# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.64 棋譜ファイル --- 対局ID:12189 記録ID:60ab57dec957f100036ebb87 開始日時:2021/06/02 09:00 終了日時:2021/06/02 19:00 表題:女流王位戦 棋戦:第32期女流王位戦五番勝負 第3局 戦型:相振り飛車 持ち時間:各4時間 秒読み:60秒 消費時間:150▲239△224 場所:福岡・旧伊藤伝右衛門邸 備考:昼休前50手目32分\n 図:投了 振り駒:なし 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:00〜13:00 昼休前消費時間:50手32分 手合割:平手   先手:山根ことみ女流二段 後手:里見香奈女流王位 先手省略名:山根 後手省略名:里見香 手数----指手---------消費時間-- *里見香奈女流王位(四冠)に山根ことみ女流二段が挑戦する第32期女流王位戦五番勝負(主催:新聞三社連合)は、里見の2連勝で第3局(主催:西日本新聞社)を迎えた。里見が勝って防衛を決め、歴代単独1位となる44期目のタイトルを獲得するか、山根が1勝を返して巻き返しを図るか。第3局は6月2日(水)、福岡県飯塚市「旧伊藤伝右衛門邸」で、9時から始まる。持ち時間は各4時間で、先手は山根。昼食休憩は12時から13時。 *本局の立会人は豊川孝弘七段、記録係は藤井奈々女流初段が務める。 *対局当日、飯塚市は薄い雲がかかっており、最高気温は30度の真夏日と予想されている。8時50分、両者が盤前に着座し、里見が駒箱に手をかけた。どちらもテンポよく駒を並べていく。54分にすべての用意が整った。 * *【主催:西日本新聞社】 *https://www.nishinippon.co.jp/ *【女流王位戦、きょう飯塚で第3局 里見「集中」、山根「自分らしく」|西日本新聞】 *https://www.nishinippon.co.jp/item/n/748463/ *【第3局は飯塚対局】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-2c9c.html * *(棋譜・コメント入力=武蔵) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。#は局後の感想が追記された指し手。【】内はブログ記事タイトル、もしくはリンク先] 1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *9時、対局開始。両者が一礼を交わす。山根は気息を整え、▲7六歩と角道を開けた。 * *【対局開始】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-75cb.html 2 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *里見はやや間を置いて、△3四歩と角道を開けた。前日、関係者に戦型予想を尋ねたところ、誰もが「相振り飛車」と口をそろえる。本局も第1局、第2局に続く相振り飛車となるのだろうか。 3 6六歩(67) ( 0:00/00:00:00) *角道を止めてにらみ合いを避けた。山根は角道を止める振り飛車を用いることが多い。 4 3二飛(82) ( 0:00/00:00:00) *里見は関係者の退室を見届けてから着手。3筋に飛車を振り、先に態度を明らかにした。 5 7八銀(79) ( 0:00/00:00:00) *◆山根 ことみ(やまね ことみ)女流二段◆ *1998年3月9日生まれ、愛媛県松山市出身。野田敬三六段門下。2013年、女流3級。2014年、女流2級。2019年、女流二段。女流棋士番号は49。 *タイトル戦登場は1回。棋戦優勝は1回。 6 6二玉(51) ( 0:00/00:00:00) *◆里見 香奈(さとみ かな)女流王位(清麗・女流名人・倉敷藤花)◆ *1992年3月2日生まれ、島根県出雲市出身。森けい二九段門下。2004年、女流2級。2020年、女流六段。女流棋士番号は33。 *タイトル戦登場は53回。獲得は清麗2期、女王1期、女流王座4期、女流名人12期(クイーン名人)、女流王位6期(クイーン王位)、女流王将7期(クイーン王将)、倉敷藤花11期(クイーン倉敷藤花)の計43期。 7 6七銀(78) ( 0:00/00:00:00) *女流王位戦は新聞三社連合と日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)が主催する棋戦。第3局は株式会社QTnetと大王製紙株式会社が協賛し、飯塚市が後援している。予選をトーナメントで行い、トーナメントの勝ち上がり者とシード棋士6名が紅白2ブロックに分かれてリーグ戦を行う。紅白各リーグの優勝者同士の挑戦者決定戦によって挑戦者が決まる。 *現地には日本将棋連盟だけでなく、LPSAからも理事が訪れるのが恒例で、本局では島井咲緒里女流二段が来訪している。 * *【主催:日本女子プロ将棋協会】 *https://joshi-shogi.com/ *【協賛:株式会社QTnet】 *https://www.qtnet.co.jp/ *【協賛:大王製紙株式会社】 *https://www.daio-paper.co.jp/ *【後援:飯塚市】 *https://www.city.iizuka.lg.jp/ *【女流王位戦概要】 *https://www.shogi.or.jp/match/jo_oui/ 8 3五歩(34) ( 0:00/00:00:00) *新聞三社連合は、中日新聞(東京新聞)、北海道新聞、西日本新聞のブロック紙3社が連係を強化するため、1950年に設立された。後に神戸新聞と徳島新聞が加わり、現在は5社が女流王位戦と王位戦、また囲碁の天元戦を主催している。番勝負の各対局ごとに、加盟社が交代で運営を担当しており、本局は西日本新聞社が担当する。 * *【新聞三社連合の概要】 *http://live.shogi.or.jp/joryu-oui/sansha.html 9 7七角(88) ( 0:00/00:00:00) *本局の観戦記は池田将之さんが執筆する。本日の西日本新聞朝刊では、同じく池田さんによるお〜いお茶杯第62期王位戦紅白リーグ▲佐藤天彦九段−△豊島将之竜王(叡王)戦の掲載が始まった。 10 4二銀(31) ( 0:00/00:00:00) *今期五番勝負第1局と同じ進行をたどっている。 * *【対局開始前後の様子(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-c3a1.html *【対局開始前後の様子(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-bf4e.html 11 8八飛(28) ( 0:00/00:00:00) *時間を使うことなく、向かい飛車に構えた。三間飛車対向かい飛車の進行に進む。 12 3六歩(35) ( 0:00/00:00:00) *サクサク手が進む。里見は飛車先の歩の交換に動いた。 13 同 歩(37) ( 0:00/00:00:00) *対局地の飯塚市は福岡県の中部に位置する。福岡市、北九州市、久留米市に次ぐ人口を擁する主要都市で、明治から昭和にかけて石炭の発掘により、発展した。観光名所には旧伊藤伝右衛門邸や嘉穂劇場、そして今年の4月末に第79期名人戦第2局が行われた、麻生大浦荘がある。人口は約12万7千人。名物として、福岡を代表する銘菓「ひよこ」や「千鳥饅頭」は飯塚市が発祥の地として知られる。市の花は「コスモス」、市の木は「メタセコイヤ」。 * *【飯塚市ホームページ】 *https://www.city.iizuka.lg.jp/ *【福岡県飯塚市】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-e3da.html 14 同 飛(32) ( 0:00/00:00:00) *本局の対局場「旧伊藤伝右衛門邸」は、筑豊の炭鉱王といわれた伊藤伝右衛門と、歌人柳原白蓮が過ごした邸宅。白蓮は2014年に放送されたNHKの連続テレビ小説「花子とアン」の登場人物である、葉山蓮子のモデルになった。 *昨年には国の重要文化財(建造物)に指定された。文化財としての指定名称は「旧伊藤家住宅」になる。 * *【旧伊藤伝右衛門邸】 *http://www.kankou-iizuka.jp/denemon/ *【対局場周辺】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-1a4c.html *【旧伊藤伝右衛門邸(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-7970.html *【旧伊藤伝右衛門邸(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-19a7.html *【旧伊藤伝右衛門邸(3)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-88e7.html 15 8六歩(87) ( 0:00/00:00:00) *昨日、里見を含めた関西組は新幹線で、山根を含めた東京組は飛行機で福岡に入った。16時過ぎに対局場に到着してから、インタビューや記念撮影を終え、17時頃から対局室の検分を行った。立会人の豊川七段の主導で盤駒や照明、空調の確認がなされ、大きな問題なく5分ほどで終了した。 * *【対局室検分】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-2bfc.html *【記念撮影】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-0c05.html 16 7二銀(71) ( 0:00/00:00:00) *後手は美濃囲いの骨格を築いた。1手で囲いを構築できる手軽さが魅力で、近年では対振り飛車だけでなく、相居飛車戦に用いられることも増えている。 17 8五歩(86) ( 0:00/00:00:00) *8筋の歩を伸ばした。次に▲8四歩△同歩▲8二歩で桂を取れる。 18 7一玉(62) ( 0:00/00:00:00) *玉を囲いに収め、▲8四歩△同歩▲8二歩の筋を消す。 19 2八銀(39) ( 0:00/00:00:00) *山根の今年度女流棋戦成績は3勝4敗(0.420)。 *通算成績は112勝76敗(0.596)。 20 3四飛(36) ( 0:00/00:00:00) *里見の今年度女流棋戦成績は4勝0敗(1.000)。 *通算成績は299勝100敗(0.749)。 21 3七歩打 ( 0:00/00:00:00) *山根は第28期〜第30期と今期の計4回、挑戦者決定リーグを戦っている。今期は4勝1敗で紅組優勝を果たし、挑戦者決定戦では白組優勝の伊藤沙恵女流三段を破って、タイトル初挑戦を決めた。 22 3三銀(42) ( 0:00/00:00:00) *里見は第23期に挑戦権を獲得、甲斐智美女流王位(当時)を3連勝で破って女流王位を奪取した。現在2連覇中で、女流王位獲得は通算6期。 *里見の通算獲得女流タイトル数43期は、清水市代女流七段に並ぶ歴代1位のタイ記録である。本局に勝って防衛を果たせば、歴代単独1位の44期目のタイトルを手にする。 23 4八玉(59) ( 0:00/00:00:00) *山根は四間飛車を得意とする振り飛車党。しかし、最近では雁木も取り入れており、芸の幅を広げている。2020年度は女流棋士歴代3位タイの17連勝を記録した。 24 4四銀(33) ( 0:00/00:00:00) *里見も同じく振り飛車党。一時期は居飛車を指していたが、最近では再び振り飛車の採用が目立つ。最終盤に見せる鋭い斬り込みを持ち味としており、「出雲のイナズマ」の異名を持つ。 25 8四歩(85) ( 0:00/00:00:00) *旧伊藤伝右衛門邸での女流王位戦は、第18期〜第30期まで13期連続で開催された。初開催の第18期のみ第1局で、以降はすべて第3局を行っている。昨年は新型コロナウイルスの影響で開催は見送られたものの、今期は再び九州の地で女流王位戦が行われる運びとなった。 *これまで旧伊藤伝右衛門で行われた対局結果は以下のとおり。 * *2019年 里見香奈女流四冠○−●渡部愛女流王位 *2018年 里見香奈女流王位●−○渡部愛女流二段 *2017年 里見香奈女流王位○−●伊藤沙恵女流二段 *2016年 岩根忍女流三段●−○里見香奈女流王位 *2015年 甲斐智美女流王位●−○里見香奈女流名人 *2014年 甲斐智美女流王位○−●清水市代女流六段 *2013年 里見香奈女流王位○−●甲斐智美女流四段 *2012年 甲斐智美女流王位●−○里見香奈女流三冠 *2011年 清水市代女流六段○−●甲斐智美女流王位 *2010年 甲斐智美女王●−○清水市代女流王位 *2009年 清水市代女流二冠○−●石橋幸緒女流王位 *2008年 石橋幸緒女流王位●−○清水市代女流二冠 *2007年 清水市代女流王位●−○石橋幸緒女流四段 26 同 歩(83) ( 0:00/00:00:00) *対戦成績は里見の4戦4勝で、戦型はすべて相振り飛車だった。しかし、ひとくくりに相振り飛車といっても、相中飛車が1局、里見の三間飛車対山根の向かい飛車が2局、里見の中飛車対山根の向かい飛車が1局とバリエーションに富んでいる。 27 同 飛(88) ( 0:00/00:00:00) *五番勝負第1局は兵庫県姫路市「夢乃井」で行われた。里見の三間飛車に対して山根は向かい飛車に構え、相振り飛車に進む。後手の里見から仕掛けて競り合いが始まり、主導権の握り合いの末、里見がリードを奪ってそのまま押し切った。 *本局はここまで第1局とまったく同じ手順で進んでいる。 * *【第32期女流王位戦五番勝負第1局 ▲山根−△里見香戦】 *http://live.shogi.or.jp/joryu-oui/kifu/32/joryu-oui202104270101.html 28 8三歩打 ( 0:00/00:00:00) *第2局は北海道札幌市「京王プラザホテル札幌」で指された。里見の中飛車に山根は向かい飛車で対抗した。機敏な仕掛けから里見が主導権を握り、山根の攻めに的確に対応して勝ちきった。 * *【第32期女流王位戦五番勝負第2局 ▲里見香−△山根戦】 *http://live.shogi.or.jp/joryu-oui/kifu/32/joryu-oui202105180101.html 29 8五飛(84) ( 0:00/00:00:00) *飛車をひとつ引いた。最近の相振り飛車で人気の高い、△4五銀〜△4四角〜△3三桂の形を阻止する。 30 1四歩(13) ( 0:00/00:00:00) *端歩を突いて様子を見た。△1三角ののぞきを作って、攻撃の陣を敷く。 31 3八玉(48) ( 0:00/00:00:00) *先手は玉形を整える時間。第1局と同じなら▲4八金〜▲5八金上の金無双になりそうだ。 32 5二金(41) ( 1:00/00:01:00) *本局で初めて持ち時間を消費する。1分を使って金を上がり、本美濃囲いとなった。第1局では、代えて△1五歩と端歩を突き越していたところで変化して、前例を離れている。 33 4八金(49) ( 0:00/00:00:00) *控室では「とにかく進行が早い」との声が聞かれる。対局開始から15分ほどしか経過していないにもかかわらず、手数は30手を超えた。 34 8二玉(71) ( 0:00/00:01:00) *本局の駒は地元の愛棋家である江藤寿展さんが所蔵する、江陽師作の錦旗書(御蔵島黄楊・根杢)を使用している。 * *【本局の使用駒】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-698e.html 35 9六歩(97) ( 0:00/00:00:00) *先手は時間差で9筋の端歩を突く。 36 5四歩(53) ( 0:00/00:01:00) *代えて△9四歩と相手をすると、後に▲9五歩から戦いの場を作る恐れがあった。端歩の突き越しは許容して、そのほかの部分でよさを求めに動くのだろう。 37 9五歩(96) ( 0:00/00:00:00) *後手が受けないのなら、と端歩を突き越した。後手玉の逃げ道が狭まり、終盤で効果が出やすい。 38 5五歩(54) ( 0:00/00:01:00) *先手は9筋の位を、後手は中央の位を取って、ともに主張点を作った。 39 5八金(69) ( 1:00/00:01:00) *山根も持ち時間を消費した。金を上がって金無双対美濃囲いの形になった。控室では豊川七段が継ぎ盤に向かい、ゆっくりと本譜を追いかけている。 40 4五銀(44) ( 2:00/00:03:00) *先手の飛車の横利きを止め、△4五銀と上がれるようになった。銀を前進して、飛車の動きを楽にする。 41 6五歩(66) ( 3:00/00:04:00) *3分の考慮で6筋の歩を伸ばして角の利きを通した。 *9時30分、里見が時間を使って考えている。豊川七段は「山根さんは第1局で敗れた作戦を再び用いており、自信がある形なのだと思います。里見さんも不気味に思っているのではないでしょうか。現局面は、いきなり(1)△8四飛とぶつけて戦いが起きる可能性があります。(2)△4四角だけは▲6六銀があるので指しづらいでしょう。以下、△5四銀は▲8四歩△同歩▲同飛の十字飛車があります」と解説する。 * *【早い出だしの相振り飛車】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-926d.html 42 8四飛(34) (16:00/00:19:00) *16分の熟慮だった。ビュンと飛車をぶつけて交換を迫る。いきなり激しい中盤戦に進みそうだ。後手は飛車を持てば、△6九飛や△7九飛、△8七飛などの楽しみが生まれる。反面、玉頭に空間ができるのが懸念材料で、後に▲8三歩のたたきから玉形に負担が伴う。 43 同 飛(85) ( 1:00/00:05:00) *すんなりと飛車交換に応じた。△8四同歩の形は、歩損なく突き捨てが入ったような格好だ。先手も飛車を手にすれば、3二や4一に打つ楽しみがある。ただ、すぐの▲4一飛は△3一歩で身動きが取れない。打つタイミングには気を使わなければいけない。 44 同 歩(83) ( 0:00/00:19:00) *互いに飛車を手持ちにした。後手は玉頭のほか、角が浮き駒な点にも留意が必要になる。 *10時ちょうど、山根の長考が続く。考慮時間は20分を超えた。飛車のぶつけには、やはり意表を突かれたか。突然盤から飛車がいなくなった状況で、どこから手を作ればいいか、今後の見通しに悩んでいてもおかしくない。 *控室の島井女流二段が継ぎ盤の前に座って検討を始めた。現局面で▲3五飛を調べている。銀取りと飛車成りを同時に受ける△3三桂には、▲5五角と飛び出して▲3三角成と▲4五飛が残る。以下、△7九飛▲3三角成△同角▲同飛成△8九飛成▲8三歩△同銀▲7五桂が変化の一例。▲8三歩〜▲7五桂が入ると、後手の動きをとがめたといえるだろう。 *10時30分、午前のおやつの時間になった。午前午後ともに、両者ともドリンクを含めて専用控室に用意される。注文は、里見がレアチーズケーキとホットティー、山根がアメリカンカントリーチーズケーキとホットロイヤルミルクティー。里見のおやつのみ、12時の昼食とともに運ばれる。 *10時40分、山根の考慮時間が1時間を超えた。 * *【悩みの時間】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-7411.html 45 7五歩(76) (82:00/01:27:00) *11時頃、▲7五歩までの消費時間は、▲山根1時間27分、△里見19分。 *1時間22分の長考だった。時間の使い方が局面の難解さを物語る。じんわりと7筋の位を取った。豊川七段は先手の狙い筋として、▲3二飛△3三角▲7四歩△同歩▲3三飛成△同桂に▲5五角の王手桂取りの順を示す。 *「後に▲7四歩〜▲5五角の筋を作った意味がありそうです。ただ、▲7五桂の筋が消えて、損得は極めて微妙です。このタイミングで▲7五歩を指せる人はあまりいないでしょう」(豊川七段) 46 4四角(22) ( 4:00/00:23:00) *じっと角を上がり、浮き駒をなくして間合いをはかった。何かのときに△5六歩からのさばきや、△1五歩〜△3三桂〜△2五桂の端攻めも視野に入る。 *控室では△4四角の評判がいい。豊川七段は「▲7五歩と△4四角の2手は後手が徳島県ですね」とギャグを交える。今日も豊川節が好調だ。 * *※局後の感想※ *代えて△7九飛▲8七飛△3三角▲6八金△5六歩▲3三角成△同桂▲7八銀の進行も調べられた。 *「この順もありましたか」(里見) 47 3一飛打 (14:00/01:41:00) *桂取りに飛車を打った。先手は飛車を手放すと、△7九飛のときに処置が難しい。決断の一手ともいえる。 * *【控室の一幕】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-9df0.html 48 1三桂(21) ( 0:00/00:23:00) *端に桂を逃げた。香にはひもがついており、後手は取られる駒がない。このまま△1五歩〜△2五桂から、端に駒を集めて攻勢をかけられればうまい。 49 6八金(58) ( 6:00/01:47:00) *飛車を手放して攻め続けるかと思いきや、▲6八金で飛車打ちに備えた。△7九飛に▲7八銀を用意している。 *11時50分、まもなく昼食休憩の時間。控室では豊川七段と島井女流二段が、現局面から早指しで指し継いでいる。島井女流二段が考えている最中、「10秒、20秒」と豊川七段が焦らすように秒を読んだ。ただ、和やかな雰囲気は最初だけ。局面が進むにつれて口数が減り、どちらも真剣な表情に変わった。 *12時、この局面で里見が32分使って、1時間の昼食休憩に入った。消費時間は▲山根1時間47分、△里見55分。昼食は里見がうな重上、山根が仕出し会席弁当。里見には午前のおやつのレアチーズケーキも運ばれる。対局再開は13時。 * *【昼食休憩】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-bc24.html *【昼食メニュー】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-7313.html 50 1五歩(14) (42:00/01:05:00) *13時に対局が再開しても、里見はすぐに指さない。対局再開から10分後、△1五歩と端歩を伸ばす。42分の長考だった。△2五桂と跳ねて、△1七桂成▲同銀△1六歩が攻め筋のひとつになる。 *13時25分頃、山根が持ち時間の半分となる2時間を消費した。 *「47手目で飛車を打ってから金を寄るのが面白い順でした。打たないでも寄れたので、その辺りは駆け引きでしょう。現局面で島井女流二段は▲2六歩で、桂跳ねを防ぐ手を示されました。もちろん理にかなった一手なのですが、△2四歩からの反動も大きそうです。どちらもかなり神経を使う局面になっています」(豊川七段) *「▲2六歩は先まで読まないと、怖くて指せないように思います。形勢は難しいです」(島井女流二段) *「難解ホークス……」(豊川七段) * *【対局再開の様子】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-6d34.html *【現地棋士の見解】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-4143.html * *※局後の感想※ *里見は△1五歩のほかに、△5九飛も考えていた。以下、▲7八銀△5六歩▲4四角△同歩▲6一飛成△同銀▲6九金打△2九飛成▲同玉△3六歩▲3一飛△6二金▲4六歩△3七歩成▲同銀△3六歩が読み筋の一例。△3六歩の局面まで進み、山根は「怖くて指せない」と話す。里見もこの順を深く読み進め「ここまでしなくても」と考えて本譜を選んだ。 51 6九金(68) (25:00/02:12:00) *飛車打ちの隙を消す金引き。飛車交換の華々しさから一転して、渋い指し手が続く。 52 8七飛打 (12:00/01:17:00) *桂取りに飛車を打った。▲7八銀に△8五飛成で竜を作り、7五と6五の歩を取って歩得を目指す動きだ。控室では「長期戦」との声が聞かれた。 53 7八銀(67) ( 2:00/02:14:00) *銀を引いて飛車に当てつつ、桂にひもをつけた。桂取りを受ける▲8八歩は、将来の▲8三歩が消えてしまってもったいない。 54 8五飛成(87) ( 0:00/01:17:00) *「長期戦辞さずの構えですね。△7五竜〜△6五竜のあと、△5六歩と突いて角と銀を働かせようという含みがありそうです」(豊川七段) 55 2六歩(27) ( 8:00/02:22:00) *桂跳ねを消す歩突き。次に▲2七銀で、金無双の弱みでもある玉の息苦しさを解消できる。 *14時、両対局者の控室におやつが運ばれた。注文は、里見がブルーベリーシフォンケーキとアイスティー、山根がガトーショコラとホットハーブティー。 * *【午後のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-ecc5.html 56 7五竜(85) ( 9:00/01:26:00) *14時10分頃、△7五竜までの消費時間は、▲山根2時間22分、△里見1時間26分。 *後手が1歩得を果たした。 * *※局後の感想※ *歩を取らずに△7六竜がまさった可能性がある。里見は▲6八金〜▲6七金の活用を気にしたが、山根は▲6八金に△2六竜と取らせるのは、あまり読みになかったようだ。 57 1六歩(17) ( 3:00/02:25:00) *詰められた端に対して、自らアクションを起こした。実に思いきりがいい。△1六同歩は▲1四歩で桂を取れる。2手前の▲2六歩は、この突き出しを念頭に置いてのものだったか。 *形勢について問われた豊川七段は「まだまだ佐賀県はついてないでしょう」と返す。今日の豊川ギャグは県名が多い。 *14時25分頃、日本将棋連盟専務理事の脇謙二九段が控室を訪れた。関係者にあいさつを済ませ、継ぎ盤の前に座る。 *「何を動かせばいいのか難しい局面です。この将棋は桂の価値が高そうなので、▲1六歩と桂を取りにいったのはいい判断かもしれません。桂を取れば竜をいじめながら後手玉に迫りやすくなります。なんといっても後手は玉頭が気になりますからね」(脇九段) * *【脇謙二九段が来訪】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-0b5f.html 58 同 歩(15) (21:00/01:47:00) *20分あまりを消費して、△1六同歩と応じた。(1)▲1四歩で桂の逃げ場はない。しかし、▲1三歩成と桂を取られたあとに△同香と応じて、香が働き始める。 *検討では(2)▲1二歩を調べた。△同香に▲2一飛成や▲3二飛成から香を取りにいく狙い。桂を取る順をあえて見送って香に働きかける、思いつきにくい一着だ。 59 1二歩打 ( 7:00/02:32:00) *検討で有力視されていた歩打ち。△1二同香に▲2一飛成から端の桂香を取りきった形は、先手陣に心配の種がない。 60 同 香(11) (15:00/02:02:00) *継ぎ盤では、△1二同香に代えて△7六竜を並べていた。香取りを無視してもたれかかる一手。以下、▲1一歩成△2六竜▲2七銀△7六竜▲1六香に△1八歩の垂れ歩が厄介で、先手の応手が難しい。 *この手で里見の残り時間も2時間を切った。 61 3二飛成(31) ( 1:00/02:33:00) 62 2五桂(13) ( 0:00/02:02:00) *香取りを見せられた後手は、急場をしのぐ必要がある。非常手段の歩頭桂でギアを上げた。▲1二竜で香を取られても、△1七歩成から桂や香との交換に持ち込める。 63 1二竜(32) ( 0:00/02:33:00) *香を取って先手が駒得を果たした。1筋に竜が利いて守りに働くのも心強い。 64 1七歩成(16) ( 0:00/02:02:00) 65 同 桂(29) ( 1:00/02:34:00) *桂でと金を払う。先手は桂を手にして、▲6七桂や▲8七桂から反撃に転じたい。 *「少し先手持ちの局面だと思います。ただ、まだまだ先は長いです」(脇九段) 66 同 桂成(25) ( 0:00/02:02:00) 67 同 香(19) ( 4:00/02:38:00) *竜を二段目に配置したまま後手玉をにらみ、攻撃力を落とさない。手厚く指すなら▲1七同竜も考えられた。 68 3六歩打 ( 0:00/02:02:00) *玉頭攻めは迫力がある。▲3六同歩に(1)△2四桂が控えの桂の手筋で、次の△3六桂が両取りになる。ほかに、(2)△2六角とのぞくのも有力だ。 69 4六香打 ( 6:00/02:44:00) *角と銀を串刺しにする香打ち。玉頭攻めにひるむことなく、攻め返した。 70 同 銀(45) ( 4:00/02:06:00) 71 同 歩(47) ( 0:00/02:44:00) 72 1一香打 ( 0:00/02:06:00) *目には目を、串刺しには串刺しを。△3七歩成の王手はあと回しにした。 73 2一竜(12) ( 4:00/02:48:00) *一段目に竜を潜った。6一の金に狙いを定め、将来の▲8三歩の王手の際、玉の対応に限定させている。 74 1七香成(11) ( 0:00/02:06:00) *パタパタと手が進む。里見は単に香を取った。ほかに△1六歩から香を取る順も、検討では示されていた。 *「単に取りましたか。▲1七同銀に△2五桂が狙いでしょうか」(豊川七段) 75 同 銀(28) ( 0:00/02:48:00) 76 3七歩成(36) ( 0:00/02:06:00) *時間差で歩成りを決めて王手。▲3七同玉でも▲同金でも△2五桂が打てる。 77 同 金(48) ( 0:00/02:48:00) 78 3六歩打 ( 0:00/02:06:00) *金を近づける歩のたたき。▲3六同金に(1)△3五歩で拠点を作れる。ほかに、(2)△3三香も魅力的だ。 *後手の攻めが先手の急所を的確に突いている。しかし、ひとたび攻めが止まると、▲6七桂や▲8三歩から先手の反撃が始まる。手番を渡さず、できる限りのポイントを稼いでおきたい。 79 8三歩打 ( 2:00/02:50:00) *ギリギリのタイミング。切り札の▲8三歩を実行した。 80 同 玉(82) ( 0:00/02:06:00) *この一手の対応。代えて△8三同銀は▲6一竜で、ボロっと金を取られる。 81 3六金(37) ( 1:00/02:51:00) *後手の玉形を乱して手を戻した。 *「先手の楽しみは、▲6六銀からの▲7五桂にありそうです」(豊川七段) 82 3三香打 ( 0:00/02:06:00) *後手玉は不安定な格好。▲6六銀から▲7五桂の足がかりを作られると守勢に陥りそうだ。香を打ち、スピード重視で先手玉に迫る。 * *【激しい攻防に】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-2ea0.html 83 3五歩打 ( 4:00/02:55:00) *歩を打って香の利きを止めた。△3五同香▲同金△同角の瞬間、先手に手番が回る。 84 同 香(33) ( 0:00/02:06:00) 85 同 金(36) ( 0:00/02:55:00) *検討陣からは「激戦です」との声が聞かれる。 86 同 角(44) ( 0:00/02:06:00) *金を手にして、先手玉を裸同然にしたのは大きな戦果だ。先手の角が質に入っている状況で、△4六角〜△3七金からの寄せも見える。 *15時40分頃、山根の残り時間が1時間を切った。 87 8五歩打 ( 7:00/03:02:00) *貴重な1歩を使って、後手の玉頭に手がかりを求めた。単に▲6六銀△7六竜▲7五桂には、強く△7四玉と上にかわされる可能性があった。▲8五歩に△同歩は上部が狭まる。 88 同 竜(75) ( 9:00/02:15:00) *玉頭に空間ができるのを嫌ったか。脇九段はじっと盤をにらみ、▲8八香△7六竜▲8七香打△4六竜▲8四香△7四玉▲6六桂△6五玉▲5四銀△6四玉▲6一竜と進めた。後手玉は▲6五金までの詰めろがかかっている。▲6一竜以下、△3七金▲2九玉△4九竜▲3九歩で、際どいながら先手玉は詰まない。 *「これは見た目以上に後手玉が狭いですね。目がクラクラします」(脇九段) 89 8八香打 ( 3:00/03:05:00) *香を打って、自玉の薄さに臆することなく勝負をかける。山根は攻め合い勝ちを目指しているようだ。持ち味の強気な指し回しが功を奏すか。 * *【見た目よりも狭い?】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-0298.html 90 7四竜(85) ( 9:00/02:24:00) *上下の選択で、里見は下を選ぶ。攻めよりも受けに重きを置く逃げ場所だ。 91 6六角(77) ( 5:00/03:10:00) *角を質から外し、8四の地点に利きを足した。次にいきなり▲8四香と走るほか、▲8七香打と力をためるのも迫力がある。 *検討陣は、後手の受けが難しいのではないか、と見解を示した。角の利きを遮るなら先手を取る△7五金が有力。しかし、金を使うと先手玉に迫る手段が乏しくなる。 *「これは結構うるさいですよ。徳島(第4局)が見えてきたんじゃないですか」(脇九段) * *※局後の感想※ *「普通だと思ったけど……」(山根) 92 3七歩打 (20:00/02:44:00) *たたきの王手。先手に選択肢を与えて悩ませる里見流の勝負術。局面をより複雑にできるか。 *「これは悩まみますね、脇先生」(豊川七段) *「どこに逃げても悪くなさそうなだけに、これは悩みますよ」(脇九段) * *※局後の感想※ *結果的に山根を惑わした王手になった。 *「どこに逃げるか迷いました」(山根) 93 4八玉(38) ( 9:00/03:19:00) *スッと玉を真横にかわした。左辺の金銀の配置が頼もしい。 94 7五金打 ( 1:00/02:45:00) *ゴツンと金を打ちつけ、▲8四香からの殺到を消した。 *「腰が入っていて、容易に負けませんよという手です。△4四竜や△6五竜の寄せ合いは危険だと見たのでしょう」(豊川七段) * *【相手を楽にさせない】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-d064.html 95 8七香打 (14:00/03:33:00) *角取りを無視。14分の考慮で香を重ね打ち、2段ロケットを完成させた。 * *※局後の感想※ *香打ちが好調に見えて疑問だったか。代えて▲7五同角△同竜▲6七桂に、(1)△7四竜▲7五銀と竜を追いかけながら後手玉に迫れば、先手が優位を維持できていた。以下、△8二玉▲7四銀△同歩▲8四香△8三歩▲同香成△同玉▲8四歩△同玉▲6一竜が変化の一例で、先手よし。 *(2)△6五竜も▲8四香△同玉▲7五銀△同竜▲同桂△3八歩成▲同玉△7四角▲3七玉△3六歩▲同玉△5三角▲8五歩で先手有望。 *山根は角を切る変化は「自玉が危なくなる」と考え、見送った。里見は▲7五同角からの変化は「こちらが厳しそう」と述べている。 96 8五桂打 ( 0:00/02:45:00) *里見は徹底防戦の構え。桂も投資して壁を築き、ロケットの発射を全力で食い止める。 * *※局後の感想※ *「下から(△9二桂)ばかりを読んでいて、上から打たれるのを軽視していました」(山根) *この桂打ちで後手玉に手をかけづらくなった。 97 5五角(66) ( 2:00/03:35:00) *7、8筋の手厚さは角と香2枚をもってしても破りづらい。歩を取って角を逃げた。 *次は▲8六歩から確実に玉頭に迫れる。 98 4四角(35) ( 4:00/02:49:00) *盤上の駒を目一杯働かせる感触のいいぶつけだ。▲4四同角は△同竜で、隠居していた竜が攻めにも働く。 *控室に不穏な空気が流れ始めた。先ほどまでの先手よしの雰囲気はすでになく、混戦模様だといわれている。 99 8五香(87) ( 2:00/03:37:00) *※局後の感想※ *代えて▲4四同角△同竜▲4七銀だったか。 *「対局中は、まだまだ厳しいのかと思っていました」(里見) *感想戦は、この局面まで行われた。 100 同 歩(84) ( 1:00/02:50:00) *この手で100手に達した。△8五同歩までの消費時間は、▲山根3時間37分、△里見2時間50分。 101 6七桂打 ( 0:00/03:37:00) *角にひもをつける桂打ち。△5五角には▲7五桂△同竜に、再び▲6七桂で大駒の両取りがかかる。 * *【流れが変わった】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-f0ab.html 102 5五角(44) ( 2:00/02:52:00) *すんなりと角を取った。▲5五同桂は後手に攻めの手番が回る。 103 7五桂(67) ( 2:00/03:39:00) *角を取っては響きが弱い。金を取って勝負に出る。 104 同 竜(74) ( 0:00/02:52:00) 105 6七桂打 ( 0:00/03:39:00) *山根は両取りに期待する。しかし、検討陣の評判は芳しくない。△7六竜で8五の歩を守りながら△4六竜を用意するのが厳しいようだ。 106 7六竜(75) ( 4:00/02:56:00) *本局でほとんど前に進まなかった竜が、ついに前進した。△4六竜と回ると、先手はたちまち受けに窮する。 107 8五香(88) ( 3:00/03:42:00) *非常手段の王手。△8五同竜は△4六竜が消える。山根の残り時間は20分を切った。四国対局の実現には、本局は絶対に負けられない。 *里見がじっくり腰を落として考えている。17時30分、残り時間は1時間を切った。 108 同 竜(76) (10:00/03:06:00) *慎重に10分考えて、△8五同竜と応じる。後手玉は圧迫感から開放され、一気に視界が開けた。 109 5五桂(67) ( 0:00/03:42:00) *駒割りを見ると▲銀△香の交換で、先手の駒得。にもかかわらず、形勢は後手よしと判断されている。 *「もう駒の損得は関係なく、玉の堅さが大事です」(脇九段) *「ただ、現局面は後手も飛び道具しかないので、先手玉を捕まえるのも簡単ではないように思います」(豊川七段) * *【後手よし】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-6ae9.html 110 8四歩打 ( 7:00/03:13:00) *攻め急がず、じっと玉頭を補強した。時間はかかっても「絶対に負けない」という気概を感じる。 *「渋いね」(豊川七段) 111 8二歩打 ( 6:00/03:48:00) 112 同 玉(83) ( 0:00/03:13:00) *丁寧に面倒を見た。自玉の不安を払拭してから、先手玉を寄せにいくのだろう。 113 4三桂成(55) ( 1:00/03:49:00) *桂の突撃。△4三同金に▲6二銀が美濃囲い崩しの手筋。以下、△同金▲7一角で後手玉に迫れる。 114 3八歩成(37) ( 4:00/03:17:00) *桂成りを手抜いて王手を決める。豊川七段は▲3八同玉に△5四角を示した。成桂を釘づけにしつつ、いつでも△6五角の王手が生じる。6五の歩がいなくなれば竜の横利きが通り、先手玉の上部脱出を防ぐ抑止力にもなりうる。 115 同 玉(48) ( 0:00/03:49:00) 116 5四角打 ( 5:00/03:22:00) *厳しいと見られていた角打ちが入った。攻防に働く角で、▲5二成桂△2一角▲6一成桂で囲いを崩されても、詰めろではない。先手玉を捕まえる絶好の機会が訪れる。 *時刻は18時を回った。山根の残り時間が10分を切った。 117 8三歩打 ( 5:00/03:54:00) *再び玉頭に手裏剣を飛ばした。懸命に活路を見出そうとしている。 118 同 玉(82) ( 0:00/03:22:00) 119 7七桂(89) ( 0:00/03:54:00) 120 7六竜(85) ( 2:00/03:24:00) *△4六竜を含みにした逃げ場所。先手の手に乗じて、少しずつ先手玉を包囲していく。 121 5五銀打 ( 0:00/03:54:00) *角に当てながら4六の歩を守って粘りの姿勢を示す。 * *【手堅い指し回し】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-b7cb.html 122 4三角(54) ( 2:00/03:26:00) *成桂を外して盤石の態勢を築く。後手陣に不安要素がなくなった。 *「里見さんが非常に用心深く、手堅いです」(豊川七段) 123 3一竜(21) ( 0:00/03:54:00) *「どうも、先手がつらい」(豊川七段) 124 3二香打 ( 1:00/03:27:00) *竜の縦利きを消す香の王手。▲3三歩には△同香▲同竜に、再び△3二香が痛い。 125 3三歩打 ( 0:00/03:54:00) 126 同 香(32) ( 4:00/03:31:00) 127 4七玉(38) ( 0:00/03:54:00) *香の位置をずらしてから玉を上に逃げた。3筋から玉が移動して▲3三竜と香を取りやすくなっている。 128 3五桂打 ( 2:00/03:33:00) *桂を打って王手。▲5八玉は△6六桂や△6六香で手が続く。 129 3六玉(47) ( 2:00/03:56:00) *桂打ちで香が陰になった。上部脱出に望みを託す。 130 2四桂打 ( 2:00/03:35:00) *さらに桂を打って追撃。▲4五玉△3四角▲3五玉△7八角成▲3三竜△3四歩が示された。 131 4五玉(36) ( 1:00/03:57:00) 132 3四角(43) ( 1:00/03:36:00) *検討の手が止まった。対局の終わりを感じさせる。関係者は無言でモニターを見つめ、終局に備えている。 133 3五玉(45) ( 0:00/03:57:00) *最後まで山根は諦めない。 134 7八角成(34) ( 0:00/03:36:00) *銀を取りながらの王手。着実に先手玉を捕らえる戦力を増やす。 135 3三竜(31) ( 0:00/03:57:00) *香を取って王手を解除した。まずは馬を取る猶予を得たい。 136 3二歩打 ( 0:00/03:36:00) *竜の位置を変える犠打。▲3二同竜に△4三銀で先手玉を押さえつけられる。 137 同 竜(33) ( 1:00/03:58:00) 138 4三銀打 ( 3:00/03:39:00) *決め手の銀打ちが入った。3筋以外に竜が逃げると、△3四馬までの詰み。▲3三竜や▲3一竜には△3二香がピッタリになる。 139 7八金(69) ( 0:00/03:58:00) 140 3二銀(43) ( 0:00/03:39:00) *竜を取って、△3七飛の王手銀取りが生まれた。自玉を気にすることなく、先手玉の包囲に全力をつぎ込める。 141 8五歩打 ( 0:00/03:58:00) *必死の手作り。少しでも後手玉に嫌みをつけたい。 142 3七飛打 ( 2:00/03:41:00) 143 2五玉(35) ( 0:00/03:58:00) 144 7四竜(76) ( 0:00/03:41:00) *手堅く竜を引いた。▲8四歩△同竜▲8五香には、△3四飛成▲1五玉△1四歩▲同玉△1二香▲1三歩△3六桂▲1五玉△1三香までで先手玉が詰む。 145 8四歩(85) ( 0:00/03:58:00) 146 9二玉(83) ( 0:00/03:41:00) *歩には応じず、玉を引いてかわした。▲8三金△同銀▲同歩成△同竜の形は、絶対に後手玉が詰まない。 147 5六角打 ( 0:00/03:58:00) *3四の地点を受けつつ、▲6四歩を用意した角打ち。相手が1手でも間違えれば形勢接近、逆転まで起こりうるのが勝負の世界だ。最後まで何が起こるかわからない。 148 1七飛成(37) ( 3:00/03:44:00) *里見は慎重に時間を使って銀を取った。まもなく時刻は19時。山根は一分将棋に入った。 149 6四歩(65) ( 1:00/03:59:00) *竜の横利きを遮り、▲7四角△同歩▲8三金からの殺到を狙った。しかし、先手玉には即詰みがある。 150 1四銀打 ( 0:00/03:44:00) *この局面で山根が駒台に手をかざし、頭を下げた。以下、▲3四玉△3七竜▲3五歩△4三金▲4五玉△3六竜までの詰みとなる。終局時刻は19時ちょうど。消費時間は、▲山根3時間59分、△里見3時間44分。 *本局の結果、五番勝負は3連勝で里見が防衛に成功した。女流王位3連覇を果たすとともに、女流歴代単独1位となる44期目のタイトルを獲得した。 *本局は北海道新聞・東京新聞・中日新聞・神戸新聞・徳島新聞・西日本新聞の各紙上において、池田将之さんによる観戦記が後日掲載されます。詳しくはそちらもあわせてご覧ください。 * *【里見女流王位が防衛を果たす】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-5f94.html *【終局直後】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-bb10.html *【局後インタビュー】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-2607.html *【感想戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-10da.html *【里見香奈女流王位記者会見】 *https://kifulog.shogi.or.jp/joryuoui/2021/06/post-bdf1.html * *※局後の感想※ *感想戦は50分ほど行われた。ポイントの局面は95手目の▲8七香打。代えて▲7五同角△同竜▲6七桂なら、先手有望だった。 151 投了 ( 0:00/03:59:00) まで150手で後手の勝ち