# --- Kifu for Windows (Pro) V6.65.11 棋譜ファイル --- 対局ID:7610 記録ID:5acf14350468f80004b24166 開始日時:2018/05/26 14:00 終了日時:2018/05/26 20:36 表題:叡王戦 棋戦:第3期叡王戦決勝七番勝負 第4局 戦型:矢倉 持ち時間:各3時間 消費時間:147▲172△180 場所:群馬・富岡製糸場 備考:夕休前91手目▲92分△146分\n 振り駒:なし 計時方式:チェスクロック 秒読み:60秒 先手消費時間加算:0 後手消費時間加算:0 夕食休憩:18:00〜18:30 夕休前消費時間:91手▲92分△146分 手合割:平手   先手:高見泰地六段 後手:金井恒太六段 手数----指手---------消費時間-- *第3期からタイトル戦に昇格した叡王戦。金井恒太六段と高見泰地六段が叡王の座を争う決勝七番勝負は、高見の3連勝で第4局を迎えた。高見がストレートで初タイトルを獲得するのか。それとも、金井がタイトル戦初勝利を挙げて、踏みとどまるのか。 *第4局は5月26日(土)、群馬県富岡市「富岡製糸場」で行われる。対局は14時開始、夕食休憩は18時から30分間。持ち時間は各3時間(チェスクロック使用)。使いきると1手60秒の秒読みになる。先後はあらかじめ決まっており、先手番は高見だ。 *立会人は塚田泰明九段、記録係は関矢寛之三段(武者野勝巳七段門下)。ニコニコ生放送の解説は三浦弘行九段、聞き手は中村桃子女流初段、聞き手・リポーターは塚田恵梨花女流1級。現地大盤解説会の解説は糸谷哲郎八段、聞き手は安食総子女流初段が務める。 *前夜祭で棋士の戦型予想は、初手▲7六歩△8四歩▲6八銀からの矢倉が圧倒的に人気だった。金井が2手目に△3四歩と突けば、横歩取りが予想される。高見は直近の対局で初手▲2六歩から相掛かりを指しているので、本局でも採用するかもしれない。 *13時47分、高見が対局室に入った。1分ほどして、金井が上座に着く。13時49分、駒箱が開けられた。14時、ともにしっかりとした声で「お願いします」と一礼した。 * *【ニコニコ動画:第3期叡王戦 決勝七番勝負 第4局 金井恒太六段 vs 高見泰地六段】 *http://live.nicovideo.jp/watch/lv311157727 * *(棋譜・コメント入力=紋蛇) *[棋譜表示の*はコメント付きの指し手。【】内は中継ブログタイトルならびにリンク。#は局後の感想が追記された指し手] 1 7六歩(77) ( 0:34/00:00:34) *◆高見 泰地(たかみ たいち)六段◆ *1993年7月12日生まれ、神奈川県横浜市出身。石田和雄九段門下。2011年、四段。2018年、六段。棋士番号は284。 *タイトル戦登場は1回。 * *【対局開始】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-75cb.html 2 8四歩(83) ( 0:46/00:00:46) *◆金井 恒太(かない こうた)六段◆ *1986年5月25日生まれ、埼玉県上尾市出身。飯野健二七段門下。2007年、四段。2016年、六段。棋士番号は265。 *タイトル戦登場は1回。 * *金井は昨日、誕生日を迎えた。前夜祭ではケーキが出され、関係者とファンで金井の32歳を祝った。 * *【前夜祭7】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-fbb9.html 3 6八銀(79) ( 0:16/00:00:50) *前夜祭の予想通り、矢倉になりそうか。 * *【前夜祭9】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-2153.html * *■ニコニコ生放送■  *三浦弘行九段>第2局と第3局の指し直し局も、高見六段の先手で矢倉でした。作戦は金井六段のほうがうまくいっていたので、高見六段が工夫するんでしょうか。 4 3四歩(33) ( 1:16/00:02:02) *金井の勝率は、先手番(5割3分1厘)よりも、後手番(5割7分1厘)のほうが高い。高見の勝率は、先手番が6割5分、後手番が5割9分4厘。高見のように先手番の勝率のほうがよい棋士が多いため、金井は珍しいタイプだ。 5 7七銀(68) ( 0:20/00:01:10) *高見は矢倉を目指す。好きな戦型のひとつで、金井の得意形でもある。 6 6二銀(71) ( 0:18/00:02:20) *叡王戦はドワンゴが主催する棋戦。今期の第3期からタイトル戦に昇格した。予選は段位別、本戦は16名によるトーナメント戦、決勝は七段勝負で争われる。 *開幕前に作られたプロモーションビデオでは、タイトル戦初登場の金井と高見が率直な気持ちを語っている。 *金井は趣味のピアノの演奏を披露した。 * *【株式会社ドワンゴ】 *http://dwango.co.jp/ * *【第3期 叡王戦】 *http://www.eiou.jp/ * *【第3期 叡王戦「決勝七番勝負、今春開幕!」】 *http://www.nicovideo.jp/watch/sm32771885 7 2六歩(27) ( 0:43/00:01:53) *叡王戦決勝七番勝負には生茶、マカフィー、タカラレーベン、デンソーが協賛している。 * *【生茶|ソフトドリンク|キリン】 *http://www.kirin.co.jp/products/softdrink/namacya/ * *【サイバー セキュリティ対策|マカフィー】 *https://www.mcafee.com/jp/index.html * *【株式会社タカラレーベン 新築分譲マンション・新築一戸建て・物件情報】 *http://www.leben.co.jp * *【DENSO - 株式会社デンソー/Crafting the Core/】 *https://www.denso.com/jp/ja/ 8 4二銀(31) ( 0:32/00:02:52) *決勝七番勝負の観戦記は、叡王戦サイトで公開されている。第1局は白鳥士郎さん(ライトノベル作家。『りゅうおうのおしごと!』(SBクリエイティブ)など)、第2局は鈴木大四郎さん(漫画家。『ナリキン!』(秋田書店)など)、第3局は大川慎太郎さん(観戦記者。『不屈の棋士』(講談社)など)が執筆した。 *第4局は、小説家の柚月裕子さん(将棋を舞台にしたミステリー小説『盤上の向日葵』(中央公論新社)など)が担当する。前夜祭で、柚木さんは「将棋は素人ですが、対局の現場にいなければわからない熱量を自分の言葉で皆様にお伝えしたい」と語った。 * *【第3期叡王戦:観戦記】 *http://www.eiou.jp/watch/ * *【前夜祭3】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-8aaf.html * *【中央公論新社:『盤上の向日葵』】 *http://www.chuko.co.jp/tanko/2017/08/004999.html 9 2五歩(26) ( 0:20/00:02:13) *前夜祭の決意表明は以下の通り。 *高見「ここまで叡王戦の決勝七番勝負に出るために、細い細い一本の糸を死に物狂いでつかみとったようなもの。これを大きな束にして、後世に語り継がれるような名勝負にしたいと思いますし、ここまで戦ってきた自分を信じて精一杯、戦いたい。星取りは意識していないので、一局一局、全力を尽くしたいと思います」 * *金井「明日はいよいよ第4局。スコアのうえでは、高見六段の勢いを感じる3局でした。でも明日、高見さんの勢いを止められるのは自分しかいません。シリーズで押し込まれたのも自分ですけども、予選、本戦の厳しいトーナメントを何とか勝ち上がってきたのも自分ですから、明日、明日こそは、皆さまの心に残るよい棋譜を残せればと思います。精一杯指すことを誓いまして、私のあいさつとさせていただきます」 * *【前夜祭6】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-b0bb.html 10 3三銀(42) ( 0:16/00:03:08) *第2局と第3局の指し直し局は、高見の矢倉に対し、金井が飛車先を受けずに右銀を使って急戦を仕掛けていた。本局は△3三銀と飛車先を受けていたので、違う作戦になりそうだ。 11 5六歩(57) ( 0:17/00:02:30) *富岡市は群馬県南西部に位置する。古くからカイコを育てる養蚕が盛んで、富岡製糸場は1872年(明治5年)に操業開始した官営器械工場だ。当時の輸出の大部分を生糸や蚕種が占めており、おりしもヨーロッパでは微粒子病というカイコの病気が流行っていた。殖産興業を推進する明治政府は生糸を安定した質で大量生産するために、フランスから技師を呼び、レンガ積みの建物や蒸気エンジンの繰糸器械などを導入した。工女は手作業で、煮詰めた繭から糸口を探し出し、何本かをまとめて1本の糸にする。工女の横田英(よこた・えい)が当時の様子を記した回想録は「富岡日記」として有名だ。 *工場は経営主体や機械を変えながら、1987年まで稼働した。現在でも、明治時代からの繰糸所、繭倉庫などが現存している。繰糸所の大きいガラス張りは、当時は電灯が通っていなかったため、日光を採り入れて作業するためだった。対局場には首長館が使われている。 *富岡製糸場は日本の近代化に加えて、絹産業の技術革新・交流などにも大きく貢献した工場として評価されている。敷地を含めて全体が国の史跡、初期の建造物群が国宝および重要文化財に指定されている。2014年、富岡製糸場は田島弥平旧宅(伊勢崎市)、高山社跡(藤岡市)、荒船風穴(下仁田町)の史跡とともに、「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産として、世界遺産に正式登録された。 * *【富岡市ホームページ】 *http://www.city.tomioka.lg.jp/www/toppage/0000000000000/APM03000.html * *【世界遺産:富岡製糸場】 *http://www.tomioka-silk.jp/tomioka-silk-mill/ * *【富岡製糸場】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-8cc4.html 12 3二金(41) ( 0:28/00:03:36) *金井の今年度成績は1勝4敗(0.200) *昨年度成績は15勝15敗(0.500) *通算成績は209勝169敗(0.553) 13 4八銀(39) ( 0:27/00:02:57) *高見の今年度成績は9勝3敗(0.750) *昨年度成績は36勝14敗(0.720) *通算成績は165勝101敗(0.620) 14 4一玉(51) ( 0:19/00:03:55) *金井は叡王戦に第1期から参加し、通算成績は7勝5敗 (0.583)。今期は段位別予選の六段戦で村中秀史六段、村田智弘六段、千田翔太六段、永瀬拓矢六段を破って本戦入りした。本戦では佐藤天彦名人、佐藤康光九段、行方尚史八段に勝ち、決勝七番勝負進出を決めた(段位はすべて当時)。 15 7八金(69) ( 0:16/00:03:13) *高見は叡王戦に第1期から参加し、通算成績は11勝2敗(0.846)。今期は段位別予選の五段戦で中尾敏之五段、渡辺大夢五段、村田顕弘五段に勝ち、本戦に進出。本戦では豊島将之八段、渡辺明棋王、丸山忠久九段を破り、決勝七番勝負進出を果たした(段位はすべて当時)。 16 5四歩(53) ( 0:23/00:04:18) *本日の富岡市は晴れ。予想最高気温は26度だ。夕方に雨の予報が出ている。 17 6九玉(59) ( 0:22/00:03:35) *これまでの対戦成績は、高見の3勝0敗。すべて今期叡王戦決勝七番勝負の対局である。 18 7四歩(73) ( 0:39/00:04:57) *決勝七番勝負は4月14日、愛知県名古屋市「名古屋城」で開幕した。持ち時間は各5時間(チェスクロック使用)。後手の高見が横歩取りに誘導し、金井の悪手を的確にとがめた。 * *【第3期叡王戦決勝七番勝負第1局 ▲金井恒太六段−△高見泰地六段】 *http://live.shogi.or.jp/eiou/kifu/3/eiou201804140101.html 19 3六歩(37) ( 1:05/00:04:40) *「早いね。10分でこんなに進んじゃった」(塚田九段) 20 5二金(61) ( 1:10/00:06:07) *第2局は4月28日、福岡県宗像市「宗像大社」で行われた。持ち時間は各5時間(チェスクロック使用)。互いの得意形の矢倉模様から、後手の金井が右銀を早めに繰り出し、力戦形になった。二転三転のすえに高見が制している。 * *【第3期叡王戦決勝七番勝負第2局 ▲高見泰地六段−△金井恒太六段】 *http://live.shogi.or.jp/eiou/kifu/3/eiou201804280101.html 21 5八金(49) ( 0:22/00:05:02) *第3局の舞台は、宮城県宮城郡松島町「瑞巌寺」。対局は5月12日14時、持ち時間は各3時間(チェスクロック使用)で開始された。横歩取りから先手の金井がリードを奪ったが、高見が猛烈に追い上げ、結果は千日手。 *指し直し局は21時に開始され、第2局と同様に矢倉模様から後手の急戦になった。 * *【第3期叡王戦決勝七番勝負第3局 ▲金井恒太六段−△高見泰地六段 千日手局局】 *http://live.shogi.or.jp/eiou/kifu/3/eiou201805120101.html * *【第3期叡王戦決勝七番勝負第3局 ▲高見泰地六段−△金井恒太六段 指し直し局】 *http://live.shogi.or.jp/eiou/kifu/3/eiou201805120102.html 22 3一角(22) ( 0:28/00:06:35) *【大盤解説会始まる】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-a6a0.html 23 7九角(88) ( 0:34/00:05:36) *【決戦の地へ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-0b35.html * *【検分】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-42ac.html * *【控室での一コマ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-2136.html 24 4四歩(43) ( 0:20/00:06:55) *【磯部ガーデン】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-adcf.html * *【前夜祭1】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-a2ff.html * *【前夜祭2】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-3946.html * *【前夜祭3】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-8aaf.html * *【前夜祭4】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-836d.html * *【前夜祭5】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-cb46.html * *【前夜祭6】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-b0bb.html * *【前夜祭7】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-fbb9.html * *【前夜祭8】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-e437.html * *【前夜祭9】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-2153.html 25 6六歩(67) ( 0:25/00:06:01) *矢倉で持久戦になりそうか。先手は▲7八金と形を決めているので、7八玉型の藤井矢倉はできない。 *「昭和の将棋ですね。相矢倉で飛車先を突き越しているのも、余計にそう感じます」(塚田九段) 26 9四歩(93) ( 1:15/00:08:10) *「え、端を突いた。普通に指すなら△4三金右でした。△9四歩は珍しいです」(塚田九段) 27 9六歩(97) ( 1:41/00:07:42) *「これは脇システムになりそうな気がします。脇システムは三浦九段の得意形です」(塚田九段) 28 6四角(31) ( 1:12/00:09:22) 29 3七桂(29) ( 0:58/00:08:40) *桂で飛車取りを受けた。脇システムを目指すなら、▲3七桂に代えて▲3七銀とし、▲4六角とぶつけるところだった。 * *■ニコニコ生放送■  *三浦弘行九段>先手は飛車先を突き越しているので、右桂を使うには▲4六歩から▲4七銀とすることになりそうです。 30 3一玉(41) ( 0:30/00:09:52) 31 6七金(78) ( 1:30/00:10:10) *流行の▲6七金左。同型矢倉模様で△4三金左と上がる手を応用した手だ。先手は次に▲4六角とぶつけてどうか。角交換になれば、バランスのよい陣形を生かしやすい。 * *【流行形】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-613d.html 32 2二玉(31) ( 0:58/00:10:50) 33 7八玉(69) ( 0:12/00:10:22) 34 5三銀(62) ( 0:21/00:11:11) *ニコニコ生放送では、対局者の昼食が発表されている。金井はイカ天重、高見はうな重だった。 35 4六歩(47) ( 3:59/00:14:21) *珍しい序盤戦だが、指し手は早い。「▲4六歩に代えて▲4六角も普通だったと思います」とニコニコ生放送の三浦九段。ここで現地大盤解説会の糸谷八段と中継がつながり、意見を交換する。三浦九段と糸谷八段はあまり見たことがない序盤とのこと。「森内九段の意見をお聞きしたいです」と糸谷八段。 36 7三角(64) ( 3:30/00:14:41) *対局開始から30分たった。 37 2九飛(28) ( 1:07/00:15:28) 38 4二銀(53) ( 1:07/00:15:48) *後手は次に△4三銀とすれば、銀矢倉になる。 *「先手は最新形ですが、銀矢倉は加藤一二三九段が若手のときの作戦ですよ。昭和と平成が入り混じっています」(塚田九段) 39 4五歩(46) ( 3:18/00:18:46) *鋭い駒音で、高見が仕掛けた。「いった。決断がいい」と塚田九段。▲4五歩の考慮時間は3分18秒だった。 *△4五同歩なら▲同桂△4四銀▲4六歩と桂を支え、次に2筋を交換する。現地大盤解説会の糸谷八段は、▲4五歩に△4三金右▲4四歩△同金▲4五歩△4三金引▲4七金を並べた。先手は次に▲5七銀から▲4六銀と銀を攻めに使えるが、金銀が分裂するので、指しこなすのは容易ではない。 *ようやく金井の手が止まった。14時45分、考慮時間は10分を経過した。 40 同 歩(44) (10:46/00:26:34) *14時46分、金井は△4五同歩を選ぶ。 41 同 桂(37) ( 0:27/00:19:13) 42 4四銀(33) ( 0:17/00:26:51) 43 4六歩打 ( 0:56/00:20:09) *「後手は△4三金右とし、飛車先交換を甘受して穴熊に組むかもしれません。先手は桂を中央に跳んでいるので、穴熊の弱点である端攻めを狙いにくいですし、金銀がバラバラなので駒組みが難しいです」(塚田九段) 44 4三銀(42) ( 4:18/00:31:09) *「△4三銀だと、後手は穴熊に組まないでしょう。囲いに手を掛けるとしても、△4二金右ぐらいです」(塚田九段) * *※局後の感想※ *「本譜の△4三銀と△4三金右からの穴熊、どちらがよいかわかりませんでした」(金井) 45 2四歩(25) ( 1:06/00:21:15) *2筋を交換しにいく。 46 同 歩(23) ( 0:12/00:31:21) 47 同 飛(29) ( 0:05/00:21:20) 48 2三歩打 ( 0:09/00:31:30) 49 2九飛(24) ( 0:07/00:21:27) *15時0分、午後のおやつが出された。金井がシフォンケーキセット(シルクシフォンケーキと味噌シフォンケーキ)。高見がプリンそこがみそ、ビタミンのマリネクレープ。クレープの生地には地元の名産品、コンニャクが使われている。 * *【おやつ】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post.html * *15時10分、高見の師匠、石田和雄九段が控室に来訪した。 *「お忍びだよ、お忍び。高見はわからないよね。本人が見なきゃ大丈夫。いやいやしかし、高見が強くなっちゃったね。どうですか、形勢は。ちょっと対局室の入り口だけ見てもいいのかな」(石田和九段) * 石田和九段は千葉県柏市で「柏将棋センター」を経営している。今月に出版された『棋士という生き方』(イースト・プレス)は、石田和九段の棋士人生を振り返る内容。弟子の佐々木勇、高見、勝又清和六段、門倉啓太五段、渡辺大夢五段について、思い出とエールが綴られている。 * *【石田和雄九段が来訪】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-0076.html * *【日本将棋連盟東葛支部 柏将棋センター】 http://www.kashiwa-shogi.com/ * * 【棋士という生き方 | イースト・プレス】 http://www.eastpress.co.jp/shosai.php?serial=2970 50 8五歩(84) (18:42/00:50:12) *「先手は端を打診したり、▲4七銀〜▲6八角〜▲5九角〜▲2六角と角を転換するでしょう。角が2六まで来れば、▲5五歩の仕掛けを狙えます。△同銀は▲5三桂成、△5五同歩は▲5四歩△同銀▲4四角です。後手はその前に攻撃態勢を整えたいです。△6四歩から△6二飛とか、△6四歩〜△8四角〜△7三桂から△6五歩でしょうか」(塚田九段) * *※局後の感想※ *△8五歩に代えて△4五銀▲同歩△4六桂を狙うのは、▲4五同歩ではなく▲4七銀としてから銀を取れば先手よし。 51 4七銀(48) ( 4:13/00:25:40) 52 6四歩(63) ( 1:57/00:52:09) 53 5七角(79) ( 1:50/00:27:30) 54 8四角(73) ( 1:39/00:53:48) 55 4八角(57) ( 1:54/00:29:24) *モニタでは塚田女流1級が富岡製糸場をガイドしている。「娘さん、べっぴんさんじゃない」と石田和九段。塚田九段は「はぁ」と照れ笑い。 56 7三桂(81) ( 2:22/00:56:10) *△7三桂を見て、「手がしなっているじゃないか」と石田和九段。 57 2六角(48) ( 0:35/00:29:59) *「次に▲5五歩と仕掛けられたら痺れちゃいますよ。後手は長考するだろうねぇ」(石田和九段) *いつの間にか、石田和九段は控室からいなくなっていた。富岡製糸場の観光に出かけたのかもしれない。 *「現局面で△6三金ですか。これなら▲5五歩に△同歩▲5四歩△同金で大丈夫です」(塚田九段) *現地大盤解説会では、森内九段が解説している。 *「駒組みが飽和状態なので、そろそろ戦いが始まりそうです」(森内九段) * *【金井六段が長考中】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-2812.html 58 6三金(52) (31:30/01:27:40) *31分30秒の考慮で△6三金。塚田九段が予想していた手で、▲5五歩に備えている。 59 1六歩(17) ( 1:24/00:31:23) *16時ごろの局面。現局面までの消費時間は▲高見31分、△金井1時間27分。これまでのシリーズは、常に金井が先に時間を使っていた。第3局の観戦記で、高見は「チェスクロック式なので、時間の残り方はかなり正確に読めるんです。夕食休憩の時、自分が残り1時間20分、相手が40分にしたかった。終盤で時間でも優位に立ちたかったから」と語っている。 * *【指し直し局・高見泰地編『際立っていた決断力』 金井恒太六段―高見泰地六段:第3期叡王戦 決勝七番勝負 第3局 観戦記】 *http://originalnews.nico/100699 * *■ニコニコ生放送■  *三浦弘行九段>△1四歩と受けてはいけません。▲1五歩△同歩▲1四歩と動かれ、以下△同香は▲1五香△同香に▲同角が▲5一角成の先手になります。 * 60 6五歩(64) ( 6:11/01:33:51) *金井も右桂の活用をはかる。 61 同 歩(66) ( 0:17/00:31:40) *※局後の感想※ *「▲6五同歩では、▲4八角から角をぶつけるほうがよかったでしょうか」(高見) 62 同 桂(73) ( 1:56/01:35:47) *▲8八銀や▲6八銀は△6六歩と打たれてしまう。▲6六銀と上がるのが自然だ。▲6六銀には△6四歩と打つことになる。△6四歩に代えて△6四金は▲5三桂成があり、放置するのも▲6四歩△同金▲5三桂成が痛い。 63 6六銀(77) ( 4:31/00:36:11) 64 6四歩打 ( 0:29/01:36:16) *「▲1五歩は△9五歩▲同歩△9六歩が嫌みですか。以下▲同香は△9五香から香を手に入れて△2四香や、△8六歩▲同歩△6六角▲同金に△8六飛で香取りが受けにくいです。となると、先手は▲1五歩と詰めないかもしれません。しかし、ほかの手も難しいですね。現局面で▲1七角は、△9五歩▲同歩△9六歩なら持ち歩が3歩になるので、▲2四歩から継ぎ歩攻めできます。しかし、▲1七角はいかにも先手が待ち構えているので、△9六歩とはやらないでしょう」(塚田九段) * *【富岡製糸場見学ツアー1】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-5aef.html 65 1五歩(16) ( 9:27/00:45:38) *【富岡製糸場見学ツアー2】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-6787.html * *※局後の感想※ *「▲1五歩に代えて▲1七角とし、もう1歩入ったら▲2四歩からの継ぎ歩攻めも考えましたが、▲1七角には△1四歩と待たれて手がわかりません。△1四歩に▲3五歩は攻めになっていないですし」(高見) 66 9五歩(94) ( 4:28/01:40:44) *端から手をつなげる。金井は自身の棋風を「ジャブを放つタイプ」と分析していた。 67 同 歩(96) ( 2:10/00:47:48) 68 9六歩打 ( 0:19/01:41:03) *先手は中央に金銀を配置しているため、8、9筋が弱い。△9六歩は端から動いて、その弱点を突こうとしている。▲9六同香は、△9五香や△8六歩▲同歩△6六角▲同金△8六飛と攻める。控室の塚田九段は、△8六飛に▲4四角△同銀▲8七銀を示した。以下△7七銀は▲同桂△同桂成▲同玉△8五桂▲8六玉△7七角▲8五玉△8四歩▲同玉△6六角成▲8三玉△9三馬▲7二玉△6二金打▲8一玉でしのいでいそうだ。森内九段は途中の△7七銀で、△8二飛や△8四飛を候補手に挙げた。 *16時40分、石田和九段が控室に戻ってきた。富岡製糸場を回ってきたという。 *「いやー、失敗しました。生糸の体験をやりたかったんですけど、もう終わっていましたよ」(石田和九段) * *※局後の感想※ *高見は△9六歩で苦しくしたと感じていた。 69 同 香(99) (10:53/00:58:41) *堂々の▲9六同香。△9五香や△8六歩▲同歩△6六角▲同金△8六飛があるので怖い。激しい変化は△8六歩だ。選択肢は金井にある。 70 9五香(91) (11:35/01:52:38) *金井は香交換の変化にした。香を持てば、△2四香の田楽刺しや△8三香からの攻めが楽しみになる。 71 同 香(96) ( 0:18/00:58:59) 72 同 角(84) ( 0:09/01:52:47) *香を交換しながら、飛車の利きがスッと通った。先手は△2四香と、△8三香から△8六歩の攻めを防がないといけない。 73 9六歩打 ( 3:21/01:02:20) *まずは威張っている角を追い払う。 74 5一角(95) ( 0:24/01:53:11) *石田和九段は塚田九段と継ぎ盤を挟む。 *「端が嫌だねぇ、端が」(石田和九段) *先手が△2四香を防いでも、△9七歩▲同桂△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△9六飛が残る。 75 2七香打 ( 4:27/01:06:47) *17時ごろの局面。現局面までの消費時間は▲高見1時間6分、△金井1時間53分。 *高見は香を据えて力をためる。△2四香に▲2五歩△同香▲4四角△同銀▲2五香を用意しながら、▲4四角△同銀▲4一銀の攻めを見せた。▲4一銀に△3一金は▲2三香成まで。▲4一銀と飛車香のコンビネーションが強力なので、現局面で△9七歩は▲4四角の変化を誘発しかねない。▲4一銀の変化を知った石田和九段は「はぁー、そうか。いや、高見は最近強いからなぁ」とつぶやく。 * *【製糸場周辺を歩く】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-20ae.html * *【現地解説会の様子】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-fc7e.html * *【17時ごろの控室】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/17-b42d.html 76 8六歩(85) (14:49/02:08:00) *ニコニコ生放送には、塚田九段と塚田女流1級、石田和九段が出演中。 *「気になってねぇ。迷ったんですけど、柏のひとたちに行ってこいといわれましてね。塚田九段にお聞きしたいんですけど、どっちがいいんですかねぇ」(石田和九段) * *※局後の感想※ *「△8六歩はよい手かわからなかった」と金井は話したが、控室の塚田九段は8筋歩交換から△8一香を狙うのは好手だと見ていた。 77 同 歩(87) ( 0:04/01:06:51) *△8七歩は、▲同玉△8一香に▲5九角でぴったり受かる。控室では△8六同飛▲8七歩△8二飛として、次の△8一香から△8七飛成に期待してどうかといわれている。 78 同 飛(82) ( 0:39/02:08:39) 79 8七歩打 ( 0:52/01:07:43) 80 8二飛(86) ( 0:17/02:08:56) *飛車先を交換したことで、△8一香の味が抜群になった。△8一香に代えて△8三香から△8七香成は、8筋を突破しても▲6八玉で8筋が重い。 81 6五銀(66) ( 2:42/01:10:25) *銀で桂を食いちぎり、総攻撃開始。△6五同歩は▲6四歩。△6四同金は▲5三桂成、△6二金は飛車の利きが止まるので、後に▲4四角△同銀▲4一銀の攻めが厳しくなる。 82 8一香打 ( 3:11/02:12:07) *金井は△6五歩で銀を取れる。その前に8筋に香を足した。 *ニコニコ生放送の出演は終了したが、石田和九段は高見側に座って駒を動かす。 *「森内先生、どっちがいい」(石田和九段) *「お弟子さん、いいんじゃないですか」(森内九段) *「いい、いい?」(石田和九段) *「悪いとはいいにくいです(笑)」(森内九段) 83 8六桂打 ( 2:33/01:12:58) *桂ですぐに8筋を守った。△8五歩は8筋が重くなり、▲7四桂と飛車取りでかわされる。 * *※局後の感想※ *「本当は攻めに使いたかった桂ですが、▲8六桂に代えて▲7七金は△6五歩で自信がありません。先手は利かされ過ぎです」(高見) 84 6五歩(64) ( 0:11/02:12:18) *金井は銀桂交換の駒得。先手に手を渡すのは怖いが、ここをしのげば楽しみが多い。 85 6四歩打 ( 0:36/01:13:34) *高見は2筋の攻撃陣を爆発させたい。▲4四角△同銀▲4一銀を決行する前にどれほど利かしを入れられるか。▲6四歩は△同金なら▲5三桂成、△6二金なら6筋に拠点ができる。 86 6二金(63) ( 5:14/02:17:32) *▲7四桂の両取りは△8七飛成で先手不利。▲1四歩△同歩▲1二歩△同香▲4四角△同銀▲1一銀は、△同玉▲2三香成△同金▲同飛成△2二銀▲3二竜△2三角で簡単ではない。 87 5五歩(56) ( 9:28/01:23:02) *「いやいやいや、大丈夫か、これ」(石田和九段) *先手は駒損なので、緩めたように見える▲5五歩は意表を突かれる。「悩みますね」と森内九段。△5五同歩は▲5四歩でかえって速くなる。 88 3五歩(34) ( 7:13/02:24:45) *角の利きを遮って、▲4四角からの筋を防いだ。 89 5四歩(55) ( 0:12/01:23:14) *△5四同銀は3四に空間ができるのが嫌みだが、全面戦争になるとすべてのスキを消すのは難しい。金井はギリギリで耐えて、カウンターに期待したい。 90 8三飛(82) ( 1:35/02:26:20) *じわっと飛車を浮く。4三の銀がいなくなると、飛車の横利きが2三まで通り、先手の2筋のロケットの迫力を削ぐことができる。▲5三歩成には△同金で遊び駒の金を使え、桂を持てば△6六桂が急所の一撃。先手は玉が薄いので、手がつくと速い。高見は前傾姿勢で考えている。形勢は難しい。 *18時、高見が9分使って、夕食休憩に入った。両者ともすぐに席を立つ。ここまでの消費時間は▲高見1時間32分、△金井2時間26分。夕食注文は、金井は親子丼。高見が山菜そば、おにぎり(梅、おかか)。 * *対局再開は18時30分。 *夕食休憩時、まだ現地で雨は降っていない。やや日が暮れてきたなか、ツバメがレンガ積みの東置繭所の屋根に入っていく。やがて、雛の鳴き声が聞こえてきた。遠くでは踏切が鳴っている。 * *【夕食休憩】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-d57e-1.html * *■ニコニコ生放送■  *糸谷哲郎八段>時間攻めを考えると、先手はこのまま休憩に入れるでしょうね。ここで指して、後手に考える時間を与えたくありません。 91 4八角(26) ( 9:33/01:32:47) *対局が再開されると、すぐに高見は角を引く。 *「ええ! また高見流。知らないよ、負けても。大丈夫か、おい」(石田和九段) *▲5三歩成や▲3五角の攻めが検討されており、▲4八角は候補にさえ挙がっていなかった。角を引いて飛車香を攻めに働かせたが、4八の角をどう使うかは簡単ではない。 *控室には塚田九段、森内九段が戻ってくる。石田和九段のぼやきは止まらない。▲4八角の善悪は難しいが、少なくとも先手は一気に決めにいこうとしていない。高見が辛抱した印象だ。 * *【対局再開】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-2985.html * *※局後の感想※ *「▲4八角は粘り強いかと思いましたが、自信はありません」(高見) 92 5四銀(43) ( 6:42/02:33:02) *拠点を払う。8筋の飛車が2三まで通り、玉頭の守りに役立った。金井の残り時間は30分を切っている。残り時間の差は1時間ほどだ。 93 2四歩打 ( 0:11/01:32:58) *▲2四歩△同歩▲2五歩の継ぎ歩攻めは森内九段が示していた。 94 同 歩(23) ( 0:06/02:33:08) 95 2五歩打 ( 0:06/01:33:04) 96 同 歩(24) ( 0:07/02:33:15) 97 2四歩打 ( 0:09/01:33:13) *△2四同角は▲2五香がある。しかし、△3一玉▲2五香△2二歩で先手はなかなか突破できない。 98 3一玉(22) ( 0:08/02:33:23) 99 2五香(27) ( 0:16/01:33:29) 100 2二歩打 ( 0:08/02:33:31) *低く構えて、後手は潰れない。▲2三歩成△同歩▲同香成は△同金で、後手のほうが2三に利いている駒の数が多い。後手は飛車角まで守りに参加している。 101 5三歩打 ( 0:26/01:33:55) *先手が嫌みを増やしているが、打ち込む駒がない。継ぎ歩と歩の垂らしで、歩切れになっている。 *「形勢は後手がよくなったと思います。しかし、勝つまではかなり大変です。時間もないですし」(塚田九段) *「後手を持っていたら気が遠くなりますね」(森内九段) 102 3四銀打 ( 0:24/02:33:55) *ガッシリと埋めた。丁寧な指し回しは実に金井らしい。 103 6九玉(78) ( 9:27/01:43:22) *「粘りに出たんだ」と石田和九段。石田和九段は▲6九玉の早逃げに代えて▲7七金とし、▲7四桂△6一金▲5二歩成△同金▲5三歩を狙うのはどうかと話していた。 * *【粘りに出た手】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-8254.html * *※局後の感想※ *「▲6九玉のあたりから迷い出しました」(金井) 104 3三桂(21) ( 0:44/02:34:39) *金井は少しずつ嫌みを消していく。△3三桂は壁を解消し、2一からの逃げ道を作った。桂を持てば△5五桂が痛打だ。 105 6三歩成(64) ( 1:39/01:45:01) *「後手がよいとなると、金井六段が冷静な顔に見えてくる。これが先手がよいとなると、頼りなく見えるんだけど」(石田和九段) *金井の表情は朝から変わらない。ポーカーフェイスで盤上をながめる。 106 同 銀(54) ( 7:55/02:42:34) *19時ごろの局面。現局面までの消費時間は▲高見1時間45分、△金井2時間42分。 *6筋の拠点をわざわざ成り捨てた効果は何か。△6三同銀と取らせて、4五の桂がいなくなったときの△5三飛を防いだ意味だろうか。△6三同飛と飛車筋がそれれば、▲7四桂と歩切れを解消するのだろうか。「電王ぽんぽこ」の評価値は、19時2分の時点で後手のプラス695点を示している。将棋ソフトは後手優勢と判断している。ただ、対局者の形勢判断が一致するとは限らない。将棋は逆転のゲーム。秒読みに追われて一手間違えると、すぐにひっくり返る。 107 3五歩(36) ( 6:04/01:51:05) *高見は終盤の逆転に定評がある。持ち駒の不足に加えて、薄い玉形と条件が悪い。金井より優位に立っているのは持ち時間だ。うまくプレッシャーをかけて、金井を追い込めるか。 108 同 銀(44) ( 0:30/02:43:04) *駒得の金井は自然に指していく。兵力差があるので、先手が暴れてくれば跳ね返せばよい。 109 3六歩打 ( 0:20/01:51:25) *3六に歩を打つと、後に▲3二歩や▲3三歩などの味がつけにくくなる。3六の歩を土台にして、桂交換から▲3五桂と攻めるのだろうか。 110 4四銀(35) ( 0:13/02:43:17) 111 3三桂成(45) ( 0:44/01:52:09) *桂を渡すと△5五桂が速い。高見は猛烈に忙しい。 112 同 角(51) ( 5:33/02:48:50) *ニコニコ生放送には、塚田九段、森内九段、石田和九段が出演している。 *「この将棋に関しては厳しくいいますが、先手になんか不可解な手が多いですね。それが持ち味でもあるけど。私は嘆いていましたが、まだまだ。あの人は少しぐらい苦しいほうが力を出せるんだ」(石田和九段) *だが、先手の勝負手は見つかっていない。▲3五桂は△同銀右▲同歩△2五銀▲同飛△8八角成と応じればよい。次は△5五桂と△8七馬▲5九玉△8六馬▲7七桂△5三馬がある。△5三馬の次は△8九飛成だ。 * *【振り返り解説】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-71ef.html 113 7七金(67) (17:02/02:09:11) *19時30分、17分の考慮で▲7七金。8筋を守りながら、後の△8八角成と△5五桂を受けた。 *「惑わして、相手の読みを外して、時間で追い込もうとしている。▲3五桂は読んでいたはずですよ」(石田和九段) *現局面までの消費時間は▲高見2時間9分、△金井2時間48分。高見の残り時間は1時間を切った。 * *※局後の感想※ *「▲7七金は予想していなくて、状況がよくわかりませんでした」(金井) 114 6六桂打 ( 3:10/02:52:00) *ずっと受けに回っていた金井、攻守を切り替えた。守りの金に働きかける△6六桂は「無難な手を指したい」と三浦九段が示していた。 * *※局後の感想※ *△6六桂に代えて△5三金は、▲3五歩△同銀右に▲4五桂の両取りで何ともいえない。 115 6八金(58) ( 1:46/02:10:57) *金をかわしても、6六の桂はくさびとして立派に働いている。先手が除去するには▲6七歩から▲6六歩しかないが、その間に玉を寄せられてしまいそうだ。 116 8八歩打 ( 0:59/02:52:59) *着実な攻め。ニコニコ生放送の三浦九段も「金井さんがはっきりよくなりました」と話している。 117 3五桂打 ( 2:36/02:13:33) *後手は2三の地点に駒を足すのは難しい。△3五同銀右▲同歩△2五銀▲同飛は、2三を突破されなくても銀2枚を渡し、3三に角が残るのでリスクが高い。 * *【形勢よしの後手、時間でまさる先手】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-0cae.html 118 8九歩成(88) ( 3:24/02:56:23) *残り約7分のうち、半分ほどを使って桂を取った。 119 2三歩成(24) ( 0:07/02:13:40) 120 同 歩(22) ( 0:03/02:56:26) *▲2三同香成は△2八歩▲同飛△2七歩▲同飛△2六歩▲同角△2五歩と、潤沢な歩で大駒を近づければ突破を防げる。 121 同 桂成(35) ( 5:57/02:19:37) *19時47分、高見は席を外した。△2三同銀は▲同香成で攻めを呼び込んでしまう。塚田九段と森内九段の継ぎ盤には、成桂を取らずに△2四歩▲同香△2五歩の受けが並んでいた。 122 2四歩打 ( 1:25/02:57:51) *ニコニコ生放送の三浦九段から「手堅い」という声が聞こえてきた。▲2四同香は△2五歩▲3三成桂△同金で先手の飛車が使いにくくなり、▲2四同成桂は△同角▲同香で2筋が甘くなって後手に手番が渡る。 123 同 成桂(23) ( 2:04/02:21:41) 124 同 角(33) ( 1:49/02:59:40) 125 同 香(25) ( 0:07/02:21:48) *19時53分、金井は一分将棋に入った。 *「△5五桂で先手にさらに嫌みをつけることができますが、後手にカナ駒がないのではっきりしません」(塚田九段) 126 2三歩打 ( 0:20/03:00:00) *▲3五歩はどうか。△同銀右なら▲3三歩が復活し、▲5一角との組み合わせが強力だ。 *「▲3五歩に△5五桂▲5六銀に△4七歩や△6四桂の攻めはありますが、まだはっきりしません。というのも▲3四歩で次に▲2三香成が生じるので、▲3四歩に受けないとだめだからです」(塚田九段) *20時0分、金井が「いやー」とため息をついた。 * *【後手一分将棋】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-e02d.html 127 3五歩(36) ( 7:07/02:28:55) *「開き直ったね。▲5六角とかも考えたんでしょうけど」(石田和九段) 128 同 銀(44) ( 0:00/03:00:00) *△3五同銀右は▲3三歩が復活する。少しアヤが出てきたか。 * *※局後の感想※ *△3五同銀右に代えて△2四歩は、▲3四歩△3五桂▲5六銀△5四香▲6五銀で、先手玉が広くなりそうで後手不満。 129 3三歩打 ( 0:45/02:29:40) *△3三同金は▲5一角が両取り。 130 2二金(32) ( 0:00/03:00:00) *金をかわして耐えているのか。△2二金を見た石田和九段、慌てて森内九段の前に座った。継ぎ盤の高見側を持っている。今度はモニタの前で高見の表情を確認し、「このくさびは大きいと思うけどねぇ」とつぶやく。 131 6六金(77) ( 3:51/02:33:31) *先手は受けても玉は堅くならない。攻め合いに懸けるしかない。 132 同 歩(65) ( 0:00/03:00:00) 133 同 角(48) ( 0:05/02:33:36) *自陣に眠っていた角が世に出た。 134 2四歩(23) ( 0:00/03:00:00) *香を払ったが、玉頭には歩の重石が残ったまま。金井、逃げきれるか。 135 4四桂打 ( 0:54/02:34:30) *▲3二歩成が実現すれば、今度は後手玉が危なくなってくる。 * *※局後の感想※ *「▲4四桂が最も迫っていると思いました。代えて▲2三歩△同銀▲4三桂と迫るようでは、決めきれないです」(高見) 136 3三金(22) ( 0:00/03:00:00) *塚田九段、▲5一角を継ぎ盤に並べて「いやー」と悲鳴を上げる。「さっきよりは光明が見えてきたような。まだ後手が残っていると思うけど、勝負形ですよ」と石田和九段。 *後手は△5四香が速いか。△7九金の詰めろになっている。 * *■ニコニコ生放送■  *三浦弘行九段>そっちで取りましたか! 大丈夫か。 137 5一角打 ( 7:53/02:42:23) *さあ、高見の勝負手が通るか否か。金井、秒読みを切り抜けることができるか。控室では△5四香▲7八玉△8八金▲6七玉△6五歩が調べられている。 * *【いい勝負か】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-6201.html 138 4三金打 ( 0:00/03:00:00) *さらに金を投資する。しかし、金を手放したので△5四香が詰めろにならなくなった。 *「怪しい。これは逆転のムードか。これは勝ちになったんじゃないの、森内先生」(石田和九段) * *※局後の感想※ *△4三金打が悪手で、△5四香がまさった。以下▲7八玉には△4四銀▲3三角成△同銀▲同角成△8八金▲6七玉△6六歩と迫る。以下▲同馬は△5五桂、▲6六同玉は△4八角が痛い。高見は△5四香に▲6七金を示したが、以下△4四金で何ともいえない。 *「大事な局面でしたね。先手の勝負手で一山あるかもしれないですが、△5四香は打つべきでした」(金井) 139 6二角成(51) ( 2:48/02:45:11) *高見が猛烈に追い上げている。 140 6四香打 ( 0:00/03:00:00) *田楽刺し。先手は角を逃げずに後手玉を追い込みたい。 * *■ニコニコ生放送■  *三浦弘行九段>打ちましたか! さぁさぁさぁさぁ。 141 3二歩打 ( 0:46/02:45:57) *△2二玉は▲6三馬が▲3一銀からの詰めろ。 142 2一玉(31) ( 0:00/03:00:00) *▲2二歩には△同玉は▲6三馬だが、△1二玉とかわせば▲6三馬は詰めろにならない。 143 6三馬(62) ( 1:27/02:47:24) *△6六香は▲4一馬と寄せに使う。 144 同 飛(83) ( 0:00/03:00:00) *▲3一歩成△同玉▲3二銀がある。以下△同金は▲同桂成△同玉▲2二金△4一玉▲5二金までの詰み、△2二玉は▲2一金△1二玉に▲4三銀成で受けがない。6六の角が鬼のように働いている。 *20時29分、高見が席を外した。金井が身支度を整える。何かを悟ったような様子だった。 *20時32分、高見が戻ってくる。石田和九段は疲労困憊ながら、モニタで対局室を眺めている。 145 3一歩成(32) ( 5:00/02:52:24) *たっぷり5分使って歩を成った。控室の検討は打ち切られている。 146 同 玉(21) ( 0:00/03:00:00) *※局後の感想※ *以下は立会人の塚田九段の総括。 *「矢倉から、後手の急戦を警戒して▲2五歩(9手目)と飛車先を決めるのが高見六段の注文で、金井六段をそれを受けて立ちました。▲6七金左(31手目)や▲3七桂(29手目)は高見六段の予定でしょう。後手は△7三角(36手目)に代えて△4二銀右から△4三銀を急いだほうが得なのか、難しいところでした。▲4五歩(39手目)と先手が仕掛け、後手が△6三金(58手目)と上がってくれるなら先手ペースのように見えても、実際はそうではなかったようです。そのあとの△6五歩(60手目)には▲4八角から角交換を狙って、バランスのよい陣形を主張するのも考えられました。9筋で香を交換したあたりは後手ペースになっています。しかし、ここから決め手を与えないように高見六段が我慢し、▲7七金(113手目)などはよい辛抱と決断でした。△4三金打(138手目)では△5四香がまさり、結果論ですが、金井六段は時間がないなかで正着を逃しました。もちろん、金井六段が時間を使うのは普通です。しかし、高見六段の持ち時間の配分など、絶対に勝つという戦略や勝負術が見事でした」(塚田九段) 147 3二銀打 ( 0:26/02:52:50) *この局面で金井が投了した。終局時刻は20時36分。消費時間は、▲高見2時間52分、△金井3時間0分。 *高見が4連勝で初タイトル、叡王を獲得。タイトル獲得1期により、七段昇段が決まった。終局しても、しばらく高見はうつむき加減だった。 *【高見が初タイトル、叡王を獲得】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-dd2a.html * *【終局直後】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-bb10.html * *【囲み取材】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-5ea7.html * *【感想戦】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-10da.html * *【金井六段】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-edf4.html * *【会見】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-04bd.html * *【第3期叡王戦閉幕】 *http://kifulog.shogi.or.jp/eiou/2018/05/post-c7f7.html * *※局後の感想※ *塚田九段の総括は、1手前のコメントに掲載した。146手目コメントをご覧いただきたい。 *タイトル戦の打ち上げは、対局者は分かれて、別々のテーブルに着くのが慣例である。石田和九段は弟子の高見側に座った。師弟で互いにビールを注ぐ。高見が関係者と談笑する横で、石田和九段は「いやー、今日は疲れた。よかった。いま、元気になってきましたよ。不思議なものだねぇ、さっきのほうが疲れていたよ」とホッとした表情だった。 *打ち上げ開始から数十分が過ぎたころだろうか。金井が高見に近づき、微笑みながら声をかけた。手にはビール瓶。わざわざビールをつぎにきたのだ。高見は固まっていた。言葉に詰まっていた。視線が泳いでいた。恐縮するままにグラスを差し出すと、金井はビールを注ぐ。最後は高見の肩を叩き、何か一言かけてから、爽やかに自席に戻った。記者には「頑張って」と聞こえたような気がするが……。 *高見は、目を閉じて立ち尽くしていた。やがて座ると、グラスを手にしたまま数分間うつむき、メガネを外してティッシュを目に当てた。 *記者は叡王戦決勝七番勝負開幕前に2人に取材したときを思い出した。タイトル初挑戦の2人は、自分が大舞台に出ることは予想していなかったと率直に述べた。最初のチャンス、そして最後かもしれないチャンス。期待と不安のなかで、叡王戦ドリームを勝ち取ったのは高見だった。 *日付けが変わったころ、打ち上げはお開きに。金井はいつものように、軽妙なトークで場を盛り上げ続けた。石田和九段にも丁寧に挨拶していた。なぜ高見の師匠が富岡製糸場に来ていたか、察していたはずだ。紳士的な振る舞いや気遣いは、勝負において損になりはしないか。だが、金井は最後の最後まで、自分の美学を貫いたように見えた。 *金井と高見のファンメッセージを掲載する。 *「本来であれば敗者はすぐに去るものですが、今回は皆さまに感謝の言葉を述べる機会を与えていただきました。いつもご視聴ありがとうございます。叡王戦がここまで盛り上がったのは、将棋をドキドキしながら見てくださる皆さまのおかげです。何か皆さまの心に届くものが少しでもあればよかったと思っています。対局者として感謝しております。ありがとうございました」(金井) *「ご視聴ありがとうございました。叡王戦がタイトル戦になると決まったときは、ここまでこれるとは誰も想像していなかったと思うんですけど、やはり自分は棋士ですので、いちばん上を目指していました。段位別予選を抜けたときから、全力で燃え尽きたいと思った棋戦でした。 *七番勝負のプロモーションビデオで、「この戦いで将棋界の勢力図が変わる」というフレーズがあります。いま20代の世代がもっと活躍することで、将棋界も盛り上がっていくと思いますし、同世代には自分も負けないように頑張らなくてはと……。すみません、自分の話ばかりしてしまいました。 *タイトルはとても重いもので、これからもイバラの道を進んでいくのですが、もっと活躍する予定なので、皆さん応援していただけるとうれしいです。ありがとうございました」(高見) 148 投了 ( 0:00/03:00:00) まで147手で先手の勝ち