# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.67 棋譜ファイル --- 対局ID:0 記録ID: 開始日時:2023/11/05 09:50 終了日時:2023/11/05 12:02 表題:令和5年度将棋公開模範対局 持ち時間:各50分 秒読み:60秒 消費時間:92▲50△50 場所:甲府・山日YBSホール 図:投了 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 手合割:飛車落ち 下手:伊藤大悟アマ 上手:藤井聡太名人 先手省略名:伊藤大 後手省略名:藤井聡 手数----指手---------消費時間-- *「将棋公開模範対局」は山梨日日新聞社・山梨放送と静岡新聞社・静岡放送が主催する非公式戦。現役名人の棋士と静岡・山梨両県のアマ名人が駒落ちで対局する。2023年度は11月5日(日)に山梨県甲府市「山日YBSホール」で行われる。 *午前の部は藤井聡太名人と伊藤大悟・静岡県アマ名人の飛車落ち戦。9時30分に開会式が始まり、そのあとに対局開始となる。持ち時間はチェスクロック使用で各50分、使いきると一分将棋。9時50分、対局開始。 * *【有料会員向け ライブ配信中|さんにちeye】 *https://www.sannichi.co.jp/article/2023/11/05/80510603 * *(棋譜・コメント入力=牛蒡) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。#は局後の感想が追記された指し手] 1 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *◆藤井 聡太(ふじい そうた)名人(竜王・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖)◆ *2002年7月19日生まれ、愛知県瀬戸市出身。杉本昌隆八段門下。2016年、四段。2021年、九段。棋士番号は307。 *タイトル戦登場は19回。獲得は竜王2期、名人1期、王位4期、叡王3期、王座1期、棋王1期、王将2期、棋聖4期の計18期。棋戦優勝は9回。 2 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *◆伊藤 大悟(いとう だいご)静岡県アマ名人◆ *静岡県裾野市の会社員。36歳、アマ五段。各年代で結果を残している。最強者戦(現在の広津杯争奪将棋大会)優勝2回、アマチュア竜王戦準優勝、全国オール学生将棋選手権優勝、高校竜王戦優勝、中学生名人戦優勝2回、中学生王将戦優勝2回、小学生名人戦準優勝。 * *【伊藤さん(裾野)連覇 静岡県アマ将棋名人戦】 *https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1260710.html 3 3二金(41) ( 0:00/00:00:00) *将棋公開模範対局は昭和37年(1962年)に始まった。静岡県と山梨県で毎年、交互に開催されている。今年は山梨開催だ。大盤解説の観覧は事前申し込み制(締切済み)。静岡県焼津市出身の青野照市九段が解説する。 * *【さんにちEye 山梨日日新聞電子版】 *http://www.sannichi.co.jp/ *【YBS山梨放送】 *http://www.ybs.jp/ *【@S[アットエス]静岡新聞SBS】 *http://www.at-s.com/index.html *【SBS(静岡放送)テレビ】 *http://www.at-s.com/sbstv/ 4 4八銀(39) ( 0:00/00:00:00) *駒落ちは、駒を落とす側を上手(うわて)、落とされる側を下手(したて)と呼び、上手から指し始める。 5 4四歩(43) ( 0:00/00:00:00) *藤井は今年春に初めて名人になり、10月に王座を獲得して八冠制覇を達成した。公開模範対局は初めて指す。 *歴代名人の指し回しは人ぞれぞれである。近年だと佐藤天彦名人や豊島将之名人は積極的な動きが目立った。渡辺明名人は上手らしく、じっくり待つ作戦が多かった。 6 4六歩(47) ( 0:00/00:00:00) *過去5回(2020年は中止)は名人の6勝4敗。17年は名人の2勝、18年以降は1勝1敗が続いている。伊藤さんは昨年、飛車落ちで当時の渡辺明名人に敗れている。今回は事前のアンケートに「この1年間、将棋の勉強に励んできたつもり。実力を出しきりたい」と書いた。昨年は2筋の歩を切る作戦を採用したが今回は右四間飛車模様。現地の大盤では「定跡形に合流するかも」と解説されている。 * *【昨年の棋譜】 *http://live.shogi.or.jp/event/shizuoka_yamanashi/kifu/2022/shizuoka_yamanashi202209190201.html 7 5四歩(53) ( 0:00/00:00:00) *藤井は開会式で「模範対局は長い歴史を持つイベントです。お招きいただいてうれしく思います。駒落ちの上手を持ったことは少なくて、子どものころに下手で指したことのほうが多いくらいです。貴重な機会をいただきました。厳しい戦いになるかと思いますが、対局を盛り上げられるように全力を尽くしたいと思います」とあいさつした。伊藤さんは「正直、非常に緊張しております。普段通りの自分の将棋を指したいと思います」と語った。 8 4七銀(48) ( 0:00/00:00:00) *青野九段は「伊藤さんは3年前に静岡県に帰ってきまして、いまでは頭一つ抜けた存在です」と話す。 9 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00) *伊藤さんは序盤から時間を使う。自然に指すなら▲5六銀や▲4八飛だ。青野九段は変化球として▲7七角〜▲8八飛、あるいは▲4五歩△同歩▲2二角成△同銀▲8二角も「ないわけではない」という。 10 4五歩(46) ( 0:00/00:00:00) *じっくりと駒組み進めることもできたが、いまが好機と積極的に動く。 11 5三銀(62) ( 0:00/00:00:00) *▲4四歩に△同銀を用意。角交換を避ける指し方だ。 12 4四歩(45) ( 0:00/00:00:00) *駒落ちは当然ながら下手優勢だが、仕掛け、中盤の攻防、終盤の寄せと、勝つために超えるべきハードルは多い。形勢を互角に戻されると苦しくなるので先行逃げ切りを心掛けたい。最終盤で詰む詰まないを読むための時間まで残せれば理想的だ。 13 同 銀(53) ( 0:00/00:00:00) 14 4八飛(28) ( 0:00/00:00:00) *大盤解説は対局のすぐ横で行われており、青野九段は符号を口にしないように解説している。棋譜中継では便宜上、符号を用いた形でコメントを掲載する。 *「下手の狙いは▲5六銀。▲5六銀に△5五歩▲4五銀△同銀▲同飛までいくと上手は厳しいです。以下△5四銀▲4八飛△4五歩は▲8二銀のような手もありますから」(青野九段) 15 4二銀(31) ( 0:00/00:00:00) *中央を厚く。当面は上手が受ける展開だ。 16 6八金(69) ( 0:00/00:00:00) *「このあと▲5六銀△5五歩には▲4五歩△5六歩▲4四歩としたいのですね。この変化で△5七歩成とされないように▲6八金と上がりました。▲6九玉から▲7八玉と囲えるようにもしています」(青野九段) 17 5三銀(42) ( 0:00/00:00:00) 18 5六銀(47) ( 0:00/00:00:00) 19 4三歩打 ( 0:00/00:00:00) *穏やかな受け。 20 4五銀(56) ( 0:00/00:00:00) *伊藤さんは攻めの手を緩めない。1歩を手持ちにして主導権も握っている。初形の時点よりリードを広げているだろう。 21 3三銀(44) ( 0:00/00:00:00) *△4五同銀には▲2二角成△同金に(1)▲3一角△4四角▲4五飛△3二金▲4四飛△同銀▲7五角成という激しい変化のほか、(2)▲4五飛△3二金▲4八飛と落ち着いて指す順も下手は有力だった。 *本譜は▲3四銀を考えてみたい。以下△同銀▲2二角成△同金▲3一角が狙い筋だ。ただ、上手に角銀を持たせるのは下手も怖い。ましてや相手は名人で八冠王である。伊藤さんは慎重に時間を使う。 22 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00) *右桂を使うつもり。青野九段は「これも自然な手」と話していた。 23 6二玉(51) ( 0:00/00:00:00) 24 6九玉(59) ( 0:00/00:00:00) *少し落ち着いた流れになった。 25 7二玉(62) ( 0:00/00:00:00) *上手もひと息つけた。下手に1歩を持たれたが駒損はしていない。 26 7八玉(69) ( 0:00/00:00:00) 27 4四歩(43) ( 0:00/00:00:00) 28 5六銀(45) ( 0:00/00:00:00) *時刻は10時33分。ここまでの消費時間は藤井が19分、伊藤さんは22分。 29 4二銀(33) ( 0:00/00:00:00) *角を使うために銀を引く。次に△4三銀と上がれば好形だ。 30 5八金(49) ( 0:00/00:00:00) 31 4三銀(42) ( 0:00/00:00:00) 32 9六歩(97) ( 0:00/00:00:00) 33 9四歩(93) ( 0:00/00:00:00) 34 6六歩(67) ( 0:00/00:00:00) *飛車落ちは角落ちより大きなハンデだが、下手としては必ずしもそうとはいえないと青野九段はいう。実際に過去5回の公開模範対局で飛車落ちは5局あり、下手は1勝4敗と負け越している。角落ちは下手の3勝2敗だ。 *「飛車落ちは上手の守りが堅いですから、下手がガンガン攻めたい人の場合は角落ちのほうがいいかもしれません」 35 6四歩(63) ( 0:00/00:00:00) *▲6五歩と位を取られてはつらい。 36 6五歩(66) ( 0:00/00:00:00) *伊藤さんは2枚目の歩を持ちにいく。 37 同 歩(64) ( 0:00/00:00:00) 38 同 銀(56) ( 0:00/00:00:00) 39 5二金(61) ( 0:00/00:00:00) *△6四歩を打たずに突っ張った。 *「▲6四歩には△6三歩でしょうか」(青野九段) 40 5六銀(65) ( 0:00/00:00:00) *歩交換に満足して銀を戻す。 41 3三桂(21) ( 0:00/00:00:00) *▲4五歩を消した。上手が1歩持っているので▲3七桂は△3五歩が気になる。 42 6五歩打 ( 0:00/00:00:00) *6筋の位の生かし方はいくつかある。たとえば▲6六角と出たり、桂交換から▲6四桂を狙ったり。 43 7四歩(73) ( 0:00/00:00:00) 44 6六角(88) ( 0:00/00:00:00) *「次に▲7七桂とすれば位が安定します」(青野九段) 45 3一角(22) ( 0:00/00:00:00) *「下手は押さえ込みにいくか、それとも戦うか。方針がどっちつかずになってはいけません」(青野九段) 46 6七金(58) ( 0:00/00:00:00) *下手の陣形が立体的になってきた。 47 4二角(31) ( 0:00/00:00:00) *「△5一角から△7三角を考えているかもしれませんね」と青野九段。39手目に△6四歩を見送ったので△7三角は香取りになる。△8四角もあるようだ。 *伊藤さんは残り10分を切った。ここまで2回の歩交換があったが、本格的な開戦には至っていない。中盤に入る前に時間が切迫してきたのは不安材料だ。 48 7七桂(89) ( 0:00/00:00:00) *時刻は11時7分。ここまでの消費時間は藤井が31分、伊藤さんが45分。 49 5一角(42) ( 0:00/00:00:00) 50 4五歩打 ( 0:00/00:00:00) *「左側でいい形を作れたので、今度は右側から。上手が角を引いたので桂交換後の▲6四桂に△同銀▲同歩△同角がありません」(青野九段) 51 同 歩(44) ( 0:00/00:00:00) *△4五同桂には▲同銀の可能性が高かった。 52 3七桂(29) ( 0:00/00:00:00) *「ここから激しくなりそうです」(青野九段) *△4六歩▲同飛△7三角は▲4七飛のあとが難しい。桂交換から▲6四桂のキズが大きいので△8四角もまだ指しにくい。 53 4六歩(45) ( 0:00/00:00:00) *下手の手番なら▲4五桂が有力だった。上手は歩を取られる前に活用を図る。青野九段は▲4六同飛△7三角▲4七飛に(1)△4四歩や(2)△6三歩を示した。キズを消して渋い。(3)△4六歩は少し指しづらく、自身の角を止めるうえに▲4九飛の好形を与えてしまう。 54 同 飛(48) ( 0:00/00:00:00) 55 7三角(51) ( 0:00/00:00:00) *「▲4五桂もないわけではないですが、さすがに……」(青野九段) 56 4七飛(46) ( 0:00/00:00:00) *11時22分、伊藤さんは一分将棋に入った。藤井は残り10分。 57 6三歩打 ( 0:00/00:00:00) *冷静な受け。下手は▲6四桂を中心にした組み立てができなくなった。 *「時間のない状況でこういう手をやられると下手は焦ります」(青野九段) 58 7五歩(76) ( 0:00/00:00:00) *△7五同歩に▲7四歩か、それとも▲7五同角か。 59 同 歩(74) ( 0:00/00:00:00) 60 同 角(66) ( 0:00/00:00:00) *上手はもう少し受けるべきか。飛車の直射を避ける△4四歩、▲8五桂や▲7四歩を先受けする△8二角が候補に挙がる。 61 7四歩打 ( 0:00/00:00:00) *▲7四歩を打たれる前に先着。 62 6六角(75) ( 0:00/00:00:00) 63 4六歩打 ( 0:00/00:00:00) *11時36分、藤井も一分将棋に入った。 64 4九飛(47) ( 0:00/00:00:00) *▲4八飛では△3七角成が実現したときに飛車取りになった。▲4九飛なら当たりが弱く、△1九角成(馬)の備えにもなる。 65 6二金(52) ( 0:00/00:00:00) *藤井はここまで攻めの手を指せていない。伊藤さんが隙を作らずに指しているからだ。 66 7六金(67) ( 0:00/00:00:00) *▲8五金から▲7四金の構想だろう。金の進出で薄くなった守りは▲6七銀でカバーする。 67 8四角(73) ( 0:00/00:00:00) *「この一手です。ほかの手ではダメそうでした」(青野九段) 68 7五歩打 ( 0:00/00:00:00) 69 同 歩(74) ( 0:00/00:00:00) *ついに歩以外の駒が交換になりそうだ。7筋は双方の玉がいる筋だが、先手のほうが厚みがある。 70 同 金(76) ( 0:00/00:00:00) *△7三角では元気がなく、▲7四歩や▲8五桂を決められる。 71 同 角(84) ( 0:00/00:00:00) 72 同 角(66) ( 0:00/00:00:00) *伊藤さんは55秒ほどで▲7五同角を指した。先の局面を読むために少しでも時間がほしい。 73 7六歩打 ( 0:00/00:00:00) *ここまで辛抱を重ねてきた藤井。いよいよ攻める。 74 7三歩打 ( 0:00/00:00:00) *▲8五桂は△7四金で忙しかったか。 75 6一玉(72) ( 0:00/00:00:00) 76 7二角打 ( 0:00/00:00:00) *強めの手つきで指した。決断の一手である。 77 同 金(62) ( 0:00/00:00:00) *▲7二同歩成と▲5三角成の2択。「さあ、どっちだ」と青野九段。 78 同 歩成(73) ( 0:00/00:00:00) *上手は△5二玉しかない。△7二同玉は▲5三角成が詰めろ(▲7三歩以下)になる。 79 5二玉(61) ( 0:00/00:00:00) 80 4六飛(49) ( 0:00/00:00:00) 81 7七歩成(76) ( 0:00/00:00:00) 82 同 金(68) ( 0:00/00:00:00) 83 8五桂打 ( 0:00/00:00:00) *下手にプレッシャーをかけて勝負。 *「秒読みだと迷います。攻め合うべきか、受けるべきか」(青野九段) 84 4四歩打 ( 0:00/00:00:00) *勇気ある選択。△4四同銀直▲同飛△同銀は▲6二金△4一玉▲5二銀で上手玉が詰む。 85 7七桂成(85) ( 0:00/00:00:00) 86 同 玉(78) ( 0:00/00:00:00) 87 4四銀(53) ( 0:00/00:00:00) *▲4四同飛で下手の勝ちか。84手目に書いた理由で△4四同銀は指せない。 88 同 飛(46) ( 0:00/00:00:00) *下手の攻めが刺さった。あとは上手の攻めをしのげば勝ち。 * *※局後の感想※ *「△4二金打とされたらどうしようと思っていました。▲6一銀や▲5一金でよければいいのですが、怖いので飛車を引いてしまいそう」と伊藤さん。藤井は△4二金打に▲6一銀△4一玉▲5二金以下の詰みがあると指摘した。 89 7六歩打 ( 0:00/00:00:00) *▲7六同玉は△8五金▲同玉△8四金が怖い。 90 6七玉(77) ( 0:00/00:00:00) 91 4四銀(43) ( 0:00/00:00:00) *下手玉は寄らず。伊藤さんが最後の関門をクリアした。 92 6二金打 ( 0:00/00:00:00) *△4一玉と△4三玉のどちらも▲5二銀で詰み。7五角の利きが絶品だ。 *ここで藤井が投了した。終局時刻は12時2分。両者とも持ち時間の50分を使いきっていた。「伊藤さんが最後までしっかり読みきりました」と青野九段。 * *※局後の感想※ *「序盤から伊藤さんに手厚く指され、そこからこちらの守りをうまく突破されてしまったのかなと思います」(藤井) *「どう仕掛けたらいいか難しいところでした。▲7六金(66手目)から玉頭を攻めたのが自分らしく指せたと思います」(伊藤さん) 93 投了 ( 0:00/00:00:00) まで92手で下手の勝ち