# --- Kifu for Windows (HTTP) V6.52 棋譜ファイル --- 対局ID:1588 開始日時:2012/11/07 14:00 終了日時:2012/11/07 15:17 表題:朝日杯将棋オープン戦 棋戦:第6回朝日杯将棋オープン戦二次予選 持ち時間:各40分 消費時間:87▲38△38 場所:東京・将棋会館 図:投了 手合割:平手   先手:藤井猛 後手:泉正樹 先手省略名:藤井 後手省略名:泉 手数----指手---------消費時間-- *2012年11月7日(水)は第6回朝日杯将棋オープン戦二次予選Dブロック決勝、藤井猛九段と泉正樹七段の一戦を中継する。 *対局開始は14時。対局場は東京・将棋会館「高雄」。持ち時間は各40分(チェスクロック使用)。使い切ると1手60秒未満の秒読みとなる。記録係は黒沢怜生三段(20歳・高橋道雄九段門下)。 *振り駒の結果は歩が3枚。藤井の先手と決まった。 *(棋譜・コメント入力=牛蒡) *※は感想戦の内容。 1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *藤井は13時48分に戻ってきた。時計とバッグ以外は何も置いていない。駒を並べると、窓の外を見ながら体を揺らしていた。 *お茶を飲み、一息ついてから角道を開ける。 2 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *13時30分には下座に泉の荷物が置いてあった。今日は風邪気味なのか、マスクをつけて対局している。手元にはアメ、目薬、扇子、時計、ポケットティッシュなど。用意してきた飲み物はペットボトルの緑茶と紅茶。 3 6八飛(28) ( 0:00/00:00:00) *角交換四間飛車のオープニング。藤井は午前の対局では藤井システムと相振り飛車で戦っていた(千日手局含む)。 4 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00) *泉 正樹(いずみ まさき)七段は東京都練馬区出身、1961年1月11日生まれ。関根茂九段門下。棋士番号は144。73年、6級で奨励会入会。80年、四段。97年、七段。 5 4八玉(59) ( 0:00/00:00:00) *藤井 猛(ふじい たけし)九段は群馬県沼田市出身、1970年9月29日生まれ。西村一義九段門下。棋士番号は198。86年、6級で奨励会入会。91年、四段。2000年、九段。 *タイトル獲得は竜王3期。棋戦優勝は7回。 6 4四歩(43) ( 0:00/00:00:00) *角交換を拒否。泉は午前の対局で▲7六歩△3四歩に▲6六歩と突いていた。先後は変わっても方針は変えない。 7 6六歩(67) ( 0:00/00:00:00) *角筋を止めたが▲6五歩と突けばすぐに開く。 8 5四歩(53) ( 0:00/00:00:00) *泉の本年度成績は7勝7敗(0.500)。 *通算成績は555勝525敗(0.514)。 *あと5勝で八段に昇段する。 9 6五歩(66) ( 0:00/00:00:00) *藤井の本年度成績は17勝10敗(0.630)。 *通算成績は530勝371敗(0.588)。 *現在7連勝中。 10 5三銀(62) ( 0:00/00:00:00) *泉は攻めを得意とするオールラウンダー。「野獣流」と呼ばれている。著書も相掛かりや右四間といった激しい戦型に関する物が多い。 11 7八銀(79) ( 0:00/00:00:00) *藤井は振り飛車党。藤井システム、藤井矢倉、角交換四間飛車など独自の戦法を開発してきた。特に角交換四間飛車は今年度に入ってから棋界全体で流行している。 12 4二玉(51) ( 0:00/00:00:00) *対戦成績は泉4勝、藤井5勝。 *直近の対戦は2002年9月の第74期棋聖戦二次予選で泉が勝っている。 13 6七銀(78) ( 0:00/00:00:00) *本棋戦は朝日新聞社主催。一次予選、二次予選、本戦で構成されるトーナメント戦。全棋士、アマチュア10人、女流棋士6人が参加する。賞金は1000万円。 14 3二玉(42) ( 0:00/00:00:00) *泉の本棋戦成績は7勝4敗(0.636)。二次予選進出は今期が初。 *今期は一次予選で堀口弘治七段、土佐浩司七段、佐藤紳哉六段、本日午前に行われた二次予選1回戦で橋本崇載八段を破った。 *http://live.shogi.or.jp/asahi/kifu/6/asahi201211070201.html 15 3八玉(48) ( 0:00/00:00:00) *藤井の本棋戦成績は8勝5敗(0.615)。過去5回は二次予選から出場。本戦進出の経験はない。 *今期は一次予選から出場。熊坂学五段、上野裕和五段、金沢孝史五段、本日午前に行われた二次予選1回戦では松尾歩七段を破っている。松尾七段戦は2度の千日手を経て12時43分に終局した。 * *【決着局】 *http://live.shogi.or.jp/asahi/kifu/6/asahi201211070103.html 16 3三角(22) ( 0:00/00:00:00) *午前の対局では先手で▲6八銀と上がったが、本局は玉を深く囲うようだ。 17 6六銀(67) ( 0:00/00:00:00) 18 2二玉(32) ( 0:00/00:00:00) *すでに前例はなくなっている。部分的によくある形は後手が5三銀・4三銀型で中央を厚くする指し方。しかし泉の指し手は穴熊や美濃囲いを目指しているように見える。 19 5六歩(57) ( 0:00/00:00:00) *両者とも視線を少し左に外して考えている。 20 3二銀(31) ( 0:00/00:00:00) 21 5八金(69) ( 0:00/00:00:00) *力を込めて左金を上がる藤井。2度3度とうなずく泉。 22 6二飛(82) ( 0:00/00:00:00) *飛車先不突きを生かして右四間飛車に。序盤で少し紹介したが、泉は右四間飛車の本も出している。 23 2八玉(38) ( 0:00/00:00:00) 24 1四歩(13) ( 0:00/00:00:00) 25 1八香(19) ( 0:00/00:00:00) *藤井はセキ払いをしながら穴熊の意思表示をした。後手の美濃囲いに対して、より堅い囲いを選択。 26 5二金(61) ( 0:00/00:00:00) *泉は座り直してすぐに金を締まる。先手の穴熊は予想の範囲内だったか。 27 1九玉(28) ( 0:00/00:00:00) 28 2四角(33) ( 0:00/00:00:00) *泉から序盤早々のジャブ。飛車取りに角を出た。 *藤井は「いやぁ」と声を出して額に手を当てる。 29 6七飛(68) ( 0:00/00:00:00) *上に。▲7八飛では6筋の均衡が崩れてしまう。 30 4三金(52) ( 0:00/00:00:00) *ジャブの後は深追いをしない。間合いを計る。 *△4三金までの消費時間は▲藤井13分、△泉7分。 31 2八銀(39) ( 0:00/00:00:00) 32 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00) *右四間にしてから8筋を突く。自由自在だ。△7九角成があるため、先手は△8五歩に▲7七角と形よく受けることができない。 33 3九金(49) ( 0:00/00:00:00) *なにはともあれ穴熊を完成させる。これでそう簡単にはつぶれない形になった。 34 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00) *悩ましい牽制球。▲7七角は△7九角成。▲7七銀と6筋から撤退するのも指しにくい。 35 6九飛(67) ( 0:00/00:00:00) *7九の地点を受けた。次は▲7七角と上がることができる。 * *※感想戦※ *ここで△6四歩▲同歩△同銀▲7七角△6五銀▲同銀△6八歩▲5四銀△同金▲6八飛が検討された。「これもありましたか」と泉。 36 8六歩(85) ( 0:00/00:00:00) *14時24分、泉がかみついた。 * *※感想戦※ *△8六歩は指し過ぎだったか。「歩を渡したのは大きかった」と泉。 37 同 歩(87) ( 0:00/00:00:00) 38 6四歩(63) ( 0:00/00:00:00) *攻める野獣流。▲6四同歩△同銀▲6五歩には△6八歩が入る。 39 同 歩(65) ( 0:00/00:00:00) *まずは取る一手。 40 同 銀(53) ( 0:00/00:00:00) *ここで藤井が時間を使っている。左手を口元のあたりへ。視線は6筋から動かさない。 *△6四同銀までの消費時間は▲藤井14分、△泉13分。 41 4六歩(47) ( 0:00/00:00:00) *振り飛車党らしい軽い受け。△4六同角と取らせれば、▲6五歩△6八歩には▲4九飛と角取りで切りかえせる。 42 同 角(24) ( 0:00/00:00:00) *藤井は両手を後頭部に回した。低い声で「うーん」とうなる。 * *※感想戦※ *△5三銀も考えられたが「それは弱気な気がして」と泉。 43 5七銀(66) ( 0:00/00:00:00) *▲6五歩は打たずに銀を引いた。飛車の間に入った6四銀を負担にさせながら▲4五歩を狙っている。 44 2四角(46) ( 0:00/00:00:00) 45 4五歩打 ( 0:00/00:00:00) *素早い手つきで▲4五歩。8八角のラインが厳しい。 * *※感想戦※ *「△3三銀▲4四歩△同銀で次の手が分からなかった。銀は上がりにくいとは思っていましたが……」(藤井) *感想戦では△3三銀▲4四歩△同銀に▲6三歩が指摘された。以下△6三同飛▲4四角△同金▲7二銀△6二飛に▲8一銀不成が好手。▲3六桂と▲7二銀成△同飛▲6四飛の狙いが残る。 46 5五歩(54) ( 0:00/00:00:00) *手筋の受け。△3三角では▲4四歩△同金▲4五歩△4三金▲3三角成△同桂▲6三歩で崩されるところだった。 47 同 角(88) ( 0:00/00:00:00) *飛車が向かい合っているので△5五同銀とはできない。 48 5四金(43) ( 0:00/00:00:00) 49 7七角(55) ( 0:00/00:00:00) *1歩得を果たして角が帰還。△4五金には▲4六歩△3五金▲4四角の王手飛車取りがある。 50 3三桂(21) ( 0:00/00:00:00) *△3三桂までの消費時間は▲藤井20分、△泉19分。 51 4四歩(45) ( 0:00/00:00:00) *歩得をさらに広げる。先手ペースで推移している。 52 7四歩(73) ( 0:00/00:00:00) *△7三桂〜△6五桂の狙い。歩損を駒の働きでカバーするつもりだ。 *藤井はちらりとチェスクロックを見た後、目を閉じてお茶を口に含んだ。体は横に揺れている。 53 8五歩(86) ( 0:00/00:00:00) *8筋の歩を伸ばして藤井は少しうつむいた。「これでどうだろうか」と自問しているように見える。 54 7三桂(81) ( 0:00/00:00:00) 55 8六角(77) ( 0:00/00:00:00) *△6五桂の両取りをかわした。▲6四角△同金▲5三銀の強襲も見える。 *泉はパタンパタンと扇子を開閉しながら考えている。午前の橋本八段戦ではあまり見られなかった仕草だ。 * *※感想戦※ *このあたり、泉は劣勢を意識していたようだ。 *「8筋の突き捨てを逆用されちゃったね」(泉) 56 6五歩打 ( 0:00/00:00:00) *前述の▲6四角の筋を消した。 57 4九飛(69) ( 0:00/00:00:00) 58 4五歩打 ( 0:00/00:00:00) *後手は悔しい受けが続くが、先手も駒がさばけたわけではない。泉は局面を収めた後に反撃したい。 59 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00) *△3五角〜△4四角を防いだ。4四歩は金で取らせたほうが後手陣が乱れる。 *泉の手が止まってかなり経つ。消費時間の差がなくなってきた。 * *※感想戦※ *ここで△8二飛なら難しかった。検討の一例は△8二飛▲6四角△同金▲4三銀△6一角▲3二銀成△同金▲6二歩。 *「これは大変ですね。気が進まない順だけど、こうやるしかないのかな」と藤井。 *以降は検討されなかった。 60 4四金(54) ( 0:00/00:00:00) *△4四金までの消費時間は▲藤井29分、△泉28分。 61 8四歩(85) ( 0:00/00:00:00) *△8二飛は▲6四角。後手の金を5筋から遠ざけた効果だ。 62 8二歩打 ( 0:00/00:00:00) *泉は小さく舌を鳴らして歩を謝った。これで後手は歩切れ。 63 4六歩打 ( 0:00/00:00:00) *気づけば先手が右四間飛車のような攻め形になっている。△4六同歩▲同銀△4五歩には▲5五銀で勝負か。 64 5二金(41) ( 0:00/00:00:00) *後手は6筋の飛車と銀が動けないのが泣き所だったが、△5三銀と引けるようになった。 65 7七角(86) ( 0:00/00:00:00) *金取り。藤井が軽快にステップを刻んでいる。 66 6六歩(65) ( 0:00/00:00:00) *泉は6筋を軽くして飛車をさばきたい。 67 同 角(77) ( 0:00/00:00:00) 68 5四金(44) ( 0:00/00:00:00) 69 4五歩(46) ( 0:00/00:00:00) 70 6五銀(64) ( 0:00/00:00:00) *△6五銀までの消費時間は▲藤井32分、△泉31分。 71 4四角(66) ( 0:00/00:00:00) *今度は飛車取り。▲3五歩の含みもある。 72 同 金(54) ( 0:00/00:00:00) 73 同 歩(45) ( 0:00/00:00:00) 74 5四銀(65) ( 0:00/00:00:00) *4三の地点に足しながら飛車先を通した。ただしすぐに飛車を成り込む場所はない。 75 5五歩(56) ( 0:00/00:00:00) 76 4五銀(54) ( 0:00/00:00:00) 77 4三金打 ( 0:00/00:00:00) *駒を削り取るガジガジの攻め。先手は自陣を見る必要がない。 *後手はどの駒を取られても痛そう。3三桂も銀を支える大事な駒だ。 78 8七角打 ( 0:00/00:00:00) *△7六角成が入れば攻防手になる。代えて△4三同銀は▲同歩成△同金▲4四歩△同金▲5三銀を狙われて苦しかったか。 79 3二金(43) ( 0:00/00:00:00) *敵玉に最も近い駒を取る。 80 同 玉(22) ( 0:00/00:00:00) 81 4三銀打 ( 0:00/00:00:00) 82 同 金(52) ( 0:00/00:00:00) 83 同 歩成(44) ( 0:00/00:00:00) 84 同 玉(32) ( 0:00/00:00:00) *後手玉が裸にされてしまった。4九飛のラインに入ったことも痛い。 85 4四歩打 ( 0:00/00:00:00) *△4四同玉は▲5四金まで。 86 5二玉(43) ( 0:00/00:00:00) *先手は飛車をさばくか自陣の駒を攻めに使いたい。 87 5六銀(57) ( 0:00/00:00:00) *この手があった。△5六同銀は▲4三歩成から金打ちで王手飛車取りがかかる。 * *ここで泉は投了した。終局時刻は15時17分。消費時間は両者とも38分。勝った藤井は自身初の本戦出場を決めた。 88 投了 ( 0:00/00:00:00) まで87手で先手の勝ち