# --- Kifu for Windows (HTTP) V6.52 棋譜ファイル --- 対局ID:1584 開始日時:2012/11/06 14:00 終了日時:2012/11/06 15:13 表題:朝日杯将棋オープン戦 棋戦:第6回朝日杯将棋オープン戦二次予選 持ち時間:各40分 消費時間:108▲23△40 場所:東京・将棋会館 手合割:平手   先手:田村康介 後手:丸山忠久 先手省略名:田村 後手省略名:丸山 手数----指手-- *第6回朝日杯将棋オープン戦(朝日新聞社主催)は二次予選が行われている。本局はBブロック決勝の丸山忠久九段−田村康介六段戦。持ち時間は各40分(チェスクロック使用)。使い切ると1手60秒未満の秒読み。 *過去の対戦成績は丸山1勝。本局は東京・将棋会館の「飛燕」で行われる。 *13時49分、田村入室。お盆にウーロン茶とたばこ、灰皿が置かれている。13時51分に丸山が入室。無糖の紅茶のペットボトル3本、チョコ菓子、ポケットティッシュを用意して、目薬をさした。振り駒の結果、と金が4枚出て田村の先手に決まった。記録係は鈴木肇三段(25歳、所司和晴七段門下)。 *(棋譜・コメント入力=銀杏) *※は感想戦の内容 1 5六歩(57) *ど真ん中を突く。 2 3四歩(33) *丸山 忠久(まるやま・ただひさ)九段は1970年9月5日生まれの42歳。千葉県木更津市出身。故・佐瀬勇次名誉九段門下。棋士番号は194。 *90年4月、19歳で四段。2000年に初タイトルの名人を獲得。タイトル獲得は名人2、棋王1の計3期。棋戦優勝は12回。 *第1回朝日杯の準優勝者。 3 5八飛(28) *田村 康介(たむら・こうすけ)六段は1976年3月16日生まれの36歳。富山県魚津市出身。大内延介九段。棋士番号は217。 *95年10月、19歳で四段。2005年6月、六段。 *03年に第34期新人王戦で優勝している。 4 3三角(22) *丸山は攻め将棋の居飛車党。スペシャリストタイプで角換わりや横歩取りを得意とする。 5 7六歩(77) *田村は居飛車、振り飛車問わず何でも指しこなすタイプ。 *本局は中飛車にした。 6 4四歩(43) *本棋戦は盤側でのネット中継が特徴。対局者のしぐさをそのまま伝えられる。 7 6八銀(79) *早くて盤面を追うのが精いっぱい。 8 2二飛(82) *丸山の本年度成績は15勝15敗(0.500) *対局数ランキング3位 *通算成績は739勝401敗(0.648) 9 5七銀(68) *田村の本年度成績は11勝4敗(0.733) *勝率ランキング11位 *通算成績は364勝247敗(0.596) 10 4二銀(31) *丸山は一次予選シードで二次予選からの出場。1回戦で新鋭を八代弥四段の横歩取りを破った。 *http://live.shogi.or.jp/asahi/kifu/6/asahi201211060101.html 11 4八玉(59) *田村は1回戦で深浦康市九段に相振り飛車で快勝。公式戦連勝を8に伸ばしている。 *驚いたことに、田村は持ち時間を20分しか使わずに勝った。A級棋士の深浦九段相手にこのような芸当を見せられる棋士は田村の他にいるのだろうか。信じられない早見え早指し力だ。 *http://live.shogi.or.jp/asahi/kifu/6/asahi201211060201.html 12 6二玉(51) *本局で使用されている駒は光匠師作の錦旗書。 *※感想戦 *「1回戦とまったく同じでした」と田村。「同じだったの? 全然知らなかった」と丸山は驚いていた。 13 3八玉(48) 14 2四歩(23) *初手▲5六歩の中飛車には相振り飛車が有効とされている。丸山は向かい飛車を採用した。 15 7五歩(76) *開始から2分足らずでここまで進んだ。あまりにも早いので鈴木三段は7六などの符号だけ書いている。それでも間に合わず、いくつか2や3しか書いていないところもある。 *1回戦の対深浦康市九段戦でも見せた作戦。三間飛車に振り直すつもりだ。 16 5二金(41) 17 7八飛(58) *田村は対局開始前にワイシャツのそでをまくっていた。気合十分。 18 6四歩(63) 19 7四歩(75) *田村の指し手はまったく迷いがない。1手5秒程度で指している。 20 同 歩(73) 21 同 飛(78) 22 6三金(52) 23 7八飛(74) 24 7二銀(71) *丸山は田村の動きに乗じて上部が厚い囲いに組むつもり。 25 9六歩(97) 26 2五歩(24) *対局開始から5分経過。消費時間は田村2分、丸山3分。 27 5八金(69) 28 7三銀(72) 29 9五歩(96) 30 7二金(61) 31 8六歩(87) 32 4三銀(42) 33 2八玉(38) *直前の▲8六歩が大事な一手。怠っていたら、△2六歩▲同歩△2五歩▲同歩△同飛▲2七歩△8五飛でしびれるところだった。この飛車の転換は三間飛車の弱点なので注意したい。 34 3五歩(34) 35 3八銀(39) *対深浦戦では穴熊にした田村だが、本局は美濃囲い。 *田村はたばこに火をつけた。 36 7一玉(62) 37 4六歩(47) 38 8二玉(71) 39 4七金(58) *高美濃対矢倉の相振り飛車となった。 40 3四銀(43) 41 6六角(88) *左桂をポンポン跳ねて端を攻める構想。 42 2六歩(25) 43 同 歩(27) 44 同 飛(22) 45 2七歩打 46 2二飛(26) 47 5五歩(56) *ここまでの消費時間は田村3分、丸山12分。 *田村は右側に置いた脇息にもたれかかる。自分で右側に置いた。脇息は利き手と反対側に置かれることが多いので珍しい。 *14時15分、順位戦対局中の日浦市郎八段が入室。盤面を見てそっと退室した。14時19分、今度は宮田敦史六段が入室。順位戦対局中だが、かばんを持っている。 48 4五歩(44) *4分近く考えて歩交換。3三角の利きを通した意味もある。 49 同 歩(46) 50 同 銀(34) 51 4六歩打 52 3四銀(45) 53 5六銀(57) 54 2六歩打 55 同 歩(27) 56 2五歩打 57 同 歩(26) 58 2六歩打 *「3歩持ったら継ぎ歩に垂れ歩」といわれる。 59 3九玉(28) *49手目▲4五同歩からノータイムで指し進める田村。その指し回しからマッハという言葉が浮かぶ。 60 2五銀(34) *1歩損でも2筋を押し込んだのは大きな戦果。 61 2八歩打 *苦笑いのような表情で何かつぶやきながら歩を打った。相振り飛車の序盤で3歩持つケースはまれ。2筋の継ぎ歩が成立したケースは珍しい。 62 7四歩打 *2筋を押し込んだので丁寧に受ける。 *※感想戦 *△7四歩は打つ必要がなく、単に△3四銀が勝った。 63 7七桂(89) 64 8四銀(73) *▲8五桂の先受けと△7五銀を見ている。 65 7六歩打 *※感想戦 *△7四歩からのやり取りで7筋から9筋が安定した。後手は端攻めを受けて△8四銀型をキープする必要があり、囲いが薄くなった。 66 3四銀(25) 67 5八飛(78) *14時25分。消費時間は田村5分、丸山20分。 *丸山は大きく息をついた。 *カチッ。田村はたばこに火をつける。 68 1四歩(13) 69 4五銀(56) *△1五歩〜△1三桂〜△2五桂が間に合うと、端からじわじわ攻められてしまう。そこで急いで攻めに出た。64手目△8四銀は▲8五桂に備えているが、守りは少し薄くなっている。先手は3三角をどかして▲5四歩と突ければ理想的だ。例えば△4三銀▲3六歩△同歩▲3四歩△4二角▲5四歩といった具合。 *田村、前傾姿勢になる。丸山は先手陣を見詰めて考えている。丸山は6分以上考えている。消費時間に20分の差がついた。 70 同 銀(34) 71 同 歩(46) 72 8七銀打 *遠いところへ手が伸びた。B面攻撃。相振り飛車や矢倉戦ではよく見かける指し方だ。遅いようでも△7六銀成から△6七成銀が厳しい。 *田村は右手でひざをトントンたたきながら読みのリズムを取る。 73 4四歩(45) *パシィ。高い駒音で指された。軽い手筋。 *残り時間は田村33分、丸山13分。 74 同 角(33) 75 4五銀打 *田村は好機に▲5四歩と突きたい。 76 4六歩打 *丸山も軽手で切り返す。形を乱す手筋。 *田村はライターをころころ回して考えている。丸山はしばらく腕を組み、やがて湯飲みの紅茶を飲んだ。 77 4八金(47) *首を傾げながら金を引いて何やらつぶやいた。記者には「つらいなぁ」と聞こえたが実際の形勢はどうなのだろうか。 78 3三角(44) *丸山は2筋と4筋で細かくポイントを挙げた。桂が入れば△2七桂、△4七桂いずれも厳しい。そして、その桂は8七銀を使って取れそうだ。 79 5四歩(55) 80 7六銀成(87) *強く踏み込んだ。 81 5三歩成(54) *もう止まらない。 *14時45分、残り時間は田村31分、丸山6分。 82 7三金(63) *田村はチェスクロックを見やって何かつぶやいた。丸山は身動きせずにじっと盤面を見詰める。 *中村太地六段が対局の様子を見に来た。 *田村は本局で初めて2分以上考えている。局面は忙しい。▲3三角成△同桂▲3四銀は△7七成銀が厳しい。 83 3三角成(66) 84 同 桂(21) 85 4四角打 *3三桂取りと7七桂にヒモをつけて一挙両得。丸山が髪をかきあげる。 *△5七歩は軽手。▲同飛なら△4五桂でうまいが、▲9八飛と逃げられたときにどうか。 *残り5分を切った丸山だが落ち着いて読みを入れる。14時52分、丸山が頭を抱えた。頬が紅潮している。 86 5七歩打 *14時52分、残り時間は田村27分、丸山2分。残り時間は大差なのは明らか。盤面はどうか。丸山が歩を巧みに使っている印象を受ける。 87 同 飛(58) *△4五桂が見えているだけに強手。 *※感想戦 *▲9八飛だった。以下△7七成銀▲3三角成△4七桂▲同銀△同歩成▲同金△2一飛▲7七馬△6五角▲4八飛△2七歩成▲同歩△5八銀という展開が検討された。 *「後手は堅さだけが頼り」と丸山。「受けてばかりでつまらないですね。でも、本譜は悪いから逃げるべきだった」と田村は反省する。 88 4五桂(33) 89 5六飛(57) *銀ポロリは痛いはずだが、グッとこらえようとする。かなりひねった手順だ。 *14時55分、丸山は右手を口に当て、チェスクロックを見やる。「針が落ちた」と自己申告。1分将棋に入る。険しい表情でうなり、首を傾げた。 90 2四飛(22) 91 3三角成(44) 92 7七成銀(76) *59秒まで読まれて桂を取った。 *丸山は決めに出ている。 93 2四馬(33) *田村は▲4六飛や▲3五馬から駒を掃除したり、▲3五馬〜▲6二との楽しみがある。丸山はその前に寄せの形を作りたい。 94 4七桂打 95 同 銀(38) 96 同 歩成(46) 97 同 金(48) *駒割りは飛車と銀2枚の2枚換え。双方、これといった遊び駒はない。 *△6五角は部分的に厳しい攻め。 98 6五角打 99 4六飛(56) *15時を過ぎた。田村は残り24分。 *丸山はあぐらに崩した。 *※感想戦 *(1)▲2五馬は△6七成銀▲6二と△5六角▲同金△4八歩▲同金△5七銀でまずい。(2)▲3八玉△6七成銀▲2六飛△1五銀▲同馬△同歩▲6二と△2五歩▲4六飛△5七桂成▲4二飛打△4七成桂▲同飛△5七成銀▲4八歩まで進めば大変なようだが、△2五歩が利くなら後手がやれそうという結論だった。 100 6七成銀(77) *▲4五飛には△5八銀を狙っている。2六歩がいるうちに仕事をしたい。 *丸山は正座に直る。田村、トントンと人差し指でひざを打つ。 101 4五飛(46) *△5七桂成を消すために仕方ないが△5八銀が見えている。どうこらえるのか。 102 5八銀打 *わずかに詰めろではないようだが、後手玉も詰めろがかからない。 103 5六歩打 *歩打ちを見て、丸山は頭に手を当てた。 *※感想戦 *▲5八同金△同成銀▲5六歩は△2七銀▲4九銀△7六角と活用されてもたない。 104 4九銀成(58) *△4七銀成▲同飛△5六角なら角が使えるが、▲4二飛成で▲7一銀の頓死筋が生じる。 105 同 玉(39) *村山慈明六段はサッと対局室に入り、盤面を見て自分の対局に戻った。 106 5八銀打 107 3八玉(49) *田村は▲2七歩と隠し扉を開ける手を狙っている。 108 5七金打 *15時10分。田村は残り20分。 *金駒が密集してやや重い攻めだが、確実という意味もある。田村は▲2七歩と扉を開け、さらに▲1六歩とすれば上部へ脱出できそうだが。 *ここで田村は3分考えて投了した。「何かありそうだと思ったんですけど…」と田村。ここで▲2七歩は△4七銀成▲2八玉△5六角が詰めろ飛車取りで一手一手のようだ。 *終局時刻は15時13分。消費時間は田村23分、丸山40分。丸山が本戦進出を決めた。 109 投了 まで108手で後手の勝ち