# --- Kifu for Windows (Pro) V6.63.1 棋譜ファイル --- 対局ID:3592 記録ID:54cf1a5905d95003001ebfc2 開始日時:2015/02/11 09:00 終了日時:2015/02/11 18:12 表題:棋王戦 棋戦:第40期棋王戦五番勝負 第1局 持ち時間:各4時間 消費時間:103▲228△206 場所:栃木・宇都宮グランドホテル 記録係:三段高野智史 振り駒:3,0,渡 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:00〜13:00 昼休前消費時間:44手21分 手合割:平手   先手:渡辺明棋王 後手:羽生善治名人 先手省略名:渡辺明 後手省略名:羽生 手数----指手---------消費時間-- *渡辺明棋王に羽生善治名人が挑戦する第40期棋王戦(共同通信主催)五番勝負第1局は2月11日に宇都宮市「宇都宮グランドホテル」で行われる。 *立会人は大内延介九段、解説は松尾歩七段。聞き手は室谷由紀女流初段。記録係は高野智史三段(木村一基八段門下)。持ち時間は各4時間。第1局のため、先後は渡辺の振り歩先(歩が多ければ渡辺先手)による振り駒で決める。本局は男性タイトル戦では初めて記録係がタブレットを使い、棋譜自動入力による棋譜中継を行う。 *本局はニコニコ生放送によるライブストリーミング中継が行われる。解説は屋敷伸之九段、聞き手は井道千尋女流初段。 *高野三段は8時過ぎに対局室で準備している。渡辺は8時45分に入室。羽生は8時50分ごろ入室。振り駒の結果、歩が3枚出て渡辺の先手に決まった。 *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>おはようございます。棋王戦第1局の解説を担当する屋敷です。よろしくお願いします。戦型はそうですね、どちらが先手でも相居飛車になると思います。他の方の予想にもあがっていましたが、私も角換わりか矢倉になるのかなと。 *【ニコニコ生放送】 *http://live.nicovideo.jp/watch/lv207739658 *【囲碁・将棋 | 株式会社共同通信社】 *http://www.kyodo.co.jp/igo-shogi/ *【宇都宮グランドホテル】 *http://www.utsunomiya-grandhotel.co.jp/ *(棋譜・コメント入力=銀杏) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。#は局後の感想が追記された指し手。【】はブログやリンクのタイトル] 1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *◆渡辺 明(わたなべ あきら)棋王(王将)◆ *1984年4月23日生まれ、東京都葛飾区出身。所司和晴七段門下。2000年、四段。2005年、九段。棋士番号は235。 *タイトル戦登場は22回。獲得は竜王9期(永世竜王)、王座1期、棋王2期、王将2期の計14期。棋戦優勝は9回。 &元に戻す表示局面 2 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *◆羽生 善治(はぶ よしはる)名人(王位・王座・棋聖)◆ *1970年9月27日生まれ、埼玉県所沢市出身。二上達也九段門下。1985年、四段。1994年、九段。棋士番号は175。 *タイトル戦登場は120回。獲得は竜王6期、名人8期(十九世名人)、王位16期(永世王位)、王座22期(名誉王座)、棋王13期(永世棋王)、王将12期(永世王将)、棋聖13期(永世棋聖)の計90期。棋戦優勝は42回。 3 2六歩(27) ( 1:00/00:01:00) *渡辺の本年度成績は20勝8敗(0.714)。勝率ランキング9位。9月からの成績は13勝2敗。冬将軍の勢いに目を見張らされる。11月にJT杯決勝で羽生を破って優勝した。 *通算成績は495勝236敗(0.677)。通算500勝まであと5勝。 4 8四歩(83) ( 3:00/00:03:00) *羽生の本年度成績は36勝12敗(0.750)。本局が50局目にあたる(タイトル戦の持将棋1局含む)。対局数と勝数で2014年度1位。勝率ランキングも6位。 *通算成績は1306勝501敗(0.723)。通算勝数は歴代4位。3位の中原誠十六世名人の1308勝にあと2勝と迫っている。 5 2五歩(26) ( 1:00/00:02:00) *渡辺は棋王2連覇中。第38期棋王戦では挑戦者決定戦や本戦決勝で羽生を破った。 *羽生は7期ぶりの五番勝負登場。これだけ間隔があったのは羽生としては珍しい。 6 8五歩(84) ( 1:00/00:04:00) *二人の対戦成績は渡辺31勝、羽生30勝。二人のタイトル戦は今回で8回目で、1日制は5回目。これまでの7回は渡辺の4勝3敗。1日制ではここまで渡辺の1勝3敗。 7 7八金(69) ( 1:00/00:03:00) *対局始まる前、控室では室谷由紀女流初段が第1期棋王戦の大内延介九段の棋譜を持ち出し、松尾歩七段と検討していた。室谷女流初段はメモをたくさん用意して、さまざまな情報が書き込まれていた。将棋まつりでその対局を紹介するので調べていたのだ。 *9時10分現在、対局室から控室に戻ってきた大内九段がその棋譜を見ている。「(田辺)忠幸さんを思い出すね」と大内九段。田辺忠幸さんは長年共同通信の将棋担当記者として活躍した。棋王戦でも健筆をふるったが、2008年に亡くなった。 8 3二金(41) ( 1:00/00:05:00) *本局の立会人を務める大内延介九段は第1期棋王。第1期棋王戦はタイトル戦昇格前の第1回棋王戦優勝者の内藤國雄九段、本戦優勝の高島弘光七段、敗者戦優勝の大内八段(肩書はいずれも当時)の3者によるリーグ戦で争われた。 *リーグ第1局の内藤ー大内戦は1976年1月にハワイで行われた。これが海外対局の第1弾である。結果は千日手の末に内藤九段の勝ち。その後のリーグ戦により、大内八段が棋王を獲得した。 9 2四歩(25) ( 1:00/00:04:00) *宇都宮グランドホテルは1993年の第51期名人戦第1局▲中原誠名人ー△米長邦雄九段(肩書はいずれも当時)をはじめ、何回もタイトル戦を行っている。棋王戦では第36期から毎年のように対局が行われている。昨年は第4局に予定されていたが、第3局で五番勝負が終了したため対局は行われなかった。 *渡辺、羽生ともに宇都宮グランドホテルでは3回目の対局。渡辺は棋王を獲得した地(第38期棋王戦五番勝負第4局)だ。羽生は第15期竜王戦七番勝負第1局千日手指し直し局や第47期王将戦七番勝負第1局を戦い、いずれも勝ち。二人とも相性のよい対局場だ。 *【第38期棋王戦五番勝負第4局 ▲渡辺明竜王ー△郷田真隆棋王】 *http://live.shogi.or.jp/kiou/kifu/38/kiou201303240101.html 10 同 歩(23) ( 0:00/00:05:00) *初めてタイトル戦でニコニコ生放送によるライブストリーミング中継が行われたのが、2011年2月に宇都宮グランドホテルで指された第36期棋王戦五番勝負第1局▲久保利明棋王ー△渡辺明竜王(肩書はいずれも当時)だ。初めてのタイトル戦中継は12万人以上の方が観戦。そのときの成功が現在のタイトル戦中継や電王戦などにつながる。ニコニコ生放送の公式放送では初めて感想戦の中継をする。 *また、男性棋戦では初めてタブレット機器を使用したリアルタイム中継を行う。従来の方式よりもリアルタイムで指し手、消費時間が更新されるため、これまで以上に詳しく臨場感ある中継を楽しめる。 11 同 飛(28) ( 0:00/00:04:00) *棋王戦観戦記の掲載紙は以下の20紙。 *河北新報、下野新聞、千葉日報、新潟日報、信濃毎日新聞、山梨日日新聞、静岡新聞、北日本新聞、北國新聞、京都新聞、日本海新聞、山陽新聞、中国新聞、愛媛新聞、高知新聞、佐賀新聞、長崎新聞、熊本日日新聞、南日本新聞、沖縄タイムス。 12 8六歩(85) ( 1:00/00:06:00) *観堂義憲・下野新聞社長が控室へ。観堂社長は大の将棋ファンで、谷川浩司九段の解説を聞きながら、「羽生さんが横歩取りに誘ったのですね」と話している。「将棋大会は100人以上来ていますよ」とのこと。 13 同 歩(87) ( 0:00/00:04:00) *「宇都宮グランドホテル」は第十四師団の二代目師団長を務めた鮫島重雄男爵の別邸として建てられたことに由来している。ホテル内には、鮫島男爵をしのぶ品々が展示されている。本局が行われている陽南荘は数寄屋作りの離れで、1945年秩父宮妃殿下のために建てられた。 *2万坪の庭園が名物。四季折々でさまざまな景色が楽しめる。春は明治天皇から賜った山桜、ソメイヨシノ、ボタンザクラが咲き誇り、訪れる人を楽しませる。冬は梅やツバキが咲く。 14 同 飛(82) ( 0:00/00:06:00) *本日は本局の対局場でもある「宇都宮グランドホテル」にて第6回とちぎ将棋まつりが行われる。席上対局や指導対局などイベント盛りだくさん。 *出演棋士は谷川浩司九段、松本佳介六段、片上大輔六段、北尾まどか女流二段、室谷由紀女流初段。 15 3四飛(24) ( 2:00/00:06:00) *宇都宮市は栃木県の県庁所在地。1996年4月に、中核市に指定された。人口は約52万人で、北関東の3県(栃木、群馬、茨城)の中で最大。 *江戸時代は宇都宮城の城下町であり、奥州街道と日光街道が分岐する宿場町としても栄えた。宇都宮城は江戸初期に起こった、宇都宮城釣天井事件の舞台でもある。 *近年は餃子の消費量が多いことから「餃子の街」、ジャズサックス奏者の渡辺貞夫さんの出身地であることから「ジャズの街」、バーテンダーの大会で活躍した人が多いことから「カクテルの街」として、町おこししている。 16 3三角(22) ( 0:00/00:06:00) *本局は羽生の横歩取り△3三角戦法となった。前夜祭での戦型予想は矢倉や角換わりになるのではないかといわれていた。 17 3六飛(34) ( 1:00/00:07:00) *宇都宮市は1986年にイチョウを「市の木」として制定した。栃木県庁と宇都宮市役所を結ぶ通りに、樹齢300年を越える大イチョウがあり、市のシンボルとなっている。イチョウを漢字で書くと「銀杏」。銀と成香(香を崩すと杏になる)の二つの駒が入っている。 18 8四飛(86) ( 1:00/00:07:00) *宇都宮といえば餃子。今回は前夜祭のときに「みんみん」の焼き餃子がふるまわれた。宇都宮餃子は戦後に中国の東北部から引き揚げた人々が餃子で商売したことが始まり。栃木県は全国有数のニラの産地で、昔は小麦の生産も盛んだった。 19 2六飛(36) ( 0:00/00:07:00) *桂取りの先手で△2四飛を防ぐ。△2四飛▲2八歩と進むと、持ち歩が減るだけでなく歩が低い形で攻めに使えないため先手不満の序盤となる。▲2六飛に△8八角成▲同銀△4四角は▲2一飛成△8八角成▲同金△同飛成▲3一竜△同金▲3三角の王手竜取りがあって先手良し。 *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>横歩取りは先手が歩を得しますが飛車の動きに手がかかりますので、その分後手が攻める展開になりやすいです。 20 2二銀(31) ( 0:00/00:07:00) *本局の観戦記は鈴木宏彦さんが担当する。盤側で二人の対局姿を取材している。 21 8七歩打 ( 0:00/00:07:00) *本局で使用されている盤は、埼玉県行田市にある吉田将棋碁盤店の3代目吉田寅義氏から栃木県将棋界に寄贈していただいたもの。宮崎県日向産の樹齢350年以上の本カヤを30年以上乾燥させ、太刀盛りで製作した。 *駒は駒師の北田如水氏作の島ツゲの盛上駒。書体は菱湖。北田氏は将棋駒研究を主宰し、30年近く活動している。 22 5二玉(51) ( 1:00/00:08:00) *第1回棋王戦で優勝した内藤國雄九段が得意にし、一世風靡した戦型だ。4一玉型や8五飛型などさまざまな形が指された後、再び5二玉・8四飛型が流行している。 23 5八玉(59) ( 1:00/00:08:00) *二人の対戦で横歩取りは昨年2月の朝日杯決勝以来のこと。そのときは▲6八玉と上がっていた。本局は▲5八玉。 24 5一金(61) ( 1:00/00:09:00) *現地では別会場で第6回とちぎ将棋まつりが行われ、9時30分に開会式が行われた。こちらもニコニコ生放送で中継している。 *【第6回とちぎ将棋まつり】 *http://live.nicovideo.jp/watch/lv209033400 25 3八銀(39) ( 8:00/00:16:00) *▲3八金の金開きもよく指されているところ。▲3八銀は1手で陣形を引き締め、▲3六歩から駒組みを進めることができる。 26 6二銀(71) ( 4:00/00:13:00) *5二玉型での中原囲いが近年の流行。 *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>初めて見る方には奇妙な形に見えるかもしれませんが意外に堅いんです。以前は△7二金〜△6二銀と金開きにすることが多かったんですが、下段に飛車を打たれると弱い形です。 27 3六歩(37) ( 0:00/00:16:00) *第39期棋王戦本戦敗者復活戦▲郷田真隆九段−△羽生戦でも指されている局面。3八銀型は郷田好みの陣形で、23局中9局を指している。 *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>先手は次に▲3五歩と伸ばせれば飛車の横利きも通って好形になるので、後手は何か動きたいところですね。ひとまず△8六歩とあわせてみたいです。 28 9四歩(93) ( 1:00/00:14:00) *5日に指された王位戦▲阿部光瑠五段−△木村一基八段戦と同じ局面に合流した。その将棋は▲3七銀に△8六歩と動いた。 *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>端歩を突いて間合いをはかりました。この手は当たらないですね。先手に動いてもらって隙を見出そうということでしょうか。例えば▲3五歩には△8五飛や△9五歩。他には▲3七銀もあるかもしれないです。いやあ、△9四歩は難しい手ですね。 29 3七銀(38) ( 6:00/00:22:00) *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>銀を繰り出していく方が自然と見ましたか。先手は▲4六銀〜▲3五銀といった形を目指し、後手は1筋〜2筋を押し上げていくような応酬になりそうです。 30 9五歩(94) ( 4:00/00:18:00) *前述した▲阿部光−△木村戦では△8六歩から動いていた。これで未知の局面に。なお、2013年2月の第62期王将戦第3局▲佐藤康光王将−△渡辺明竜王(肩書はいずれも当時)戦では6八玉型で現れている。王将戦では先手が玉を左辺に移した。本局の5八玉型では手損になるので、左辺に動かしにくい。 *とちぎ将棋まつりでは、大盤解説会で松尾七段と室谷女流初段が解説している。 *10時過ぎ、片上六段が控室に戻る。「『鶴翼の陣』の将棋に似ていますよね」と片上六段。後手が両端の歩を突き越したことで、話題になった。「鶴翼の陣」の将棋は、2013年7月の第84期棋聖戦五番勝負第4局▲渡辺−△羽生戦のこと。その将棋に勝って、羽生が棋聖防衛を果たした。本局の△9五歩から▲3八金△2三銀▲3五歩と進めば棋聖戦の将棋に合流する。10時10分ごろ、控室に松本佳介六段。松本六段は栃木県在住の棋士だ。 31 3八金(49) (23:00/00:45:00) *10時21分、23分の考慮で指された。現地の大盤解説会では谷川九段と室谷女流初段が解説している。「私も嫌いではないのですが、激しい戦いになりやすく、準備が必要で怖い戦型です」と谷川九段。 *羽生が席を外す。戻ってきてもしばらく考えている。 32 1四歩(13) ( 7:00/00:25:00) *今日の宇都宮市の最低気温は−2.3度だった。栃木県は日光や那須などの山間部から、からっ風が吹き付けてくるので冬は冷え込みが厳しい。最低気温が−5度になることも。 33 1六歩(17) ( 2:00/00:47:00) *鶴翼の陣を許さない。10時30分になり、とちぎ将棋まつりでは席上対局の松尾七段−片上六段戦が始まった。解説は松本六段、聞き手は室谷女流初段。対局者の午前のおやつはホットコーヒー。 34 2三銀(22) ( 5:00/00:30:00) *【東京から宇都宮へ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-3643.html *【検分】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-42ac.html *【揮毫】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-17c1.html 35 4六銀(37) ( 2:00/00:49:00) *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>△8六歩と合わせていくか、△8八角成▲同銀△3三桂からどこかで△2四飛とぶつけていく筋を狙うか。 *【前夜祭開幕】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-837a.html *【宇都宮餃子】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-e95a.html *【対局者あいさつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-5fe7.html *【明日の見どころ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-c201.html *【盤と駒】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-ee47.html *【対局をお楽しみに】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-b970.html 36 2四歩打 (11:00/00:41:00) *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>△2四飛とぶつける筋がなくなってしまうのであまり見ない手ですが、ゆっくり指して端の位が大きいと見ているのでしょうか。独特の感覚ですね。次に△7四歩〜△7三桂や、△9三桂と逆から使っていく順を見ているのかもしれません。 *【朝の対局室】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-5cf3.html *【振り駒】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-d297.html *【対局開始】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-75cb.html 37 3七桂(29) (14:00/01:03:00) *11時5分の着手。▲3七桂までの消費時間は、▲渡辺1時間3分、△羽生41分。 *大杉悠初段が控室を訪れた。栃木在住の奨励会員だ。 *将棋まつりの会場は席上対局、指導対局、将棋大会、販売コーナー、どうぶつしょうぎコーナーとさまざまあり、熱気むんむん。多くの方が来られて、少し熱く感じるほどだ。 *4六銀・3七桂は横歩取りの先手が目指したい形の一つ。昨年の第39期棋王戦五番勝負第1局▲渡辺−△三浦弘行九段戦でも渡辺は4六銀・3七桂型に組んで勝っている。 *【第39期棋王戦五番勝負第1局▲渡辺明棋王−△三浦弘行九段】 *http://live.shogi.or.jp/kiou/kifu/39/kiou201402020101.html 38 8六歩打 (10:00/00:51:00) *11時20分前、羽生が動いた。横歩取り後手の常套手段だ。2六飛の横利きが4六銀と3六歩の2枚で止まっているため、▲8六同歩△同飛に▲3五歩や▲3五銀としても、7六歩を取られてしまう。 39 同 歩(87) ( 6:00/01:09:00) *【宇都宮市】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-6a59.html *【宇都宮グランドホテル】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-191d.html *【盛況の将棋まつり】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-72c8.html 40 同 飛(84) ( 0:00/00:51:00) *ここからの対応が先手の課題だ。 41 2九飛(26) ( 1:00/01:10:00) *△8八角成▲同銀△4四角や、遠くの7九銀にヒモをつけて△7六飛から△8八角成に▲同金で対応できるようにしている。 *なお、▲2九飛で▲8七歩△7六飛▲3三角成△同桂▲7七歩△7四飛▲8二角と反撃するのは△9四飛がぴったりだった。羽生の9筋位取りは端攻めだけでなく、先手の反撃に対応しやすくした意味もあった。 *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>候補手は△7六飛、△7四歩、△9六歩。△7六飛はすぐには取りにくい気がします。△7四歩と力をためるか、△9六歩▲同歩と味付けをして△9七歩と垂らすか。▲9七同香と取れば△9六香と強攻に出る筋があります。候補手以外の手も有力です。 42 7六飛(86) ( 7:00/00:58:00) *11時30分、指導対局を終えた、大内九段が控室に戻る。「お客さんがすごいね。ものすごい。300人以上は来ているんじゃないかな」と驚く。宇都宮市は東京駅から新幹線で50分。都心から日帰りで観戦に来られる方も多いようだ。 *盤上は羽生△7六飛。ニコニコ生放送で屋敷九段が指しにくいと言っていた手だ。強気な一手。席上対局を終えて、控室に戻ってきた片上六段は▲7七角を示す。ここですぐ▲8二歩と攻めるのは△7八飛成▲同銀△8八角成で壊滅してしまう。 *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>8筋ががら空きになるのでちょっとどうかと思ったのですが。ただ△7八飛成▲同銀△8八角成を喫してはいけないので何かしないといけません。▲7七角や、▲3三角成△同桂▲8二歩などが考えられます。 43 7七角(88) ( 6:00/01:16:00) *片上六段の予想がピタリと当たった。これが「形」。15手目で先手が▲3四飛と横歩を取ったときに、後手が△3三角としたのと同じことだ。後手陣は▲8二歩のキズがある。それを羽生がどう対処しながら進めるかがポイントになる。△7四飛と引いて、▲8二歩に△8四飛の桂歩取りを見せるのが一案。 *将棋まつりでは、地元のアイドル「とちおとめ25」やヒーロー「精霊法士トチノキッド」がどうぶつしょうぎ対決をしている。 *11時54分ごろ、羽生が「では、休憩にしてください」と告げて、早めの休憩に入った。この場合、羽生が12時まで時間を使ったことにして、消費時間に加える。ここまでの消費時間は▲渡辺1時間16分、△羽生1時間19分。昼食は渡辺が刺身膳セット、羽生が五目あんかけ焼きそばセット。対局は13時再開。 *午後は対局を観戦するファンの方がいる。皆、緊張の面持ちで対局者を待っている。渡辺は12時53分ごろ対局室へ。羽生は12時55分ごろ入室。 *谷川九段は「横歩取りにしては、穏やかな序盤になりました。先手は右辺で好形を作れました。後手も歩損解消できました。後手は飛車を戻してしばらくは戦機をうかがうことになると思います。現状は後手が9筋を詰めた分だけ手が遅れているため、先手が先に好形を作れました」と解説する。対局再開を見届けてから、谷川九段は東京へ戻った。 *【ご当地アイドル・ヒーロー対決】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-9b52.html *【昼食休憩に入る】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-97d2.html 44 1五歩(14) (37:00/01:35:00) *13時対局再開。その後もしばらく考えていた羽生は13時16分、いきなり△1五歩と突っかけた。こんなところに手があったとは…。谷川九段はまだ穏やかな進行になりそうと述べていたが、△1五歩の一手により、流れが急になりそうだ。 *【対局再開】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-2985.html *【羽生名人が仕掛ける】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-8a20.html *※局後の感想※ *△7四飛▲6八銀△8四飛▲8七歩の変化なら一局。「これでやるしかなかったか。歩を取り返したが、遅れている感じがして」と羽生。 45 同 歩(16) ( 4:00/01:20:00) *とちぎ将棋まつりでは松尾七段と室谷女流初段によるミニ大盤解説会が行われている。ここで△1七歩▲同香△7七飛成▲同桂△4四角打の筋はあまりうまくいかないという。ただ、「戦いが起こってこれから面白くなるところですね」と松尾七段。 *将棋まつりは大内九段が棋王を取った対局の解説が始まる。大内九段が舞台に上がって、「私が第1期棋王です」とあいさつすると、会場から拍手が沸き起こった。 *【第1期棋王・大内延介】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-8a34.html 46 1七歩打 ( 3:00/01:38:00) *この手自体は予想されていたが、▲同香の後にどう攻めをつなげるか。△7七角成から行くか、△7七飛成から行くか、△9三桂などと他の攻めもからめるか。 *△7七飛成は▲同桂△4四角打に▲4五桂△2二角▲6五桂のようにさばかれると、後手はまとめるのが大変そうだ。 47 同 香(19) (25:00/01:45:00) *13時50分、渡辺は25分使って▲同香と取った。自然な応手。渡辺は席を外す。羽生はめがねを外し、右手に頭を載せて考えている。 48 7七角成(33) ( 2:00/01:40:00) *▲4五桂が当たって負担になりそうな角を先にさばいた。▲同桂なら△4四角が桂香両取りになる。 49 同 金(78) ( 0:00/01:45:00) *△7四飛が予想されている。△7七同飛成▲同桂△4四角はやはり▲6五桂△1七角成▲4五桂と攻められるのが気にかかる。 50 7四飛(76) ( 0:00/01:40:00) *冷静に。これで△4四角や△1八角▲2六飛△2五歩を見る。とはいえ、後手は歩損してから手を渡している。先手がまとめにくいとみているのだろうか。羽生は扇子でパタパタあおいで考えている。二人は前傾姿勢だ。 *控室に大内九段が戻ってくる「面白い指し方ですね。これで指す手が難しいということですか」とコメント。そして、棋譜コメントを見て「魚と焼きそばか」とつぶやく。対局者二人の昼食に触れたものだ。 *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>次に△4四角の狙いがあるのでそれをどう受けるか。▲7六歩と打ったり、▲5六角と積極的に行く手もあります。羽生名人は苦心の順という感じがするので、私は先手を持ちたいです。ただ先手陣はバラバラなので、うまくまとめないと危ないです。 51 5六角打 (26:00/02:11:00) *14時21分の着手。▲5六角までの消費時間は、▲渡辺2時間11分、△羽生1時間40分。左右に利くので横歩取りでは好位置になりやすい。この場合、△1八角▲2六飛△2五歩▲同飛△3六角成に▲2三角成と切り返す筋も含んでいる。 *松尾七段と北尾女流二段の大盤解説では▲7六歩と打つ手も示されていた。 *※局後の感想※ *「▲5六角はちょっとと思った。手が広くて分からなかった」と渡辺。▲1九飛は△1八歩に▲同飛の一手となるので、△9六歩▲同歩△同香▲同香△9八角の筋が生じてしまう。先手陣は桂を持っての△2六桂の筋がある。ここでは▲7六歩も有力だった。 52 8四飛(74) ( 4:00/01:44:00) 53 8五歩打 ( 0:00/02:11:00) 54 同 飛(84) ( 0:00/01:44:00) 55 8六歩打 ( 0:00/02:11:00) 56 8四飛(85) ( 0:00/01:44:00) 57 1四歩(15) ( 0:00/02:11:00) *渡辺は▲5六角から先手を取って、△4四角の筋を消しつつ反撃に移った。△1八角は▲2六飛△2五歩▲同桂△2四歩▲1三歩成だろうか。 *大盤解説会では「先手を持ってみたい。相手の指し手に対応できるので。後手からは力をためる手が難しい」と松尾七段。ここで△1五歩は▲同香△1四香▲同香△同銀▲1二角成で先手よしという。△2五歩▲同桂△2四銀も示されたが、▲1三歩成が忙しいようだ。 58 1二歩打 (16:00/02:00:00) *14時45分、残り2時間を告げられた羽生は低く受けた。屈服するので予想されていなかった。角を打たせたことを評価しているのだろうか。44手目に△1五歩とちょっかいを出したのは羽生。1筋の逆襲に△1二歩と受けたのも羽生。柔軟というか、自在な指し方だ。歩の枚数は3対1になった。 *「攻めてもうまくいかないんですね。うーん」と松尾七段がうなる。現地では次の一手問題が出された。 *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>すさまじい辛抱です。先手に香を持たれると▲8五香から桂香を拾われてまずいということなんですね。しかし1筋は自分から突き捨てた歩ですし、持ち歩が残り1枚になってしまいました。 59 1九飛(29) ( 5:00/02:16:00) *△1八角を消す。しかし、△1二歩と受けたところだけに意外でもある。次の一手の正答率も低かったようだ。△1二歩と受けたことで渋い応酬となりそうだ。 *※局後の感想※ *「まとめ方が分からなくなった。互いに手が難しい。こちらは矢倉にしたいが、組み合わせが難しい」と渡辺。 60 5四歩(53) ( 4:00/02:04:00) *将棋は角や桂という、いわゆる「頭の丸い駒」の上部を狙うのが筋だ。自玉頭でもあるが、現状は角頭攻めの方が厳しい。後手は歩損ながら金銀は整然としている。先手は左金が上ずっており、金が動くと8六歩を取られてしまうので整形しにくい。先手は左辺の金銀が逆形で、7七銀・7八金なら好形だった。バランスの取り方が難しい。 *先手からは角を楽にした後、▲2五歩△同歩▲1三歩成△同歩▲2四歩△同銀▲1二歩といった筋が楽しみ。 *ここで15時。午後のおやつが出された。渡辺はガトーショコラとアイスコーヒー。羽生はガトーショコラとレモンティー。二人しておやつに手を伸ばす。同じものを同じようなスピードで口に運んでいく。 *将棋まつりの大盤解説は松本六段と北尾女流二段が担当している。▲9六歩に△5三銀▲9五歩△4四銀という順を予想している。また、▲6六歩や▲2五歩△5五歩▲同銀△2五歩も示されている。「これ、相当に難しいですよ」と松本六段。 *渡辺は40分以上考え、残り1時間を切った。脇息にもたれ、肩をいからせて考えている。 *【おやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/kiou/2015/02/post-6c0a.html *※局後の感想※ *「△3三桂は▲1三歩成なので」と羽生。 61 2九飛(19) (52:00/03:08:00) *15時48分、渡辺は52分の長考で飛車を戻して、サッと席を外す。渋い、相当に渋い。「これは当たらないよ」と関係者の声。羽生はあぐらから正座に直る。残り時間は▲渡辺52分、△羽生1時間56分。比較的早指しの渡辺が相手よりも1時間多く使っているのは珍しい。 *後手は△5四歩と突いたため、△1八角▲2六飛△2五歩▲同飛に△2四飛や△2四銀とすることはできない。▲2五同飛に△3六角成は▲2三角成△2五馬▲3二馬が馬桂両取りなので、後手は指しきれない変化だろう。 *先手は2手損だが、後手の歩は元に戻れない。飛車の横利きが止まったため2筋が薄くなった。渡辺はそれを突こうとしているのだろう。 *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>凄い手ですね。2手パスですか。いま△1八角なら58手目の局面に比べて△5四歩が入っているので飛車の横利きが2筋に利かなくなっています。状況が違うでしょうということですね。 *※局後の感想※ *「ここで▲6六歩はコビンが空いてしまう。飛車を戻すのではどうかと思った」と渡辺。 62 3三桂(21) ( 8:00/02:12:00) *渡辺の飛車が往復しているうちに、羽生の駒は前進していく。羽生は上体を起こし、厳しい表情で外を見やっている。渡辺は前傾姿勢で盤面を見つめている。時刻は16時になった。 63 6八玉(58) ( 5:00/03:13:00) *これまた渋い。さらに▲4八金と寄せたり、▲6六歩と突いたりするつもりだろうか。後手の5筋攻めから避けた面もある。 *将棋まつり会場では松本六段と大杉初段が大盤解説をしている。「▲6八玉は指しにくいと言っていましたが、金にヒモをつけたのが大きいかもしれません。これは長考しそうです。1手ずつ難しい」と松本六段。 *■ニコニコ生放送■ *「屋敷伸之九段>△1八角から攻められた時に戦場から遠ざかっている意味と、7九の銀にヒモを付けた意味があります。5八にいるより安定していますね。後手が何かすると、例えば△1八角に▲2八飛や▲2六飛など、先手にも指し手を与えることになります。できればじっとしていたいんですけど、さすがにそういう手も難しい状況です。なんとなく後手陣は圧迫されている感じを受けます。 64 9三桂(81) ( 9:00/02:21:00) *先手の玉が6筋に動いたのを見て、そちらに狙いをつける。「△7四歩から△7三桂だと、飛車の横利きを止めて危険ですし、1手多くかかります」と松本六段。 *控室の大内九段は「後手が少しいいのではないかな。先手はバランスの取り方が難しいよ」という。 65 2五歩打 ( 7:00/03:20:00) *16時20分、残り40分を告げられた渡辺は▲2五歩と合わせた。△同歩▲1三歩成△同歩▲1二歩は△5五歩でどうかが検討されている。▲同銀なら△1二香と手を戻せる。 *※局後の感想※ *「▲6八玉で△1八角に備えたが、△4四角の筋があるので収拾つかなくなったので仕方ない」と渡辺。部分的には▲8七金と桂のあたりを避けるのが手筋。しかし、△4四角の両香取りがあるのでうまくいかない。 66 同 歩(24) ( 4:00/02:25:00) *先手は▲2四歩△同銀▲1三歩成△同歩▲1二歩の筋か▲2五同桂の筋かに分かれる。先手は無難に桂交換して▲3五桂と打てれば十分。 67 同 桂(37) ( 1:00/03:21:00) 68 同 桂(33) ( 1:00/02:26:00) 69 同 飛(29) ( 1:00/03:22:00) *渡辺の選んだ変化は桂交換だった。ここで△2四歩▲2九飛に後手がどう応じるか。 70 2四歩打 ( 0:00/02:26:00) *「ここでは▲1五飛と寄る手もあります。渡辺さんはそのつもりかもしれませんよ」と大内九段。飛車の使い方は▲2九飛だけではないようだ。 71 2九飛(25) ( 3:00/03:25:00) *大内九段は△4四角を示す。▲3五桂には△3四歩▲2三桂成△同金で△1七角成を見る。 *現地の大盤解説は休憩に入った。 *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>勢い重視なら△5五歩▲同銀△8五桂のような手をやるかもしれません。勝負手気味ですね。▲同歩なら△同飛で十字飛車が決まります。なので△8五桂の時に先手がどうするかです。後手も玉頭の歩を切る攻めなので反動がこわいところです。 72 5五歩(54) (11:00/02:37:00) 73 同 銀(46) ( 0:00/03:25:00) 74 1八角打 ( 0:00/02:37:00) *「渡辺さんが苦労している感じがしますね」と控室の声。大内九段と松本六段が検討しているが、後手ペースに見解が傾きつつある。 *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>一例は▲2六飛△2五歩▲同飛△3六角成に、▲2三角成と角から行くのは△2五馬▲3二馬に△3五飛が三方取りなので失敗です。 75 1九飛(29) ( 5:00/03:30:00) *渡辺、残り30分。羽生は残り1時間23分。時刻は16時50分。 *渡辺はまた端に飛車を寄せた。△3六角成に▲1三歩成と成れる。 76 3六角成(18) ( 0:00/02:37:00) 77 1三歩成(14) ( 0:00/03:30:00) 78 同 歩(12) ( 0:00/02:37:00) 79 同 香成(17) ( 0:00/03:30:00) *渡辺は羽生の動きに乗じて1筋を突破した。△1八歩なら▲2三成香△1九歩成▲3二成香と2枚換えで攻められる。後手は△3四銀と逃げると▲7六桂や▲6四桂などで銀を取られてしまう。 80 3七歩打 ( 3:00/02:40:00) *▲4八金にそこで△1八歩を松本六段が示す。「なるほど、それは理屈だ」と大内九段。(1)▲2三成香△1九歩成▲3二成香に△1八飛が厳しくなる。(2)先手は▲3九飛△1三香▲3七金の方がよいか。 *なお、先手はいま▲2三成香を急いでも△1九香成▲3二成香△3八歩成と金を取られて失敗する。 81 3九金(38) ( 6:00/03:36:00) *「普通は▲4八金ですけど」と大盤解説の片上六段。現在、大盤解説は如水和也実行委員長と片上六段が担当している。 *▲3九金は△1八歩▲2三成香△1九歩成▲3二成香△1八飛に▲2八金打と受けられるようにしている。▲4八金と玉に近づける方がかえって攻めが厳しくなる珍しいケースのようだ。 *控室では▲3九金に△5四歩が示されている。▲6六銀なら△6四桂▲6五角△1三香▲同飛成△1二香と竜を捕獲する筋を狙える。▲4六銀も△6四桂▲4五角△4七馬と攻められる。 *渡辺は泰然と指し手を待っている。あぐらだった羽生はよいっしょという具合に正座に直った。 *17時15分ごろ、大盤解説は松尾七段と片上六段のコンビに。△1八歩や△2七桂を示している。△2七桂は両取り。これでよければ話は早い。17時20分、羽生は残り1時間を告げられた。「はいぃー」と羽生が答える。 82 3四銀(23) (24:00/03:04:00) *「あらららら。違ったよ!」と大内九段が驚く。ニコニコ生放送で屋敷九段が△5四歩を検討しているのを見て、「そうだよな。それが普通だよな」と大内九段。△5四歩が銀取りで玉頭を守っている。ちなみに、屋敷九段が△5四歩を検討していたのは、棋譜コメントで示されていたからだった。 *先手からは▲4四桂や▲6四桂、▲7六桂の筋が見え見えだ。▲4四桂には△同歩▲3四角△4三金▲2三角成△1八歩▲2九飛△2七桂が示される。後手は手順に左金を近づけて、飛車を抑え込める。 *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>▲4四桂△同歩▲3四角には△4三金が利けば良いのですが。▲同角成△同玉と進んだ局面は後手玉が広く、3六の馬が手厚い気がします。 *※局後の感想※ *△5四歩が有力だった。▲6六銀に△4四桂▲6五角(1)△1三香▲同飛成△1二香▲2三竜△同金▲7五銀△8一飛▲7二銀。この変化は先手がやれるようだ。 *▲6五角に(2)△1八歩▲2三成香△同金▲2九飛△1九歩成▲2八飛△2九と▲同金△2七香▲5八飛△2九香成▲7五銀△8一飛▲7二銀△8二飛▲8三銀成△6四金なら形勢は難しく、「こうやった方がよかった」と羽生。 *☆終局後の大盤解説会場でのミニ感想戦の内容 *大内九段が「われわれの力量不足なのかもしれませんが、少し羽生先生がいいかと思っていました。△3四銀で△5四歩と打つと面白いのではないかと」と言って、△5四歩▲5六角△6四桂を示すと、羽生は「あっ、そっちですか」と驚く。以下▲4五角は△4七馬▲3五銀△3八歩成▲3三歩で難しい。 *羽生「本譜は▲7六桂ではっきり悪いような気がした。△6四桂を打っても戦果がないような気がした。それほど自信があるわけではないが、飛車を持てる形の方がよかった」 *松尾「大盤では、ここで△2七桂でどうかを調べていたのですが」 *以下▲3三歩△同金▲2三成香△1九香成▲3三成香△3九桂成▲7八玉で後手大変。 *渡辺「このタイミングでの△2七桂は読んでいなかったが、3三で金をとれるのが大きいですか」 *羽生は「△5四歩は本譜よりもましという感じですが、打った方がよかったです」と振り返った。 83 7六桂打 ( 3:00/03:39:00) *飛車を追う。△9四飛に▲8三角成で飛車を捕獲できる。控室では▲3九金に△2七桂でどうだったかを振り返って検討している。 *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>いよいよ終盤のたたき合いです。相当な混戦になっている気がします。△7四飛と逃げるのは▲同角△同歩に▲7三歩と打たれる手が気になります。7六の桂はそんなに遊ぶ感じがしないので感触が良い手です。 *※局後の感想※ *▲7六桂が好手。▲4四桂は△同歩▲3四角△4三金で大したことがない。 84 7四飛(84) ( 6:00/03:10:00) *そこで△7四飛。 85 7五歩打 ( 2:00/03:41:00) 86 同 飛(74) ( 0:00/03:10:00) 87 6六金(77) ( 0:00/03:41:00) *「急に先手の調子がよくなったように見えますが。後手の進行は注目ですよ」と片上六段。 *※局後の感想※ *後手の手順は先手に▲6六金と上がらせることで、後で先手の飛車を6六へ逃がさない意味がある。 88 7四飛(75) ( 0:00/03:10:00) 89 7五歩打 ( 0:00/03:41:00) 90 9四飛(74) ( 0:00/03:10:00) 91 8三角成(56) ( 0:00/03:41:00) *ドンドン指し手が進む。その間、後手は飛車を追われて、手番が回ってこなかった。82手目△3四銀と現局面を見比べると、先手の駒だけ動いているのがわかる。「控室の検討ではちょっと後手変調に見えますね」と大内九段。△1八歩▲2九飛△1三香▲9四馬△2五香が調べられている。 *残り19分の渡辺が急いで席を外す。 92 2七桂打 ( 6:00/03:16:00) *ここでついに△2七桂。ただ、ここで打つなら、82手目の△3四銀ですぐ桂を打った方がよかったのではという意見がある。△2七桂に▲2二成香△1九香成▲3二成香△3九桂成▲9四馬が示されている。先手の金銀は上ずったが、飛車の王手に▲7七玉とかわせる意味もあるので、損とはいうわけではない。 *※局後の感想※ *△1八歩は▲2九飛△1三香▲9四馬△2五香に▲2六歩△同香▲5六飛で先手よし。後手は飛車をただで取ることができない。 *また、△8五桂と跳ねれば飛車をタダでは取られないが、その後の手段が難しい。 93 3三歩打 ( 4:00/03:45:00) *「いま打ったんですか。難しい手ですね」と松尾七段。 *▲3三歩に(1)△同金は▲2三成香△1九香成▲3三成香と成香が検討されていた変化よりも好位置に来る。これは先手の得だ。(2)△4二金寄は▲9四馬△1九桂成▲3一飛で▲3二歩成が楽しみになる。 *「渡辺さんが自信を持っているんじゃないですか。仁王立ちみたいになっていますから」と大内九段。 94 3一金(32) ( 3:00/03:19:00) *80手目△3七歩に▲3九金と引いたのと同様に、羽生も▲3三歩に△3一金と引いた。一段金は飛車打ちに強い。しかし、▲2二成香がある。△1九香成▲3一成香△3九桂成▲9四馬となると、先手の攻めが厚い。 95 1六飛(19) ( 2:00/03:47:00) *「なるほど、飛車を逃げちゃおうということか」と大内九段。△2五馬に▲5六飛と逃げた手が5二玉を狙っている。 96 2五馬(36) ( 0:00/03:19:00) *※局後の感想※ *先手の金を6六へ上がらせているので、飛車が6六へ逃げられない。 97 2二成香(13) ( 1:00/03:48:00) *渡辺はこのタイミングで踏み込んだ。△1六馬▲3一成香△3九桂成▲9四馬△4九馬に▲2二飛の王手が厳しい。後手は馬を入る余裕がない。 *△1六香▲3一成香に△8五桂も▲同歩△3九桂成に▲9四馬△同香▲6四桂打△同歩▲同桂△6一玉▲7二金で後手玉が詰んでしまう。この変化は後手の馬を3六から2五に移動させたのが利いている。 *18時5分、渡辺は残り12分だが、残り時間ほど追い込まれている雰囲気はない。羽生は前傾姿勢で考え込んでいる。立会人の大内九段は対局室に入っている。大盤解説会の松尾七段は「先手が勝ちそうです」と話している。 98 1六馬(25) ( 7:00/03:26:00) 99 3一成香(22) ( 0:00/03:48:00) *渡辺ノータイム。「▲7六桂と打ってから急に先手がよくなったような気がします」と松本六段が言う。 100 3九桂成(27) ( 0:00/03:26:00) *この手で100手に達した。△3九桂成までの消費時間は、▲渡辺3時間48分、△羽生3時間26分。 101 9四馬(83) ( 0:00/03:48:00) 102 8七金打 ( 0:00/03:26:00) *△4八飛を狙っているが手番は先手にある。「これは▲2二飛が痛打です」と松本六段。 103 2二飛打 ( 0:00/03:48:00) *ここで羽生が投了した。終局時刻は18時12分。以下は(1)△5三玉は▲5四金まで。(2)△4二金は▲同飛成△同玉▲3二歩成△5三玉▲5四金△5二玉▲4二金まで。(3)△4二飛なら詰みはないが、▲3二歩成で受けがなくなる。 *消費時間は▲渡辺3時間48分、△羽生3時間26分。第2局は2月21日に金沢市「北國新聞会館」で行われる。 *■ニコニコ生放送■ *屋敷伸之九段>かなり見どころのある難しい将棋でした。互いに手の出し方が難しく、中盤あたりは羽生名人ペースだった気がします。しかし▲7六桂が渡辺棋王の好手で、あそこから一気にペースを握ったという感じです。とはいえ、その前の△3四銀も自然な手だったのですけれども。感想戦では△3四銀のところで他に何かなかったかと調べられるかもしれません。本局は渡辺棋王の鋭さがよく出た一局でした。 *※局後のまとめ※ *感想戦は19時ごろに終了した。82手目△3四銀では△5四歩が勝った。以下は双方の玉が上部へ逃げる含みのある長い将棋になるようだ。本譜の手順について「▲3三歩(93手目)が手順に入ってはダメですね。息長く指すのでした」と羽生は振り返った。 104 投了 ( 0:00/03:26:00) まで103手で先手の勝ち