田は実物のケーキを見て注文を決める際に、「対局中には食べないのですが、今日の夕食のデザートにできますか」と尋ねて、イチゴのタルトを注文していた。 * *【午後のおやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2017/02/post-ecc5-1.html 64 7六歩打 (11:00/02:36:00) *このたたきも魅力的な手だ。金銀の連結を崩すことができる。持ち歩が増えた関係で打ちやすくなった。 65 同 金(77) ( 0:00/01:50:00) 66 2九馬(39) ( 2:00/02:38:00) *先手陣を乱してから飛車に狙いをつけた。「面白い手順ですね。馬は3九にいても働いていたので、飛車を取りにいく発想は気づきませんでした」と森内九段。次に△6七歩成▲同金と先手玉を弱体化させてから△1八馬と取れば、飛車を使った攻めがより効果的になる。先手は▲6六金と払う手が有力。前述の筋を防ぎながら、(1)△4七馬には▲1三角成△同桂▲1五飛と攻める順を見ている。後手は▲6六金にシンプルに攻めるなら(2)△1八馬▲同香△2八飛だ。以下▲1一歩成△同玉▲1五香は△同香▲同銀△8三香が厳しい。 *対局室では両者ともおやつを食べて栄養補給。渡辺はケーキを食べ終えると、腕まくりをして盤に近づく。15時20分ごろ、森内九段が大盤解説会に向かった。ニコニコ生放送には広瀬八段が電話出演。「先手の攻め方が難しいのと、先手玉が通常よりも傷んでいるので、後手を持ってみたい」と話した。 * *【大盤解説会に森内立会人が登場】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2017/02/post-8bba.html * *※局後の感想※ *「△2九馬で困りましたね」(渡辺) 67 6六金(76) (33:00/02:23:00) *15時38分、渡辺の手が動いた。千田が棋譜用紙を受け取って目を通す。目障りな歩を払う予想されていた手だが、△1八馬▲同香△2八飛で後手が指せそうだといわれていた。以下▲4五桂がうまい手に見えるが、△2六飛成▲3三桂成△同金寄で後手が桂得の取り引きだ。さらに後手は桂を持てば△7四桂、△5四桂という楽しみがある。 68 1八馬(29) (11:00/02:49:00) *15時50分、千田が消費時間を尋ねる。「11分使われました」という返答があった直後に手が動いた。 69 同 香(19) ( 3:00/02:26:00) *席を立っていた渡辺は、戻ってくるとすぐに馬を取る。そして首をかしげた。 70 2八飛打 ( 3:00/02:52:00) *銀香両取り。飛車を使った攻めはわかりやすい。先手は銀と香、どちらを取られても痛いので、うまく緩和する手段を探したい。 71 1一歩成(12) ( 5:00/02:31:00) 72 同 玉(22) ( 0:00/02:52:00) *歩の成り捨てで後手玉を下段に落とす。これで▲1五香が威力を増す。以下△同香▲同銀△8三香が厳しいという評判だったが、「そこで▲4五桂は嫌ですね」と広瀬八段。▲1五香には△1四歩と打ち、銀を動かさないほうがいいようだ。以上の検討を踏まえて、広瀬八段は「ここで▲1四歩△同香▲1五香かもしれません」と話す。 73 7四歩打 ( 2:00/02:33:00) *※局後の感想※ *「攻め駒を呼び込むんですけど、▲6四角が打てないと勝負にならない」(渡辺) 74 同 銀(73) ( 4:00/02:56:00) 75 1四歩打 ( 0:00/02:33:00) 76 同 香(13) ( 0:00/02:56:00) 77 1五香(18) ( 0:00/02:33:00) *両者の指し手が早い。7筋にたたきを入れてから広瀬八段が解説した順に進んでいる。 78 同 香(14) ( 2:00/02:58:00) 79 同 銀(26) ( 0:00/02:33:00) *先手が首尾よく両取りを逃れたようだが、後手が香を手に入れたことで△8三香が強烈な狙いになっている。ただ、すぐに打つのは▲4五桂△3八飛成▲3三桂成△同金寄▲1二歩で怖い形だ。後手は玉を追われて△3一玉と引くと、▲6四角が王手飛車になる。広瀬八段は「いったん△1八飛成が手堅い気がします」と話す。銀に当てながら、角のラインから逃げているのがポイントだ。「形勢は後手がいいと思います。駒の損得がありませんからね」と広瀬八段。 *16時17分、千田の持ち時間が残り1時間を切り、盤側に残り時間を示す早見表が出された。渡辺は顔をしかめてあぐらに崩す。16時42分、千田が時間を使っている。残り時間は30分ほどになった。これは激しい変化を含む△8三香を掘り下げているのだろうか。 80 1八飛成(28) (37:00/03:35:00) *16時52分、千田の手が盤上に伸びた。直後に渡辺が戻る。「指されました」の声。 *控室の継ぎ盤には▲2四歩△1五竜▲2三歩成△同金▲4一角が並ぶ。広瀬八段が「手堅い」と話していた飛車成りだが、攻められてみると後手も怖く感じる。森内九段は「△8三香と打てないのでは大差という感じはしないですね。残り時間が不安です」と話す。 * *※局後の感想※ *「△8三香で攻めていければよかったんですが」と千田。渡辺は「じっと成られて悪いですね」とさばさばと語った。 81 2四歩(25) ( 5:00/02:38:00) 82 同 歩(23) ( 1:00/03:36:00) *千田の△1八飛成〜△2四同歩は相手の攻めを催促している。「▲2四同銀△同銀▲同角と一直線にいくと先手が足りなそうです。粘るなら▲7五歩も考えられます」と森内九段。ここから▲7五歩△6三銀と進めば、先手に▲4一角〜▲6三角成という手段が生じる。ここで単に▲4一角は△1五竜▲7四角成△7一香で失敗だ。 83 同 銀(15) (12:00/02:50:00) *渡辺が着手してグイッとお茶を飲む。素直な攻めだが、これでは先手が足りないと見られていた。先手に秘策はあるのか。 84 同 銀(33) ( 0:00/03:36:00) 85 同 角(46) ( 0:00/02:50:00) *下段に落とした後手玉が遠い。先手から急所の筋は次に▲1三歩だが、持ち駒が銀なので迫力に欠ける。後手は攻めるチャンスだ。ひと目の筋は焦点にたたく△7七歩。▲7七同銀は△8三香、▲7七同玉と▲7七同桂は△7六歩の追撃がある。先手はどう応じても味が悪い。 86 7七歩打 ( 8:00/03:44:00) *歩の手筋がグサリと刺さる。横からは竜、上からは飛車が先手玉をにらんでいる。強烈な十字砲火。渡辺は額に手をやる。首をすくめる。 87 同 桂(89) ( 7:00/02:57:00) *17時30分、渡辺が着手。千田の残り時間は16分。 88 8五歩打 ( 3:00/03:47:00) *8筋を押さえた。▲9七銀と引くのでは△7六歩がより厳しくなる。▲8五同銀と応じるしかなさそうだ。先手は銀が2枚になれば、▲1三歩が次に▲1二銀△2二玉▲1一銀打△3一玉▲6四角と王手飛車を狙った手になる。 *17時44分、前傾姿勢で盤に向かっていた渡辺が首をかしげる。早見表に書かれた残り時間を示す数字が消されると、パッとそちらを向いた。 * *※局後の感想※ *代えて△7六歩がまさった。以下▲1三歩△7七歩成▲同玉△7六歩▲6七玉△5四桂のときに、「駒を渡さない詰めろがない」と渡辺。例えば▲1二銀△2二玉▲2三歩△同金▲同銀成△同玉▲2五香は、銀を渡したので△7八竜▲同玉△6六桂から詰み。 89 同 桂(77) (11:00/03:08:00) *ここで△7七歩は▲同玉でどうか。後手は歩を使って攻めが続くが、歩切れになると▲1五香が飛んでくる。 *17時48分、千田は残り10分を切った。秒読みが始まる。「若い人は時間が少なくても関係ないんだよな」と青野九段がつぶやいた。 90 同 銀(74) ( 4:00/03:51:00) *「△8五同銀は最速ですね。後手玉は詰めろがかからないので読みやすいです」と森内九段。青野九段は▲8五同銀に△7三桂を予想している。次に△7七歩が厳しい。 91 同 銀(86) ( 7:00/03:15:00) *千田は前傾姿勢で盤面をにらむ。8分、7分、6分……残り時間が減っていく。 92 7七歩打 ( 4:00/03:55:00) *千田、残り5分まで使って駒台の歩を手に取った。 * *※局後の感想※ *代えて単に△7三桂とすべきだった。▲1二歩が嫌な手だが、△2二玉▲1一銀△1二玉▲1三歩△1一玉▲1二銀△2二玉▲2三歩△3一玉で届かない。以下▲6四角には△4二銀▲7三角成△7一香と切り返せる。「駒がいっぱいあるから何かありそうに見えるけど、ないのか」と渡辺。千田は「△7七歩と打つつもりで△8五歩(88手目)としている」と話した。 93 同 玉(88) ( 0:00/03:15:00) *玉をつり出したことで△7三桂〜△8五桂が王手になる。しかし先手玉が竜の利きから逃げた面もあるので、利点ばかりではない。「(先手玉を)上に出さないほうがわかりやすいと思ったんですが」と青野九段。 94 7三桂(81) ( 0:00/03:55:00) *「これは銀を出るしかないですね。それで寄せられたらしょうがないです」と森内九段。ここで▲7四銀に明快な寄せがあるか。(1)△8五桂打は▲6七玉で玉を逃がしている感がある。(2)△7六歩▲同金△7五歩も歩切れになるので、あとで恐怖の▲1五香が待っている。(3)△8五銀は▲1九香△同竜▲7三銀成でどうか。森内九段は「竜の利きをずらされるのが気になる」と話す。 95 7四銀(85) (10:00/03:25:00) *18時16分の着手。渡辺は腕組みをして天井を見上げる。控室では決め手が発見できていない。森内九段の「何がいいんですか」に、「いやあ、わかっていないんですけど」と広瀬八段。 * *※局後の感想※ *「そうか、これが見えてなかったというか……」(千田) *「▲7七同玉(93手目)で上に逃げ出す含みが出てきたので」(渡辺) 96 2三金(32) ( 3:00/03:58:00) *「うわあ」と森内九段の声。寄せに出た流れから自陣に手が戻るのでは、後手変調に思える。「怪しいですね。明らかに予定変更ですから」と森内九段。「▲1九香はないですか」と、△同竜に▲5一角成を予想している。 97 1二歩打 ( 6:00/03:31:00) 98 同 飛(82) ( 0:00/03:58:00) *玉が上に引っ張り出されてはまずかったか。飛車で歩を払ったが、先手玉へのプレッシャーが弱まった。「先手玉がかなり安全になりましたね」と森内九段。混戦の気配だ。ここで▲5一角成△8五桂▲6七玉△7八竜▲同玉△1八飛成は先手玉が危ない。▲1三歩とたたいてどうか。 *18時30分、渡辺は両手で頭を抱える。 99 6八角(24) ( 6:00/03:37:00) *角を引きあげる。次は▲2四歩がある。 *18時34分、千田が一分将棋に入った。 * *※局後の感想※ *「ここで△5四桂と打つつもりだったんですが、本譜はやってしまいましたね」と千田。だが、△5四桂は▲2四歩△6六桂▲同玉で先手有望。渡辺は「どうやってくるのかわからなかった。相当ミラクルな手がないと。飛車が8二にいれば大変ですけど、無効化しているので」と話した。 100 5七銀打 ( 1:00/03:59:00) *58秒まで読まれて銀を打ちつけた。タダのところに捨てる強手だ。着手の際に周囲の駒が乱れ、渡辺がちょんちょんと位置を整える。「こういう手を指す将棋ではなかったはずなんですが」と森内九段。 101 同 角(68) ( 1:00/03:38:00) *渡辺は落ち着いた手つきで銀を取る。千田に秒読みの声が迫る。 102 8五桂打 ( 0:00/03:59:00) 103 6七玉(77) ( 0:00/03:38:00) *ノータイム。時間切迫の千田を追い立てる。 104 7八龍(18) ( 0:00/03:59:00) 105 同 玉(67) ( 0:00/03:38:00) *ここから△1八飛成▲4八銀△7七金▲6九玉△6七香と迫って、後手の攻めが切れることはなさそうだ。問題は後手玉の安全度。先手は駒台には豊富な戦力がある。 106 1八飛成(12) ( 0:00/03:59:00) *継ぎ盤には▲4八銀△7七金▲6九玉△6七香▲5八玉△6八香成▲4九玉△6七金▲1二歩△同玉▲1三歩△同金が並んでいる。これは後手玉を寄せるのが難しいようだ。駒が戻される。 107 4八銀打 ( 5:00/03:43:00) 108 7七金打 ( 0:00/03:59:00) 109 6九玉(78) ( 0:00/03:43:00) 110 6七歩打 ( 0:00/03:59:00) *香ではなく垂れ歩で迫った。先手玉は△6八歩成▲同角△同金▲4八竜から危ないが、ここで▲1二歩△同玉を入れてから▲5九銀打と受けて「先手玉が見えない」と青野九段。 * *※局後の感想※ *代えて△6七香は▲5八玉△6八香成で、「取るか引くか迷っていた」と渡辺。以下(A)▲6八同角は△同金▲5七玉△7七桂成で危ない。(B)▲4九玉が正着で、△6七金▲1二歩△同玉▲7二飛△2二歩▲1三歩△同金▲同角成△同竜▲1四歩△同竜▲1五香で先手が残している。千田は「△6七香は成立しないと思った」と話していた。 111 5九銀打 ( 4:00/03:47:00) *後手は手が止まってしまうと今度は自玉が危ない。大きな駒損なので戦いの長期化はジリ貧を招く。態勢を立て直すことも難しい。 112 5六歩(55) ( 0:00/03:59:00) 113 1三歩打 ( 0:00/03:47:00) *渡辺、腕をまくって歩を打った。王手をかける▲1二歩が調べられていたが、控えて打つ歩で詰めろをかける。後手は角を取る余裕がない。 114 1二歩打 ( 0:00/03:59:00) 115 5二飛打 ( 2:00/03:49:00) 116 2二歩打 ( 0:00/03:59:00) *後手玉は一手一手の寄りと見られている。 117 1二歩成(13) ( 1:00/03:50:00) *先手は取られそうな角が鬼のような駒だ。 118 同 龍(18) ( 0:00/03:59:00) *竜を引きつけて徹底抗戦。辛抱してチャンスを待つ。 119 1三歩打 ( 0:00/03:50:00) 120 同 金(23) ( 0:00/03:59:00) 121 4六角(57) ( 0:00/03:50:00) *冷静沈着。渡辺はポットから湯呑みにお茶を注ぐ。 122 5七香打 ( 0:00/03:59:00) *懸命の食いつき。しかし▲5八歩と受けられて、後手は駒がない。 123 2八香打 ( 2:00/03:52:00) *銀取りを受けずに後手玉に迫った。△5九香成は▲同玉で右辺に逃げ出せる。 124 3五歩(34) ( 0:00/03:59:00) *角の利きを止めたが、▲3一銀と数を足せば後手は受けが難しい。 125 3一銀打 ( 1:00/03:53:00) *千田は脇息にもたれている。渡辺は手で額を押さえる。 126 2三金(13) ( 0:00/03:59:00) 127 1三歩打 ( 0:00/03:53:00) *角が利いていなくてもこのたたきが厳しい。△1三同竜に▲1四歩で竜の利きを止められてしまう。 128 同 龍(12) ( 0:00/03:59:00) 129 1四歩打 ( 0:00/03:53:00) *後手の望みを断つ歩。竜と金、どちらで取っても▲2二銀成から詰んでしまう。 130 1二龍(13) ( 0:00/03:59:00) *千田は頬に手を当てて盤面を見つめる。渡辺は盤に顔を近づける。 131 5八歩打 ( 1:00/03:54:00) *この手を見て千田はお茶を飲み、駒台に手をやって頭を下げた。後手は攻防ともに見込みがない。終局時刻は19時15分。消費時間は▲渡辺3時間54分、△千田3時間59分。第2局は渡辺が逆転で制し、シリーズ成績を1勝1敗のタイに。第3局は3月5日(日)、新潟県新潟市「新潟グランドホテル」で行われる。 * *※局後の感想※ *千田の△6四同歩(42手目)はこれまでの定跡に一石を投じる新構想。新たな定跡の出発点になりうる手だ。本譜は△3九馬(54手目)が厳しく、先手は▲1八飛(49手目)が疑問だった可能性がある。後手がリードして迎えた終盤戦、△8五歩(88手目)では代えて△7六歩がまさった。その後の△7七歩(92手目)が敗着。代えて△7三桂なら後手有望だった。本譜は▲7七同玉(93手目)で先手玉が上に逃げ出す形になって逆転。感想戦は19時57分に終了した。 132 投了 ( 0:00/03:59:00) まで131手で先手の勝ち