# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.67 棋譜ファイル --- 対局ID:16644 記録ID:660f376f37945ae1e54fb536 開始日時:2024/04/07 09:00 終了日時:2024/04/07 17:58 棋戦:第9期叡王戦五番勝負第1局 戦型:角換わり腰掛け銀 持ち時間:4時間 秒読み:60秒 消費時間:107▲232△240 場所:愛知県名古屋市「か茂免」 備考:昼休前70手目▲77分△101分\n 図:投了 振り駒:2,2,藤 計時方式:チェスクロック 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 昼食休憩:12:00〜13:00 昼休前消費時間:70手▲77分△101分 手合割:平手   先手:藤井聡太叡王 後手:伊藤匠七段 先手省略名:藤井聡 後手省略名:伊藤匠 手数----指手---------消費時間-- *藤井聡太叡王(八冠)に伊藤匠七段が挑戦する第9期叡王戦五番勝負(主催:不二家、特別協賛:ひふみ(レオスキャピタルワークス)、協賛:中部電力、豊田自動織機、豊田通商、日本AMD、アパリゾート佳水郷)が開幕する。第1局は4月7日(日)、名古屋市東区の料亭か茂免(かもめ)で行われる。持ち時間は各4時間(チェスクロック使用)。切れたら1手60秒未満の着手となる。対局開始は9時。12時から13時が昼食休憩。立会人は屋敷伸之九段、記録係は清水航三段(伊藤博文七段門下)がそれぞれ務める。第1局につき、先後は藤井の振り歩先で決定する。 *今朝の名古屋市はよく晴れた。最高気温は25度と予想されている。か茂免から車で数分の名古屋城周辺では、桜が満開近くにまで咲いていた。桜とともに今年度のタイトル戦開幕となる。対局室には伊藤、藤井の順で入室した。8時50分に一礼が交わされ、藤井が盤上に駒を散らす。藤井は大橋流、伊藤は伊藤流で駒を一枚一枚、交互に並べていく。振り駒の結果、歩が2枚出て藤井の先手となった。重なった2枚の駒は無効となり、有効な3枚のうち、歩が多く出たため上座の棋士の先手となる。 * *【第9期叡王戦五番勝負第1局】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-c5a1.html *【本日のスケジュール】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-3ea2.html *【朝の様子】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-b35b.html * *(棋譜・コメント入力=飛龍) *[棋譜表示の*はコメントつきの指し手。#は局後の感想が追記された指し手] *【】内は中継ブログタイトルならびにリンク 1 2六歩(27) ( 0:41/00:00:41) *9時になり、立会人の屋敷九段が対局開始を告げた。藤井はお茶を一口含み、▲2六歩と飛車先の歩を突く。 2 8四歩(83) ( 0:36/00:00:36) *伊藤も気息を整え、△8四歩と追随した。対局室で開始を見守っていた関係者たちが退室していく。 * *【対局開始】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-75cb.html 3 2五歩(26) ( 0:51/00:01:32) *◆藤井 聡太(ふじい そうた)叡王(竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖)◆ *2002年7月19日生まれの21歳、愛知県瀬戸市出身。杉本昌隆八段門下。2016年、四段。2021年、九段。棋士番号は307。 *タイトル戦登場は22回。獲得は竜王3期、名人1期、王位4期、叡王3期、王座1期、棋王2期、王将3期、棋聖4期の計21期。棋戦優勝は10回。 4 8五歩(84) ( 0:17/00:00:53) *◆伊藤 匠(いとう たくみ)七段◆ *2002年10月10日生まれの21歳、東京都世田谷区出身。宮田利男八段門下。2020年、四段。2023年、七段。棋士番号は324。 *タイトル戦登場は3回。棋戦優勝は1回。 5 7六歩(77) ( 0:10/00:01:42) *藤井は本局が本年度初対局。 *昨年度成績は46勝8敗(0.852)。ほかにタイトル戦での持将棋が1局あった。対局数ランキング5位タイ、勝数ランキング3位タイ、勝率ランキング1位、連勝ランキング3位タイ、6位タイ、8位タイ。 *通算成績は364勝71敗(0.837)。 6 3二金(41) ( 0:12/00:01:05) *伊藤も本局が本年度初対局。 *昨年度成績は51勝17敗(0.750)。ほかにタイトル戦での持将棋が1局あった。対局数ランキング1位、勝数ランキング1位タイ、勝率ランキング5位、連勝ランキング2位、8位タイ。 *通算成績は140勝45敗(0.757)。 7 7七角(88) ( 0:10/00:01:52) *対戦成績は藤井の10勝0敗1持将棋。叡王戦では初対戦となる。伊藤は今年2月、第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局で後手番ながら、持将棋に持ち込んだ。通常の対局では持将棋は指し直しとなるが、タイトル戦では1局と数え、無勝負となる。しかし、伊藤はまだ初勝利を挙げていない。 8 3四歩(33) ( 0:56/00:02:01) *本局の模様はABEMAで8時30分から配信されている(23時まで)。解説は中村太地八段と石田直裕五段、聞き手は貞升南女流二段、脇田菜々子女流初段。 * *【ABEMA(番組表)】 *https://abema.tv/channels/shogi/slots/9QAxT1CAR1yib9 *【ABEMA(オンエア)】 *https://abema.tv/now-on-air/shogi *【ABEMA】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/aebma.html 9 6八銀(79) ( 0:15/00:02:07) *叡王戦も第9期の番勝負を迎えた。藤井は第6期からの4連覇を目指す。第2期までは一般棋戦として決勝三番勝負を行い、第3期からはタイトル戦に移行している。第6期からは不二家への主催社交代に伴い、番勝負も七番勝負から五番勝負に変更された。予選を段位別に実施する点は第1期から変わらず、現行棋戦では唯一となる。段位別予選から本戦トーナメントへの出場枠は四・五段が各1、六・七段が各2、八・九段が各3と段位が上がるほど多い。持ち時間は段位別予選が各1時間、本戦トーナメントが各3時間、五番勝負では各4時間と段階的に増えていく。いずれもチェスクロックで計測し、秒単位の考慮時間も積算される。その点も考慮してタイトル戦番勝負で比べると、公式戦の中では叡王戦が最も持ち時間が少ない。叡王戦はどの持ち時間でも、使いきったあとの秒読みは60秒で指す。 * *【叡王戦】 *https://www.shogi.or.jp/match/eiou/ *【不二家】 *https://www.fujiya-peko.co.jp/ 10 7七角成(22) ( 0:36/00:02:37) *冒頭のコメントのとおり、叡王戦の特別協賛はひふみ(レオスキャピタルワークス)、協賛には中部電力、豊田自動織機、豊田通商、日本AMD、アパリゾート佳水郷がつく。控室には主催社も含めて各社それぞれに机が用意され、対局開始を見守った関係者が戻ってきた。 * *【ひふみ】 *https://hifumi.rheos.jp/ *【中部電力】 *https://www.chuden.co.jp/ *【豊田自動織機】 *https://www.toyota-shokki.co.jp/index.html *【豊田通商】 *https://www.toyota-tsusho.com/ *【日本AMD】 *https://www.amd.com/ja *【アパリゾート佳水郷】 *https://www.apahotel.com/resort/kasuikyo/ 11 同 銀(68) ( 0:29/00:02:36) *叡王戦の特長として見届け人制度がある。1対局につき1名限りとなり、複数人の応募があった際には抽選を行う。棋士、女流棋士のアテンドがつくなどさまざまな特典が用意されている。本局のアテンドは高見泰地七段と長谷川優貴女流二段。高見七段は叡王戦がタイトル戦に移行した第3期に叡王を獲得した。叡王のタイトルの初代といえる。 * *【第9期叡王戦五番勝負「見届け人」を募集します】 *https://www.shogi.or.jp/news/2024/03/9_31.html 12 2二銀(31) ( 0:06/00:02:43) *2024年度のタイトル戦は、女流棋戦も含めてこの叡王戦から始まることになった。2019年、当時は七番勝負だった第4期叡王戦第1局も年度最初のタイトル戦となった実績がある。今週は明後日の9日(火)に、西山朋佳女王(女流三冠)に大島綾華女流二段が挑戦する第17期マイナビ女子オープン五番勝負が、10日(水)に藤井が豊島将之九段を迎え撃つ第82期名人戦七番勝負が開幕していく。ちょうど季節柄、桜の満開が日本各地に変遷していく様子にも重なる。 13 4八銀(39) ( 0:29/00:03:05) *前手コメントのとおり、八冠全冠を制覇している藤井は名人戦も控え、今年度も次々に防衛戦を戦う。前年度は全タイトル戦番勝負登場、出場対象となった一般棋戦全4棋戦でも決勝戦まで戦うなど、過密日程に追われた。一方で年度勝率は1位を記録するだけでなく、トップ戦線にいながら自己最高をマーク。歴代でも中原誠十六世名人が五段時代に記録した47勝8敗(0.855)まで、あと1勝に迫る2位の記録を達成したのは驚異というよりない(30局以上が対象)。 14 6二銀(71) ( 1:17/00:04:00) *伊藤も前年度の活躍は目覚ましかった。昨年10月に第36期竜王戦七番勝負でタイトル戦に初登場すると、今年2月には早くも2回目のタイトル戦となる第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負にも登場、さらに矢継ぎ早に3回目となるこの叡王戦五番勝負登場を決め、みたび藤井に挑戦する。年度17敗のうち、藤井に喫したのは8敗。すなわち、藤井戦を除けば51勝9敗(0.850)となり、勝率ランキング2位(歴代4位)だった現役最年少棋士、藤本渚五段の成績に並ぶところだった。通算成績を見ても、藤井戦を除けば140勝35敗で勝率はちょうど8割となる。「驚異的」との表現も使いたいところだが、惜しいかな、藤井の存在がそれを許さない。 15 7八金(69) ( 0:22/00:03:27) *4月1日(月)に公表された、昨年度が対象となる第51回将棋大賞でも両者の活躍が目立つ。最優秀棋士賞は藤井が4年連続4回目、それに次ぐ優秀棋士賞には伊藤が初めてそれぞれ選出された。ほかに藤井は勝率一位賞と、豊島九段との第71期王座戦挑戦者決定戦で名局賞、さらに当時の永瀬拓矢王座との第71期王座戦五番勝負第4局で名局賞特別賞も獲得。藤井の勝率一位賞は2年連続6回目となる。 * *【第51回将棋大賞受賞者のお知らせ】 *https://www.shogi.or.jp/news/2024/04/51_6.html 16 3三銀(22) ( 0:14/00:04:14) *伊藤も第51回将棋大賞では優秀棋士賞のみにとどまらず、最多対局賞(タイトル戦持将棋局1局を含む69局)と最多勝利賞(藤本五段と同時受賞)をそれぞれ初受賞した。さらに藤井戦で持将棋に持ち込んだ第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局などの将棋が評価され、革新的な指し方が対象となる升田幸三賞にも初めて選ばれている。また、2年前の第49回は藤井が対象となる30局以上を戦った中で唯一、勝率一位賞を逃して2位に甘んじたが、そのときの勝率一位賞に輝いたのがほかでもない伊藤だった。 17 4六歩(47) ( 0:17/00:03:44) *現地大盤解説会は以下のとおりに開催される。対局場のか茂免ではない点、事前申し込み制で、すでに締め切られている点についてはそれぞれご注意いただきたい。また、東京都渋谷区西参道の駒テラスでも当日15時から大盤解説会が行われ、今朝の時点でチケットは販売されている。下記のリンクを参照されたい。 * *時間:14時開始、終局まで *会場:名古屋観光ホテル(名古屋市中区錦1-19-30) *解説:澤田真吾七段 *料金:4,000円(事前申し込み、当日支払い) * *【第9期叡王戦五番勝負第1局現地大盤解説会のお知らせ】 *https://www.shogi.or.jp/event/2024/03/9_22.html *【大盤解説会】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-1580.html *【駒テラス西参道第9期叡王戦第1局大盤解説会】 *https://www.komaterrace.com/info/2024/0403112041575.html 18 6四歩(63) ( 0:47/00:05:01) *盤上は角換わり同型に進む。朝、控室では澤田七段と高見七段が、藤井が先手になるなら角換わりになると予想していた。ピタリと当たる。高見七段は伊藤先手の相掛かりを見たいとしていた。第2局以降に現れるかどうか、楽しみに待ちたい。 19 3六歩(37) ( 0:25/00:04:09) *対局場のか茂免は1928年(昭和3年)創業、1000坪の広さの敷地を有する老舗料亭。かつては旅館業も営んでいたが、いまは料亭のみの営業となっている。作庭家として名高い七代目小川治兵衛(植治)による庭を持ち、池を囲むように本館、旧館、別館、新館を回廊で結ぶ。東京23区、横浜市、大阪市に次ぐ人口規模の名古屋市にありながら、閑静な環境の白壁地区に建つ。白壁地区は江戸時代に武家屋敷が立ち並び、町並み保存地区に指定されて往時の趣を残す。か茂免での叡王戦開催は第6期、前期に続いて3回目。他棋戦を含めても4回目となった。対局室は70畳、か茂免最大の大広間が使われている。 * *【か茂免】 *https://www.ka-mo-me.com/ *【か茂免(1)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-9065.html *【か茂免(2)】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-109a.html 20 4二玉(51) ( 0:39/00:05:40) *今期、伊藤は抽選時に六段だったため段位別予選六段戦から出場。初戦から順に黒沢怜生六段、高野智史六段、渡辺和史六段、服部慎一郎六段をそれぞれ破り、自身初となる本戦トーナメントに進出した。本戦トーナメントでは山崎隆之八段、同門の兄弟子の斎藤明日斗五段、青嶋未来六段、永瀬九段の順に下し、3度目のタイトル戦となる五番勝負に臨む。まずは藤井戦の初勝利とともにタイトル戦初勝利を目指す。 21 6八玉(59) ( 0:30/00:04:39) *両者は同い年で同学年。史上5人目の中学生棋士となった藤井はもちろん、藤井より3ヵ月ほど若い伊藤も最年少棋士だった期間がある。両者が初めてタイトル戦で激突した昨年10月からの第36期竜王戦七番勝負は、開幕時点では藤井21歳、伊藤20歳でタイトル戦史上最年少の組み合わせとして話題を呼んだ。 22 7四歩(73) ( 0:14/00:05:54) *両者は昨日、か茂免に到着すると16時過ぎから記念撮影に、16時20分過ぎに検分にそれぞれ臨んだ。用意された駒は2種類。大竹竹風師作、昇龍書の駒が選ばれて使われている。検分後は藤井、伊藤の順にそれぞれ囲み取材に応じた。さらに夕食時、関係者食事会ではそれぞれ挨拶に立ち、本局への意気込みを述べている。 * *【現地入り】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-4535.html *【記念撮影】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-0c05.html *【対局検分】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-1734.html *【囲み取材】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-5ea7.html *【夕食会の対局者挨拶】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-6992.html 23 3七桂(29) ( 0:33/00:05:12) *藤井は居飛車党。射程の長い高精度の読みは他の追随を許さず、終盤にはその特長が存分に発揮される。加えて序盤の研究も深く、序・中・終盤のいずれにも隙がない。伊藤は昨日、これまでの対戦で中盤での読みの精度で差をつけられた点を強調していた。 24 6三銀(62) ( 0:21/00:06:15) *伊藤も居飛車党。角換わりや相掛かりの最先端の定跡に明るい。昨今は形の細分化が著しく、その細かい違いまで理解するのは困難とされるなか、伊藤は整理のついている有数の棋士とされる。 25 4七銀(48) ( 0:24/00:05:36) *角換わりから腰掛け銀模様に進む。整備された定跡手順をなぞり、しばらくはハイペースで進んでいくだろう。 26 7三桂(81) ( 0:56/00:07:11) *伊藤を含むトップ棋士はいまや、藤井をいかに倒すかが課題となった。伊藤は自身の研究を武器に真っ向勝負を挑んでいる。これまで結果には恵まれていないが、1勝を挙げられれば風穴が開く。その後に得るものが最も大きな取り組み方といえるかもしれない。跳ね返された次の機会が遠ければ成り立たないが、21歳という若いうちに矢継ぎ早にチャレンジできていることは、ほかのトップ棋士にない大きな強みとなる。 27 9六歩(97) ( 0:23/00:05:59) *藤井は昨年8月末日の第71期王座戦五番勝負第1局の敗戦を最後に、丸7ヵ月の間、タイトル戦での負けがない。特に存分に考えられる持ち時間を持つ2日制の対局では、藤井に勝つのはより大変な印象だ。公式戦タイトル戦では最も持ち時間の少ない叡王戦五番勝負を迎えるにあたり、昨日の囲み取材では時間配分への意識に言及している。 28 9四歩(93) ( 0:46/00:07:57) *藤井に挑戦する側からの視点からすれば、今年に入って銀河戦とNHK杯将棋トーナメントのTV棋戦、持ち時間がチェスクロック使用の各40分の朝日杯将棋オープン戦と、3棋戦で藤井が決勝戦を敗れた点に注目するだろう。つけ入る隙があるとすれば、持ち時間の短い将棋のほうが可能性があるように思わせる。とはいえ、藤井はそれらの棋戦でも決勝戦まで勝ち進んだ。昨年度のもう1つの一般棋戦、将棋日本シリーズJTプロ公式戦では優勝しており、短い時間での将棋でも全般的に高いパフォーマンスを発揮しているともいえる。昨日の囲み取材で伊藤は、これまでのタイトル戦を通じ、藤井から1勝を挙げることの大変さを実感したと語った。 29 4八金(49) ( 0:31/00:06:30) *▲4八金と立つ。この先、▲2九飛と引いた形と相性がよい。金と飛車が互いの利きを補い合い、自陣に隙のない構えとなる。 30 1四歩(13) ( 0:19/00:08:16) 31 1六歩(17) ( 0:20/00:06:50) 32 6二金(61) ( 0:38/00:08:54) *1筋の突き合いを入れ、伊藤も右金をまっすぐに立つ。先後同型に構えた。 33 5六銀(47) ( 0:30/00:07:20) *藤井は水色と白の段ぼかしの羽織に若草色の着物を着ている。春らしい明るい色調の装いだ。 34 8一飛(82) ( 0:21/00:09:15) *伊藤は淡い桜色の着物に、雪輪の紋の入った紺色の羽織を着用している。 35 6六歩(67) ( 0:38/00:07:58) *銀を腰掛け、▲6六歩と突く。最近の角換わりは、いち早く桂を銀取りに五段目に跳ねる速攻策がある。△6五桂を防いでおく。 36 5四銀(63) ( 0:20/00:09:35) 37 2九飛(28) ( 0:27/00:08:25) *飛車を引いた。対して△4四歩なら先後同型となるが、▲4五歩の仕掛けを与える。かといっていま後手から△6五歩と仕掛けるのは、いつでも▲4五桂があるため成立しにくい。現局面は現代角換わりの基本図ともいえる。先手は▲7九玉〜▲8八玉と入城して▲4五桂の仕掛けを目指す。後手はバランスのよい現状が最善形となり、千日手歓迎の姿勢で手待ちに出る。 38 5二玉(42) ( 2:31/00:12:06) 39 6九玉(68) ( 0:55/00:09:20) *玉を1マス引くのが肝心のところ。代えて▲7九玉△4二玉▲8八玉は△6三銀で先手が仕掛けていくのは難しい。仕掛けがなければ千日手に持ち込まれてしまう。いったん▲6九玉と引くことで、△4二玉▲7九玉△5二玉▲8八玉△4二玉と進むようなら▲4五桂の仕掛けが有力となる。いずれ歩を手持ちにした際、▲7五歩と桂頭に手を出せる点が大きい。 40 4四歩(43) ( 1:05/00:13:11) 41 7九玉(69) ( 0:50/00:10:10) 42 6三金(62) ( 0:37/00:13:48) *△6三金と立つ。金で桂頭をカバーしながら右玉に構えられるようにした。これまでの▲藤井聡−△伊藤匠戦でも指されている。 43 8八玉(79) ( 0:55/00:11:05) 44 6二玉(52) ( 0:21/00:14:09) 45 6七銀(56) ( 0:50/00:11:55) *入城し、銀を引いて銀矢倉に組む。このあとは▲5九飛と▲5六歩〜▲5五歩を組み合わせて5筋に主張を作りにいく。 46 4三銀(54) ( 0:16/00:14:25) 47 5九飛(29) ( 1:38/00:13:33) 48 4二金(32) ( 1:18/00:15:43) *△4三銀〜△4二金と相手の飛車が回ってきた5筋を固める。 49 6九飛(59) ( 1:03/00:14:36) *飛車の位置を変えた。5筋を固められ、▲5六歩〜▲5五歩と伸ばしていってもそのあとの見通しがつかない。相手陣が崩れるのを待つようだ。 50 4一金(42) ( 1:48/00:17:31) 51 5六銀(67) ( 1:39/00:16:15) 52 5四銀(43) ( 0:25/00:17:56) *歩調を合わせて再び銀を腰掛けた。▲4五歩や▲6五歩の仕掛けを防ぐ。 53 4七銀(56) ( 0:28/00:16:43) 54 4三銀(54) ( 0:22/00:18:18) 55 5八金(48) ( 0:35/00:17:18) *銀を6七から繰り替え、右金を5八に寄る。銀引きによって3八の地点に隙を作らないようにした。 56 3二金(41) ( 2:04/00:20:22) 57 5九飛(69) ( 0:49/00:18:07) *再び飛車を5筋に寄る。10手前の▲5九飛の局面と比べ、後手の形はまったく変わっていない。その間に先手は4八金・6七銀型から5八金・4七銀型にシフトした。後手が仕掛けを喫しないように待つのに対し、先手は細かく駒を繰り替えながら仕掛けの機会をうかがう。角換わり腰掛け銀の、プロならではとなる難しい駆け引きが続く。 58 5四歩(53) ( 1:52/00:22:14) *△5四歩と突き、局面は新たな段階に入る。歩は突いたら戻れないため金銀のような往復による手待ちが利かない。 59 2九飛(59) ( 1:05/00:19:12) 60 5五歩(54) ( 1:11/00:23:25) *さらに意欲的に5筋に位を取った。控室には日本将棋連盟会長の羽生善治九段が訪れており、新構想と解説する。▲5六歩で歩がぶつかるようになり、目標にされかねない。 61 4八金(58) ( 2:57/00:22:09) *金を4筋に戻り、▲5九飛〜▲5六歩の狙いが見えてきた。 62 4二銀(33) ( 7:11/00:30:36) *10時頃の局面。△4二銀までの消費時間は▲藤井22分、△伊藤30分。7分考え、△4二銀と引く。中央を厚くする一方、▲2四歩からの飛車先交換は甘受した。着手から5分以上がたっており、歩調を合わせて藤井も時間を使う。午前のおやつが運ばれた。藤井が鹿児島県産一番抹茶を使用した、プレミアム濃い抹茶のケーキとアイスレモンティー。伊藤がバウムクーヘンとアイスティー。控室におやつを食べにいったのか、着手した伊藤は席を外す。46手目△4三銀の局面に比べ、先手は6七にいた銀が4七に移動したのみになっているのに対し、後手は3三銀・5三歩型から4二銀・5五歩型になった。これまでの手待ちを含めた進行を見ても分かるとおり、角換わりなど特定の形では、多くの手を指したからといって必ずしも得になるとは限らないのが将棋の難しいところでもある。▲2四歩△同歩▲同飛の飛車先交換は1歩を手持ちにできる一方、△2三歩▲2九飛△3三桂のあと△2一飛〜△2四歩のように2筋を逆襲される可能性も考えておかねばならない。 * *※局後の感想※ *藤井「(1)▲5六歩だと取って△3五歩?」 *伊藤「あ、そうですね」 *(1)▲5六歩△同歩▲同銀△3五歩▲1八角△3六歩▲同角△5四歩▲4七角△5三銀のような変化が並ぶ。そこで▲6七銀だと藤井は「そんなにうれしくない」と3筋にキズがあり、角を手放している不満を挙げる。▲5六歩は4二金型であれば突きやすいと指摘した。伊藤も同意する。 *藤井「こっちとしても(1)▲5六歩か、(2)本譜かどちらかですよね。どっちですかね。(3)▲5八金だと主張があんまり……」 *伊藤「ああ、いやいや。それも自然かと思っていました」 *藤井は前手▲4八金が5八から寄ったばかりである点を挙げ、難色を示す。 * *【午前のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-02c9.html 63 2四歩(25) (24:38/00:46:47) *24分の考慮で、誘いに乗って▲2四歩と突き出した。1歩を手持ちにするメリットを重要視したようだ。歩を持てば攻める手段の可能性が広がる。 64 同 歩(23) ( 1:20/00:31:56) 65 同 飛(29) ( 4:13/00:51:00) 66 6五歩(64) ( 1:00/00:32:56) *飛車が走ってきたところに△6五歩と反発。それを見て藤井は羽織を脱ぎ、丁寧に畳んで左後方に置く。▲6五同歩は△同桂で後手の攻めを呼び込む。以下、▲6六銀は△8六歩▲同歩△5九角、▲6八銀は△6六角▲7七桂△7五歩の要領で攻められる。次に△6六歩は駒に当たらないので、先手はこの手番で有効な手を指したい。 * *【戦型は角換わり】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-e51c.html 67 2九飛(24) (21:39/01:12:39) *20分あまり考え、飛車を下段に引き揚げた。相手の駒から距離を取り、狙われにくくしている。▲2二歩△3三桂▲2一歩成の含みがあり、飛車が2四であれば△2三歩で当てられるところだった。 *11時頃、▲2九飛までの消費時間は▲藤井1時間12分、△伊藤32分。伊藤は15分ほど考えている。 68 6六歩(65) (24:45/00:57:41) *24分の考慮を返し、△6六歩と取り込む。桂を6五に跳ねられるようにした。攻めていくうえで大きな手段となり、△7五歩▲同歩△6五桂とすれば銀に逃げられても△7七歩の追撃が利く。藤井は5分ほど考えたところで駒台の駒に触れる。 * *※局後の感想※ *▲2二歩は△2八歩▲同飛△3九角▲3八飛△4八角成▲同飛△6七金の筋があり、先手は指しづらい。 69 同 銀(77) ( 5:10/01:17:49) *駒台上、2枚目の歩を置くスペースを心持ち広げてから▲6六同銀と応じた。囲いの銀だったが、▲6四歩と放つ支えとして5五に進出し、攻め駒に変わる可能性も見せる。現地大盤解説会で聞き手を務める中澤女流二段が、以下のように喜びを語った。右玉を得意としており、朝から控室に詰めている。 *「伊藤先生が後手だったので、ひょっとしたら右玉になるかなと思っていました。勉強させていただいています」(中澤女流二段) *後手は銀の進出を許さない△5四銀や玉頭に手をつける△8六歩が考えられ、比較は難しい。伊藤は右手に扇子を握り締めて考える。 *この局面で定刻の12時になり、伊藤が40分以上の長考に沈んだまま昼食休憩に入った。ここまでの消費時間は▲藤井1時間17分、△伊藤1時間41分。対局は13時から再開される。昼食は両者ともに名物ぽんきし膳を頼んだ。飲み物は藤井が冷たい緑茶、伊藤が温かいゆず茶。「ぽんきし」は名古屋名物のきしめんと、か茂免名物のスッポン料理を融合して生まれた。温かいきしめんに煮込んだスッポン肉、湯葉、壬生菜、九条ネギをのせ、出汁は吉野葛でとろみをつけた醤油ベースのあんかけにしている。スッポンはサッパリとした上品な味わいと、たっぷりのコラーゲンが特長。 *昼食休憩中、屋敷九段は継ぎ盤に進行の一例として(1)△5四銀▲5六歩△6五歩▲5五歩△6六歩▲5四歩△6七銀▲6八歩△7八銀成▲同玉を示す。 *「後手は調子よく攻めているように見えても、先手も簡単には倒れません」(屋敷九段) *5四に拠点が残って▲5三銀の打ち込みがある点や、▲8二銀△同飛▲2一飛成と竜を作る変化がある点を挙げ、後手も無傷ではいられない。ほかに(2)△6四歩とキズをケアしておき、▲5五銀△8六歩▲同歩△8五歩▲同歩△同飛▲8七歩△5五飛▲2一飛成△3一金▲1一竜といった変化も示す。いずれも一気に終盤となり、こうした変化も含めて読んでいくのは大変な作業となることを指摘した。 * *【昼食休憩】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-bc24.html *【対局者の昼食】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-7632.html *【昼食休憩時の対局室】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-e82f.html 70 5四銀(43) (44:17/01:41:58) *13時になり、対局再開。銀を上がり、▲5五銀を防いだ。(1)▲5六歩△6五歩(A)▲5五銀なら△同銀▲同歩に△6六角が王手金取りになる。(1)▲5六歩△6五歩と進めば、いきおい(B)▲5五歩△6六歩▲5四歩と銀の取り合いを挑むことになり、この進行は激しい。長谷川女流二段は(2)▲2二歩を示す。振り飛車党のためこうした将棋を指すことはあまりなさそうだが、急所を突いているようだ。 *「以下、△3三桂▲2一歩成△2八歩▲同飛△3九角▲3八飛△4八角成▲同飛△2一飛▲2五歩みたいな進行ですね。先手は△2六歩や△2七金のような手も気になりますが、▲6八飛と回ってどうなのか。ほかに自陣を整備する手として(3)▲5八金も自然ですね。次こそ▲2二歩があります。次の手は方針が問われますね」(屋敷九段) *対局再開から1時間が経過し、時刻は14時を回った。藤井の長考は続く。名古屋観光ホテルでは現地大盤解説会が始まった。 * *※局後の感想※ *伊藤「(1)▲5六歩は突きづらいですか?」 *△6五歩(B)▲5五歩△6六歩▲5四歩に△6七銀▲6八歩、あるいは△8六歩▲同歩△6七銀▲6八歩△7六銀成▲8七銀の順が示され、互いに自信のなさそうな様子だった。感想戦の終盤に再び(1)▲5六歩に触れられ、4八金型だったため突きづらかったと藤井。本譜は74手目△8六歩が痛く、先手としては(1)▲5六歩だったかとされた。(B)の変化でどうか。(3)▲5八金には△4三銀上や△6五歩がある。 * *【対局再開】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-2985.html *【現地大盤解説会】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-403b.html 71 2二歩打 (71:28/02:29:17) *1時間11分の長考の末、桂取りに歩を放つ。攻めの方針を示した。対しては反射的に桂を逃げてしまいそうだが、伊藤は腰を落ち着けて時間を使う。中盤の難所を迎えていることがうかがえる。桂取りを放置して△8六歩の攻め合いも考えられるようだ。 *15時が近づき、両対局者に午後のおやつが出された。藤井はペコちゃんのほっぺ(ミルキークリーム)とアップルジュース、伊藤は午前に藤井が頼んだプレミアム濃い抹茶のケーキとアイスティー。着手を待つ藤井は対局室に運ばれたアップルジュースに直ちに手をつけ、控室におやつを食べにいったのか、席を外す。 * *※局後の感想※ *藤井は△8六歩も「結構、嫌」だったという。 * *【藤井叡王が長考で攻める】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-3331.html *【午後のおやつ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-ecc5.html 72 2八歩打 (47:02/02:29:00) *15時頃、△2八歩までの消費時間は▲藤井2時間29分、△伊藤2時間29分。47分の長考を返し、飛車の頭をたたいた。伊藤も着手して席を立つ。対局室には記録係のみが残された。藤井が先に戻ってくる。やがて伊藤も戻ってきた。△2八歩は飛車を二段目に誘うことで、好機に△3九角、あるいは△5九角と打ち込む狙いがある。藤井は▲2八同飛と注文に乗るか、▲6九飛△6五歩▲7七銀△2二金▲4五歩のように固めてから反撃に出るのか。後者は△4五同歩なら▲4四角の王手金取りがある。 73 同 飛(29) (22:52/02:52:09) *22分考え、誘いに乗って▲2八同飛と応じた。 74 8六歩(85) ( 0:49/02:29:49) *玉頭に手を出す。▲8六同歩と取らせることで△5九角のあと、8六に馬を作れる。 75 同 歩(87) ( 0:06/02:52:15) 76 8五歩打 ( 0:14/02:30:03) *継ぎ歩で攻めていく。さらに歩を持っていれば▲8五同歩に△8六歩が「継ぎ歩に垂れ歩」の手筋になるが、伊藤は歩を8五までつり上げておく効果が大きいと見たようだ。 77 2一歩成(22) ( 3:25/02:55:40) *間隙を縫って桂を取った。6手前の▲2二歩、4手前の▲2八同飛もそうだが、妥協なく最も強い手を重ねる。読みを入れたうえで戦えると判断したようだ。 78 8六歩(85) ( 0:37/02:30:40) 79 7九桂打 ( 0:15/02:55:55) *得した桂を自陣に放ち、玉頭を守った。先手は桂得だが、玉頭が乱れたうえに一段目への角打ちも生じている。バランスは取れていそうだ。 80 6五銀(54) ( 5:05/02:35:45) *5分考え、銀をぶつけて駒の補充を図った。銀を手にすれば角を手持ちにしたまま△3九銀の割り打ちが生じる。▲5五銀△7六銀▲6四歩△5三金▲5四角と一直線に攻め合うのは、△5四同金に▲同銀が▲6三歩成△5一玉▲5二金までの詰めろになるが、△8七歩成▲同桂△同銀成▲同金△同飛成▲同玉△6九角の筋で先手玉がいきなり危ない。 * *【伊藤七段の反撃】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-ab82.html 81 5五銀(66) (15:28/03:11:23) *15分の考慮で銀を前に出る。▲6四歩を見せ、攻め合う姿勢を示した。 *16時頃、▲5五銀までの消費時間は▲藤井3時間11分、△伊藤2時間35分。伊藤は10分以上、考えている。△7六銀▲6四歩△5三金▲5四角△同金▲同銀△8七歩成▲同桂△同銀成▲同金△同飛成▲同玉△6九角の順は▲7七玉で詰まないようだ。 * *※局後の感想※ *藤井は△7六銀を指摘した。▲6四歩△5三金▲7七歩△8七歩成▲同桂△同銀成▲同金△8六歩▲7六金△8七歩成▲7九玉で耐えればいいとしながらも、負けていてもおかしくないという。 *藤井「そちらも本譜のほうが余裕があるので、自然ですかね」 *本譜に比べてリスクがあることが確認された。 *伊藤「本譜もハッキリと成算があるわけではなかったので」 82 5四歩打 (19:05/02:54:50) *20分近く考え、△7六銀と攻め合うのではなく自玉近くに手を入れた。▲4四銀なら攻めとして甘く、後手は銀を持てば攻めに迫力が出る。先手はこの手番で激しく切り返すしかない。 83 6四歩打 ( 8:11/03:19:34) *銀が天王山にいるうちに一仕事。金取りに歩を打ち返し、取り合いを挑む。 84 5三金(63) ( 1:01/02:55:51) *代えて△5五歩▲6三歩成△同玉の進行は後手陣が乱れる。金をかわし、銀取りを残す。 85 8二歩打 ( 2:38/03:22:12) *横に広く利く一段飛車は受けの働きが大きい。72手目△2八歩同様に飛車の頭をたたき、二段目に誘う。 86 同 飛(81) ( 0:41/02:56:32) *※局後の感想※ *伊藤は▲1一と△5五歩▲6三香を示し、どうかと尋ねた。よく分からなかったという。藤井はどこに逃げられても成算を持てない様子を見せる。△6九角〜△8七銀が厳しいこと、挟撃形が作りにくいことなどを指摘した。一例は△5二玉▲6一角△4一玉▲8三歩△9二飛で「耐えている気が」と藤井。 87 4一角打 ( 0:25/03:22:37) *飛車の利きがなくなった隙に角を打ち込む。銀取りの残る中で金取りに切り返した。桂を取って作ったと金が△3一金の当て返しを防いでいる。△5五歩なら▲3二角成が▲4二馬を見せながら△7六銀に▲同馬を用意して幸便だが、△4三金上と逃げれば天王山の銀は捕まったまま。先手は暴れていく手段が求められ、▲5六銀が候補に挙がった。以下、△5五歩▲6五銀△同桂▲8三歩△同飛▲7四角成の進行は後手が面白くないようだ。 * *※局後の感想※ *伊藤「そうか、▲4一角のほうが厳しいんですね」 *対して藤井は「苦しかった」と返す。実際、難しい戦いが続いていた。 * *【「文化のみち」白壁】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-318f.html *【高見七段の見解】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-71f3.html 88 4三金(32) (30:50/03:27:22) *30分の考慮で金取りをかわす。飛車に成られるスペースができたのは仕方なかった。 * *※局後の感想※ *藤井は▲5六銀と指したかったと明かす。しかし、△7六銀▲8三歩△8一飛▲6三歩成△同金▲同角成△同玉▲6四歩△7二玉▲8二金△同飛▲同歩成△同玉▲6三歩成に△6九角(△8七金以下の詰めろ)があるため断念した。 89 8三歩打 ( 9:43/03:32:20) *17時頃、▲8三歩までの消費時間は▲藤井3時間32分、△伊藤3時間27分。互いに残り時間は30分前後に迫っている。 90 同 飛(82) ( 1:03/03:28:25) 91 5六銀(47) ( 0:06/03:32:26) *飛車を三段目に呼んでから銀をぶつけた。後の▲7四角成が飛車に当たるようにしている。△5五歩▲6五銀△同桂▲7四角成は、後手にそこでいい手があるかどうか。現局面は△6九角や△7六銀も候補になる。 92 6九角打 (12:18/03:40:43) *12分考え、先手陣に角を打ち込んだ。銀を手にしての△8七銀が実現すれば先手玉は寄る。5筋の銀は2枚とも質駒になっており、先手は銀の入手を防ぐ手段はない。従って角取りに▲2九飛と引いてどうか。対して△3六角成では甘く、△8七歩成▲同桂△7八角成▲同玉△7六銀のような進行が考えられる。 93 2九飛(28) ( 3:09/03:35:35) *3分の少考で角取りに飛車を活用した。銀を取られても▲6九飛と抜いてしまえば△8七銀は緩和される。 * *※局後の感想※ *伊藤は本譜と△8七歩成の2者択一だったと振り返った。△8七歩成が本譜にまさる。▲8七同桂△7八角成▲同玉△7六銀▲8八歩△5五歩▲6九飛△5六歩▲6三歩成に△5一玉があった。△7一玉だと▲7二と△同玉▲6一角から飛車を取られてしまう。△5一玉以下、▲5三と△6七銀打▲同飛△同銀成▲同玉△5三金▲3一との進行は藤井が「自信ない」、伊藤も「何とかしたい」と後手持ちで一致した。ただ、後手の具体的な指し手も難しい。△3一同銀▲4三金が示され、互いに自信の持てない様子だった。藤井はこの進行だと先手に選択肢が狭い点に言及している。 94 5五歩(54) ( 9:17/03:50:00) *10分近い考慮時間を割き、角は見捨てて銀を取った。▲6九飛に△5六歩ともう1枚の銀も取れる。現状、先手は△8七銀と打ち込まれると勢力が足りていない。以下、▲9七玉△9六銀成▲同玉△7八角成▲8七歩△9五歩▲9七玉△8七歩成▲同桂△同馬までの詰めろになっている。 * *【藤井叡王の踏み込み】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-b170.html 95 6九飛(29) ( 5:33/03:41:08) *角を取って詰めろを解除する手に5分を費やした。先の変化を読んだのだろう。 96 5六歩(55) ( 0:04/03:50:04) 97 7七桂(89) ( 5:21/03:46:29) *銀取りに桂を跳ねる。7七の地点が埋まって自玉が逃げにくくなる意味があるが、恐れずに前を向いた。次に▲6五桂が▲5三桂成以下の詰めろになる。遠く6九から飛車が玉頭までにらんでおり、銀は6五から逃げにくい。 * *※局後の感想※ *伊藤「▲7七桂の図が、思いのほか先手玉がしぶといというのが誤算でした」 98 6六歩打 ( 5:44/03:55:48) *歩を打って飛車の利きを止めた。▲8四歩△同飛▲6五桂から▲6三銀のような手段があり、後手を引く感は否めない。 * *【辛抱の△6六歩】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-23b1.html 99 8四歩打 ( 3:25/03:49:54) *飛車の頭をたたく。四段目にずらすことで、▲6五桂△同桂と進んだ際に飛車が6三の地点に利かなくなる。 *伊藤は現局面の考慮中に持ち時間を使いきり、1手60秒の秒読みに入った。2手前の▲7七桂が意表を突いたのか。 *「▲7七桂は見える手で、先手はこれで勝ちなら話が早いです。しかし、めちゃめちゃ怖い手でもありますよ。まさかやってくるとは、という感じかもしれません」(屋敷九段) 100 同 飛(83) ( 4:12/04:00:00) 101 6五桂(77) ( 0:26/03:50:20) *待望の銀の入手。次は▲6三銀が厳しい。 102 6四金(53) ( 0:00/04:00:00) *桂ではなく、玉頭に迫る歩のほうを排除した。 103 6六飛(69) ( 1:48/03:52:08) *飛車を走る。少考での着手は、△6五桂にも見通しがついていることをうかがわせる。 104 6五桂(73) ( 0:00/04:00:00) 105 同 飛(66) ( 0:24/03:52:32) *強く飛車を切った。△6五同金に▲6三銀で決めにいった手といえる。 106 同 金(64) ( 0:00/04:00:00) 107 6三銀打 ( 0:21/03:52:53) *この手を見て伊藤が投了した。△5三玉、△7一玉、△7三玉は▲6二角から飛車を取られ、先手玉が安泰になる。△6一玉にも▲5二角成△7一玉▲6二馬があり、後手が飛車を取られるのは避けられない。△7三玉▲6二角に△8三玉と頑張るのも、▲8四角成に△同玉なら▲7四銀成△9三玉▲8三飛△9二玉▲8四桂までの詰みがある。終局時刻は17時58分。消費時間は▲藤井3時間52分、△伊藤4時間0分(チェスクロック使用)。藤井は幸先よく五番勝負を先勝。第2局は4月20日(土)、石川県加賀市「アパリゾート佳水郷」で行われる。 * *※局後の感想※ *94手目△5五歩に代えて△8七歩成は有力で勝負はどう転んでいたか。藤井は自信を持てない様子だった。 *藤井「ちょっと先手が悪いんですね」 *伊藤「好調な気はしたのですが、いやあ、しかし……」 *藤井は71手目▲2二歩の組み立てに否定的な見解を示し、変化するなら代えて▲5六歩しかなかったかもしれないという。「(60手目)△5五歩と突かれたあたりで何か工夫が必要でした」とまとめ、感想戦は19時30分に終了した。 * *【藤井叡王が先勝】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-77a3.html *【終局直後】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-bb10.html *【大盤解説会へ】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-af8a.html *【感想戦】 *https://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2024/04/post-10da.html 108 投了 ( 0:00/04:00:00) まで107手で先手の勝ち